純魔、生命力と持久力は10(仮題)   作:ゆさき

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素性は密使。勇者じゃない

 

 待遇だとかはさほど興味なく、足元の魔法陣を見分してる間に、報酬の打診はこれから王に謁見し直接行え、との話しになっていたようだ。

 狭間の地でさえ、自身の使命が放棄気味になっている。それを一方的に呼ばれた世界でまで他人の意思に従って動くのは、正直やる気がない。あと単純に、その辺の雑魚でもうっかり一撃貰うと死ぬ事さえあるのだ。高火力でぶっ放すのが大好きでも、戦うこと自体はあまり好きではないのだから、仕方がない。

 

 得物、もとい、現在未知の魔術に詳しそうな連中は、皆宮仕えの様なので、褪せ人も大人しく彼らの後をついていく。あとできればこの盾が邪魔なので、外す方法などを聞きたい。短剣程度の重さではあるが、服を着ている時点で体重いのだから、不要な物を装備してさえいたくない。

 年若い男三人も、先導するローブの一人も、何か言いたげにちらりと視線を寄越したが、結局何も言わない。

 

 褪せ人は外の景色を眺めているばかりで、自身の方から『なんだ?』と尋ねる事はしない。存亡の危機とか言っていた割には、随分と普通の景色が広がって居る。戦乱の痕が顕著に有る訳でも無く、やべぇ汚染物とかも見受けられない。

 もし、この見える街の外全て真っ赤だったりしたら、流石に笑う。そして泡を吹いて死ぬ。真っ白でも発狂して死ぬ。どうしようもない事を思考して居る間に、目的地にたどり着く。

 

 正直、簡素な濃紺のローブに緋色のストールを垂らし、優し気な女性の石像頭部を被っている人物に一瞬ぎょっとする。頭部が精巧な分、頭身に違和感を抱いて不気味に感じるのだ。灯りのない夜道では絶対に出会いたくないタイプの生命。

 本来この世界で異質な筈の装いをした三人より悪目立ちしている。

 

「……ほう、こやつ等が古の勇者達か」

 

 玉座から見下ろす男に、褪せ人はぼんやりと考える。この王は世界の王なのか、この土地の王なのか……ちょっと回帰性原理使ってみようかな……など。そしてある可能性に気づく。まさかボク、人妻好き?

 

「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ顔を上げい」

 

 誰も下げていなかったので、特にアクションはない。

 褪せ人は相変わらず関係のない事を思考し続けてる。王の語る事情にあまり興味が湧かなかったのだから、仕方がない。この世界を見てるナニカも、改善したいのではなく、ストレートに終わらせたいだけかもしれない。

 金銭的援助も、特に欲しいと思わない。もし、報酬に魔術の探究援助だとか、ものすぅっごい性能の杖をくれるとかなら、頑張ったかもしれない。いや、装備品がどうしても欲しかったら相手を殺して貰うから、報酬に成りえるのは知識だろうか?

 

 問題は先程浮かんでしまった疑惑。人妻好きかも知れないという事。自分自身に良く問いかけてみても、レナラさんやタニスさんに興奮した事はないな、で落ち着く。むしろ、元お師匠さまの体、とかの方が興奮する。よし。ボクは正常だった。 

 

「名前、聞かれてますよ」

 

 己の正常性を確認し安心した褪せ人を軽く突く者が居る。緊張を滲ませながらも、不審者感満杯の褪せ人に声を掛ける、弓を携えた儚げな少年が居る。確か樹と名乗っていた。

 

「え、ああ、ありがとうございます。ボクはセレッソ。見ての通り魔術師です」

 

 周囲からは何とも言えないざわつきが。横からは「え、マジの?」「コスプレではなく?」などの言葉が聞こえる。

 

「まあ、もとは密使だから、魔術師歴浅いですけど。お師匠さまは『我が弟子』ってよんでくれますんで、『マジ』の魔術師のはずです」

 

 ぎゅるん、と輝石頭に振り向かれこそりと呟いていた勇者達は半歩引く。

 

「みっし?」

 

 引きつつも三人の中で年長者らしい、元康という青年が首を傾げる。

 

「そーですよ。教会所属でした。信仰心はなくなっちゃいましたけど」

 

 笑い話のように左手をひらひらしながら語るが、どうも釈然としない顔をする。

 そしてふと、揺れる褪せ人改めセレッソの左手に視線をやり、軽く眉を顰める。その訝しむ視線に気づいた当人は、すっと手を背の後ろに隠した。 

 

「ふむ。レンにモトヤスにイツキか」

 

 眼下でわちゃりとやり取りをする連中を一頻り見回し、ひとつ頷く。

 自身の名が呼ばれなかったことを、『勇者』にカウントされなかったな、と断じセレッソはひっそりと安堵する。褪せ人の勇者を見かけた事があるが、ああいう戦い方を出来る自信がない。

 戦士の末裔だというのだから、正しい姿はそちらなのかもしれないが。出来ないもんはできない。

 

「では皆の者、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰いたい」

 

 それが何か良く分からないが、セレッソは自身の客観視は出来ている心算だ。一発どつかれると死ぬ柔らか非力魔術師だ。

 

「えっと、どのようにして見るのでしょうか?」 

 

 おずおずとしつつも、素直に尋ねる樹に、どこか呆れたように錬はふんすと言う。

 

「何だお前ら、この世界に来て真っ先に気が付かなかったのか?」

 

 彼の説明する、視界の端に映る妙な物へ意識を向ける。

 

「Lv1ですか……これは不安ですね」

 

「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からねぇな」

 

「というかなんだコレ」

 

「勇者殿の世界では存在しないので? これはステータス魔法というこの世界の者なら誰でも使える物ですぞ」

 

「そうなのか?」

 

「……」

 

 同じく、中空に現れたものを確認しているらしい者達が口々に所感を語り、熱心に確認する中、セレッソは首を傾げる。

 

■■■

 職業 エ盾ルのデ勇の者王 Lv■■■

 装備 スモールシールド(伝説武器)

    魔女の輝石頭

    レアルカリアンローブ

    魔術師の腕巻き

    魔術師の脚巻き

 ス戦キ技ル 無し

 

 魔祈魔祷術法 記憶

 

 何というか、物凄くもじゃもじゃとしている。しっかり文面として認識できるところもあるが、文字が重なりあい元の形が分からなくなっている。

 

 まあ、良いか。と考えるのを早々に止めた。ルーンを力に変える時に、感覚で判断すれば……。

 

「あ。祝福見かけてないな」

 

 これはもしたとうとう見限られてしまったのだろうか? 使命に関してはうっちゃり気味だったが、師匠とあれっきりになってしまうのは、非常に困る。

 

 祝福が見えなくなってしまい、他所の世界に棄てられてしまったのだとしたら、是が非でも、どんな方法を使ってでもこの世界で狭間の地に戻る方法を見つけるか、大いなる意思を直接爆発四散させる手段でも探さなければいけないかもしれない。

 




セレッソ

別の土地の言葉ではシリエージョ。花の名前が付いているが、自認は男。
師匠が好き過ぎて、最後に見た師匠の体に似せて産まれ直している現在女性体。気持ちが悪い。
師匠が好き過ぎて、セレンの原輝石を食べようとした。ぎりぎり口に含む位で踏みとどまった。それでも十分気持ちが悪いが。
雑魚メンタル。ストレスを感じると爪を噛み、指先が血まみれになっている事が多い。みっともないので最近は意識して気を付けている。
フィジカルも雑魚。大抵の攻撃は一発当ると死ぬ(狭間の地基準)。服を着るだけで体が重く感じる。
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