ドンブルーアーカイブ 作:鰻の蒲焼
そのいち
多分、どこかでボタンを掛け違えてしまったのだ。
錠前サオリは目をつぶり、薄い闇に浸りながらあの日のことを思い返すたびに、最初にそんなことを考える。
誰かが悪かったわけでも、何かが原因になったわけでもなく、ほんの些細なすれ違いが、そこにはあっただけなのだと。
その次に、思い直す。
そうではない。罪はきっと、自分にあった。
この世界は楽園などではなく、果てしなく続く地獄だと、よく知っていたはずなのに。
身の程をわきまえず、あたたかな光に手を伸ばしてしまった、愚かな自分に。
そして最後に、決断する。
連綿と続いた憎悪に、報いを捧げるまでは。
アリウス分校に所属する一人として、目的を達成するまでは。
どこまでも広がるあの青空の下に、二度と自らの意志で踏み込むつもりはないと。
そう、固く誓ったのだ。
人殺しでしかない自分は陰でしか生きられず、陽の下を堂々と歩くことができる存在とは相容れないのだと、嫌というほど理解させられたのだから。
それでもサオリは、不意にあの日のことを思い出すことをやめられない。
心の奥底に鍵をかけて厳重に封じ込めていても、シャボン玉のように隙間を通り抜けてきて、ぱちんぱちん、と脳裏で弾け出してしまうからだ。
だから最近のサオリは、いっそ擦り切れるまで再生してやろうと、むしろ積極的に思い出に浸っていた。何度も何度も見返して、お前には欠片も似合わない世界だと、どこかで未練がましく縋りついている自分に突き付けてやるつもりで。
けれど、擦り切れるどころか、むしろ鮮明になっていくばかりで───
その輝きを、認めたくなくて。
その眩さを、忘れたくて。
錠前サオリは今日もまた、あの日のことを思い出す。
〇
その日、門倉ユキの機嫌は最悪に悪かった。
理由はいろいろあった。スチューデントファイター2のオンライン対戦で、雑魚だと舐めてかかっていた「Peach_Figher」に、まさかの逆転勝ちを喫されてしまったり。限定発売されるグッズを手に入れる為に、十分前から待機していたにもかかわらず、回線の問題で予約できなかったり。
間を置くのならまだ耐えられた。けれど連続して来るものだから、ユキの気分は深いドン底に叩き落とされる一方だった。
だから、誰でもなんでもいいから八つ当たりしたくなるのは、無理もない話だとユキは思う。
同時に、玄関から鳴り響いてきたチャイムが、開戦のゴングに聞こえてしまったのも。
「──んだよクソッ……」
突然の来客に舌打ちを鳴らしつつ、ずかずか、と乱暴な足音をたてながら、ユキは玄関へと向かった。途中で、今日の昼頃に届く荷物の存在を思い出したが、その瞬間にはすでに、ノブへ手がかかってしまっていた。
胸倉を掴み上げるように引っ張る。
外の新鮮な光が差し込み、モニターのブルーライトの薄さに慣れきった視界が、悲鳴を上げながら眩む。それがまた、ユキの神経を苛立たせた。
涙がにじむ目をこすりながら、元の状態に戻るのを待つ。やがてはっきりと輪郭を取り戻した、視線の先に立っていたのは──
「お届け物だ。荷物にはんこかサインを」
赤い帽子を目深に被った、配達員だった。
まず、目を合わせないところに腹が立った。
次に、段ボールを片腕で抱えているところにムカついた。
最後に、なんとなくムカついた。
指定した時刻に数秒の遅れさえなく到着したことなど加点にもならなかった。
「あの、なぁ! ウチはいま忙しいんだよ! そんなに欲しいならてめぇではんこかサインを書き──」
二徹による睡眠不足、些細な不幸の連続、主観的ではあるが他者からの杜撰な対応──その三つがあわさったことで、暴力的な衝動を解放しようとしたユキであったが。
がちゃ。
と、どこからともなく響いてきた硬質的な音に、動きを止めた。
「…………あ?」
その音は、キヴォトスで生活する一生徒であるユキにとっては、あまりにも聞き覚えがあり過ぎる音だった。
続いて腹のど真ん中に感じる、冷たい鉄の感触。
遅れて、理解する。
段ボールで隠れてしまって、すっかり見えないが、間違いなく銃を向けられていると。
「──おま……お……おまえ。ここっ、こんなこと……」
