ブルーアーカイブ ~先生は「ブラックライダー」~ 作:クラウディ
皆様どうもクラウディです!
やっとアビドス編最終決戦前夜が書き上がりました。
次回からアビドス編最終回に向けて全力執筆します!
今回も「カンジロウ」さんから感想をもらっています!
本当に本当にありがとうございます!
それでは本編どうぞ!
「……さて、そろそろですかね……」
とあるビルの一室にて、明かりもほとんどついてない中、一人の人物がそう呟く。
その人物はこの暗い部屋の中に溶け込んでしまいそうなほど全身が黒一色に染められていた。
しかも、それは服装だけでなく本来なら人間味のある肌色をしているべき部分も、真っ黒に揺らめいている。
――そんな男の名は『黒服』。
――ホシノにとある契約を持ちかけていた人物だ。
「……この緊張感、久しく忘れていました……」
椅子に腰掛けながらも、彼は今日の日中に起こっていたことを思い返す。
「まさか、
カイザーの侵攻、徹底抗戦、それら穏やかではない単語が並ぶことが日中に起こっていたのだ。
時間は数時間前に遡る……
「クッソ……! 一体どうなってやがる!?」
「こちらアルファ大隊! 隊員の過半数が行動不能! 繰り返す! 過半数が行動不能!」
「あいつら少し前はただの烏合の衆だったはずだぞ!? なんでこんなに、ぐあっ!?」
平穏なアビドスの自治区にけたたましく鳴り響く銃声、それに紛れるようにしてカイザーに所属する兵士の悲鳴が聞こえる様は、まさに「戦場」であった。
「っ……! たかが子供の集まりだろう!? なぜ攻め込めない!?」
「落ち着いてください理事!」
なぜアビドスの土地にカイザーが侵攻してきているのか……それは今まさに通信機に向かって怒声を浴びせる大柄な男――『カイザーPMC理事』が痺れを切らしてしまったからである。
――そもそもとして、アビドスの土地のほとんどはカイザー所有のものとなっている。
そのため、彼らには「自分達の土地で暴れてなにが悪い?」という免罪符を持っていたのだ。
これを利用し、いつまで経ってもこの廃れた土地にしがみついているアビドスの生徒を一斉排除しようと、行動を
その結果がこれだ。
「あ、アルファ大隊の被害状況、壊滅寸前だそうです!」
「ベータ大隊も食い止められています!」
「ガンマ部隊に応援を!! ッ!? ギャァアアアアッ!?」
「どうなってる……!? 『奴等』の情報ならアビドスの連中を叩くなら今だと……!」
アビドスを蹂躙するどころか、カイザー側のほぼ全ての部隊が壊滅的な被害を受けており、もはや敗走寸前である。
数的有利はこちらの方が持っていた、物資に関してもこちらに軍配があると思っていた。
――だが、それが全てひっくり返って今に至る。
「このっ! ぐっ!?」
「突出するな! 陣形を――ガハッ!?」
「シッ! フッ! ハアッ!!」
「姉御! こっちの補強準備完了っす!」
「あいよ! ぶっ放しな!」
「了解! 全員、撃てぇえええええええええ!!!」
ある部隊が担当している戦場では、一人の生徒――『建木ナノカ』が愛用のネイルガン――『パイルドライバー』を乱れ撃ち、カイザー側の兵士の足を止めながら後方の砲兵を担当する部下に指示を送っていた。
「相手の本拠地はすぐそこだ! 畳み掛け――ぐあっ!?」
「ん! 皆の居場所は渡さない!」
「絶対に許さないんだからっ!!」
「覚悟してくださいね~!」
『支援要請が来ました! B班の皆さんは直ちに向かってください!!』
『了解!!』
『アヤネの姉さん! こっちも手が空いた! どうすりゃいい!?』
『D班の皆さんはその場で待機です!』
『了解!』
アビドス高校付近まで侵入したカイザーの兵士達もいたが、シロコとセリカを筆頭に、ノノミの段幕を利用して完全な足止めに成功していた。
後方で情報支援を行っているアヤネは、そのたぐいまれな頭脳を利用して人員の移動を行っている。
「オラオラァ! 雑草根性なめんな!」
「ホシノ先輩のしごきに比べりゃこんなモン、へでもねぇ!」
「いきなりこんな戦場に駆り出されるなんてな!」
「あんま顔出すな! お前らが怪我したら治すのは私らだからな!?」
そんな主戦力を除いた、一般的な生徒達も数は少ないながら統率のとれた行動をしていた。
理解できない、なぜあんな状況からまだ抗えるのか。
PMC理事は怒り、困惑と言った感情が渦巻く頭の中で吐き捨てるように叫んだ。
「っ! なぜ奴等は抗える!? 頼りの小鳥遊ホシノはいない! 明るい未来は閉ざされている!! こんなことをしたところで――!!」
