ドンブルーアーカイブ   作:鰻の蒲焼

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ドン3章 ゲヘナびしょくみち
そのいち


 

 

 

 

「────」

 

 雨が降っている。

 それはざあざあ、と耳障りな音を立てながら、自分の周囲に吐瀉物のごとく撒き散らされている。

 そのせいで素肌を剥き出しにした部分は、既に湖へ浸かったような有様になっていた。空には濁った色の分厚い雲が立ち込めており、視界は酷く薄暗い。血がこびりついた鼻をつくのは、雨と黴と埃が入り混じった籠ったような悪臭──

 不愉快だ、と彼女は心の底から思った。

 そう思った理由は、髪も服も肌も──何もかもがずぶ濡れになっているからだけではない。

 加減を知らずに水を貪欲に飲み込み続ける、素肌に刻まれた裂傷。

 雨と低気圧の影響を受けて、勢いを強めている頭痛。

 額のいっとう深く裂けた箇所から垂れ落ちる、雨混じりの血液。

 全身を絶え間なく襲う、金槌で殴り付けられているかのような鈍痛──まるで世界の全てが、自らの敵となった風に見えたから、彼女はそう思ったのだった。

 だが、そこに在るのは悲嘆や悲観ではない。

 どす黒く染まった憤怒と、出所の知れない憎悪と──ぽっかりと穴が空いた虚無だった。

 その虚無が、彼女に自分を取り戻させた。

 

「…………」

 

 そうだ、と彼女は考え直す。元よりこの世界は、滅ぼさねばならない敵であり、打ち砕かねばならない障害だった。

 それは、そのまま逆さまにして言うことができる。

 彼女達が世界を敵だと考えているように、世界も彼女達を敵だと思っているのだ。

 最初から分かり切っていた。なぜ感情を消費させる必要があったのか。どれだけ怒りをぶつけても、反応は返ってこないというのに。

 自分達がこれまでに抱いてきた不快も、怨嗟も、嘆きも、殺意も、失望も──絶望も。

 世界にとっては、なべて等しく無価値である。

 その虚ろに、出口は無い。逃げ場も無い。

 ゆえに少女にとって、この灰色の世界は楽園などではなく───どこまでも続く地獄だった。

 

 ───Vanitas vanitatum et omnia vanitas.(虚無の虚無、全ては虚無なり)

 

 慣れ親しんだ一節を、静かに唇のなかで囁いて、少女はついに限界を迎えた。

 受け身も取らずに倒れた音は、雨が叩きつけられる音にたちまち搔き消される。

 受け止めてくれる相手や、助け起こしてくれる相手などいる筈も無い。

 アスファルト上の薄汚れた水溜まりに顔を浸からせて、死んだように眠る少女を、雨は容赦なく追い詰めていく。

 だが、一瞬の間を置いた後で、雨がぽつりと一箇所だけ止んだ。

 そこはちょうど、少女が倒れた場所だった。

 

「……」

 

 真っ赤な傘を携えた男が、少女を見下ろすように立ち止まっていた。

 買い物の帰りなのかもしれない。片手には、大きく膨れたレジ袋がぶら下がっていた。

 男は顔と肩の間に傘を挟むと、水溜まりに濡れることを欠片も気にせず膝をつき、少女を背中におぶさった。

 そして、両肩から力無く飛び出た傷だらけの両腕を交差させると、両足をしっかりと抱えてから、ふたたび歩き出した。まるで、最初から何事も無かったかのような、一ミリの揺らぎも感じられない足取りだった。

 やがて、雨はその激しさを増していく。だから少女が倒れた痕跡も、男が少女を拾った痕跡も、すべては雨のなかに消えていった。

 

 

 〇

 

 

