一人の女をめぐる、男女の友情っていいですよね。あと人を勝手に利用しようとすると上手くいかないのは世の常どす。
ラムちゃんは二人の人生を狂わせた責任を取るべきだと思います。
「くそ~ッ、金欠じゃ、ラムの居ぬ間のガールハントに珍しく2,3人ひっかけたと思ったら奢らされて終わり!流石の紳士な俺もやってられんわ!」
とある休日、友引町の商店街を毎度お騒がせ男、諸星あたるが愚痴りながら闊歩する。
ちなみに空飛ぶ電撃女房のラムはテンの実家に行っている。テンの母親から実家の掃除を頼まれたのだ。帰ってくるのに数日かかるらしい。
美人局までいかずとも財布扱いに怒り浸透だったが、懐の寂しさに心が冷えため息を吐く。
「やーねぇ、また金欠!でもおユキのアホに頼ったらまた損するだけやからな‥‥」
商店街の安売り品を吟味しながら歩いていたお騒がせガール、ランも愚痴を吐く。レイの食費代はバカにならないのだ。そしておユキや弁天を利用した金稼ぎもさすがに懲りた。かといって地球の普通のバイトじゃとても足りない。こちらもため息を吐く。
「「はあ~!!」」
「「ん?」」
ため息がシンクロした時、二人は邂逅した。
二人は公園のベンチに座り、互いに憂いを帯びた顔で懐事情を語り始めた。
「へえ、ランちゃんも金欠とは…」
「そうなの、レイさんの食費が嵩んで……」
「くっ、あの甲斐性なし!許せん!ランちゃん、ここはひとつふたりで遠くの新天地でやり直すというのは?」
「そのお金は?」
し~~~ん。
金がなければデート一つ出来ない現実に、二人はうなだれるだけであった。
と、その時。風に乗ってチラシがあたるの顔に飛んできてへばりついた。
「ぶはっ!なんじゃい!」
あたるが顔からチラシを引き剥がすと、それを見たランの表情と声が激変する。
「ダーリン!こ、これは…」
「ん?こ、これはッ…!」
チラシの内容はこうだった。
【青少年健全委員会推薦カジノ【じんせーばら色】、未成年入場大歓迎!(ただし男女ペアでのみ入場可能です)住所 ●●県〇〇番地】
「せ、青少年向けのカジノ…」
「男女二人……」
(ラムは今おらん…第一あいつがギャンブルを得意だとは思えん…)
(レイさんはカッコいいけどレイさんの知能でカジノなんて無理………)
二人は互いの目を見た。
「ランちゃんっ!」
「ダーリン!」
二人は固い握手をかわした。今、ここに男女の友情(金)は成立したのだ!
「着いた!しかし何故こんな山奥に建てたんだ」
「そうね、ドレスが汚れちゃうわ!」
翌日、某●●県の山奥に二人はやってきていた。UFOでの道中をラムの悪口(本気じゃないよ)で盛り上がりつつ、山奥にそびえたつ一軒の巨大ドームを見つけたのだった。ちなみに一応二人ともドレスコードのため黒いタキシードと赤いドレスを着ている。ちなみにあたるのはレイ用なので袖捲りしている。
「しかし球場ドーム型とは、宇宙人が経営しとるんか?」
「まさか~!」
話してるうちに入口にたどり着き、学生証を見せて中に入る。ドーム中央のホールにつながる廊下を歩きながら二人の脳内は企みで煮えたぎっていた。
(金も儲けてランちゃんとデートも出来る!一石二鳥じゃ!もしかすればグフフ…)
(レイさんの食費!いざドンパチとなればこのアホを囮に!どうせ死なんじゃろ!)
((このチャンス、逃すものか!))
