ブルーアーカイブ ~先生は「ブラックライダー」~ 作:クラウディ
皆さんどうもクラウディです!
前回のお話が意外にも好評だったので急遽書き上げました!
今回は『ドクター』との戦い、決着です!
今回は「伝説の超三毛猫」さん、「山崎五郎」さん、「探究の大図書館第9柱」さん、「カンジロウ」さんといった多くの人から感想をもらっています!
本当にありがとうございます!
それでは本編どうぞ!
「……始まりましたか」
――カケル達の前に『ドクター』が現れ、その圧倒的な力を見せた場所から数キロ離れた地点にて。
光の柱が昇っていた爆心地を遠くから眺める人影――『黒服』は、そう小さく呟いた。
「お預け」をされていた『ドクター』が興奮のあまり、こうなるだろうということは半ば予想していたが、彼ら彼女らにこの情報を伝えなかったのは些かまずかっただろうかと思ってしまうほどに、遠くで起こっている戦いはすさまじいものだ。
『ブラックライダー』の方は言わずもがな、観測装置を振り切るほどの速度で駆け回り、『ドクター』に猛攻を仕掛けようとしている。
それを黙って受けるつもりはない『ドクター』も腕の一振りで、木の葉を振り払うように『ブラックライダー』を吹き飛ばしていた。
その度、周りにあった建物の残骸は粉々になり、ただでさえ荒廃していたはずの廃墟の街は更地へと変貌していく。
それだけの規模の戦闘を繰り広げている彼らの姿を見ながら、『黒服』は手元の資料に目を向ける。
「……多目的変形機構搭載型パワードスーツ『BLACK』……装着者は『遠山カケル』、年齢は20代半ば。人類の夢である「永久機関」を擬似的に再現した機構――『アクセルブースター』を搭載し、修復に必要な材料があれば半永久的に活動可能。『アクセルブースター』から生産及び、供給される特殊なエネルギー――『エナジーフォトン』を、全身の装甲に張り巡らされたエネルギーパイプ――『レッドライン』によって送り出し、耐性のある人体に供給するとその身体機能を爆発的に上昇させる。最強の『英雄』が身に纏った『鎧』であり、迷える愚者に知恵を授ける『賢者』……」
「……『ゲノミクスチェンジャー』を用いた『ゲノミクスシステム』。特殊な容器――『ゲノムカプセル』へ、生命体に存在するエネルギー――『神秘』を抽出して保存。それを別の生命体へと注入することによって新人類――『ゲノム』を生み出す技術のこと。人体に『神秘』を直接投与してしまえば、耐性の無い者の場合は意識のない「怪物」へと変貌、最悪の場合は
そこに書かれていたのは、世界を壊してしまうほどの『力』についての研究資料だった。
人々を守る「英雄」としての『ブラックライダー』。
人々を弄んだ「悪」としての『ドクター・ゲノミクス』。
その片割れを「同僚」である『ドクター』が使用しているのだ。
『黒服』にとっては頭が痛いどころの話ではないだろう。
「……本来の予定であれば『預言者』をぶつけるだけだったはずなのですが……」
本来ならもっと別の何かを『ブラックライダー』と戦わせるだけの予定だった。
それを提案した上で、今のように計画をぶち壊しているのは『ドクター』自身である。
「……はぁ……」
心底楽しそうに暴れている『ドクター』への恨みを抱きながら、『黒服』はこれから起こり得る事後処理に頭を抱えるのであった。
「フッ!!」
「ッ!? ガハッ!?」
誰かに無理矢理息を吐き出させられたかのような声が聞こえる。
その声の主は、鳩尾に拳を叩きこまれ、地面を転がるカケルからだ。
あの後、『ドクター』が変身した姿――『ドクター・ゲノミクス』の放出したエネルギーの影響により、先程まで快晴だったはずの空は暗雲に包まれ、それに困惑している間もなく戦闘が開始された。
しかもそのエネルギーはただ暗雲を呼ぶだけではなく……
『右に回避しろ!』
「ッ! うおわっ!?」
「先生! このっ!」
「危ないシロコ先輩!」
周囲一帯に迸る赤い落雷となって、カケル達に襲い掛かってきていた。
あまりにも理不尽な力に、いつもは冷静なブラックですら悪態をつく。
『クソッ! おいカケル! 奴はあの時とは比べ物にならないほどの『神秘』を吸収しているッ!! 下手に近づいたところで叩き落されるのがオチだ』