 桃井タロウが働いているシバイヌ宅配便には、タロウを除いて三人の従業員が在籍している。

 名前を石川マユミ、竹中サユ、桐山ミナト──偶然にも、タロウが王苦市で籍を置いていたシロクマ宅配便の面々と、苗字が一致している少女達である。

 そのうちの一人──全体的にぽっちゃりした印象が目立つ桐山ミナトは、それぞれの担当学区が書かれたホワイトボードを見て、苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。

 タレ目から生まれる、いつもの柔らかな視線は、糸のように細められて見る影もない。その視線は自分のものではなく、桃井タロウのものへと向けられていた。

 立ち尽くして動かないミナトの背中に、制服へ着替え終わったタロウは声をかけた。

 

「どうした、桐山」

「あ、タロウ。おはよお。そんで災難だねえ、今日は」

「おはよう……災難とはなんだ?」

 

 言葉の意味がわからず聞き返しても、ミナトは訳ありげにこくこくと頷くばかりである。

 タロウは怪訝に思いながら、ホワイトボードに目をやった。

 

「特に変わりは見受けられないが」

「えーっ。タロウ、大丈夫? ちゃんと目ぇ見えてる?」

「おれの視力は10.0以上だ──担当地区がゲヘナであることに、なんの問題がある?」

「それが問題なんだと思うよ」

 

 ひょっこりと顔をのぞかせたのは、大きな丸眼鏡が特徴的な竹中サユだった。つるを指で押し上げているのは、キヴォトスのことをまるで知らないタロウに物を教える際の、彼女なりの合図のようなものであった。

 

「キヴォトスのなかでゲヘナほど危険な場所は、そうそう無いんじゃないかな……特に私達みたいな、荷物を運ぶ仕事をしてる人にとっては尚更」

「そうだよお。この前もねえ、お高い冷凍食品をいっっっっっぱいに詰め込んだトラックが、ゲヘナで謎の四人組に襲われて、中身を全部持ってかれちゃったんだって。怖いよねえ」

「下らんな」

 

 サユとミナトは自分の身体を抱き締めて、ゲヘナに対する恐怖を目一杯に表現している。だが、タロウはどこ吹く風を貫いて、荷物の仕分けを始めた。

 

「どんなに治安が悪かろうが、どんな妨害を受けようが、必ずお客様の元に荷物を届ける。それが配達員の仕事だろう」

「タロウの言ってることは正しいけどさ……たしかキヴォトスの外から来たんだよね? 銃弾が当たるの、怖くないの?」

 

 サユの問い掛けに、タロウはつまらなさそうに答えた。

 

「愚問だな。最初から来ると分かっているなら、避けられるし、勿論防ぐこともできる。怖がる必要など微塵もない」

「ほへえ〜、キヴォトスの外も物騒なんだねえ」

 

 間延びした声でミナトは感心をあらわにし、サユはどうにも納得がいかなさそうに首をひねっている。だが、最終的に納得したのは、やはりタロウがタロウであることを知っていたからだった。

 シバイヌ宅配便でともに働く同僚となってしばらく経つが、男が銃声や爆発音に怯んだところを、サユはこれまで一度も見たことがない。

 これはあくまでも噂なのだが──

 依頼された任務は必ず達成する、ミレニアムの『コールサイン/ダブルオー』。

 目に映る全てを衝動のままに破壊し尽くす、トリニティの『歩く戦略兵器』。

 そして、ついさっき話題に出したゲヘナ学園。

 極まった混沌が渦巻くその学区に秩序を齎すために、圧倒的な実力をもって君臨している風紀委員会のトップ──空崎ヒナ。

 キヴォトスの生徒であるならば、その名を知らない者などいない強者達とも、互角に渡り合った──……らしい。

 ハッキリ言えば嘘くさい。だが、もしかしたらと一瞬でも信じてしまえるのは、桃井タロウが漂わせる風格が只者のそれではないからだろう。

 そんな男が、こんな場末の宅配便で働いているのが、サユはどうにもおかしくてたまらない。

 だから、仕事中に危ない目に遭っても続けてこれたのかもしれないなと笑いながら、サユも荷物の仕分けを始めた。

 

