うる星やつら -短編集-   作:リベンジ

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つけダコ大作戦

「ちくしょうが!監禁とはいたけいな青少年をなんだと思ってやがる!」

「そうじゃ!大体おのれらが先にイカサマしたんやろがーーッ!」

真っ暗な部屋に閉じ込められドアに向かってひとしきりクレームをぶつける二人だったが、途中でランが重大な自分のミスに気づいた。

(そーいやワシ、ぶりっ子やった!ダーリンには隠しとったが…)

「あ、あのダーリン?その…ランちゃんの…」

「何じゃい、今話すことか?」

「い、いや…ワシは」

「ワシでもランちゃんでもいいよ、ランちゃんはどんなランちゃんだろうが可愛いんだから、にゃはは」

「……他の奴にワシの本性言ったら殺すからな」

「はーい」

もう大概バレてるよなあとはさすがのあたるも後頭部から銃火器で脅された状況では言わなかった。

「てかランちゃん」

「何や」

「その銃でドア壊せば?」

「…考えつかんかったわ」

「何?つまり…深層心理では密室で二人きりになりたかったということ!いっただきま~~~す!!!」

ランはル●ンダイブしてきたあたるに無言で銃を発射した。

そのまま吹っ飛ばされたあたるはドアとは逆側の奥の壁をぶち抜き、広い部屋へ転がる。

 

「ん?こ、ここはっ!」

起き上がったあたるの目の先には、豪華絢爛な巨大メカがそびえたっていた。

「巨大コンピューターだわ!こんなのうちの星でも中々見ないわ!」

そう、その部屋にあったのは超高性能巨大スーパーコンピューターであった。

「やっぱりこんな物騒なものがあるということは、宇宙人のしわ…」

「隣に巨大なうさんくさい社もあるわっ!」

「…どっちかわからんな」

「よし!両方壊しましょう!」

「賛成!」

あたるがハンマーを社に、ランが火炎銃をスパコンに構えると同時にそれを遮る声が聞こえた。

「待って!それを人の手で壊すと貴方達もタコにされちゃうっちゃ!」

ものすごく聞いたことがあるしゃべり方が聞こえた為二人は手を止めて振り向いた。

……タコだった。

「…地球のタコって喋れるの?」

「タコにされちゃうとそうらしい」

「もうこんなにも沢山タコにされてるんですっちゃ!」

タコが指さした方向には、残りの部屋のスペースを埋めつくすタコで溢れかえっていた。

「大量の働かせられるタコ、そして借金を背負った人は黒服に捕まる…ということは……」

「こ、このタコ達はまさか……全員債務者ってことか!?」

「そうっちゃ!」

「…なんだそのしゃべり方は」

「おれの地元の方言だっちゃ!」

「…ワシも関西のドラマ見て日本語覚えたからな、そういうこともあるじゃろ」

「…あいつどこの地域の勉強したんだ…」

「借金を返さないとずっとここで呪いのタコ焼き製造妖怪になって1日21時間ライン仕事をさせられるちゃ~~~!!!」

「返せばいいではないか」

「利子がトイチなんけ!」

「おユキみたいやな…」

「この社は地元の参拝客が山奥だから全然来ずに儲からなくて神様が不貞腐れた福の神らしいんちゃ。それに目を付けたあいつらカジノの人たちが自分の星のスパコンをくっつけて神の力を増幅させたって言ってたっちゃ!何故タコなのかはわからないけど…」

「面堂が口をチューチューさせながら言っとったな。タコは日本の幸福の象徴だと」

「「へ~~」」

「で、借金抱えた奴を強制的にタコに変えて働かせれば自分らは幸福という訳だな、冴えておる!」

「ねえ、貴方はなんでそんなに詳しいの?」

「あいつら毎晩浴びるほど飲んで企み全部口に出すからだっちゃ。ここにいるタコ達はみんな知ってるけどタコだから逃げることも出来ないっちゃ」

確かにタコが逃げれば漁師が出てきてお陀仏だろう。

「しかしやっぱり宇宙人だったか、あの変なトランプ顔は…」

「いや、宇宙人なのは袴のおじさんの方で顔でトランプのおじさんは地球人って言ってたけ」

「…タコちゃん嘘でしょ?」

「おれ嘘つかないっちゃ!」

そして一通り話し終えると、気が抜けたのかタコの瞳からはぽろぽろと涙がこぼれ始めた。

「うう、おれ、ただ、中学入ったから記念に好きな子にプレゼントあげたかっただけなのに…なんで借金なんかしたけ……」

涙を前にして、二人はいつになく険しい顔で固まる。

二人にとってそれは、口調も相まってめそめそ泣いている大切な女の子に重なって見えた。

「ねえ、ダーリン。この子……」

「泣くな。男じゃろがい」

ランが言い終える前に、あたるはタコの頭をひっつかみワシワシと撫でた。

「男はなあ、泣いていいのは女の子にフラれた時と旨い飯を食いそこなった時だけだ。それ以外でなんか泣きたくなったら…泣くより前に仕返ししちゃれ」

「し、しかえし?」

「ついでじゃ、手伝ったるからお前らも俺たち手伝え」

あたるはタコの群れの方に歩いて行って、何かしらの作戦会議を始めた。

 