「こちらの要求は只一つ。伝票にはんこかサインをし、この荷物を即座に受け取ることだ。十秒以内にどちらかの行動を起こさなかった場合、お前にはこの場で気絶してもらい、こちらではんこを押させてもらう。
以上だ。質問は受け付けない」
その時、帽子の鍔の下に隠れている目が、すうっとユキを見据えた。瞬間、背筋に凄まじい寒気が走り抜けていく。
ユキはこれでも、並みの生徒よりは銃撃戦には慣れているつもりだった。ゲームセンターでの煽り合いから。すれ違いざまに肩がぶつかった拍子から。些細なことが気に食わなかったから。
切っ掛けは、振り返ってみてみれば、どれもこれもちゃちいものばかりだ。けれど、確かな修羅場であったことは、切り抜けてきたユキ本人が充分承知している。
だからこそ、理解できた。
配達員の、青白く光る瞳。
そこに込められていたのは、自分がこれまで向けられてきたモノとは比較にすらならない程の──害意。
この配達員は敵意もなく、悪意もなく、ただ目的を達成するその為だけに、機械のようにこちらを排除しようとしている。
もし、配達員の目のなかに、ぞんざいな対応をされたからやり返してやろう──という意志が垣間見えたなら、ユキはきっと反発していただろう。だが、すぐそばにあるそれに、個人の色は見られない。まるで井戸の底ではいずり回る闇のように、ただただ空っぽな虚ろだけが、広がっていた。
十秒のタイムリミットのことなど、すっかり忘れていた。
「……十秒」
「──ぁ、ちょ、待っ!」
「質問は受け付けない、と言ったはずだ──作戦を実行する」
そして、ユキの声ごと貫くように、銃弾が発射されようとして──
「何をやっている」
横合いから滑り込んできた手が、銃身を潰すように握り締めることで食い止めた。
手の主は、その場にいる誰よりも背が高く、誰よりも声が低かった。配達員の仲間だと気づいたのは、同じ制服を身につけていたからだ。
「お客様に銃を突き付けて、なんのつもりだ?」
「交渉を優位に進めるには、これが手っ取り早いとは教わったが──もう少し猶予を増やすべきだったか?」
「まるで違う! おれ達の仕事はあくまでも、お客様の元へ荷物を運ぶことだ。交渉など必要ない。だというのに、銃を突きつけるなど──言語道断だ!」
「そうか……そう、なのか」
割り込んできた相手は、ユキの呆然とした視線に気づくと、すぐさま帽子を脱いでみせる。あらわになったのは、ユキより幾らか年を重ねた男性の顔だった。
男は、ユキに向き直ると、キッチリ九十度に頭を下げた。
「──こちらの不手際で御気分を害してしまい、誠に申し訳ありませんでした!」
「──申し訳、ありません」
男を真似るようにして、ユキに銃を突きつけていた配達員も、帽子を脱いで深く頭を下げた。長い黒髪が垂れ落ち、物々しい形をした青いヘイローが向けられる。
ようやく我を取り戻したユキに、ばっと顔を上げた男が話しかけてきた。
「お詫び代わりに、なにかお困りのことはありませんか?」
「お、困りって言われても……」
いま置かれている状況そのものがお困りのことである。それでも、言われてみれば思いついてしまうもので、ユキはわざとらしく咳払いを二、三度くり返してから、あくどい笑みを浮かべた。
「そーいえばよぉ……ウチのトイレ、どうも具合が悪いんだよなァ。ってことで、簡単でいいから掃除してくれると助かるんだけどよ」
「分かりました」
「『掃除』、か……了解した」
驚くことに、二人ともが即答だった。半ば冗談のつもりだったユキを置いて、玄関に入り込んでくる。
そんな二人を、ユキは何処かぼうっとしながら案内した。別の場所にしまってあった清掃用具を渡された二人は、もう一度頭を下げると、制服の腕をまくってトイレに入っていった。
がちゃ、と扉が閉まった瞬間、ユキはその場にうずくまってしまった。
勢いで口にしてみたが、それ専用の業者でもない他人に、自分の家のトイレを探られるというのは──何というか、とてつもない恥ずかしさがあった。途中でやめさせなかった、バカで見栄っ張りな自分を、ブン殴りたくて仕方がない。
──……故だ。
そんな風に悶々と考え込んでいると、不意に扉の奥から、こもったような声が聞こえてきた。
何かを話しているらしい。ユキは音を立てないように、こっそりと扉に耳をくっつける。
──何故手伝うのか、だと?
