「どこの馬鹿だよそんなことしたの…」
「今日予定あったのに…」
周りからハナ協会や組織などへの愚痴が聞こえてくる。まぁそれも仕方ない。
5日前、突然ハナ協会からメールが送られてきたのだ。
xxエリアに居る5級以上の全フィクサーは手紙に書かれている場所へ集まりそこにいる化け物たちを無力化、もしくは殺害しろと書かれていた。しかも強制である。
「今日は1日休む予定だったのになぁ…」
『まあまあ、その分報酬は高いからいいじゃないですか』
「でもねぇ、いきなり予定を潰されるのってきついよ」
『気持ちはすっごいわかります!他の工房で働いていたとき日常茶飯事でしたし…っと来ましたね』
「数は?」
『大体500くらいですかね?』
「予想してたけどやっぱ多いな」
刀を鞘から抜き、地響きのする方を向く。
「「「「グギャアァァァ」」」
ビルの隙間という隙間から次の瞬間黒い波…いや腐った死体で形成された化け物の大群が現れた。
「ツバキ、サーベルだ」
『了解!』
刀が輝き、サーベルへ変形し終わると同時他のフィクサー達を尻目に化け物の大群へ駆け出す。今回は一体倒す事に貰える報酬が増える、急がなければ。
群れの先頭にいた2体が俺に向かってきた。1匹は尾を、もう1体は刃物のような爪を振るってきた。
バックステップでどちらも避け、2体の間に入り込む。
「ムリネ」
剣を回転させるように振るい、2体同時に切り裂く。化け物は断面から黒緑色の液体を撒き散らしながら群れに飲まれた。
「まずは2体…おおっと!」
後ろから放たれた尾の一撃をサーベルで受け流し…
「リポスト」
その勢いのまま化け物の目を突き刺す。
「グギャアッ!?」
痛覚はあるのか化け物は絶叫しのた打ち回る。今のうちに…!
「槍だ!」
『急ですねぇ!』
槍を突き、前に出された触手ごと化け物の肉を抉り吹き飛ばす。すると化け物はどろどろに溶け煙を出して消滅した。
「ふぅ…こんな数だとどこからも攻撃されるな」
そう呟きながら周りを見る。全員が必死に剣を、刀を、斧を振るい化け物を殺している。
このペースなら1,2時間ほどで終わるだろうか?
「…続けるか」
いちいち時間を気にしても仕方ない。そう考えまた化け物の群れに突撃する。
化け物たちの攻撃は一撃一撃が重く、早く、まともに喰らえば骨など簡単に砕かれるだろう。だが動きは単調で動きを予測して避けること自体は簡単だ。触手の一撃を体を軽く倒して最小限の動きで回避する。
「そんなのありか!?」
触手からトゲが数本生え、俺に向かって打ち出された。咄嗟に槍を振るい触手ごと吹き飛ばす。
「ったく、危ねえ」
ねじれやねじれもどきは質量保存の法則なんて知ったことかとばかりに体を変形させる。回避できたと思ったら食らっていた、ということを何回も経験している。油断も隙もあったもんじゃない。
「さっきみたいに一撃で殺せればいいんだが、そううまくはいかないか」
『調べてみたんですけどあの化け物心臓みたいなのがあるみたいです。そこ潰せれば一撃で殺せれるんでしょうけど…一体一体微妙に位置が違うので難しそうですね。…あ、それと追加で50体くらい来ましたよ』
「…………はぁ」
もしかしたら3時間、もしくはそれ以上かかるかもしれない。そう思いながらまた槍を振るう。
「ぜぇ…ぜぇ…ツバキ…どんくらい経った?」
『4時間半くらいですね、お疲れ様でした』
「くそ…ぜぇ…ハナ協会め、よくもこんな依頼を…」
『ご飯作っておきますね、今日はゆっくり休んでください』
「助かる…」
そう話していると突然後ろから爆音が鳴り響いた。
すぐに後ろに振り向くと―黒いヘドロのようなものが波となりこちらに向かってきていた。
「うおおおぉぉぉ!!」
あれに絶対に当たってはいけない。本能でそう理解し全身に鳥肌がたった。今出せる全ての力を振り絞り、近くのビルに飛び移る。
ビルに飛び移ったと同時、足の筋肉がちぎれ酸欠で一瞬意識が飛んだ。
「何なんださっきの!」
ポーチからアンプルを取り出し足に打ち込む。足の中を虫に這いずり回られたような奇妙な感覚のあと筋肉が繋がり、再び足を動かせるようになった。
急いで立ち上がり周りの様子を見る。
「これは…やばくねえか…」
『嘘…ビリオンさん以外全滅!?』
そこは地獄だった。液体の波の進行方向にいた建物は全て砕け、フィクサーたち日や肉で赤いカーペットができていた。
ひどい光景だ。しばらくは肉は食えないだろう。
吐き気を抑えながらビルから飛び降り、ヘドロを放ったそれを見る。それはさっきの化け物を3体くっつけ2回りほど大きくさせたような姿をしていた。
なぜ誰にも気づかれずにあんなに近くに接近できたのかなど色々疑問はあるが今はどうでもいい。こいつ相手にそんな余計なことを考えてたら一瞬で殺される。
「ふぅ…」
化け物がこちらを品定めするように見ながらジリジリと近づいてくる。
次の瞬間化け物が目の前から消えた。それと同時に左に大きく飛ぶ。先程まで俺のいた場所は爆ぜ、土煙が舞い上がった。
今の避けてなかったらミンチになってたな…
化け物の攻撃は終わらない。爆弾を目の前で爆発させたかのような衝撃が何発も何発も叩き込まれる。動きはほとんど見えておらず、気配を感じてギリギリで防げている。しばらく防いでいると急に化け物が体を膨らませた。
すぐさま体をひねって化け物の横に移る。その一瞬後、化け物は口から黒い液体を吐き出した。液体は建物をなぎ倒しながら広がっていき、3つほど倒したところで蒸発して消えた。
(ハナ協会のフィクサーは何してんだ!?この規模だったらすぐに来るはずだ!)
