ブルーアーカイブ ~先生は「ブラックライダー」~   作:クラウディ

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プロローグ

 ……貴方はその力でどこへ向かうの……

 

 皆を助けるため……? それとも死にたくないから……?

 

 ……貴方のことだから、きっと皆のためだよね……

 

 だって、貴方はどんな時でも私たちのために走り続けてきた……

 

 全てをのみ込む暗闇に向かって、足がもつれても、体が軋んでも、走るのをやめない……

 

 だけど……その体は悲鳴を上げてるって、貴方も分かっているはず……

 

 私達が止めたとしても、貴方は走るのをやめないのでしょう……

 

 ならせめて祈らせてください……

 

 

 

 帰ってきて……「ブラックライダー」……

 

 

 

 「先生」……

 

 

 

『任せろ。超特急で終わらせてくるからさ』

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

 

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

 

 

「……私のミスでした」

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこのすべての状況」

 

 おぼろげな意識の中で繰り返される誰かの言葉。

 自身が目を開けているのか起きているのかすら分からないそんな状況で、誰かの声が響く。

 

 助けを求める声……?

 ……いや違う。自身の失敗を嘆く声だ。

 取り返しのつかないことが「起こってしまった」ことを嘆く声だ。

 そして……誰かに対しての謝罪だ。

 

 意識が途絶えそうになるのを食い止め、目の前にいるであろう誰かを認識し……言葉を失った。

 

 左胸は鉛弾によって撃ちぬかれ、その白い制服が血によって真っ赤に濡れている。

 

 それを見て動こうとしたが、脳裏によみがえるノイズ交じりの映像に立ち上がるのをやめてしまう。

 

 頭上に浮かぶ円環を持った少女……撃ちぬかれてもう動かないタブレット……知らないのに既視感が溢れるという奇妙な感覚に腹の奥底から何かが逆流しようとしていた。

 だが、それを無理矢理にでものみ込み、語り掛ける少女を見やる。

 

「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかった事を悟るだなんて……」

 

 彼女の言葉から感じ取れるのは、もう手遅れなのだという諦めの感情。

 しかし、そこにはわずかばかりの希望が存在していた。

 

「……今更図々しいですが、お願いします。――先生」

 

 その言葉に、心のエンジンに火がともるのを感じる。

 強大な存在に絶望して助けを求める者に頼まれた……

 

 なら――

 

 

 

「――任せろ。超特急で終わらせてくるからさ」

 

 

 

 走り続けなくて(立ち上がらなくて)どうする。

 

 その言葉に、目の前の少女がうっすらと笑ってくれた気がした。

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。何も思い出せなくても、恐らくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから。ですから……大事なのは経験ではなく、選択。あなたにしかできない選択の数々」

 

 彼女の言葉を背に受けながら、自身は出口へと向かう。

 今は無理でも……そう、「スタートライン(過去)」からならなんだって始められる。

 

 この場所にいられる時間も、あと少ししかない。

 

 なら、いつものように「超特急」で行くべきだろう。

 

 それが自分にできる最善"最速"の選択なのだから。

 

「責任を負う者について話した事がありましたね。あの時の私には分かりませんでしたが……今なら理解できます」

 

 「責任」……あぁ、わかってる……。

 こんな「力」を持ってるからには責任なんていつまでも付きまとってくる。

 そして、俺は()()きる「先生」だ。

 

「大人としての責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。それが意味する心構えも」

 

 心構えなんて高尚なもんじゃない。

 ただ、決めたことは曲げない主義だっただけだ。

 そんなことを苦笑い混じりに言っても、もう意味はないだろう。

 

「ですから、先生。私が信じられる大人である、あなたになら、この捻れて歪んだ終着点とは、また別の結果を……。そこへ繋がる選択肢は、きっと見つかるはずです」

 

 捻じれて歪んでしまった……もう戻せないほどの結末は、おそらく俺に引っ付いてくるはずだ。

 それがどんな形になるかは……分かるわけがない。

 でも、もう分かってるだろ……俺。

 

 俺は最速で最高最善のハッピーエンドにするために突っ走るだけだ。

 

 世界レベルの問題を俺が解決できるか?

 

 いや違う。

 

 

 

――やってみせるんだ。そうだろう?

 

 

 

「だから先生、どうか──」

 

 分かってるさ。

 

 たとえ皆が救われても、自分が欠けてちゃ意味がないってことを。

 そんな危うい道に踏み込むんだ。

 命がけの遊び(ドラッグレース)より質の悪い本番(レース)だ。

 

 だからこそ――

 

 

 

「行ってきます」

 

 

 

 ふり返ることなく、俺は箱庭へと踏み出した。

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