「刃に漬けてる赤い液体って何だ?」
「説明してたら日が暮れますね。」
「じゃあいいや。」
ツバキは雇った後、うちの事務所に泊まることになった。今は二階の空き部屋を貸している。
「工房はどうすんだって思ったんだが、部屋を工房に変えるなんてな。」
部屋は何かしたのかかなり広くなっている。あちこちに機材が置かれており部屋の隅にポツンと布団が敷かれている。
「w社の部屋拡張機、内装もそのまま保存できて便利なんですよ、これ買ったせいで一回破産しかけましたけど。」
「何やってんだ…」
「値段聞きたいですか?」
「いやいい。それより朝食ができたの言いに来たんだよ、一旦作業やめてくれ。」
「わかりました。」
朝食を食べ終わったところでツバキに話しかけた。
「突然なんだけど依頼をもらってきた。11時頃には出るから用意しておいてくれ。」
「私が来てから初の依頼ですね、何を受けたんですか?」
「[水晶狼]、先週都市伝説になったばかりだ、武器の試し切りも兼ねてやっておこう。」
「そうですね、準備してきます。」
そう言うとツバキは二階へ上がっていった。
彼女から自分用に調整された刀を渡されたがあれから書類の処理しかしていなかったためまだ一回も使っていない。
バスから降りたところで胸につけているバッジの電源をつけた。
「あーあー、聞こえてるか?」
『はい、バッチリです。周りの様子もちゃんとわかりますよ。』
このバッチにはカメラが仕込まれており録画、録音機能もついている。ツバキ自身は戦えないのでこれを通じて俺のデータの記録や補助を行う。
「今まで見てきた中で完全に自分の体と魂にあった装備をしてたやつっていたのか?」
『いやいなかっ…いえ1人いましたね。』
「誰なんだ?」
『赤い霧ですね。赤いラインの入ったスーツみたいなのを着ていました。何故かスーツにも魂があって着てるというよりも体の一部みたいな感じでしたけど。』
「赤い霧か…まあ赤い霧なら納得できるな。」
そんなことを話しているうちに目的地へついた。
ごく普通の飲食店だ。中へ入り依頼文書を見せ今回の依頼主、この店の店長に話を伺った。
「あんたがフィクサーか待ってたぜ。」
「はじめまして、ビリオン事務所のビリオンです。早速ですけど対象は何処に?」
そう聞くと依頼主は部屋の右にあるドアを開けた。中は通路が続いており壁の至る所に引っ掻かれたような跡ができている。
「誰もいないときに店の入口ぶっ壊して入ってきやがったんだ、クソッ、それっきり出てはこないけど夜に叫ぶせいで客も気味悪がって来ねぇんだ。水晶犬だか水晶猫だか知らねえがなんとかしてくれ。」
「お任せください。危険ですので部屋の近くには近づかないようにしてください。」
扉が閉められ通路が暗くなる。ライトをつけ刀を抜いた。
奥をライトで照らすともう一つ扉があった。通路に何もないことを確認しドアノブを握った。
『開けたら急に来るかもしれないので気をつけてくださいね。』
「言われなくとも。」
扉を開けた瞬間紫色の何かが飛びかかってきた。
反社的に刀を振るうとそれは真っ二つに割れ床に落ちた。見てみるとそれは狼だった。普通の狼とは違い、体毛が紫色で右半分が水晶に覆われている。こいつが[水晶狼]で間違いないだろうが…
「えっと、これで終わり?」
『全然刀の性能試せませんでしたね。』
おかしいな、報告書には6級フィクサーと交戦して重症を負わせたと書いてあったんだが…
『上ッ、来ます!』
「オラァ!」
上に向かって刀を振るい跳んできた物を切った。それはさっきと同じ[水晶狼]だった。
「ツバキ、何匹いる。」
『十匹はいますね。』
「複数いるって書いてなかったぞ、ここで増殖してたのか?」
こちらの様子を伺っていた一匹が爪を振るってきた。鞘でその一撃を防ぎそれと同時に顎に蹴りを入れる。狼が吹き飛んだ。そこに刀を振るった。狼は血ではなく紫色の粉末を流しながら床へ転がった。
