パンジャンの悪魔   作:ひなりむ

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パンジャンドラムって知ってる?

 今日はいい天気だ。

 空には雲ひとつなく、小鳥も鳴いている。

 こんな素晴らしい日にはやはり、庭で紅茶をキメるのが一番だ。

 

 ☆○☆○☆

 

 春先の気持ちのいい昼というのは、なにものにも替え難い素晴らしい時間だと私は思う。

 

 ケトルで湯を沸かしながら、今日高校を遅刻した言い訳を考える。

 

 昨晩は、早めに寝たはずなのだが、今日起きて時計を見てみれば11時。

 日頃の疲れが祟ったのだろうか? 

 

 ポットとカップにお湯を注いで、捨てる。

 

 いや、昨日もだらけて1日を過ごしただけで疲れるようなことはしていない。

 

 あらかじめ温めておいたポットに茶葉を入れ、沸騰したてのお湯を注いで蓋をする。

 

 4分間、しっかりと蒸らしながら、原因を探るが思い当たる節は何もない。

 

 ポットの中をスプーンでひとかきしたら、カップに丁寧に注いでいく。

 

 そういえば、昨日は寝室で寝たはずなのに、目が覚めたのはソファーの上だったな。

 

 カップを左手に持ち、立て付けの悪くなった扉を開けて庭に出る。

 

 それにしても今日はいい天気だ。

 太陽の光線が体に刺さるのがなんとも気持ちがいい。

 パジャマのままだが、自分の家の庭だ。誰かが見ているわけじゃない。

 

 椅子に座ると、ふわりと紅茶の香りと共に春の香りを感じる。

 

 菓子などない、砂糖もミルクも入れない。

 香りのいい紅茶をストレートでキメる。

 段々意識もはっきりとしてきた。

 万能感が身を包み、身体中に紅茶が巡っていくのがわかる。

 

 やはり、紅茶は完全飲料だ。

 

 

 ☆○☆○☆

 

 紅茶を片付けた後、色々考えたのだが、今日は学校には行かずにデビルハンターの仕事に行くことにした。

 

 何を隠そう私は学生でありながら、デビルハンターでもあるのだ。

 契約している悪魔は【紅茶の悪魔】、最高だ。

 私にぴったりの悪魔だとは思わないだろうか。

 

 いや、私以外にこの悪魔と契約できる人間なんて、いないんじゃ無いだろうか。

 もはや、私のためにいる悪魔の言ってもいい。

 

 とはいえ、そんなに強い悪魔ってわけじゃない。

 せいぜいが、紅茶でドーピングして身体能力を上げる程度だ。

 

 雑魚悪魔を見つけて倒すのが仕事ということになる。

 

 だが、そんな雑魚悪魔でも、かなり稼ぐことができるのは楽だ。

 

 下手に働いて稼ぐよりも、何倍も簡単に、何倍も稼げる。

 多少命の危険はあるが、そんなのはこんな時代、デビルハンターをやってなくても同じことだ。

 紅茶を買うには金がかかるのだ。

 

 パトロールと称して路地裏を歩いていれば、いた。

 大きさは、2メートルほどだろうか。

 まだ、気づかれていない。

 

 足元には白い砂のようなものが足跡のように散らばっている。

 ひとつまみ、口に入れてみる。

 

「甘い」

 

 こいつは……、砂糖の悪魔か? 

 この悪魔は必要ないな。

 

「私は、紅茶に砂糖は入れない派なんだ」

 

 ポケットから、パン切り包丁を取り出す。

 研ぎすぎて、既にパン切り包丁などとは呼べな異様な、切れ味になっているのだが。

 

 朝飲んだ紅茶がまだ、私の体の中を回っている。

 

 対象までよ20メートル。

 一歩、踏み出す。

 

 今頃悪魔はこちらに気がつき、振り向いたようだが、もう遅い。

 

 初めの一歩で、20メートルの距離を縮め、パン切り包丁を振りかぶって、振り下ろす。

 

