“彼”が静かに瞼を開けた時、そこは微かな光しかない暗闇に包まれた広い部屋だった。天井からは小さな電球が赤やオレンジ色の光を放ち、壁には無機質な鉄の塊……いわゆるロボットが多数並んでいる。頭に巨大なモノアイを載せた人型のそれらは、“何か”を待っているように動かない。
視点が“少年”の近くに戻った時、彼は腰のホルダーから一挺の拳銃を取り出した。背にする壁の外からは轟々と重苦しい音が響き、筒状の部屋全体を小刻みに揺らしている。
『《
天井に備え付けられたスピーカーから男の声が響くのを合図に、それまで岩のように静寂を纏っていたロボットたちが一斉に起動する。見ればその手には一挺のライフルが抱えられ、モノアイにも赤い光が灯っている。だが少年はふうと息を吐き、拳銃を左手に持ち変えて胸のポシェットから
『《
スピーカーからは間を置かずに音声が発せられるが、少年は興味も示さず親指ほどもある特大の覚醒剤を口に含んで奥歯にあてがう。そして拳銃の弾装を外して残弾数を確かめると、もう一度弾装を込めて撃鉄を起こす。拳銃を腰に戻した瞬間、スピーカーから
『《
少年兵【
──
視線はただ出口と思われる方向に向けられ、そこにある横一文字の隙間から光が見えている。
『作戦開始時刻です。総員、出撃準備を整えてください』
スピーカーから女の声が発せられるが、
そして、子供が通り抜けられる程度に広がった隙間……つまり縦開閉式の扉の前で、彼は一度足を止めた。
亜音速で風を切る輸送機のエンジン音は扉が開いたことでより大きく聞こえる。虚空の直ぐ目の前に立つ
思案が纏まるまでのその間は
「総員降下」
ただ一言呟き、既に開放された扉から飛び降りる。ロボットたちも彼に続いて次々と機外へと飛び出して行く。ロボットの骨格を被う流線型の装甲は、空気抵抗を減らすのに適した構造だ。それらロボットのモノアイに埋め込まれている小型カメラから、リアルタイムで風防のガラスに写される異様とも言える光景を見守りながら、輸送機の操縦桿を握る操縦士の片割れが言う。
「いつ会ってもとんでもないガキだ」
彼らは何十という人型の機械を従えて宙へと飛び出した
しかしこれも無理もない。致死量を遥かに上回る量の覚醒剤を取り込んだ彼の身体には、既に異変が始まっていた。細くしなやかな腕から肩を通り、華奢な胸から喉に、そして目元の周辺には太い血管が浮かび、
決して強靭ではない心臓の拍動も分間200回を越える数値であり、まさしく寿命を削る危険な状態である。
もう一人の操縦士も、声を震えさせながら一言。
「あんな小さな子供が……まるで……………………」
────そうだ。この
────否、彼は
その黒い瞳が見据える先にあるものとは、果たして………