 

 〇

 

 

 微妙に舗装がされていないせいで凹凸の多いゲヘナの道路を、タロウが運転するバンはゆったりと進んでいく。

 周囲には大きな木々が立ち並んでいる。青空を遮るように広げられた葉々の隙間からは、まぶしい朝の陽射しが雨になって、アスファルトに降り注いでいた。

 そんな風に自然が身近にある登り勾配の道をシフトチェンジを駆使しながら乗り超え、緩やかなカーブを曲がり終えた先に、ゲヘナ学園の中央区はあった。

 タロウは目を細めて、バンの時計をちらっと見た。時刻はちょうど、給食部が配膳を始める三時間前を指していた、サユやミナトが忠告してくれた妨害を警戒して、念のため早めに出発したのだが、どうやら取り越し苦労だったらしい。

 それでも、早いに越したことは無いだろう。なにせ今回の荷物は食材である。料理に使う食材を新鮮なうちに届けておいて、得こそすれど損は決して無いということを、タロウはよく知っていた。

 人もまばらな学生広場を抜け、校庭を遠くに望みながら、一定の速度でバンを進ませる。やがて、本日の配達先である真っ赤な塗装の主張が激しい、ゲヘナ学園の部室棟本館が見えてきた。

 部室棟まで辿り着いたタロウは、バンを駐車場に止めると、伝票を持って部室棟を進んでいった。明らかに一人で運べる量ではなかったから、ハンコかサインを貰うついでに、台車かなにかを借りて手伝うつもりだった。

 給食部の扉をこんこんと叩く。

 なかから、軽やかな少女の声が返ってきた。

 

「はーい」

「お届け物です。伝票にハンコかサインを」

 

 扉が開き、一人の少女が顔を出した。

 桃色の豊かな長髪のなかからゲヘナ生の特徴である鋭い角を二つ生やし、白い頭巾とエプロンに身を包んだ少女──牛牧ジュリは、タロウの顔を目にするや否や、澄んだ瞳をきらきらと輝かせた。

 

「──タロウさんっ!」

「アンタか。久しぶりだな」

「はいっ。最近はずっと別の人でしたから、ふふ、久しぶりに会えて嬉しいです。とっても」

 

 ジュリは五指を揃えた両手を口の前に持っていき、綻ぶように笑う。タロウは帽子をかぶり直しながら、初対面の時から一向に翳る気配のない少女の明るさに、感心した風な溜め息を吐いた。

 

「それにしても相変わらず、朝早くから精が出る」

「えへへ……お料理は仕事なんですけど、私の楽しみでもあるので! 当然のことですっ」

 

 ふんすっ、とジュリは得意げに鼻を鳴らしながら胸を張る。

 対するタロウはひどく素っ気ない様子で応じた。

 

「結構なことだ。それで、伝票にハンコかサインを」

「あ、はい! ちょっと待っててくださいねっ」

 

 ジュリはいそいそとエプロンをまさぐると、ポケットからハンコをとり出した。そして、流れるように印を付けてくる。それを確認したタロウは控えを渡しながら、ジュリに尋ねた。

 

「ちょうどいい。アンタ、台車を知らないか? 荷物が多くてな、手だけでは運べそうにない」

「台車ですか? ちょっと待っててくださいね──フウカせんぱーいっ。台車一台お願いしまーす」

「なにー? 台車ぁー? ……あー……ちょっと、待ってて。時間かけないから」

 

 ジュリの呼びかけに応じて部室の奥から返ってきたのは、明らかに作業をしている途中と思しき少女の声だった。

 なんでこんな場所に置いてるのよ意味わかんないほんとにまったくという愚痴とともに、がたがたごとごと、と重いものが動かされる音が何度か響き、続いて取っ手が上げられる音が跳ね、最後に車輪がごろごろ回る音が転がってきた。