──ああ。これは、私の失敗だ。お前まで付き合う必要は無い。
──そうはいかない。アンタを一人で行かせたのはおれだ。だから、責任はおれも背負うのが筋だろう。
──……すまない。本当に。
──おれに謝る必要は無い。それに、おれはキヴォトスの配達事情の全てを、把握しているわけではない。もしかすれば、アンタのやり方が正しい学区もあるかもしれないからな。
あるわけねえだろ。
ユキが内心で罵声を吐いているとは知らず、配達員達は淡々とした様子で、清掃作業を進めていた。がしがし、と恐らくブラシで磨いている音。しゅっしゅっ、と洗剤を吹きかけている音。がさごそ、と棚でなにかを探している音。
──そちらの棚に、酸素系漂白剤はあるか?
──幾つかあるが、なにをするつもりだ?
──酸素系漂白剤に含まれるのは、過炭酸ナトリウムだ。物質そのものは不燃性だが、火災に巻き込まれると、酸素ガスを放出する……それだけあれば、かなりの量になるだろう。
──ほう。それで?
──銃を使って、爆発させる。それで『掃除』は完了だ。
蹴り開けた。
視線が一気に集中するなかで、ユキはひさしぶりに、腹の底から叫んだ。
「帰れっ!!!!!」
当然だった。
〇
どうしてアリウススクワッドのリーダーである錠前サオリが、シバイヌ宅配便の一配達員として働くことになったのかというと、一時間前まで遡る。
「────」
今日を出立の日にしようとサオリが決めたのは、桃井タロウが朝食として持ってきてくれた食事を、米の一粒に至るまでたっぷり堪能し終えた時だった。
身体中に刻まれていた傷はすっかり回復し、体調は万全に整えられている。呼吸をするたびに、空気に満ちている新鮮さが、内臓に取り込まれていくような清々しい感覚。久しく感じていなかった健康というものを、その瞬間のサオリは手にしていた。
だからこそ、思う。
これ以上、ここにいてはいけないと。
部屋のなかは既に隅々まで調べつくしてある。サオリは迷うことなくタンスへと向かい、二段目の引き出しをがらっと開けた。そこには、サオリの装備一式が、丁寧に置かれている。
流石に整備はされていないが、保存状態がきわめて良好なこともあってか、動作自体に問題は無さそうだった。
メンテナンス用の道具がここにあるか訊いてみようか──と考えかけて、首を振る。
それはただの言い訳だ。ここに出来るだけ長く留まって居たいという、弱い自分が差し出してきている、甘い毒だ。その手には乗らない。
いまの自分の最重要目的は、アリウススクワッドとの合流──そこに過度な武装は必要無い。そう言い聞かせながら、連絡を取ろうと端末を探し、
無い。
「────まさか」
目を見開くなか、初めに疑ったのは、桃井タロウ。
即座にそれを打ち消すことができたのは、甦った記憶のお陰だった。あの、視界を遮るほどの雨のなか。脳味噌がぼんやりとしているせいで、未だに姿をハッキリさせない敵に嬲られ、路地裏から路地裏へと必死に逃げ回っていた頃。
あの時、たしか、ヒヨリかミサキのどちらかに緊急の連絡を入れた。
そして、それを終えた後に、端末をポケットに入れて──いや。正しくは、入れたつもりだったのだろう。
そのタイミングで落としたことについぞ気付かず、倒れてしまい、そしてここに流れ着いた。
つまり、自分の端末は──いまも路地裏のどこかに転がっている。
「…………!」
心臓が早鐘を打ち始め、冷や汗が氷柱となって背筋を刺し貫いた。