そして会場に入ると、目に映る景色も耳に入る音もすべてがけたましかった。
カジノらしく様々なゲームが立ち並び若者たちが熱中している。バニーガールやボーイまで居る本格仕様だ。ぎんぴかじゃらじゃらと効果音が永遠に鳴り響いている。
「ほーほーにぎわっとる!金の大切さも知らんガキどもでいっぱいじゃ」
「まったくね~、お金を湯水のように使うなんて信じられないわ!」
ゴリゴリに自分たちを棚に上げた発言をしながらホール内を歩いていると、ぐにゅ、とあるものを踏んづける音がした。
「おっと、悪い…」
あたるが踏みつけてしまった足の下を見るとそこには。
タコだった。
青白いタコが、掃除のおばちゃんルックで汚れた床を拭いている。
そのままあたるが足をどかすと、タコはおじきをして掃除に戻っていった。
「…宇宙人より変なのも溢れとるな~」
「地元の妖怪とかじゃないかしら」
「まあ珍しくもないしな」
妖怪やら宇宙人に出会いすぎて既にあたるの常識は狂っていた。ランも興味ない物は基本的にスルーするタイプだった。
一方、そんな二人を監視カメラを通して別室から一人の男が覗いていた。
『ふむ、頭の悪そうな顔をした男と頭の悪そうなふわふわビジュアルの美少女とな?……カモじゃな、そいつらを捕まえておけ』
男はワインを掲げ、ひげを揺らした。
屋台のタコが焼いてるタコ焼きをつまみながらゲームを物色していた二人の元へ、金色の袴姿のある男が話しかけてきた。ちなみに監視カメラの男とは別人だ。
「いやあお二人さん。ここは初めてでっかな?」
「はあ、そうですが」
「お兄さんは常連さんなの?」
「いやいや、わしもここは2回目で勝手を少し覚えたぐらいや。どや、わしと勝負せんか?あんさん方とならゾクゾクした勝負が出来そうでな、いい目をしてるからな、掛け金はまだゲームしとらんみたいやし手持ち全額でええで?わしもそうしたる」
「…どうする?ダーリン」
負けてしまったら借金だ。が、借金が怖くてカジノに来る奴などいない。それに男の袴は金色だったので金持ちだろうとあたるは踏んだ。
「せっかくだし売られた勝負は買っちゃるか」
というわけで流れるように謎の男と勝負する流れになった。
「勝負は三回戦。と言っても1VS2じゃあれやから、あんさんらどっちか一人がわしと戦うって奴ですわ」
「では第一勝負はスロットです!」
いつの間にやら司会やギャラリーも整えられ、勝負の幕が切って落とされた!
「司会のバニーのねーちゃん、住所と電話番号おせーて!」
「発作起こすな!」
「ま、スロットは半分運勝負や。気楽に行こか」
のんびりとスロットのレバーをいやらしい手付きで触りながらそう告げる男の横にあたるは座る。自信に満ち溢れた顔で。
「ふっ、数10メートル先のレディーの顔やスリーサイズすら見破る俺にかかれば…」
『ハズレ!スカ!』
「あれ~?」
「おい!」
その後もあたるはことごとく外す。みんな忘れていると思うがあたるは仏滅、不幸の星の元に生まれた男。天性の運などないに等しいのだ。
「何やってんねん、こうなったら……」
ランは懐からとあるものを出した。それはAプラン『普通に勝って帰る』為の作戦の一つに使うものだ。
「ダーリン!これを見て!」
「ん?」
数分後。
「サクラさん、サクラさん、サクラさぁーん!!!」
「しのぶしのぶしのぶ!!!」
「竜ちゃん竜ちゃん竜ちゃん了子ちゃん了子ちゃん了子ちゃん!!!!!!」
連続でスロットの777を当て続け、さながらゲームセンターあら○のごとくあたるはレバーとボタンを宙返りしながら叩き続ける。
「す、すごいわダーリン!スロットの柄を女の子に見立てることで全て見切っている!こんなチンケな催眠が効くアホのダーリンだから出来たのね!!」
