ミアハ・ファミリアの”完璧”   作:ナハトAB

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【日常】

 

「酒、匂う」

 

ロキと酒を飲んだその日の夜、ファミリアに帰ってきたヴァディムを出迎えたナァーザの一言目であった。

 

「……そんなに飲んでないはずなんだがなぁ」

 

確かに酒を飲んだのは事実。だが、それは瓶一本程度しか飲んでいない。いや、ロキと自分とで一本なのだから実際はそれ以下しか飲んでいない。

 

それに、自分は今べべらけになっているという訳でもなく、平常のそれである。

 

にも関わらず、ロキと酒を飲んだ日は決まってこの言葉を言われる。

 

「犬人の鼻、舐めないで」

 

そう言ったナァーザは、プンスカと言わんばかりに頬を膨らまし、耳をぴーんと立てて腕を組む。そんな彼女が不意に可愛いと思ってしまうのは間違っていないと信じたい。

 

……それに、今もぴくんぴくんと耳が動いていると来る。

 

なんでだろうなぁ……めっちゃ可愛いとしか言えん。

 

飲み会といえば。以前、一度ナァーザとも酒を交わっていたが……なんと彼女は下戸だったのだ。

 

酒を一飲みしただけで、顔を真っ赤にしていた。その上彼女のツンとした態度はどこにいったのか……甘えに甘えまくっていた。

 

それを見て不意にドキッとしてしまったのは……俺しか知らない。

 

媚びるような妖艶な微笑みを浮かべながらこちらに身を寄せてくるあのナァーザは、ハッキリ言って“ヤバかった”。

 

それに、喜の感情を現すようにブンブンと動くナァーザの尻尾も加えてか“ここで引いたら男じゃねぇ!”と言わんばかりに俺の中の悪魔がそう囁く。

 

持ち前の根性で堪えたから良かったものの、あそこの場面で屈していたらどうなっていたか……

 

結局、彼女は朧気ながらもそれを覚えていたらしくしばらくは気まずい状態が続いていたのも覚えていた。

 

せめて彼女が下戸でなければ──いや、下戸じゃなくともだ。酒が回っているナァーザは、ハッキリ言って心臓に悪い。

 

二度目なんて事があったら、耐えられる自信があまりない。

 

それほどに、酒が回ったナァーザは強烈なのだ。ファミリア内に留まったのが幸いだったが。

 

……ミアハ様と言うと、なんとも言えない生暖かい目で俺達を見ていたのは言うまでもない。

 

「ヴァディム?」

「……なんだ?」

 

そんな思考を巡らせていると、突如ドスの効いた声が聞こえたと思ったら、グイグイと顔を近づけてくるナァーザに、一瞬たじろぐヴァディム。

 

「なんか――よくないことを考えていた気がする」

 

思考が見抜かれていることに、ヴァディムはただ口を閉じるしかできなかった。

 

「……ふんっ」

 

どうしようかと思ったら、ナァーザはそう短く声を漏らし奥の方へと行ってしまう。

 

ロキと酒を飲んだ日の帰り、ナァーザはいつもこんな調子だ。

 

「おかえり、ヴァディム」

「ん、ただいま。ミアハ様」

 

そんなナァーザとすれ違う形でミアハ様が姿を見せ、そう言う。

 

「ナァーザが、何やら頬を膨らましていたが……もしや、ロキ・ファミリアに行ってきたのか?」

「……ああ」

 

つい先ほどそれを咎められただからか、少し間を置いてからそう返事をするヴァディム。

 

「ふむ……ナァーザには、頑張れとしか言えないな」

 

一体何の話をしているんだろうか。

 

何やら自己完結をしていたミアハに、ヴァディムは首を傾げるばかりであった。

 

 

 

 

時刻は進み、ヴァディムの更新を行った直後にて。

 

「毎度思うのだが……どこかが壊れているんじゃないのか、ヴァディムは」

「……そうか?」

 

ステイタス更新を終えたと同時に、あっけからんとそう口にするミアハ。それも無理はない──

 

 

ヴァディム・ペルフェット

 

Lv.8

力:A 870 → S 950

耐久:D 500 → D 570

器用:S 900 → SS 1000

敏捷:B 750 → A 810

魔力:F 350 → E 460

 

狩人:C

完璧:S

剣士:C

忍耐:B→A

耐異常:D

魔防:D

治力:F

 

 