 台車とともに姿を現した少女こそ──ゲヘナ学園給食部の部長を務める愛清フウカである。

 大きな台車を押して来た少女は黒いツインテ―ルを揺らしながら、くあ、と小さく欠伸をひとつ繰り出している。宝石をはめ込んだような赤い目のなかには、微かな眠気が見て取れた。

 

「ふぅ……はい、持ってきたわよ。というか、台車なんて一体なにに使うつも──」

 

 そこでぴたっと、フウカは動きを止めた。

 タロウを見据えたままの瞳は大きく見開かれ、眠気は完全に消えた様子である。

 そのまま石像と化したフウカを見て、タロウとジュリは顔を見合わせる。

 

「…………」

「……何故コイツは止まっている?」

「さあ……? ──あの、せんぱーい? フウカせんぱーい? どうかしましたか? お腹痛くなっちゃったんですか? 昨日なにか変なモノでも食べちゃいましたか?」

 

 その問い掛けは、どうやらフウカの耳を綺麗に通り抜けていったらしい。

 ジュリに対する反応を見せないまま、フウカはずかずかと力強い歩調で、タロウの元まで足を運んだ。

 そして、なにがなにやらわからずに立ち尽くしているタロウの両手をぐいと掴むと、自身の顔の目の前に持ち上げて、上目遣いにタロウを見上げた。

 

「ねえ、タロウ」

「……なんだ」

「私たちさ、とっても縁があるよね? とおっっっっっても深ーくながーい縁が」

 

 とてもノーとは返せない目つきである。

 それに、少女との間に深く長い縁があることはあながち間違いではない。タロウが無言でゆっくりと頷くと、フウカは花が咲いたような笑みを浮かべて、

 

「それじゃあ──今から桃井タロウは、給食部の臨時部員ってことで、よろしくっ!!」

 

 そういうことになった。

 

 

 〇

 

 

 ゲヘナの学生食堂には、総勢で4000人もの生徒が給食を求めて押し掛ける。

 とはいえ、味に期待しているような物好きはほとんどいない。ただただ腹を満たして、午後も暴れ回る活力を養うために立ち寄る者がほとんどである。

 量を整えるのに精一杯で、味の方まで気を回す余裕がまるで無い理由は、上げてみれば数えきれないほどある。

 部員数がたった二名という人手不足、

 ゲヘナにおいて給食という要素が重要視されないゆえの予算不足。

 その他にも色々あるのだが、要するに、正常な部活動を行うにあたって必要ななにもかもが、足りていないのだった。

 そのため、フウカは常日頃心身を擦り減らしていたのだが、今日の給食部は──文字通り一味も二味も違っていた。

 いつもなら、給食を配膳し終えた後にカチコミをかけに来る美食研究会の連中が、いつまでたっても来ないのがその確固たる証拠である。

 

「それもこれも、みんなタロウのおかげ。引き込んだ私が言うのもなんだけど、ありがとね」

 

 そう言って、フウカはテーブルに座ったタロウとジュリ──そして自分の席の前に皿を置いていく。皿の上に乗っているのは、鮮やかな自然の黄色が眩しいオムレツだった。

 今日のメニューのひとつである目玉焼きを作るために使った卵の残りを使って、フウカが作ったものである。

 タロウはエプロンと頭巾を取り外しながら、フウカにちらっと視線を送った。

 

「礼は良い。おれが運ぶのは、荷物だけではないからな──そんなことより、良いのか? わざわざ一から料理を作って貰っても」

「良いわよ全然! タロウが手伝ってくれたから、明日の献立も作り置きできたんだし。給食部からの報酬って思ってくれれば。勿論、ジュリもね。配膳ありがと」

「そうか。なら、有り難く受け取ろう」

「ありがとうございます、フウカ先輩。じゃあ、いただきます!」

「いただきます」

 