それほどまでに膨大なエネルギーを持つ『ドクター・ゲノミクス』と、いくらキヴォトスの住人以上に強いとはいえ、一人の人間と高性能なパワードスーツが合体しただけの『ブラックライダー』の間には圧倒的な力の差があり、カケル達は終始押されてしまっている。
幸いなことに、シロコ達が動こうとしても彼女達に落雷が直撃するようなことはなく、しかし膨大なエネルギーによって引き起こされた嵐によって、その場から動くことができないでいた。
「このっ、きゃあっ!」
「セリカちゃん後ろに下がって!! つぅ……!」
「風が強すぎてドローンが飛ばせないです……! 先生の援護に行けません……!」
「私達の攻撃もエネルギーに防がれて届いてないみたいです……!」
それでもと、カケルの援護をするために『ドクター』へ攻撃をするのだが、相手はカケル程とはいかないまでも、目で追い切れない速さで動いているためどうすることもできない。
「グッ……! ガハッ、ゲホッゲホッ……! クッソ、強えな……!」
「お褒めにあずかり、光栄です。そういうあなたも、更に進化した『ゲノミクス』に追いつけている辺り、流石と言うしかありませんね」
その間にも、『ドクター』の攻撃によりカケルはダメージを負っている。
『ホイールシールド』はすでに砕けており、装甲もところどころ破壊されてしまっていた。
それに対し、『ドクター』は余裕のある態度を崩さない。
だが、『ドクター・ゲノミクス』も無傷とはいかないようで……
「ん? おや……? 腕を捻じ切られてしまいましたか」
――彼の右腕が曲がってはいけない方向へと折れていたのである。
実は戦闘の最中、カケルはカウンターのような形で何度か攻撃を命中させているのだ。
先程、振り払うような攻撃をされた際、咄嗟に『ドクター』の腕をつかみ、吹き飛ぶ勢いと共に捻り切ったのである。
そんな自身の右腕を見ながら、痛みを感じてすらいないような声色をする『ドクター』。
「ですが……」
「っ……! やっぱ"再生"するか……!」
「ええ。『ゲノミクス』の特性上、持久戦は得意な方なので」
次の瞬間には、明後日の方向に曲がっていた『ドクター・ゲノミクス』の右腕が、カケルの目の前でぐちゃぐちゃと音を立てて元に戻ったのである。
ボタボタと体液をこぼしながら元通りになっていく様は不気味以外の何物でもない。
――『ドクター・ゲノミクス』の特性の一つ、『"超再生"』
そもそも『ドクター』が変身する『ドクター・ゲノミクス』というものは、様々な生物の『神秘』を混ぜ合わせ、出来上がってしまった狂気の姿。
怪人――『ゲノム』の特性上、どの個体も生命力が増幅されているため、生半可な攻撃ではすぐに傷がふさがってしまうため、凄まじい威力を秘めた一撃でもない限り、『ゲノム』を倒すことは不可能。
そんな『ゲノム』の特性である「再生能力」を極めているのが『ゲノミクス』である。
例え体の一部が消滅したところで再生してしまうほどに、『ゲノミクス』は異常な力を秘めているのだ。
「それにしても、あなたとこうしてゆっくりお話しするのも久しぶりですね。最近の様子はどうですかね?」
「っ、答えると思ってんのかよッ!!」
「まぁまぁ、そうおっしゃらずにッ!!」
「ッ!!!」
まるで古い友人と会ったかのような気楽さで会話を持ちかけるドクターの提案を拒否し、カケルは全力で拳を振りかぶる。
『ドクター』はそれをひらりと躱して回し蹴りを繰り出したが、カケルはそれを紙一重で回避し、攻撃が外れたことで体勢の崩れた『ドクター』の脇腹に前蹴りを放とうとする。
「おっと危ない」
「ぐあッ!?」
しかし、その隙を埋めるようにして伸びて来た『ドクター』の背中にある触手――『ゲノミクス・テンタクルアーム』によって逆に吹き飛ばされてしまった。
砂塵を巻き上げて建物に突っ込んだカケルは瓦礫の山に埋もれてしまう。
――カケルと『ドクター』は、先程からこのような攻防を20は繰り返していた。
それもほぼ全て、カケルが瓦礫に埋もれる形の『一方的な蹂躙』ともいえる攻防が、だ。
ただでさえ最初の一撃からホシノ達を守るために体力を大きく消耗したというのに、相手は万全の構えで迎え撃ってくる。
分が悪い……どころの話ではない。
ほぼ負けが決まった戦いだ。
それも最高のハッピーエンドを目前にした状況からの「これ」である。
(……とは言っても、流石に早すぎましたかね?)