落ち着け、と自らに言い聞かせる。開くにはパスコードが必要だ。それに、落とした場所は路地裏──そう簡単に一般人が入るような所ではない。
拾うとすれば、自分と同じ日陰側の存在。つまり、逸れ者だ。
そうした輩は、そういう拾い物が使えないと知るや否や、売り飛ばして幾らかのはした金を手に入れるのが常道だ。
しかし、サオリが使っていた端末は、ボディは傷まみれで液晶はヒビだらけという、使えていることが奇跡のような酷い状態である。要するに、売り物にはならない代物だ。
ゲヘナやミレニアムであれば、まだ違った結果になるかもしれないが──ここはD.U。すなわち、ヴァルキューレのお膝元でもある。
売れそうにないモノにかかずらわって、下手に足取りを掴まれるよりは、放置しておいた方が安全だ──そう考える確率の方が高いと、サオリは判断した。
とはいえ、所詮は予想でしかない。もしかすれば、それでも金が欲しいのだと、今にも売り飛ばされかけているのかもしれない。
どうあれ、ここから動き出す理由には事足りた。服装や装備を整えて、部屋から出る。階段を素早く下りながら、おおよそのアタリをつけた箇所を、もっとも効率的に回れるルートを作っていく。
その最中、かすかに開いた扉の隙間に、桃井タロウと作業服を着た柴犬がなにかを話している姿が見えた。
「……」
そんな暇は無いというのに、思わず立ち止まってしまう。
今すぐにでも立ち去らなければならないというのに、いつまでも男の横顔を見つめてしまうのは、これが今生の別れになると理解していたからだった。
だから、最後にひと言、面と向かって礼を言いたい。
それが錠前サオリの、桃井タロウに対する嘘偽りない本音だった。端末の問題さえ無ければ、きっと今すぐにでもそうしていただろう。
もどかしさに足を固められるなか、隙間から漏れ聞こえてきたのは、二人の会話だった。
「────しかしまさか、マユミがゲヘナで事故に巻き込まれて欠勤とはなあ。今日はミナトは休みで、サユはトリニティに行ってもらってるし……」
「社長、何度も言っているだろう。今日はおれがD.Uをまとめて担当するから、悩む必要は無いと」
「そうは言ってもよお……今日は特に配達先が多いから、範囲もいつもより広い。しんどいだろ?」
「問題ない。縁を結ぶにはちょうどいい機会だ」
「うーん…………」
察するに、人手不足で悩んでいるらしい──というよりかは、タロウ一人に大きな負担を背負わせることを、社長らしき柴犬が躊躇っているのだろう。よく見てみれば、渋っているのは柴ばかりで、タロウはまるで動じていない。
──誰に対しても、ああいう態度なのか。
サオリは思わず苦笑し、桃井タロウが自分に向けてきた態度が、決して特別なモノではなかったことに、ふと寂しさを覚えた。
首を振って、妙な考えを払い除ける。ともあれ、口を出してもいい雰囲気ではなさそうだ。
せめて置手紙ぐらいは残しておこうと、その場から立ち去りかけたところで、今日の配達地域が赤いペンで囲まれている地図を貼ったホワイトボードが、ちらと目に入った。
それは、サオリが目指していたチェックポイントを、ちょうど網羅していた。
徒歩と車。どちらがより効率的か、比較するまでも無い。
だから、それ以外の理由など──
「────」
唇を引き結びながら、サオリは部屋のなかへと入っていった。物音に気づいた二人の視線が突き刺さるなかで、サオリは胸に手を当てながら、言った。
