あの一件から、オレはモルガンの『王を倒せ』などという妄言など一切無視して国のため、民のため、そしてなにより王のために必死で己の仕事を全うした。
ただ、悲しいかな。オレ自身、自分の能力に自信はあったのだが、それが自惚れに過ぎなかったことを思い知らされた。
まず、単純な『剣士』の技量ではランスロットやガウェインには及ばなかったし、統治管理などの事務処理能力もケイやアグラヴェインには敵わなかった。
まぁ、円卓はスペシャリストの集まりなので仕方ないと言えば仕方ないのだが、少しでも王の力になりたかったオレは考えた結果、自身の能力向上のために本人達の邪魔にならない範囲でランスロットとアグラヴェインに修習を頼むことにした。
最初は断られるかと思っていたが両者ともにオレのこの頼みを受け入れてくれた。
ランスロットは単純な剣技だけではなく、王が戦力の底上げの為に一般兵用に開発していた武具や兵器の運用方法やそれらを使用した戦術、アグラヴェインは王城で決まった政策などを地方のごく平均的な官吏達も理解、運用できるようにするための説明、交渉術なども教えたくれた。
二人に教わったことは本当に役に立ったよ。
――――本当に・・・・・・。
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そうして過ごしていたある日、オレは王と王妃が一緒に城内にある庭園へ歩いているのを見た。
昔は二人で遠乗りなどに出かけていたこともあったようだが、王も激務なため最近はもっぱら二人で過ごすときは庭園になっていた。
・・・正直に言うと、オレは王妃があまり好きじゃなかった。
王との婚姻が政略的だったことや、王の性別のことなどを考えると王妃だって悩みなどもあるのだろうし、現在の王妃の立場上、辛いこともあるだろうとは頭では分かっているのだが、どうしても王が王妃と過ごす時間を普段激務の王自身の休息に使った方が良いのではないか?と思ってしまうのだ。
そんなことを思いながら庭園へと向かう二人を見送ろうとしていたオレはあることに気が付いた。
――王が手にナニカを持っていることに・・・。
ドクンッ!と心臓が高鳴ったオレは不敬であることを承知で二人に気付かれないように細心の注意を払いながら後をつけたのだった・・・・・・。
そうして庭園で過ごす二人を物陰で観察していたオレはとんでもない光景を目にした。
――王が王妃に微笑みながらナニカを手渡していたのだ。
オレは頭をガツンッ!!と殴られたような衝撃を受けたよ。
そして自分でも信じられないくらいの途方も無い怒りと嫉妬心が湧いたんだ。
だって、特定の個人に向けられることがないと思っていた王の微笑みが王妃に向けられているばかりか、遠目で何かは分からなかったが王が王妃に贈り物をしていたんだから・・・・・・。
――ズルイだろうっ!!!
オレ達が王から恩賞を預かるには普段から必死で努力して、戦場で命がけで活躍して武功を上げなければならないのに、あの女は王妃という立場にいるだけで何の努力も苦労もしないで王から贈り物をして貰えるばかりか、オレにとっての宝物だった王の微笑みを向けられているのだ。
――狡い、ずるい、ズルイッ!、悔しい、くやしい、クヤシイッ!!、憎い、にくい、ニクイッ!!!
そうしている内に庭園に誰かがやって来た。
――やって来たのはランスロットだった。
ランスロットは王に一言、二言話すと王は二人を置いて城内に戻っていった。
そして、残された二人の行動にオレはさっき見た光景以上の衝撃を受けたんだ。
王妃が王から貰った贈り物をランスロットに見せながら泣き出し、ランスロットはそんな王妃を抱きしめたんだ。
――――なにやってんだ、こいつら?
オレはさっきまで抱いていた怒りやら嫉妬やらの感情を通り越した不思議な気分になった。
え、なんだこいつら?もしかしてデキてんの?いや、デキてるよな?
――――二人して王を裏切りやがったなッッッ!!!
ランスロットには今までのこともあり恩を感じていたし、ギネヴィアには同情していた気持ちもあった。
――だが、そんなもんはどこかに吹っ飛んでしまった。
許さない、許さない、許さないッ!!!
許すとか許さないとかそう言う問題じゃない、『絶対』に許さないッ!!!
オレは裏切り者共に然るべき罰を与え、あの世で王に詫び続けさせるために行動を開始することを決めた。
オレが今の光景を見た、という証言だけでは流石に二人を追い落とすことは不可能なのでまず協力者を集める事にした。
二人が庭園から去るのを確認した後、オレは確かな『怒り』と『憎悪』を抱きながらアグラヴェインのいる執務室へ向かうのだった・・・・・・。