なけなしの五円玉(紐付き)と【馬鹿でも出来る、アホにもかかる催眠術】という本を握りしめたランが後ろで叫ぶ。これで軍資金が出来た。
(ちっ、意外とやるやん。もう作戦2に入るで)
それを隣で見ていた金の袴男は指でジェスチャーサインを物陰に潜む男達に送った。
「第二勝負は麻雀です!」
バニーガールが高らかに宣言したが、あたるが種目の疑問点に突っ込みを入れる。
「ちょっと待て、普通麻雀は二人だとできんじゃろ、俺もやるのか?」
「ふっ、なあに。なら暇そうな奴二人入れよか。おい、そこの二人のにーちゃん!」
男はギャラリーの方に声をかけ、呼ばれた男二人が前に出てきた。
「二人はダミー役や。どちらかが先に上がったら勝ち。上がるまでは普通に親の周回は続く。本物のルールより単純やろ?順番から言えば次はそっちのお嬢さんの番やな」
直々の指名をもらい、ランは麻雀卓に着席する。
「ランちゃん麻雀出来るの?」
「ダーリン、原作のランちゃん達のクラス会を友引高校でやった回を読み直してみて?」
「あっほんと!麻雀やってる!」
懐から取り出したうる星やつらの単行本を握りしめながらあたるはいいリアクションを返す。
「でもまあ、腕前は我ながら普通ね」
「よし、任せなさい」
あたるが胸をたたき力強く宣言した。
そして勝負が始まる。
忍び足でこっそり相手の裏に回ったあたるは、どこからともなく取り出したプラカードに相手の牌の絵を描いていく。
「むっ!」
背後の気配を感じ袴男は振り向く。
が、そこには無人。
それもそのはず。あたるは瞬時に天井にへばりついていたのだから。
そしてランはそのプラカードを一瞬確認し牌を捨てる。
そんな感じで忍者のように、物陰に潜むゴキブリのようにあたるはあらゆる角度から金袴男の牌を盗み見てそれをランに教えた。ギャラリーたちにも動きを捉えられないあたるの超人的な動きは日々光速で降り注ぐ電撃を受けたり避けたりして身に着けたものだ。
が。
(相手の牌が分かってもアガれん…!こんなに引きが悪いことあるんか?)
ランの牌はとにかく動かないまま、親は流れそのまま…
「ロン!これで一勝一敗やな」
勝利を手にしてにしし、と男が笑う。
(…どうやら他2人は事前の仕込みか、舐めた真似しくさって!)
ランはそう推測した。適当に呼んだ数合わせがサクラだった、という事はこいつの台詞は真っ赤な嘘だらけという事だ。まあ、こちらも反則をしてるので堂々とした指摘は苦しいが。
「くっ、一勝一敗か、やりおる」
「あーん、ランちゃん負けちゃった〜」
これで勝負は最終戦にもつれ込んだ。それと同時に、勝負にとある乱入者が現れた。
「…この勝負、私も参加させてもらおう」
「その声はわが友、博変王ではないか!」
顔がトランプのキングみたいなステテコどてらのおっさんが突然現れ、唐突に宣言した。どうやら袴男の知り合いのようだ。
「…気の抜ける顔だ…」
「…宇宙人でもこんな顔中々おらんで……」
二人の感想を聞き流しながら、博変王は袴男の隣に立つ。
「ふっ、ということは最終戦は2vs2じゃ。どちらが勝っても恨みっこ無しと行こうではないか」
「まあ別に良いが………」
しかし、この判断が後に両者を苦しめることになろうとはまだ誰もそんなことを思っていなかった。
「決勝戦はルーレットです!」
「2VS2である必要がないゲームではないか!」
「わしらは黒!」
「なら赤!」
ルーレットはディーラーが回転させるため、黒か赤にレイズする金額以外はほぼ運と確立の勝負なのだが、勿論そんな真っ当にゲームが進むわけもなく博変王と名乗るおっさんがさっそく動いた。