そんなカケルの方向を見ながら、『ドクター』は心の中で少し思い悩む。
――「元々立てていた計画」では彼はここで出るつもりはなかったのだ。
『
しかし、我慢できなかった『ドクター』は、予定していた計画に割り込むようにして早期に登場してしまったのである。
『
(あぁ、そう言えばそうでした。彼の隣に立っていた『あの少女』がいませんね。彼女のことだから彼にずっとついてくるとは思っていたのですけど……)
カケルの隣に立っていた『少女』。
つまり、カケルがこのキヴォトスに来て時々口にしていた『"アイツ"』のことだ。
彼女のことは『ドクター』自身、記憶に残っている。
自身と同等レベル……いや、それ以上の技術と知識と才能を持ち、カケルの纏っている『ブラック』を作り出してみせた「大天才」。
そして、彼と彼女の仲の良さはドクターも観察していたからこそよくわかっている。
片方が捕まってしまったのなら決死の覚悟で助けに来るような2人組なのだ、カケルが真っ先に頼る相手の一人を、カケル自身が気にしてすらいないのは些かおかしい。
(うーむ、どうしたものか……本当なら、ここで私をあっさりと倒して『ハッピーエンド』にしてもらうつもりでしたが……ん?)
そんなことを考えていた時だった。
「……っ!」
「……ああ、少し上の空になっていたようですね。そのちっぽけな力でどうするつもりですか、『砂狼シロコ』さん?」
意識が逸れていたことでエネルギーの管理が甘くなっていたのか、嵐が少し収まってしまっていた。
その隙に近づいてきていた少女――シロコが、指先を震えさせながらも銃口を突き付けている。
しかし、『ドクター』にとってはその程度の武器で何度攻撃されようが対してダメージをもらうわけではない。
その程度、シロコ自身も理解しているはずなのだ。
なのにどうして……そんな疑問が『ドクター』の頭に浮かんだのである。
「……確かに私はちっぽけ。私の力じゃあなたを倒すなんてできるわけがない」
「理解しておられるのですね。先程も見ていたでしょう? あの圧倒的な力を持つあなた方の『先生』ですら、私には敵わないというのに……もしかして、あれですか? 彼がいなくなっては借金を返せなくなるからということで――」
「――違う」
煽るような『ドクター』の言葉に、確固たる意志で否定するシロコ。
「私達が助けたいっていう「我儘」なだけ。今まで助けられてきたのに、恩を返しきれないままじゃ明日食べるご飯も美味しくなくなっちゃう。そしてなにより――」
「困ってる『仲間』がいたら助けたい!! ただそれだけ!!」
「……ッ!!! ウォオオオオオオオオオオ!!!」
「――アハッ!!」
カケルと初めて出会った日、彼が言ってくれた言葉を自分なりの形で宣言するシロコの姿に、瓦礫を吹き飛ばしてカケルは駆けだした。
そんなカケルの隙を作ろうとドクターへ向けてシロコは愛銃を連射する。
2人の息の合ったコンビネーションに、口角を吊り上げるような笑みを浮かべた『ドクター』は、先程まで考えていたことをすべて振り払うように力を解放する。
だが、
「ホシノ先輩!」「ホシノちゃん!」
「任せてッ!!」
「ぐぉっ!? こ、この力は……!?」
カケルとシロコの呼びかけにすぐさま応えたホシノが、力を溜めようと無防備になっていた『ドクター』の脇腹にゼロ距離でショットガンを撃ちまくる。
そこには今まで以上の凄まじい力が込められており、予想外の一撃をもらった『ドクター』は体勢を崩す。
痛みを感じないはずの体に走った激痛に、思わず力を緩めてしまった。
「セリカちゃん! 今です!」
「もう怒ったんだからぁッ!!」
「ぐぅっ!! 小鳥遊ホシノだけではない、だと……!?」
そこに追い打ちをかけるようにして、セリカがアサルトライフルで『ドクター』の足を撃ちぬき膝をつかせる。
セリカの銃撃の威力も上がっており、ドクターの力は段々と霧散していく。
(くっ!! 演出のためとはいえ、最初の爆発でエネルギーを半分以上使ってしまったのが裏目に出たか……!!)
