プログレッシブのノリで攻略するアインクラッド第十層 (旧題:2023-01 アインクラッド第十層にて)   作:ki-sou777

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第十八話

 ギシ、ギシ。と、木でできた階段を踏む音が響く。現在は、十層から十一層に至るまでの往還階段の、その途中だ。十層の往還階段は、和風建築らしく、木造だった。だが、円状の階段なので、西洋と東洋が混ざったような、どこかチグハグな印象を受ける。俺たちは今、エギルから託された、第十一層のアクティベートをするという役割を果たしに行くところである。

 ボスクリアから一時間。一緒に戦ったエギルやクラインたちが十層の迷宮区を出るまでは、もう少し時間がかかるだろう。その間に、俺たちも役目を果たさなければならない。と、そんなことを考えていたのだがーーー。

「あーーーーー!!」

 あることに気づいてしまって、俺は絶叫を上げた。

「な、何よ。急に大声あげて」

 アスナが思わずやや引き気味に答える。

「俺たち、アクティベートできないじゃん!!」

「へ?・・・あっ、あーーーーー!!!」

 アスナも俺の言っていることに気づいたのか、同じように声を張り上げた。何故か。それは、今俺たちは二人揃ってオレンジプレイヤーだからだ。しかもその原因は、互いが互いにダメージを与えたからだ。

「えっ、ちょっ、ど、どうする・・・?」

 アスナも珍しくオロオロしている。不味い。ボス攻略ですっかり忘れていたが、オレンジプレイヤーは色々なデメリットがある。プレイヤーから白い目で見られたり、受けられるはずのクエストが受けられなかったり。中でも一番まずいのは、圏内である各層の街に入れなくなってしまうことだ。不味すぎる事態に、俺も必死になって頭を巡らす。というか、何故今まで気づかなかったのか。

「と、とりあえず誰かに連絡しよう。えっと・・・こういう時は誰がいいんだ?」

 混乱しながらもアスナに問いかけてみる。すると流石相棒。その問いに動揺しながらもスルッと答える。

「あ、アルゴさんじゃないかしら。確か、オレンジからグリーンに戻るのって何かクエストやる必要があるのよね?アルゴさんなら何か知ってるんじゃない?」

「あ、ああそうだな。よしアルゴに連絡だ」

 そう言って、急いでウィンドウを開く。何をやっているんだろうか本当に。

「あとエギルさんにも急いで連絡してここまで来てもらわないと!アクティベートできませんって言わなきゃだし・・・」

「あっ・・・!」

「こ、今度は何?」

「往還階段ってダンジョン内扱いだから、メッセージ送れないじゃん!」

「あーーー!」

 再びアスナの絶叫が響いた。もうてんやわんやだ。そしてこの事態を招いたのが自分たち自身であるということが、なんとも間抜けな構図で、なんだか妙にツボに入ってしまった。へっへっへっと、謎の笑いが起きる。アスナもアスナで「何笑っているのよ」とか言いながら、同じようにツボに入ってるらしかった。

「と、とりあえず上に出よう。メッセージ送らないと下の奴らに何言われるかわかったもんじゃない!」

「全くもう!誰かさんが私のこと吹き飛ばすからこうなるんでしょ!」

「自分からオレンジに成りに来たのはアスナの方だろ!」

 そんないつもの言い合いをしながら、往還階段をダッシュする。阿呆二人がここにいた。

 はてさて、ここから先はいよいよ十一層。プレイヤーの誰もが見たことのない領域に、一番乗りをすることになる。だからだろう、俺もアスナもテンションが高い。そんな中、ふと、アスナが俺の方を横目で見ながら言った。

「そういえば、馬酔木の花言葉の三つ目、思い出したわ」

「お、おう?」

 それは、昨夜アスナがついぞ教えてくれなかったことだ。正直、トレヴィの泉の時のように、アインクラッドで教えてくれることはないものだと思っていたのだが、どうやらそうではなかったらしい。

「ちなみに、意味は?」

「えっとね」

 そこで、アスナが僅かに溜めを作り、そして花のような満面の笑みと共に言った。

「『今後ともよろしく』ってこと!」

「そ、それだけ?」

 俺は思わずそう言ってしまっていた。しょうがあるまい。あれだけ勿体ぶって出てきたのが挨拶だなんて。正直、何か誤魔化されている気がする。なんか俺への悪口やからかいの言葉だったりしないだろうか。だが、そんな俺の疑問をアスナはまるっと拾って、お決まりのアレを返してきた。

「それだけですー!気になるんだったら現実世界に戻ってから検索してよね!」

 とのことで。なんだかこの調子では、現実世界に戻った時に調べないといけない言葉がたくさん出てくるような気がする。一個一個覚えてられるか怪しいので、後でどこかにメモでもしておこうか。ただまあ、こうして現実世界に戻った際にやらないといけないことが増えていくのは、そう悪い気分ではなかった。それは、シヴァタやリーテンのような現実世界との向き合い方とはまた異なるけども、これはこれで、今の俺とアスナの関係を表しているのかもしれない。そんな、言い難い満足感を得ながら前を見ると、いよいよ十一層への扉が迫って来た。そんな時に、俺とアスナがやることは大体決まっていて。

「負けたらデザート奢りね!」

「今回は負けねぇ!」

 お互いにそう言って、階段を強く踏み締める。扉への競争が始まる。次の階層へのステップを、軽々と飛び越えていく。さて、次の階層には、どんな物語が待っているのだろう。誰が俺たちを待っているのだろう。胸の高鳴りに身を任せ、俺たちは第十一層への扉に手をかけた。

 

 

 

 

馬酔木の花言葉:『犠牲』『献身』『あなたと二人で旅をしましょう』

 

 

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