透き通った世界を行く   作:ペパロニソース

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ちょっと前に書いて放置していたものです。なんとなく続きを思いついたので投稿。


プロローグーキヴォトスでの日常ー

 

 

 薄暗く狭い空間をモニターの青白い光がぼんやりと照らしており、モニターには『YOU WIN』の文字。

 強敵に打ち勝って気の抜けたところで、手慰みに自身の首から提げた、校章とバーコードの刻印されている形だけの学生証を掲げて眺める。

 

 透明なホルダーの表面はモニターの光が細やかな傷で反射し、普段気にならないようなそれらを目立たせていた。

 

 中でも大きな傷を撫でて凹凸を指先に感じながら、その原因でもあるこれまでのドンパチを思い出す。

 

「ほんと、遠くまで来ちゃったな……」

 

 言葉にすると余計に故郷への哀愁の思いが強くなる。

 

 

 

「まさか俺が"異世界"に来ちゃうなんてな……」

 

 

 

 ビー! ビー! 

 

 

「お仕事ですか……」

 

 呟いた瞬間、スピーカーから呼び出しを報せるアラートが鳴り響いたため"ミレニアム"の学生証を首に掛け直して上着を身にまとう。

 モニター前に乱雑に置いていたマスクを被ると、壁に立てかけているここ数ヶ月お世話になった名も知らぬ愛銃を肩から引っ提げて戸を開く。

 

 肩紐にボサボサの引きずりそうな長さの髪が挟まれるのを直しつつ、引き戸を開けてくぐると、こちらを訪ねてきた人物"先生"が立っていた。

 

「おはよう、アリア」

「ああ、おはよう先生」

 

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 俺がこのキヴォトスに来たのは数ヶ月前。

 なにかに拘束されるかのようにして、真っ裸の状態で寝ていたのが最初の記憶だ。

 

 目が覚め、パニックを起こしていた俺が落ち着く頃にはその拘束は解けていたため、立ち上がり周囲の探索をしようとしたのだが、近くにあった光の消えたモニターのようなものを覗き込むと以前の男としての多少鍛えていた体ではなく、華奢で折れてしまいそうな少女の姿が写りこんでいた。

 

 あまりにもおかしな状況に、情けない声をあげてしまったのを今でも覚えている。

 

 その後、声に反応したのか分からないが、起動したモニターから聞こえてきた音声に従い、インターネットのようなものを使ってできる限りの情報収集を行ったり、モニターの中のAIによるハッキング技術で生徒としての身分などを用意してもらったのだが、しばらくして電力切れでそのAIとはお別れとなった。

 

 俺の居た部屋や、脱出後に見た施設の損壊具合から見るに、電気が上手く通じていなかったようで、辛うじて残っていたバッテリーで最期に対応してくれたのだろう。

 

 その過程で、この体の名称がX-AL-1Aという名前であると知ったり、その名前をもじって黒須アリアという名前で身分を作るなどしてもらったのだが、あのAIには感謝してもしきれない。

 

 そこからは紆余曲折有り、現在俺の目の前にいるお人好しで生徒思いの先生に拾われ、2ヶ月程経った現在はその先生のお手伝いのような事をして生活させてもらっている。

 で、これからそのお手伝いに向かうということだ。

 

 さて、先生が仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にしますか? 

 

 はい◁

 いいえ

 

「パンパカパーン、先生がパーティに参加しました……てな」

「え?」

 

 最近手を出したレトロゲームに影響されて思わずそんな言葉が出てしまったが、テキトーに誤魔化しつつ今日の仕事について話を聞く。

 

「今日の外仕事はゲヘナの給食部から……ではあるけど、内容自体はフウカ個人からの要請だ」

「うげ、またどこぞの生徒に襲撃でも仕掛けられました?」

「いや、今回はどちらかと言うとラッキーな内容だよ」

 

 その言葉に思わず疑問符が浮かんでしまう。

 基本的に俺が所属してから今までのゲヘナ給食部関連であった仕事と言えば、頻発する襲撃への対策、襲撃被害の片付け、トンデモ料理の処理etc……正直あまりいいイメージが無いのだ。

 

「まぁ、フウカ個人には悪い感情は一切ないからどんな内容でも大丈夫だけど……ラッキーって?」

「そのフウカが買い出しの手伝いと、そのついででの新作料理の試食をしてくれって」

「……フウカだけだよな?」

「うん」

 

 その返答を聞き、思わずガッツポーズをしてしまう。

 

 給食部には色々と面倒をかけられはしたが、フウカ個人はシャーレに来た際、俺たちに手料理を振舞ってくれたことが何度があり、その料理の腕もかなりのものだった。

 俺も料理ができない訳では無いが、いつもインスタントで済ませてしまっているので手作りというのはやはり特別だ。

 それに、フウカ自身はマトモもまとも、優しく穏やかな人物のため、彼女への評価は俺の中ではかなりの上位なのだ。

 

「フウカの手料理食べさせてもらうだけだなんて大当たりじゃ______」

 

 そこまで口にしたところで、普段のフウカから先生への態度を思い出す。

 

「ねぇ、これって俺も行っていいのか?」

「一応アリアも連れていくことを言っておいたから大丈夫だと思うよ? 忙しかったのか既読ついてからしばらく返信無かったけど、さっき大丈夫だって返信きてたし」

「あー、うん。そう……」

 

(せっかくの先生との買い出しデートと食事会邪魔しちゃって申し訳ない……)

 

 とりあえず、モモトークを開きフウカ宛に一言謝ろうと思ったが、モテモテな先生の事だ、これからもこんなことはいくらでもありそうなので、毎回謝っていたらキリがないなと思いとどまる。

 

「それじゃあ行こっか」

「はいはい」

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

「…………なあ」

「………………」

「……なあって」

「うん……」

「いや、先生に愚痴っても仕方ないか……」

 

 意気揚々とフウカの依頼へと向かった俺達だが、買い出し後に料理を待っている最中、妙に時間がかかっていると感じた俺たちが様子を見に行くと椅子に縛りつけられたフウカと、新作料理らしき物を食い漁る美食研究会……更に、美食研究会を取り締まりに来た風紀委員の下っ端まで出てきてとても大変だった。

 

「結局料理は食べ損ねたし」

「銃撃戦にも巻き込まれちゃったね……」

「「はぁ……」」

 

 お互い顔を見合わせ、ため息を着くと同時に腹の虫が鳴いた。

 

「……シャーレにカップ麺あったよな」

「うん……ミント味はジャンケン負けた方ね」

 

 

 

「「はぁ……」」

 

 

 こんな日常の話。

 




ちょっとずつ頑張ります。今はプロローグだけですが、今後感想等お待ちしております。



なおハッキング等は天才病弱美少女ハッカーには普通にバレてます。

参考に今後どのような話を読みたいか。

  • メインストーリー外の様々なキャラとの絡み
  • 対策委員会編
  • 時計仕掛けの花のパヴァーヌ編
  • エデン条約編
  • カルバノグの兎編
  • 各イベントストーリー
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