らりるれろ!様からのご相談、ありがとうございます。
ーーーこちら退魔課です。どうされましたか?
「突然すいません、実はポストに変な編み物が届くことがあるんです」
ーーーそれは貴方の意思で買ったとかではなく?
「編み物系の服とかはよく通販サイトとかで頼んだりすることもあるんですが……その編み物は何といいますか」
ーーー続けてください。
「編み物の触り心地というか素材ですかね? それが今まで頼んでた編み物と違うといいますか、いつも頼むのよりも高級な感じというか。何なら梱包もされて無くて、そのまま直接ポストに入れてあったんです」
ーーー直接?保管方法は?
「そのままにして部屋に置いてます。ストーカーの線を追ったんですが、帰り道とか人の気配はありませんでした。友人に相談したら、念の為にそちらに相談した方が良いと言われました」
ーーーなるほど。正体不明の物品は気になりますね。職員を向かわせますので住所を教えてもらっていいですか?
「『個人情報なので非公開』です」
ーーーありがとうございます。現地の職員を向かわせますので少々お待ちください。
「うーん、シルク製のマフラーですね」
「素材も異種族産の物でもなく、現地の蚕を使った高級品…………いや、高級品を他人のポストに入れるか?」
「写真とか撮ってる?これが入ってた時のポストの」
「いや、無いですね」
10分もしないうちに退魔課職員を名乗る3人が相談者の家にやって来た。
見た目はスーツの、いかにも役人と言った風体あるせいかやたらと真面目に白いマフラーを真面目に観察していた。
相談者からしたら謎の機械を持ち出してくまなく検査をしているが、彼ら曰く何の異常もないらしい。
「どうします?うちの管轄で預かってもいいですけど、本職に問い合わせた方がいいかもしれませんね」
「本職じゃなくて警察。いやすいません、異種族にはよく関わっても対人はあまり経験がない部署なので」
「いえいえ、下手にトラブルになると困るので預かってください」
相談者は退魔課の職員にマフラーを預けた。誰かが間違って入れたとしても、公的な組織に預けたと言い訳すれば何とかなるだろうと言う打算も含まれていた。
実際、悪い噂は聞くもののSNSで活動が乗ったり(すぐ消されるが猛者が保存してる)しているので対応自体は真摯に行なっている。
その評判を信じて相談者はマフラーを預けた。
ついでに退魔課の職員から『おまじない』をしてもらい、その日は終わった。
その後は何事もなく相談者の日常は続いた。
それもその筈、その裏でことは起こっていたのだから。
かさり、かさり。
部屋の隅で動く小さな影。日常生活を送る相談者が気にも留めない小さな生き物がそこに居た。
八つ足、複眼、しかし体は白い突然変異のような蜘蛛だった。
事の発端は初めて編み物が届く1年前。
相談者は新しく借りた少し古ぼけた賃貸の部屋の掃除をしていた。埃っぽいところを拭いたり掃いたりして部屋を綺麗にしようとしていた。
そこで棚の上の天井の板が少しズレていたことに気づき直した。
これがきっかけとは夢にも思うまい。
前の住人が黒魔術をやっていたらしく、天井に魔法陣を描いていたのだ。
だが、変な噂を聞いた大家が儀式の最中に現れて部屋を汚しまくった住民を追い出し、天井もいろいろな大家が手段を使い掃除した。
だが、落書き、否、魔法陣はうっすらと残っていた。老朽化に伴って地震が起きた際にずれた結果、儀式にかかる時間が延長し続けていたのだ。
その結果、今秋の相談者が天井の板を戻したことによって儀式が再び進行し始め、蜘蛛が召喚されたのだ。
純白で、小さい体に偽装して本命を狙う狩人が現れたのだ。
せっせと頑張って作った贈り物が拒否されていないため、受け入れてくれると思い込んでいるが、残念なことに儀式を始めた当人ではないという致命的なすれ違いが発生していたりする。
なお、儀式を始めた者の目的は世界の混乱であり、召喚された蜘蛛は番探しで来ている。
蜘蛛は召喚された魔法陣を通じて巣作りを終えていた。
後は相談者を連れ去るだけまで準備が終わっていたのだ。
夜も深い丑三つ時、メキメキと小さき蜘蛛から元の大柄な体へと戻っていく。
そう、古い家の床板を抜いてしまうくらいには。
『キャアアアアアッ!?』
「うおあああああっ!?」
ずどん!と大きな音と誇りが舞い上がる。
ちょっとした地震に見舞われたように建物が大きく揺れる。
全員が混乱した。幸いなことに下に住人が居なかったため怪我人が出ることは無かった。
「な、何が起こった!?」
「建物、脆イ…………」
「何だお前!?」
依頼人がクッションにした柔らかいナニカ、それは女性だった。
いや、正確には上半身が全裸で白髪の女性で下半身が大きな蜘蛛が引っ付いている怪物なのだが。
「エヘヘ、失敗シチャッタケド、これデ一緒」
「え、ちょ、前を隠して!?」
ワタワタと暴れる相談者だが力が強い人外相手には無力である。
抵抗空しく連れ帰れるか?やっと番を捕まえた気分良くしている蜘蛛女は帰り未知である天井を見上げた。
「ア」
天井が壊れていた。
それを意味することは帰り道を失ったということ。
部屋を壊した際に天井の一部が崩落し、儀式に使われていた魔法陣が壊れてしまっていたのだ。
蜘蛛女だって馬鹿ではない。自分が出てきた魔法陣は暗記しているしどんな素材で作ったかも理解している。
だが、奴らが来るまでの時間に完成する事はできない。
「対魔課ダコラー!」
「(天誅)スッゾコラー!」
「変なミームに犯されるなお前ら!正気を保て!」
「突入ー!」
白装束の対魔課が一斉に部屋に入ってくるまで数分も掛からない。
一度相談があった場合、しばらくマークするのが彼らの仕事。取り越し苦労ならいいが万が一が当たれば大事なのだから。
そして10分後、蜘蛛女は相談者を抱えたまま暴れたが制圧されることになる。
『今回の被害者』
賃貸や私物を壊された事でしばらくパニックになった。
後で部屋の事情を知ると「家賃が安い理由はそれか」と頭を抱えた。
流石に別の物件を探し、何の後腐れもない部屋に住むことになった。
大家とは普通に裁判になった。
『蜘蛛女』
異世界産の魔獣的存在。ただ、人間のような知性もあり独自の修正として気に入った相手に贈り物をし、一定数受け入れられたら連れ帰り子作りする。
対魔課にボーで叩かれて魔法陣を再現され送還されたが未だに人間界進出を狙っている。
『大家』
事故物件の事を話していなかった。都合の悪い部屋に少し安くしてでも入居者を募ったことで相談者と裁判になった。もちろん負けた。
あなたの