「ノノミちゃん! ぶちかませ!」
「先生を傷つけたお返しですよ~!!」
(ま、まずい……!?)
そして、ノノミのミニガンからばら撒かれる弾丸が、『ドクター』の全身を貫いていった。
ただでさえエネルギーが枯渇しかけていたのが、みるみるうちに減っていく。
このままでは、計画が成功する前に自身の命が潰えてしまう。
だが、その一方で『ドクター』はこう思っていた。
(あぁ……なんて素晴らしい……!! これが彼らが持ちうる『可能性』……『
自分ではなし得ない可能性――『奇跡』を起こし、圧倒的であったはずの盤面を容易くひっくり返す彼らの姿に、思わず感動する。
このまま死んでしまってもいいだろう……だが、これから先の彼らの姿が見れなくなるのは残念だ。
ならばと、『ドクター』は『ゲノミクスチェンジャー』に装填されたカプセルを再度押し込む。
「ハァアアアアアアアアアッッッ!!!」
『GENOMIX FULL CHARGE!!!』
「行くぞブラック!!! フルチャージ!!!」
『OK!!! Full charge!!!』
互いにフルチャージの認証を行い、決死の一撃がぶつかり合った!!!
「スピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイドッ!!! ブレイカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
『GENOMIX STING!!!』
「ダァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
そして、世界から音が消えたのである。
「ハァ……ハァ……どうだ、ちったぁ効いただろ……?」
「……えぇ、とてもいい一撃でした……」
互いの一撃がぶつかり合い、凄まじいエネルギーの奔流が巻き起こった後、立っていたのはカケル達であった。
必殺技の『ゲノミクススティング』を打ち破られた『ドクター』は、ボロボロになった変身する前の人間体に戻り、大の字に倒れている。
『貴様の身柄は俺達が拘束させてもらう。貴様は危険すぎるのでな』
「……あなたに危険という判定をもらえるのは光栄ですね、ブラックさん……」
動けなくなった『ドクター』は、『ヘブン・オブ・ザ・エデン』の残党であることを抜きにしても、危険人物である彼を野放しにしては置けないと、ブラックは即座に『ドクター』を拘束。
幸い、『ドクター』に抵抗できる力は残されておらず、拘束はあっさりと進んだ。
「シロコちゃん! なんて危ないことするんですか!」
「ん、あれが一番いいと思ったから」
「シロコちゃーん? 後でお説教ねー?」
「シ、シロコ先輩が段々と先生みたいな熱血に……!」
「う、嬉しいような止めた方が良いような……」
シロコ達も互いの無事を確かめ合っていた。
「…………」
『……どうしたカケル、お前が頭を抱えるなんて明日は雨か?』
「……いや、なんか変な感じがしてさ……」
これで一件落着……と言えればよかっただろう。
しかし、カケルは何やら嫌な予感がしているようで首をかしげていた。
そんなカケル達の様子を拘束された状態で見ていた『ドクター』が、ふと口を開く。
「……ところで、ブラックさん。私は予備プランをいくつか用意しているのはお分かりですね。まぁあなた方には尽く粉砕されてきたのですが……」
『……いくら負傷しているとはいえ、俺達はまだ戦えるが、っ!? なんだこの揺れは……!?』
そこまで言いかけて、ブラック達を立っていられないほどの地震が襲った。
そしてブラックは自身のセンサーが、正体不明の『超巨大物体』が接近しているのを感じ取ってしまう。
『まさか……!?』
「えぇ、だからこそ――」
「
そうして、大地を割るようにして現れたのは――
『――――――――』
――第3の預言者、『ビナー』であった。
――夜明けはまだ訪れない。
Tip!
次回、超巨大ロボットバトル
またの名を「ほぼニチアサ」
また次回も頑張っていきますので、皆様の応援お待ちしております!
応援に関しては、「お気に入り登録する」「作品への高評価」「感想を書く」「ここ好きたくさん押してみる」「作者に直接メッセージを送ってみる」などがありますので、皆様の好きな方法で応援してください!
それでは皆様また次回~!