30分後。

賑わい続けるホールのフードコートで先ほどあたるとランを負かした二人はすっかり出来上がっていた。

「今日もカモを数人ひっかけてやったわ!いやーゆかいゆかい!」

「全くだ、酒が旨い旨い!」

「お主は学生にしか勝てんから学生限定カジノと銘打ったのは大正解だったのうガハハ!」

「ハハハぐうの音も出ん!しかし宇宙人と名乗ってたのが酒の席の小粋なジョーク(笑)でなかったのも驚いたわい!!!」

と、最高の時を楽しんでいたその時だった。

床に猛烈なヒビが走った。

「な、なんじゃ!」

そしてそのヒビの隙間から。

ぷしゅ――――――――――――――――――っ!!!!!!

大量の黒墨があふれ出し、煌びやかなホールを真っ黒に染め上げていく。

瞬く間に会場中は大パニックになり、出口からまだカモられていなかった幸運な参加者たちが逃げ出していく。

「な、なんじゃあこいつは!…まさか、タコ!」

「そのとーり!9本足キック!」

「ぐえっ!!!」

再びスタッフ用の階段からホールに出てきていたあたるとタコは8本足と右足を合わせて袴男の顔面に飛び蹴りをかました。

「俺は女は殴らん、そして……女と俺を舐めた奴と弱いモンを泣かした奴は殴る!人生ズタズタにしちゃるわ!」

「蹴り…だわいこれは……」

「このっ!このっ!髭ちぎってやるっちゃ!」

「いいぞジャリタコ!やれやれ!」

「………へえ………」

後に続いてホールに戻ってきたランはボロボロのままタコを応援するあたるの一部始終を見て、自分の認識を改めつつあった。

(ワシゃラムがレイさん捨ててこのアホを選んだワケが分からんかった、だからラムはレイさんを取り戻すつもりかと、思っていたけど……)

「お前にも、いいとこってあるんやな……」

「ん?なんか言った?」

「別に?一寸の虫にも五分の魂があるちゅーことや」

(ま、ワシはアホはゴメンやけど)

そしてラムと張り合うのも、もう懲り懲りだ。いい加減彼女とは落ち着きたい。

「ま、一泡吹かせるのは賛成ね、ランちゃん、友情ってやつを壊すのが一番好きなのっ!!!」

「うっひゃあ頼りになる!」

ひ〜こわ〜と内心思いながらあたるは賛同する。

「そういうわけならBプラン、やっちゃってもいい?」

「ま、こうなったらそれがいいだろうな!しゃーなし」

覚悟を決めたあたるはスーッと息を吸い大声であの名前をこう叫んだ。

「面堂のむっつりドスケベ野郎---!!!」

「諸星貴様----!!!」

「ほいきた!」

虚空から現れた面堂の攻撃にあたるは真剣白羽取りで挨拶を返す。

「嬉しいぞ面堂、お前は俺が困っても困らんでもすぐ飛んでくる!」

「こちらは1ミリも嬉しくないわっ!」

「…ストーカーってこと?」

「モテる男はつらいよ!」

「何を言ってるんだっ!あ、ランさんこんにちは、麗しいドレスですね〜」

刀を振り回しながらギザな挨拶をする面堂にランは内心こいつはヤバいなと確信した。

刀を避けながらあたるは面堂を説得しようとする。

「面堂!よく聞け!」

「貴様の話など聞く耳持たん!」

「ここでは沢山の麗しい女性とタコの妖怪が泣かされておるのだ!そして悪の親玉はあの2人じゃ!」

「…それを早く言え」

面堂は刀を構え直すと、こっそり逃げようとしていた二人に向ける。

「女性とタコを泣かす奴はこの面堂終太郎が叩っ斬ってくれるわ〜〜!」

「「ぎゃ~~~!!!危ない人だ~~~!!!」」

面堂が突進すると、刀を振り回す本物の危ない奴から二人は一目散に逃げ出した。

「よーし他のタコ共も出てこい!反撃の狼煙じゃ~!」

あたるの宣言と共に、会場で働いていたり潜んでいたりしたタコ達が一斉に動き出した。計画を知らされたタコも何も知らないタコも今しか反逆のチャンスはないと本能で理解し、会場内を荒らしまくる。敗北とクソ労働でストレスがマッハだったのだろう。次々と黒服やバニーガール、ディーラーたちが墨まみれになりながらボコボコにされていく。