「ギコギコは、しまs──。いや、やめとこ。これダサすぎるわ」

 

 英国淑女はクールでいるべきなのだ。

 

 うまく悪魔も倒れたわけで、これで学校への言い訳も完璧かな、なんて考えながら、死体の回収を請け負ってくれる業者に電話する。

 路地裏から出て、平日の昼の人通りの少ない大通りで伸びをしてみる。

 腕時計を見てみれば、時計は3時を指しており、アフタヌーンティーの時間だ。

 

「アレ、いくらで売れるやろか」

 

 売れたら、なんの茶葉を買おうか。

 久しぶりに高級店で淹れてもらうのも、アリかもしれない。

 そんなことを考えているときだった。

 

 ドーンッ! と交差点のあたりで車がひとつ爆発した。

 

 よく見てみれば公安のデビルハンターが戦っている。詰まるところ、公安が駆り出されるほどに強い悪魔ということだ。

 とはいえ、公安も戦い慣れているようで、もうそろそろ勝ちそうだ。

 

 今砂糖の悪魔を倒したばかりだというのに、また新しい悪魔がいるなんて、悪魔も1匹見たら100匹いると思え、というやつだろうか。

 

 アレは、クワガタの悪魔のようだ。

 全長4メートルほどの悪魔で、凶悪な(ハサミ)を持っている。

 私が勝てるわけも無いので、ここはさっさと退散させてもらおう。

 

 ふと、クワガタがこちらを向く。

 

「オイオイオイ、まじか」

 

 自分でも勝てそうな人間を喰って回復するつもりだろうか。

 

 こちらにターゲットを変えたクワガタは思っていたより何倍も速いスピードで近づいてくる。

 

 スーツを着たデビルハンターがこちらを見ながら何か言っているようだが、もはや目の前に迫る悪魔の足音で聞こえるはずもない。

 

 眼前に迫った(ハサミ)に、私の中で走馬灯が浮かぶ。

 あまりにあっけない死に方だ。

 この世界に生まれ落ち、この世界で生きた記憶。

 

 

 意識を自分の中に向ける。

 

 

 

 私の知らない力を、私の中に感じた。

 

 

 

 私は、それを解放するだけ。

 

 

 

 

 

 

 

「進め、パンジャンドラム」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆○☆○☆

 

 深夜2時、とある悪魔がこの地上に降り立った。

 

 辺りを見渡せばそこは、古びた屋敷の庭のようだった。

 

 大きな屋敷の割には手入れがされておらず、庭の雑草も抜かれていない。

 

 人がいないのなら好都合だ。

 

 悪魔は当面の拠点とするために屋敷を探索することにした。

 埃だらけの書斎。蜘蛛の巣の張ったガラス。動いていない振り子時計。

 床の軋む音を聞きながら、人気の無い廊下を進む。

 

 探索を始めて10分ほど経っただろうか、悪魔は扉の前に立つ。

 

 ここが最後の部屋か。

 

 扉を開くと、そこは寝室のようで、大きな天蓋付きのベッドが目に入った。

 

 近づいてみればなんと、そこには人間が眠っていた。

 

 人間だ。それも若い。

 

 桃色の長い髪を持つ女の人間だ。

 

 こいつはいい、こいつを喰えばさらに強くなれる。

 

 ──本能が警鐘を鳴らしている。

 

 腹が減ってるんだ。

 

 ──本能が腹を満たせ(ニゲロ)と言っている。

 

 食べやすそうな柔らかい腕から喰おう。

 

 かぶりついた瞬間──

 

 

 

 

 その悪魔は、パンジャンドラムの悪魔。

 

 

 

 

 

 




やぁ!なんとか一話を書き切ったユカリサンカワイイヤッターだよ!
続くかわからないけど、頑張ったから褒めてくれてもいいよ!
罵倒されると泣いちゃう。
俺の方が上手く書けラァ!って言って、誰が書いてくれないかな?
読むよ。めっちゃ読むから!

はずみで書いてみたんだ!行けるとこまで書いてみるわ!
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