流行りに乗るなら今しかないと思って投稿です。
祠、それは先祖や神様を祀るために作られた小さな社。
地域によって各々の信仰が根付いており、その祠に封印されているのはさまざまである。
一般的には手入れされていたりするが、一部では忘れられていたり恐れられていたりで手が加えられないこともある。
「いやー、山登りなんて久しぶりですね!」
「最近は仕事で有給が溜まりまくってたからな。流石に処理しようって話で無理矢理とってるわけだが、あいつら大丈夫かねぇ?」
「大丈夫でしょう。何せ『ニシムラ』さんと『あの男』が珍しくタッグで出張ってるんですから」
男3人、むさ苦しいかもしれないが共通の趣味が登山ということで旅行に来ていた。
対魔課はとても忙しい分、給料もいいし福利厚生も充実している。
その分だけ大変な仕事なのだが、公務であるため有給は存在する。ブラック企業のような有給隠しも出来ないため、取らざるを得ないのだ。
人手が少なくなるのはいただけないが、公務なので頑張って欲しいものだ。
それはそれとして、隠れた名所とされている山へ彼らは向かっている。
途中まではバスで、あとは徒歩と旅の醍醐味を堪能して仕事のことを今は忘れて楽しもうとしていた。
「お前、あの祠壊したんか!?えらいこっちゃ、『ヤマノテ』様がお怒りになるで!」
とある村を横切る際に聞こえた声によって足を止めるまでは。
「えらいこっちゃ、このままやと大変なことになるで!」
「じいちゃん、壊したのは悪かったけど何が居るんだ?」
「『ヤマノテ』様や!えらいこっちゃ…………」
「その、山の手様ってやつは何が起こるんだ?」
「祟りや!」
「どんな祟りが起きるんだ?」
「祟りや!」
「だからどんな祟りだって!?」
「『ヤマノテ』様の祟りや!」
話は平行線、その祟りやらが起こるにあたって祠を壊したとされる青年を閉じ込めようとする老人が3人の視線の先に居た。
尋常じゃない空気。明らかに何らかの迷信を信じ込んでそうな狂信っぷりを見せられたらドン引きして関わろうとせず変な村があると考えて近寄らないだろう。
だが彼らは普通ではなかった。
「すいませぇん。ここの山を登ろうとしてたんですけど何かあったんですか?」
「ここら辺は調べてたんですけど、怪しい者でもありましたか?」
「何やお前ら、とっとと帰ってくれ!」
「いやあ、そうも言ってられないんですよね」
そう言って3人は胸ポケットから一つの小さな紙を取り出す。
怪異あるところに彼らあり。例え迷信であろうと異界からの魔が堂々と出歩くようになった世にこそ彼らがいる。
「どうも、退魔課の者です。お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
どの界隈にも専門家が存在する。
せっかくの休日でも人類を守るために彼らは戦い続けるのだから。
「応援はあと20分で来る。俺たちはそれまで持ちこたえるんだ」
「はい、準備はできていますが、山の神相手にどれだけやれるんですかね」
「龍脈を吸った蛇の置物も3人で足止めしたんだ、可能性を信じろ」
登山家の装いから一転、退魔課職員特有の白装束に着替えた彼らは山を登っていた。
いつ、どのような怪異に立ち迎えるよう装備を着用している。
退魔課というある種の悪に立ち向かう以上、稀に報復があったりするため日常生活も予断を許さず、いついかなる時でも最低限の戦闘を行えるように準備してあるのだ。
退魔課の人間と見分を明かした後、老人から事情を聴いても「祟りや」としか言わず詳しい内容を一切明かさなかったのだ。
これは他の村人も同様で『ヤマノテ』と呼ばれる祠に住んでいた、もしくは封印されていた存在のことを「祟りが起こる」ということしか知らなかったのだ。
その後の対処はどうするのかと聞いても若者を部屋に閉じ込めてじっと耐えるだけ。
他の対処法も無し、まるで生贄に捧げるために獲物を置きとどめておくようなものしか出来ていなかった。
そして何よりも彼らがそれに一切の疑問を持っていないという事。
過去に祠が壊れた際に何をしたのかを聞いても何も分からず、むしろ何も覚えていないような有様であった。
「これはやっぱりアレですかね」
「ああ、近年流行りのアレだな」
「無駄に手が凝ってるだけ発覚しやすいだけマシですけどね」
「「「祠壊した詐欺」」」
ここ最近、異種族が人間を合法的に連れ去る手段を模索する中で流行っている手段の一つである。