『バーカ、未来は自分達で切り開けるんだよ』
「っ!? き、貴様はぁ……!!!」
「なにも変わらない」……そう言いかけたところで誰かの声が無線機から割り込んできた。
『例えどんなに苦しくても、例えどんなに絶望的な状況でも、前に進み続ければそんな暗闇なんていつか晴れる。でも、それを邪魔し続けようとする奴等はいたりするもんだ』
「気でも狂ったか『遠山カケル』!? こんなことをしてただで済むとでも――!」
『ただで済む? それはこっちの台詞だね!! いつまでも姑息な手ばっかり使いやがってなぁ!!』
今回の作戦で一番の障害であり、アビドス側の最高戦力――『遠山カケル』であった。
『子供から奪い取って、僅かな希望を摘み取り、自分達の欲望のために傷つけるなんてな……テメェら、絶対に許さねぇからなぁ!!』
「!!?? ま、まさかもう防衛線を突破したのか!!??」
「スピィイイイイイイイイイド!!! ブレイカァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
その言葉と共に、カイザー理事達は爆風に飲まれ、意識を失う。
これが、日中に起こった出来事だ。
「……想定していたとはいえ、すさまじい精神力ですね……」
そう言いながらため息をつく『黒服』。
結局、事を急いたPMC理事は有名なことわざの通りに、アビドス侵攻作戦を失敗してしまった。
おそらく数日も経たない内に上層部から失敗を押し付けられ、蜥蜴の尻尾切りよろしく見捨てられるだろう。
「私も、そろそろこの場から離れなければならないようですね……」
せっかくの興味深い対象を手に入れたというのに、このままでは研究どころか全てを失いかねないと判断した『黒服』は、椅子から立ち上がり部屋を出ようとした――
――はずだった。
「よぉ、あんたが裏で手を引いてたやつか?」
「……些か早い到着ですね、『遠山カケル』先生」
薄暗い廊下の先から聞こえてきた声の主に引き留められなければだが。
「どうぞ、お掛けになってください」
「いんや、対した用件でもねぇからこのままで話そうぜ。『黒服』さんよ」
「……やはり警戒されてますね」
「当たり前だろ? ホシノちゃんを唆した挙げ句、カイザーの野郎共と裏で繋がってた奴の言うことなんてな。ブラックが全部教えてくれたぜ? ホシノちゃんにしれっと取り付けた盗聴機の音声データでな」
「……我々の気づかないほどのステルス機能を持った盗聴機……興味深いですが後にしておきます」
そう言いながら、カケルは怒りをこらえたような声色で、『黒服』の提案を断る。
カケルにとっては「大切な生徒」であり、「守るべき仲間」であるホシノを唆し、果てには誘拐したという相手がいるということを、信頼する相棒から直接聞かされており、その張本人が目の前にいることに、今すぐにでもぶちのめしたい衝動に駆られていた。
そんなカケルとは対称的に、冷静に対応する『黒服』の心の中にはなぜ場所がバレたという驚きはない。
「この男ならそれくらいして当然だろう」という確信があったからである。
だからこそ、下手な対応はしないようにしているのだ。
「……あなたのことは知っています、連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在。
「そして、この『キヴォトス』における『"外"の世界』において、カルト組織『ヘブン・オブ・ザ・エデン』を壊滅させた英雄『ブラックライダー』の変身者――『遠山カケル』さん」
「あなたを過小評価する者もいるようですが、私達は違います」
「へぇ……よく知ってるな? もしかしてお前も『エデン』の残党か?」
その言葉を放つと、先程まで放っていた警戒心を膨れ上がらせるカケル。
カケルが「キヴォトスの"外"」でやってきたことは、シャーレの当番の生徒や、セリカ達アビドスメンバーといった信用している一部の者にしか話していない。
だからこそ、カケルはその情報を知っている『黒服』を『ヘブン・オブ・ザ・エデン』の残党、またはそれに繋がりのある人物と判断する。
「……まず、ハッキリさせておきましょう。私達は、あなたと敵対するつもりはありません。むしろ
「……それはなんでだ?」
「隠さずに言いましょう。私達の計画において、一番の障害になりうるのはあなただと考えているのです」
「へぇ……それがどう俺に協力したいって繋がるんだ? そもそも俺はテメェがどんな奴かすら知らねぇし、不公平ってやつなんじゃねぇか?」