「事情は概ね把握した──私に手伝わせてくれ。世話になった礼を、返す時だ」
○
そして、今に至る。
サオリは、助手席に座って、窓の外を流れる景色をぼうっと眺めていた。
時刻は午前の十一時を少し過ぎたところだった。空に塗られた青は、まだ朝の名残を残して薄く、かすかに開いた窓から流れ込む風は、太陽を孕んで生温い。そのせいか、時折視界に入る住民達は、みな薄着姿になっていた。
そんな、何処にでもありそうな穏やかな風景を前に、しかしサオリの気分は沈降する一方にあった。
「──アンタ、気分でも悪いのか」
悪化の一途を辿っている雰囲気を察知したタロウは、運転しながら、サオリの横顔に語り掛ける。
サオリは黙秘を貫こうかと考えたが、結局口を開くことにした。脳裏に宿るのは、ついさっきの配達だ。
「私には──……つくづく向いていないと、思ってな」
「さっきの失敗のことなら、悔やむ必要は無い。むしろ、してはいけないことを理解した分、アンタにとっては、成長に繋がるいい機会だった」
「成長への機会、か……」
タロウの言葉を受けて、サオリは自嘲気味に笑う。
自分の器がそんな殊勝なものだとは、到底思えなかったということもあったが、一番の理由はきっと、世界のどこに行こうとも虚しさは付き纏い続けることを、よく知っていたからだ。
ふっ、と唇を歪ませる。ガラスに映った薄ら寒いそれは、見ていていやになるほど厭世的だった。
「──能天気だな。その調子を続ければ、いつか手酷く裏切られることになる」
「おれは能天気ではない」
同時に、赤信号。
タロウは車を止めると、初めてサオリの方を向いた。
「凡人は失敗するのが当たり前だ。だが、失敗から学べるのが、凡人のいいところだ──いいところを褒めて、裏切られるもなにも無いだろう」
「──」
淡々とした口調だった。ゆえに、男は本気でそう思っているのだと、サオリは理解した。
生まれて初めてかもしれなかった。誰かに、凡人だと──平凡な人間であると扱われたのは。
桃井タロウは、錠前サオリのことを知らない。素性も、出身も、名前でさえも。当然だ。知られないように、振る舞ってきたのだから。
だから、知ればきっと、二度と錠前サオリのことを凡人などとは言わなくなる。
数百年前から続く憎しみに沿って生き、今もなお応報を果たさんと蠢く存在が、平凡である筈がないからだ。
凡人とは──
サオリは知っている。凡人とは、何の起伏も無い穏やかな日々を、何の犠牲も払わずに過ごすことができる者達だ。
飢えに苛まれることも、寒さに苦しむこともない。
隣に友人がいて、温かい食事があり、安全な寝床がある。
そういう日々が明日も続くと──希望はあるのだと、当たり前のように信じられる者達だ。
この世界の果てには、どこまでいっても虚無しかないのだと知り尽くしている錠前サオリでは、決して至れない存在だ。
それでも。
(……お前が、私を、凡人と扱うのなら)
それなら、それで構わない。大した力を持たないと誤認されていた方が、かえってやりやすい場合もある。
だから、それ以外に、思うことなど──
(……無い。無いんだ。この世は、虚しいのだから)
サオリは、自分を戒める為に、強く唇をかみしめた。
その、内心で様々な感情を渦巻かせていることを如実に見て取れる表情を見て、タロウはぽつりとひと言。
「アンタ、それで笑っているつもりか? まるでなっていない。十一点だ」
「…………………」