こっそり土地の権利を購入してから古ぼけて壊れやすいよう加工した祠を立て、たまたま近くを通りかかった人間を様々な手段で誘導、不注意を誘発させて壊させては下山した後に近くの村人もしくは親戚から祠のことを聞かせて一部に押しとどめた後に迎えに行く、といった方法である。
なお、近くの村人もしくは親戚の祠に対する認識は記憶改ざんを行って『祠を壊した人間を捧げる』ことで怒りを鎮めようとするため非常に悪質な部類に認定されている。
異種族はしっかり土地を購入して建物を立てて、それを壊されたので賠償金扱いで人間を連れ去る合法的手段と認識されていることが多いが、普通にダメな行為である。
「さて、最近は蛇だったり狐だったり木の精が妖怪化したのが報告多かったですもんね」
「たまにマジモンが混ざってたりするからな。だけど、今回は周囲が詳しいことを知らない時点で黒なのは間違いない」
「レアケースは吸血鬼でしたよね。何で日本文化に詳しんでしょうね」
「人間の文化を知ってから取り込もうとしてるんでしょ。力のない人間が可愛く見えてるんでしょ」
「だから毒を持った伏兵が現れたりするのを学ばないのか奴らは」
ため息を吐きながら彼らは山を登り続ける。
休暇で山登りするのは苦ではないが、仕事で登るのは話が違う。面倒と使命と被害が減らないやるせなさで心の疲労がたまっていく。
そして、若者が壊した祠に彼らは到着した。
確かに祠がある。成人男性の腰よりも小さく、苔むした装用を見せているが人工的な不自然さが彼らの目には僅かに残る。
「よし、とりあえず周囲調査だ。情報は命綱だ、何が潜んでるか分からない」
てきぱきと祠の周囲をロープで囲み、可能性の一つとして祠から何かが飛び出しても問題ないように結界を構築する。
「確かに魔力は満ちてるんですけど、これだけ満ちてたら近くにいるかもしれませんね」
「それか、巨大すぎて俺たちが気づいていないだけとか」
「冗談はやめてくれよ。『ヤマノテ』ってネーミングからどう考えてもデカそうな奴だが…………」
言われてみれば確かに、名前に比べたら祠が小さすぎる。祠詐欺を目的としているなら小さくても問題はないが、それはそれで名前負けしている感じはぬぐえない。
周囲の調査をしても気配が物凄い濃いということ以外何もない。
そしてずっと視線を感じる。間違いなく見張られていることを前提として動き回ってみるが反応がない。
そろそろ応援部隊が到着すると思い太陽の位置を確認しようとした時だった。
「あ…………」
「どうした、何かあったか?」
「しっかし何も見当たらないですね。魔力をこれだけ満たしてるってことはテリトリーを主張してるんですかね」
「……………………そりゃあ見つからない訳だ」
「何を言って…………」
彼も空を見上げた。
そこには青空と女性の顔があった。いや、正確には体が土くれでできた超巨大な女性だ。
「…………なるほど。『あの男』呼べる?」
「…………圏外になってますね。思ったよりヤバいかも」
「……………………これ応援部隊が状況判断してくれることに賭けるしかないですね」
「「「ハハハ…………」」」
そして、超巨大な女性が彼らに手を伸ばす。
巨大な土の手、まさしく『山神の手』といったものが彼らに迫ってくる!
「「「逃げろおおおおおおおお!」」」
3人は全力で逃げた。彼らの明日は応援部隊にかかっている。
頑張れ退魔課、負けるな退魔課、休日でも人類の命運は君たちの手にかかっている!
この後、『あの男』が全部対処しました。
『祠を壊した若者』
近くにたまたま帰省していた青年。祖父が所有している山の様子を見に言ったら誘導されて巧妙に隠されていた祠を蹴飛ばしてしまった。
たまたま山登りに来ていた退魔課職員からお札を渡されて結界を張っていた。
すっごい地揺れがしたけど無事に朝を迎えられた。
『じいちゃん』
ある意味被害者。誘拐の片棒を担がされそうになった。これに関しては村人全員がそうなので事件解決後に退魔課によるメンタルケアが行われた。
『だいだらぼっち(女型)』
若い子が好き。遊びたかった。『ヤマノテ』という呼び名は近くの村の失われた伝承だった。
ここ最近はずっと寝ていたが、良く飛び交ってるテレパシーを傍受して「祠詐欺」なるものに興味を示して起床、実践してみた。
たまたま来た退魔課の3人を遊び相手と認識して手を伸ばした。
巨大ロボにボコられて泣いて常識を叩き込まれた。
『あの男』
巨大ロボに乗ってボコした。巨大ロボの制作者でもある。
単身でも「だいだらぼっち」をボコせる可能性があると職員が噂をしているが、彼を止めようとするなら「だいだらぼっち」では何の足しにもならない。
『山登りが趣味の退魔課職員3人』
振替休日を貰えた。
あなたの