「おっと、申し訳ありません。自己紹介を忘れていました」
『黒服』の一挙手一投足を観察しながら警戒を緩めないカケル。
それを知ってか知らずか、淡々と話を続けていく『黒服』。
「私達はあなたと同じ、『キヴォトス』の外部の者……ですが、あなたとはまた違った『領域』の存在です」
「――『ゲマトリア』、私達のことはそうお呼びください。そして私のことはご存じの通り『黒服』とでも。この名前が気に入ってましてね」
「『ゲマトリア』、ねぇ……それに、俺と同じく『キヴォトス』の"外"から来た……」
「ええ、そうです。『
「お前らと同類扱いされるのは御免なんだが?」
『ゲマトリア』という組織に所属していると言った『黒服』は、カケルの反応を見ながら情報を付け足していく。
同類扱いされたことにカケルは顔をしかめた。
そして、『黒服』は本題を提示する。
「一応お聞きしますが、『
「断る」
「……そう言うと思っていました。もし小鳥遊ホシノさんの居場所を伝えるとしても?」
「そのときはテメェをぶちのめして吐かせるからな」
「クックック……これは手厳しい」
カケルの揺るがない態度に、分かりきっていたとはいえここまで曲がらないとなるとどうにも出来ないと判断した『黒服』は、降参するかのように告げる。
「あなたが曲がらないのは知っていました。そしてあなたも、私達がアビドスどう関わってきたのかについて、知っているのでしょう?」
「……正当性は確かにある。合理性もな」
「ならば――」
「だからといって『納得』出来る訳じゃない」
「…………」
「俺は諦めるのが苦手だ。それが例え無謀なことに対してでも。俺は『
「それは、『先生だから』ですか? それとも『ヒーローだから』ですか?」
「んな訳ねぇだろ。俺がやりたいからやるんだ」
黒服の問いかけにカケルはそう答えた。
しばらく互いに無言の時間が流れる。
先に口を開いたのは『黒服』の方だった。
「……なるほど、やはりあなたは『救世主』の器を持っているのですね。……いや、そんな形式張ったものではない、もっと俗的で、曖昧で、稚拙な表現……」
「なに言ってんだテメェ……」
「おっと失礼。つい思考に耽っていました。興味深いものを見せてくれた『返礼』として、こちらをお渡しします」
なにやらブツブツと呟いていた『黒服』の様子に気味の悪いものを見るような目で見ていたカケル。
そんなカケルの姿を確認した『黒服』は、一枚の紙を渡す。
「…………! これは……!」
「ええ。『
「……なんの気まぐれだ? カイザーと繋がってるテメェがこんな重要そうな情報を……」
「気まぐれ……そうですね……『
「! 変な野郎だな、テメェ……ま、ありがたく受け取っておくか」
なんの気まぐれか、『黒服』はホシノが連れていかれた場所の情報をカケルに渡す。
そんな『黒服』の行動に、少し怪訝そうな目で睨み付けながらも、カケルはその地図を懐にしまう。
「あぁ、後もうひとつ、伝え忘れていたことがありました」
「まだあんのかよ……なんだ?」
「遠山カケル先生……ゲマトリアは、あなたのことをずっと見ていますよ」
「ああそうかい。もし手を出すんなら全力でぶっとばしてやるから覚悟しとけ」
こうして、カケルはその場を後にするのであった。
「……よろしかったのですか? 顔を見せなくて?」
『ええ! ええ! やはり成長というものは素晴らしいです!! ……私に気づいてもらえなかったのが些か悲しいですが……』
カケルが去った後、『黒服』は部屋の片隅に声をかける。
そこには一匹の「蜘蛛」が壁を這っており、見る者によっては嫌悪感を煽るような独特な見た目の『蜘蛛』だった。
そんな『蜘蛛』からノイズがかった『声』が聞こえたのである。
『それで、どうでしたか?』
「……あれは目を焼かれてしまうのも仕方ないと思ってしまいますね……」
『そうでしょうそうでしょう!? だからこそ楽しみなんですよ! あんな『油の差し忘れたガラクタ共』を粉々にし、小鳥遊ホシノという『お姫様』を助ける『ヒーロー』の姿!! あぁ! 今からでも彼に正体を告げたい!! 怒りに染まりながらも守るべき者のために冷静さを保つ本能と理性を併せ持つ姿!! そして――!』
「その気持ちは痛い程分かりますが、今は抑えてください――」
「『"ドクター"』」
そして夜は更けていく。
影に「本当の黒幕」を忍ばせて……
Tip!
次回、アビドス編最終決戦
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