そう思いながら槍を突き刺そうとし…火花を上げて防がれた。
「まじかよ!っうお!」
首を狙って振るわれた尾を飛んで避け、それを足場にして後ろへ下がる。
「ツバキ…解析はあとどのくらいかかる?」
『すいません…私にもわかりません。魂の形が常に少しずつ変化してて…』
「まじかよ」
今日で死ぬかもな、という考えが頭によぎる。
「ヴォエッ」
化け物は口から複数の何かを吐き出した。しゃがみ、その全てを回避する。それはさっきの黒い液体だった、黒い液体はコンクリートに当たると同時爆発した。
「器用だなお前ッ!」
続けて吐き出される液体を回転して避ける。あの威力だと弾くことは難しい。
「ほっ!」
液体と同時に吐き出された触手を切り裂く。触手は体ほどの硬さはな無い様で簡単に切り落とせた。が……
「なんでもありすぎるだろ!?」
切り落とした触手は周りの血肉を吸収して再生し、こちらにまた飛んできた。
手で握りつぶし、血や肉がない方向へ蹴り飛ばす。
「おわっ!?くっそ!」
ぶつかる直前、槍が変形して俺を包みこんだ。ドッという音とともに衝撃が体中を巡り、吹き飛ばされた、がそれだけでは終わらない。いつの間にか触手が体に巻き付いており投げ飛ばされた。
「オエッ、ちょっとは手加減しろぉ!」
触手を引き千切り、近くの建物に着地する。さっきのを防げてなかったら衝撃で体を動かせず、これで殺されていただろう。
『ギリッギリ間に合った…解析も終わりました!』
「ナイスだツバキ、まじで助かった。」
いつの間にか戻っていた刀の鍔のスイッチを押し、刀身を青くする。こいつは回避をしようとしないので当てるだけなら触手や液体に気をつければ簡単だ。
「行くかッ!」
足に力を入れ、一気に踏み込む。吐き出された液体を受け流し、その体制のまま刀を投げる。刀は真っ直ぐに飛んでいき、化け物の体に突き刺さった。同時に刺さった場所にヒビが入る。
「よしっ、これで…」
ヒビは化け物の体の四分の一ほどで広がったところで止まり、その部分だけが砕けた。
「……は?」
『た…魂を切り離して回避した!?』
化け物は砕けた部分を再生させながらこっちに向かってくる。
「もう一度刀を回収して叩き込めば…いや無理だ、クソっ」
体力は残ってない、武器は手元にない、奇跡的に刀を回収できてももう青くすることは出来ない…積みだ。
「チッ」
もう何をしても無駄だと理解しつつ、ポーチからナイフを取り出して構える。無抵抗に殺されてやるつもりはない。
「せめて一発入れてから殺されてやる!」
ナイフを握り、化け物へ飛び出す。そして…
「あのババァ……ギリギリじゃねえか」
化け物の体中に穴が空き、そのまま地面に倒れ伏した。
「なっ、次は何が……はぁ!?」
倒れ伏した化け物の後ろから出てきたのか人物を見てる思わず叫んだ。
そいつは男だった。アラス工房製のスティレットを握っている銀髪の男、特色フィクサーの一人[銀の弾丸]だった。
全身の力が抜けて倒れる。何とか助かった。
「……次は、あそこか。」
[銀の弾丸]はそうつぶやいた後、あっという間に走り去っていった。
「やべぇな…特色」
体中に穴を空けられた化け物を見る。2級フィクサーでも苦戦するであろうこいつを一瞬で殺したのだ。同じ人間とは思えない。
「…まあいいや、帰ろう」
『本当にお疲れ様でした』
刀を杖代わりにしてよろよろと歩く。金はかかるが今日はタクシーで帰ろう。
「…………」
K社の巣のホテルの一室で男…[銀の弾丸]は手元にある手紙を見た。
「師匠の野郎…こき使いやがって」
それは依頼書だった。ハナ協会を通しての正式なものではなく、彼の師匠からののものだが。
「あのフィクサーも可愛そうだな。師匠に目つけられるなんて」
そうつぶやかれた声色には同情が染み出ていた。
「……アンタはあいつに何させたいんだ…イオリ」
銀の弾丸の外伝とか見たい?
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