見た目は狼そっくりだが生物じゃないな、石を切っているみたいだ。
後ろから気配を感じ刀で一閃する。キャンと鳴き、そいつは倒れた。
二匹が同時にこちらへ駆けた。片方の頭を殴り飛ばし、もう片方を刀で突き刺した。そのまま刀を振り回し向かってくる狼たちを吹き飛ばしていく。
次々と向かってくるがまだ一撃も食らっていない。ねじれもどきの報酬で施術を受けたおかげでこいつらの動きが手に取るようにわかる。
狼の頭を握り潰し、刀で三匹纏めて斬り伏せる。死を恐れず、愚直に向かってくる。19匹目を殺したところでやっと静かになった。
『ビリオンさんあと一匹で…』
ズズン
重い音が響いた。音のした方を向くと3mほどの大きさの狼がこちらを見下ろしていた。
「いつからここにいたんだ。」
『体の大きさをある程度変えることができるみたいです。魂もさっきと同じです。』
紫色の軌跡が空に走った。刀で受け流し、バックステップで威力を殺す。少しふらついてしまったがすぐさま体勢を立て直した。
さっきは尾を振るってきたようだ。
狼が前足を振るう。しゃがんで回避し、その体勢のまま腹を切りつける、が切った場所に水晶が生え防がれた。後ろに回り込み後ろ足に斬撃を食らわせる。またも生えてきた水晶に防がれた。鞭のように振るわれた尾を跳躍して避けた。
攻撃が当たる直前に水晶を生やすせいでほとんど効いていない。
「何が都市伝説になったばかりだ。ツバキ、解析はどれくらい進んでる?」
『あと4割くらいです。もう少し耐えてください。』
「はいよッ!」
狼の水晶がパキパキと音を立て、大きくなっていく。自分の身長の半分になったところで水晶が撃ち出された。刀で砕き、勢いよく狼へ駆けた。先程より一回り小さい水晶が3つ放たれた。2つを砕き、一つを鞘で打ち返した。
打ち返した水晶は狼の体に刺さらず、そのまま取り込まれた。
何発も撃てる上に自分には害はないのか、ますます厄介だ。
マシンガンのように撃たれる水晶を弾き、弾幕が緩んだ瞬間、刀を狼の頭に向かって投げた。刀が当たると同時に前足を全力で蹴り払う。刀は防がれたが前足に水晶は生えてこず、そのまま狼は体勢を崩した。 2箇所同時に生やすことはできないようだ。
倒れて隙だらけなところに追い打ちをかける。
「グアァァァァ!!」
狼が叫び、その衝撃で壁がビリビリと振動する。あまりの五月蝿さに一瞬体が硬直する。そこに頭で払い除けられた。
『解析完了しました。いつでもできますよ!』
ツバキがそう言った、すぐさま鍔につけられているスイッチを押した。
すると刀の刀身が美しい水色に輝いた。美しいが、見ていると何故か不安な気持ちになる、引き込まれてしまうような、そんな色だ。
「当てればいいのか?」
『はい、あれくらいならそれで殺せます。』
狼が水晶で頭部に角を作り突進してきた。それを回避せず、軽く刀を振るった。水晶の先端に少しだけ傷ができた。そこからだんだんひび割れていき、ひびの隙間が青白く光った。後ろ足にまでひびが広がったところで、狼の体が崩れた。
「えぇ…嘘だろ…」
『どうですか!これが私の最高傑作です!』
使用者よりも遥か格上、もしくは特殊な防御をしていない限り一撃で相手を即死させると説明されていたが、ここまでとは。
「えげつないもん作ったな…」
『ちょっと、引かないでくださいよ。』
これ、他に人がいるときはなるべく使わないようにしよう。絶対に組織に狙われる。
少し頭を悩ませながら依頼主に報告しに向かった。
刀:中にチップが埋め込まれておりツバキのパソコンで操作することができる。水色の状態は対象の魂が100%解析できているときにしか使えない。また、基本1日に一回しか発動できない。
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