「あっ!UFO!」
「「何!?」」
2人は至極真面目なシリアス顔で博変王が指差した方向を振り向いた。
ラムにこのタイミングで見つかったら計画はぐちゃぐちゃなのである。UFOという単語は2人にとってジョークでもなんでもない。
そしてその隙に。
博変王はすばやくルーレットの玉を掴み黒に置いた。
「はいルーレット、勝ち〜」
「「あ!」」
「まあルーレットは20回勝負。まだまだチャンスはありまっせ?」
特に何もしていない袴男がへらへらと声をかけてきて二人はにらみつける。
こうして小学生みたいなイカサマをされ、その後もたぶんイカサマをされている事には気付きつつも一度も証拠を掴めないまま負けだけが込んでいき、小学生のイタズラにも騙されるレベルの二人はとうとう口論を始めた。
「アホが!!!そこで大量betするヤツだからお前はアホでモテへんのじゃい!!!」
「何おう!!!そっちこそちまちま負けて結局トータルマイナスじゃないか!!!こんなら無駄に豪運のラムの方がまだマジじゃい!!!」
「言ったな!?ワシはラムと比較されんのがこの世で一番嫌いなんじゃい!!!特にワシが会った男の中で一番のアホのおんどりゃには!!!」
「ああ!?アホなのは認めちゃるがあの顔以外取り柄なしのバケモン以下とは訂正してもらおうか!」
「レイさんを悪く言うかおんどりゃ~~~!!」
「ラムと無理矢理より戻そうとしたクソボケアホを悪く言うて何が悪いんじゃ~~~!!!」
「こ、こわ・・・」
もう相手側がちょっと引くレベルの大喧嘩をしていた。
だが袴の男の方はその光景を見て気持ち悪いぐらい二ヤついていた。
「ヒヒヒッ、金という欲望に取り憑かれカップルが破局していく………コレこそ私が見たかった光景!カジノ経営権の代わりに数千万の破局を経験した私の人生に残された唯一の楽しみじゃ〜〜〜い!!!」
「よっ、おぬしも悪よの!」
「イカサマ旅氏のおむしにいわれとうないわwwwガハハwww」
カジノ経営者とイカサマ師であることを自らゲロりバカみたいな高笑いしてる2人を見て、喧嘩してた2人は少し頭が冷えとりあえず喧嘩は止まる。
「くっ、喧嘩してる場合ではない!その間にすっからかんになってしまうぞ!」
「くっ、そやな。相手はトランプみたいな顔のイカサマ男と性根が悪そうな顔長男。ランちゃんが勝てない道理は無いわ!」
「俺は?」
が。頭が冷えたところでどうにもならないこともあるわけで。
「あっ虎の服着た爽やかなハンサム!」
「なぬ!」
「あっ絶世の美女!」
「なっ!」
「あっ金ぴかのウシ!」
「「なに!!!」」
「あっ山盛りの牛丼とおしんこ!!」
「「へ??」」
こうして全部に二人はひっかかり。
「はい、貴方達の負けで~す!」
「「あ~!!」」
二人はあっさり敗北した。
それを見届けた袴男は立ち上がり、意気揚々とこう宣言した。
「というわけで、手持ちの全財産をいただくぜ。貴方達の金、土地担保、人権、親戚一同のありとあらゆる全財産をよこしてもらうで?」
「はあ!?手持ち全額とは言われたがそこまでは許可しとらんぞ!」
「そーよそーよ!」
「逆らうか?よし、二人をひっとらえろ!」
「えっ、ちょ、ギャーッ!男がべたべた張り付くなーーーッ!!!」
「あ~ん怖いぃ!ってどこ触っとんねんしばくぞクソが!!!!」
という訳で講義も虚しく二人は大量の黒服にドナドナされ、ドーム地下の部屋に連れていかれてしまった。
じかーい、じかい。
「お前にも、いいとこってあるんやな……」
「諸星貴様----!!!」
「ラムって…ほんっっっとアホ!!!」
「つけダコ大作戦」という、お話。