最後に更新してから日が経っているとはいえ、アビリティ値の上昇はうなぎ登りといっても過言ではないからだ。

 

ステイタスにおける、基本アビリティの値は、S999までであるということはミアハも分かっている。

 

しかし、ヴァディムの場合なぜかS999までではなく、SS1000までと上限が僅かばかり大きい。

 

スキルには、このような効果があるとは書かれていないためこれがスキルによるなのかは不明なままだ。

 

1000というキリの良い数字が、ヴァディムらしいといえばらしいが。

 

……もちろんこれは今に始まったことでは無いため、そこまでの動揺はない。

 

しかし……ステイタスだけを見れば、充分次の段階にランクアップしてもおかしくはない。

 

―――Lv.9。そこに達したら、正真正銘このオラリオ中で"最強"を名乗れると言えるほどの領域だ。

 

「……フフフ」

 

ステイタスが記された紙を見ていたヴァディムは、そう声を漏らしながらニンマリとする。

 

……ヴァディムの事だから、【器用】のアビリティ値がキリ良い数字で嬉しいんだろうな。とミアハは苦笑いを浮かべていた。

 

そう考えると、ヴァディムの場合……Lv.10の基本アビリティがオールSS1000になったらしばらくはそのままでいそうだ、と。

 

レベルもアビリティ値もキリ良い数字。ヴァディムにとってはこれほど嬉しいことはないのだろう。

 

通常であれば、そんなステイタスなどありえない事を考えていたミアハ。

 

しかし、そんな想定が後になって現実となる事をミアハは知る由もなかったのだった。

 

 

 

 

sied ナァーザ

 

ヴァディムは、今日ロキ・ファミリアの所に行ったらしい。

 

言うまでもなく、あそこの主神様と酒を交わらせていたのだろう。彼から“酒”の匂いがしたのだから尚更。

 

……主神様はまだいい。神様と人間による禁断の恋は有り得ないから。

 

だが、ロキ・ファミリアといえば……このオラリオでは“二大派閥”に数えられるファミリアだ。

 

それもそうだ、あそこのファミリアは私達のファミリアとは比べられないほどに団員の人数も多い上、多くの第三、第二級冒険者を抱えているファミリアなのだから。

 

「……ハァ」

 

──いや、重要なのはそこではない。

 

誠に勝手ながらも“恋敵”になり得る存在がいるファミリアに、ヴァディムは何度も足を運んでいる。

 

問題はそれについてだ。

 

───ロキ・ファミリアの副団長ごと、二つ名を【九魔姫(ナイン・ヘル)】ことリヴェリア・リヨス・アールヴ。

 

Lv.6という第一級冒険者の中でも上位にいるであろう人物。

 

彼女は、ハイエルフというエルフの中でも特殊な種族らしくオラリオにいるエルフ達からは尊敬の眼差しを集められているらしい。

 

───ロキ・ファミリア所属にて、二つ名を【剣姫】 ことアイズ・ヴァレンシュタイン。

 

わずか一年で、Lv.2にランクアップした最速記録保持者であり……現在はLv.5という第一級冒険者の域に足を踏み入れている。

 

無表情な傾向にある彼女だが、屋台にて売られている“じゃが丸くん”を食べている彼女は僅かながらも顔に綻びが現れる。

 

そんなギャップがいいという声も多いらしい。

 

───ロキ・ファミリア所属にて、二つ名を【大切断(アマゾン)】ことティオナ・ヒリュテ。

 

彼女もまたLv.5という第一級冒険者であり。オラリオ外から来た、アマゾネスという種族であるらしい。

 

……アマゾネスという種族は、強い雄に惹かれる本能を持つと聞く。

 

彼女の姉であるティオネ・ヒリュテは、【勇者(ブレイバー)】に恋心を抱いているという事もありそれは嘘では無いだろう。

 

……今はまだ大丈夫。だが、この都市でも随一を誇るLv.8であるヴァディムに惹かれるという可能性がある以上要注意だ。

 

今こうしてパッと思い浮かぶだけでも三人だ。

 

しかもその三人とも、美貌さという部分では誰にも負けないであろうモノを持っている。

 

そう考えるとますます焦燥を煽られるものだ。

 

「……焦り過ぎては駄目。しっかりして、ナァーザ・エリスイス」

 

あえて、自分のフルネームを口に出すことで思考を客観的なソレに導くようにするナァーザであった。

 

 

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