 そして二人は揃って手を合わせると、オムレツを半分に割った。

 食欲をそそる濃厚なバターの香りが、上から波線にかけられたケチャップと混ざって、鼻腔をくすぐっていく。割った中には挽肉、玉ねぎ、人参、ブロッコリーなどの、多種多様な具材が詰め込まれている。とてもあり合わせの食材で作ったとは思えない完成度だった。

 ジュリは卵をスプーンで掬い取ると、目をつぶって口に運んだ。程よい熱さの半熟卵は舌の上であっという間に溶けて、中に含まれていた具材が口の中で踊り出す。卵の風味に負けないように塩とこしょうで味付けされた具材達は、単調さを抑える役割を立派に果たしていた。

 卵のとろけるような甘味と、バター、そしてケチャップの繊細な調和が、舌を殴りつけたようにじんと響く。

 口に入れたものを惜しむかのように、ゆっくりと咀嚼してから、ジュリは笑顔でオムレツを讃えた。

 

「──美味しい、美味しいです! 先輩っ」

「ああ、確かに。このオムレツ、なかなか美味い」

「ふふん、そうでしょ? 実はちょっとしたひと工夫を加えてみたんだけど……タロウはなにか分かる?」

 

 どんどんとオムレツを食べ進めていくタロウに対して、フウカはどこか楽し気に問いかける。タロウはしばらく考える仕草をしてから、ゆっくりと口を開いた。

 

「──卵液に、マヨネーズを混ぜてあるな」

「……正解」

「マヨネーズ、ですか?」

 

 首を傾げるジュリに、フウカは人差し指を立てて、まるで教師のような口調で話を続けた。

 

「マヨネーズってほら、お酢とか乳化された油が入ってるから、卵に入れると普通よりもふわふわした食感になるのよ──それにしても、よく分かったわね。気付かれないかと思ってたんだけど」

 

 意外そうに目を瞬かせるフウカに、タロウはなんてことはない風に答えた。

 

「アンタの料理からはいつも、食べる相手への深い思いやりを感じる。ならば、気付けない道理は無いだろう」

「……………………あ、そう。なら、よ、良かった」

 

 桃井タロウの口から飛び出た世にも珍しいド直球の褒め言葉を、よりにもよって真っ正面から喰らったせいで、フウカは顔を俯かせた。判定無用。完全無欠のノックアウトである。

 頬も耳も真っ赤に染め上げた彼女を、後輩であるジュリは微笑ましそうに眺め、タロウは構うことなく黙々とオムレツを食べていた。

 そんな、奇妙な沈黙が満ちつつも穏やかで暖かな空気が流れているその空間に、一つの闖入者があった。

 かたんことん、と硬い音を立てながら、床を転がってフウカ達のすぐそばまでたどり着いた、その闖入者の名は、

 

「────これ、まさか、爆弾!」

 

 正しくは、発煙弾である。

 だが、フウカにしてみれば爆弾だろうが発煙弾だろうが、平穏をぶち壊す代物という意味では同じようなものだった。

 誰にも邪魔されることなく爆発した発煙弾は、爆音を伴ってあっという間に白煙を撒き散らすと、食堂を濁った白色で埋め尽くした。

 しかし食堂の警備もやりたい放題されて黙っているほど馬鹿ではない。大きな異常を検知したシステムが、即座に風紀委員会へとSOSのメッセージを送りつける。

 だが、僅かな刹那を狙って、その少女は踏み込んできた。

 煙のなかにあっても強い輝きを放つ、薄い銀色の髪を颯爽と靡かせながら、真紅に光るヘイローと目で空中に残光を引いて。

 

「──今朝の目玉焼き定食、色、形、黄身の柔らかさ、白身の弾力。どれを取っても完璧で、素晴らしいほど美味でした。ですから、きっと、貴方が厨房にいると確信できましたわ。ねえ──」

 

 黒舘ハルナが、そこにいた。

 

「桃井──タロウさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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