ハローチリちゃん、元気ですか?兄ちゃんは元気です   作:宮川アスカ

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チリちゃんテラスタル使う時の顔面イケメンすぎてヤバい


第2話 兄ちゃんは就活中です

 グレープアカデミー名物の1つ、校門前の長い長い階段を登った先で、彼が案内されたのは、どこか重厚感のある一室だった。

 扉を前にし、ここやでと言うと、チリは軽く扉を叩く。

 

「オモダカさーん。連れてきたでー!」

 

「どうぞお入りください」

 

 チリの声に反応する様に返ってきた女性の声。それを聞いたチリが扉を開けると、室内には黒いスーツを着た真面目そうな女性が1人。

 

「はじめまして。この学園の理事長を務めております。オモダカです」

 

「はじめまして。シシィです。本日はよろしくお願いします」

 

「本日は本学園における教職員の応募の件でよろしいですね?」

 

「はい」

 

「では早速面接を始めましょうか。こちらの席にどうぞ」

 

 彼が今日この場に来た目的。それがこの、教員採用試験。そう、つまり就活である。

 

「ほな、チリちゃんはこの辺で。合格祝いにチリちゃんおすすめのお店予約しとくで〜」

 

 兄が席に着いたのを確認し、チリはヒラヒラと手を振りながら外へ出る。それを確認したオモダカも、彼と対面する様に席に着く。

 

「チリとは話し方があまり似ていないのですね」

 

「コガネ弁ですか? チリちゃんは父親譲りで僕は母親譲りなので。せやから話そうと思えば普通に話せるで」

 

「なるほど。喋り方ひとつで雰囲気とは変わるものですね」

 

 彼の急なコガネ弁に、少し驚きながらも、オモダカは興味深そうに笑う。彼の緊張を解こうと思っての事だったが、あまり緊張はしていないらしい。

 

「話が逸れましたね。それでは改めまして、本日面接官を務めさせていただきます。オモダカです。よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

「ではまず、お名前と出身をお願いします」

 

「シシィです。出身はジョウト地方です」

 

「以前は何処でどの様な仕事をされていましたか?」

 

「ガラル地方のワイルドエリアで育て屋をしていました」

 

「では何故その仕事を──」

 

 そんな感じで、特になんの問題もなく質疑応答が進んで行く。彼、もとい、シシィはスラスラと聞かれた質問について無駄無く答えていく。

 

「それでは最後の質問です……ポケモンはお好きですか?」

 

「勿論です」

 

 オモダカが初めてチリに同じ質問をした時の彼女の表情と、彼の表情が重なる。何かを期待したくなる、そんな表情。

 

「ありがとうございます。では最後に質問等はありますか?」

 

「質問ですか。オモダカさんの説明は分かりやすかったので特にはありませんが……あ、チリちゃんはどうですか? ちゃんとやれてますか?」

 

「チリですか? ええ、彼女は業務もしっかりとこなしていますし、先程もご覧いただいた通り元気ですよ」

 

「それは良かった。やはり僕の中では、どうしても小さかった頃のチリちゃんの印象が抜けきれていないので」

 

 オモダカの言葉にシシィはどこかホッとした表情を見せる。連絡は頻繁に取り合っているし、実家に帰った時など数年に1度は顔を合わせていたが、やはり彼にとっては、まだ小さかった頃のチリと過ごした時間が1番長いわけで。

 背も伸びて、もう立派な1人の大人になっている事は理解しているが、彼にとってのチリは、いつも自分の後を必死に着いてきて、自分の後ろにベッタリだった。いや、今もそこは変わらないかもしれないが、間違いなく今の彼女は、兄と同じ道ではなく、自分の道を自分の足で生きている。

 それを第三者に聞けたと言うだけで、シシィにとっては喜ばしい事だった。

 

「……なるほど。確かにチリの言っていた通りですね」

 

「チリちゃんが?」

 

「はい。貴方は兄としてだけではなく、人としても、ポケモントレーナーとしても優秀だと」

 

 オモダカはそう言うと、静かに立ち上がる。

 

「面接を通して人としての優秀さは理解できました。同時に兄としても。筆記試験の結果も大変優秀。では最後にポケモントレーナーとしての優秀さを確かめに参りましょうか」

 

 オモダカに案内されたのは、グラウンド。休校日で本来誰もいないはずのバトルコートの中央には、何故か1つの人影があった。綺麗な緑色のポニーテールをたなびかせ、ポケットから出された片手をヒラヒラと振る彼女の姿は、随分とさまになっている。

 

「彼女が今回の試験官です」

 

「どや、驚いたやろ? オモダカさんに無理言ってポケモンバトルの試験官にしてもらってん」

 

 普段のクールな表情ではなく、イタズラに成功した子供の様な笑顔を見せる。

 

「了承はしましたが、相手が兄だからと言って手を抜くことは許しませんよ」

 

 そうは言ったが、そんなものは杞憂だったと、オモダカはチリの表情を見て思う。いつになく真剣な表情。どんなチャレンジャーとやる時よりも真剣で、今まで彼女のこんな表情を見た事があっただろうか。

 

「嬉しいな。チリちゃんとポケモンバトルなんていつぶりだろう」

 

 そう言ったシシィの表情から、何か優しさの様な、暖かい光の様な何かが消えるのを感じる。そしてオモダカは気づくのだ。

 

 あぁ、この勝負、チャレンジャーはシシィさんの方ではない。チリの方なのだ──と。

 

「ほな行くで! ナマズン!」

 

「行こうか。グソクムシャ」

 

 互いが互いに最初のポケモンをバトルコートに繰り出す。投げ方はお互いフワリとしたオーバースロー。

 

「それでは、ジャッジは私が務めさせていただきます──バトルスタート!!」

 

 果たして勝つのは兄か妹か。その答えを知る者は、この場にいる3人のみである。




名前の由来は、チリ→チリペッパー→唐辛子→ししとう→シシィ、です。
チリちゃんがジョウト出身という事実は特にありませんが、この作品ではジョウト出身です。

お気に入り、評価、感想。リキキリンなみに首を長くしてお待ちしております。
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