ハローチリちゃん、元気ですか?兄ちゃんは元気です 作:宮川アスカ
グレープアカデミーの職員室。デスクワークを行っているシシィの元に、1人の人物が近づく。
「サワロ先生。授業お疲れ様です」
「シシィ先生。お疲れ様ですな」
たった今家庭科の授業を終えたサワロは、シシィの隣となる自身の机につく。ガタイが良く男前な印象を与えるサワロだが、内面は可愛いもの好きで料理好き。シシィとはお隣さんと言うこともあり、話す機会は周りより多い。
「もうすぐ宝探しですか。授業は授業で大変ですが、いざ生徒達が居なくなるとなると寂しいものですね」
「む、そう言えばシシィ先生は宝探し期間を体験するのは初めてでしたな。実際のところ、ワガハイ達教師の方が忙しいですぞ」
「教師の方が忙しいというのは?」
「授業時間以外は、ワガハイ達教師で分担して、生徒達の見回りを行うのだ」
宝探し期間でも、授業自体は開催している。とはいえ、本格的な授業ではなく、宝探し中に戻って来た生徒達からの質問を答える場として設けられている事が多い。
必修科目は授業数が多い為、回数を減らす。授業がある日は学校に残り、授業が無い日は見回りの為外へ。この様に、授業、見回り、休暇といったサイクルを教師全体で行うのだ。
「なるほど。忙し過ぎるのは困りものですが、生徒の成長を間近で見ることが出来るというのは嬉しいことですね」
「ワハハ! もうシシィ先生も立派な教師ですな!」
シシィの言葉に、サワロは豪快さと上品さを合わせた笑いをみせる。
いくら生徒の自主性や主体性を重んじる事を目標としているとはいえ、パルデアの大穴といった立ち入り禁止区域など、何かあってからでは遅い事もある。その様な事が無いよう事前に防ぐのも、教師の役目である。
宝探し開始日まで着々と月日は経ち、シシィの授業も、ついに今日が宝探し前最後の授業となった。いつもより授業を少し早く切り上げ、シシィは生徒達に激励の言葉を送る。
「まずはキミ達の為に特別ゲストを呼んでおいたんだ。入っておいで」
シシィがそう言うと、教室の前の扉が開く。注目が集まる中、教室に入って来た人物に、生徒達からは驚愕や尊敬の念が送られる。
「まいど! チリちゃんやで。美人さんやけど怖がらんといてな」
この教室の視線を独占し、チリは教卓の前へと進む。シシィの横に立ち、笑顔で片手を軽く振る。
「兄ちゃんに頼まれたわけなんやけど、せやな、何から話したろか。知ってる人もおるかもしれんけど、チリちゃんもここの卒業生やねん。せやからチリちゃんも宝探しやってんねんで。あの頃はドオーもまだ、こーんなちっこいウパーの頃で──」
四天王の1人が突然目の前に現れた事により、生徒達の間に少しの緊張感が生まれる。それを感じとったチリは自身の話で、張り詰めていた教室の緊張を紐解いていく。生徒達の緊張が程よく取れたところで、チリは、こんなもんやなと話を区切る。
「さ、今から大事な話するからちゃんと聞いてな。こん中には、ジムチャレンジを行うもんと行わないもんがおるやろう。あたりまえや、宝探しではそれぞれが色んな目的を持って行う。それを理解したうえで、あえてチリちゃんが伝える事は1つや。ポケモンリーグの運営陣として、四天王として、そして1人のポケモントレーナーとして、成長した自分らが挑戦者としてチリちゃんの目の前に再び現れるのを期待してるで」
チリの話が終わる頃には、生徒達の表情は真剣なものに変わっていた。
「チリちゃんありがとう」
「気にせんでええよ。兄ちゃん今から話すんやろ? チリちゃんも聞いてってええ?」
「もちろん」
シシィはそう言うと、生徒達の方を向く。
「僕の方からは激励の前に1つ約束して欲しいことがある。以前授業でポケモンの個体値について話したのを覚えているかな?」
ポケモンには個体値という数値が存在する。同じレベルの同じポケモンでも、個体値によって能力値にわずかな変化が生じる。ポケモンの能力には、HP、攻撃、防御、特攻、特防、素早さの系6つが存在し、言ってしまえばポケモンの生まれ持った天性的な能力を示すものであり、値はレベルが上がったり進化しても変化することは無い。
「勿論個体値が高いポケモンが必然的に能力の高いポケモンと言える。だからね、中には個体値厳選だなんて言葉で、捕まえたポケモンや卵から生まれたポケモンの数値が低いというだけの理由で、育てず野生に見捨てる。そんなトレーナーを旅している中で何人も見てきた。そうなったポケモンがその後どうなるか分かるかい?」
卵から生まれたばかりの子供が親も無しに、野生の世界に放り出される。野生で捕まえたポケモンならまだ、もともと野生で生きてきた経験から野生でも生きて行けるだろう。ただ考えて欲しい。ポケモンを捕まえるのにポケモンを弱らせてからボールを投げるというのが基本だ。勝手に弱らせておいて、捕まえたかと思えばその場でポイ。そんなポケモンが今後も今まで通り野生で生きていけるだろうか。そんなものは否である。
「1度捕まえたのなら、1度卵からかえしたのなら、最後まで責任を持って育てること。それが僕との約束だよ」
個体値が低くたって、鍛えることでのばすことが出来る。勿論簡単なことではない。ただ、トレーナーとポケモンが互いに互いを高め合い成長していく。それも育成の1つの形だ。
「さて、色々と話が長くなっちゃったね。では最後に。この先キミ達は何度も行き詰まって壁に当たる事があるだろう。けどね、それは真剣に向き合っている証拠。案外、気持ちがノッてる時の方が油断大敵だったりするし、つまづいた時こそ成長するチャンスだったりする」
シシィはそう言うと、教室の窓を開ける。フワリとカーテンが揺れ、心地よい風が教室の中を通り抜ける。
「そんなチャンスを逃さない為にも、たまにはこうやって自分の中の空気を入れ替えてあげなきゃね。この時間はこの教室にいるから、いつでも足踏みしにおいで」
生徒達の成長の始まりを知らせる、そんな風が、ニコリと微笑んだシシィの肌を撫でた。
アオイの御三家は何が良いですか?原作同様、投票結果で選ばれたポケモンによって、ネモとクラベルの御三家も決まります。
アオイの選んだ御三家は?
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ニャオハ
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クワッス
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ホゲータ