「これでよし!ランちゃん!更にBプラン始動じゃ!」

「ええ!」

ランはUFOからもしもの時用に持ってきていたUFOの連絡通信の子機を取り出す。のちに地球では携帯電話と呼ばれる代物だ。素早くとある所に電話をかける。

「ラムちゃんこんにちは!」

『どうしたっちゃランちゃん?うち今地球には…』

「あのね、ランちゃん今ダーリンと●●県の山奥の○○番地に二人で来たの!そして沢山二人であんなことやこんなことされちゃったの!」

ブッ。

電話が切れた。これで準備は万端だ。嘘は言っていないし罰されるのはどうせアホダーリンだから特に心は痛まなかった。

そう、二人でこっそり決めていたBプランとは。

「激怒したラムの電撃で会場を全部無茶苦茶にしてどさくさに紛れて金を盗む」という最高に倫理観のない計画だった。電撃と嫉妬覚悟で負けて借金がかさんだ時に使おうと思ってた奥の手だったがもう運営を殴ってタコのクーデターを起こしてしまったのでしょうがない。面堂を呼んだのはついでと二人っきりではないという証人役だ。

元より青少年健全育成会公認カジノなど嘘っぱちだと思っていたので、盗んでも警察に突き出されることはないとまで二人が考えていたかは怪しいが。

そして呼び出しを終えた二人は、解放された債務者達(タコ)と刀を振り回すイケメンが大暴れして大混乱のホールからこっそりと再びスタッフ用の裏口へと入っていった。廊下を走り、その先にあったスタッフの楽屋へと押し入りする。

「おい、貴様ら…」

「えい♡」

ずぞぞぞぞぞ。

一応ドアの前に一人残っていた警備も、ランのキスで若さを吸われ撃沈した。

「い~~~な~~~い~~~な~~~!!」

「計画成功したら考えてあげるから早く!」

「ラジャ!!」

(考えるとは言ったがもうやるわけないじゃろアホが)

そうして入れた楽屋の奥の無人の監視カメラ室の横に、金庫があった。

「よし、今のうちに!」

「ええ!」

「金庫から金を根こそぎいただこう!」

「鍵はレーザーガンで焼き切るわ!」

憎い相手に対する卑怯卑劣な行いに躊躇がこれっぽっちもない二人は、ノリにノッたら無敵だった。 

「そこまでだ!」

しかし、まだ残っていたカジノの部下の黒服達が駆けつけて2人は囲まれてしまう。

「いいんか?」

「何がだ!」

「後ろ後ろ」

あたるが指をさした方向には。

「ランちゃんの嘘だと…思ってたのに、信じてたのに〜〜〜!!!」

烈火のごとく怒りに包まれていたラムがいた。電話してから数分でUFOをワープで飛ばし地球に戻ってきたのだ。

そのまま電撃で大量の黒服を根こそぎなぎ倒し、その間に二人は手際よくテキパキと金庫から札束を取り出し、どこからともなく取り出したふろしきにありったけ詰め込んで背負った。

「ラムちゃん大好き!さあ行くわよ!」

「ナイスじゃラム!そのまま電撃かませ!」

「言われなくてもかましてやるっちゃ!」

ラムは怒ったまま次々とあたるに向かって電撃を飛ばしてくる。

あたるはそれを全て避け、電撃で次々にドームが破壊されていく。

「諸星、貴様またラムさんを泣かしおったな〜!」

ホールを通り抜ける際についでに面堂も追って来てしまったがそちらも躱す。

ここまでは完璧な計画だった。すべてがうまくいった。

「なははは、これで大金持ち、夢のハーレムじゃ!面堂も奴隷で雇っちゃる〜〜〜!!」

「レイさんのご飯!レイさんのご飯!ランちゃんとレイさんの未来!」

ガハハハ!!!、と風呂敷に札束を包み豪快に笑いながらドームの出口へと走る二人をラムと面堂は怒り全開で追いかける!

二人の怒声を聞きながら、金で心に余裕の生まれた二人は同時に同じことをこっそり心の中で口にした。

((ま、これだけ儲けたしラムにもなんか買って……))

と、その時。

「ぜ~~~ったい、許さないっちゃ〜〜〜〜!!!」

ラムのフルパワーの雷撃が、廊下の衝撃でむき出しになった配電盤に直撃した。

 

ちゅど〜〜〜ん!!!!

ドームは跡形もなく爆散した。

 

「なあ、ランちゃん」

「なんじゃい、ダーリン」

黒焦げ一歩手前の2人は、瓦礫に座り込み紙幣のチリを見つめながら語り合っていた。

「ラムって…ほんっっっとアホ!!!」

「そやで…」

「ダーリン!ランちゃんとふたりっきりでここに来た件をじっくり問い詰めてやるけ!」

と、2人の間に自分も煤汚れながらも怒り心頭のラムが割り込む。が、

「お前はこの惨状でよくそんなこと言えるなっ!」

「せや!お前がやりすぎたせいで全部台無しやんけボケーッ!」

「「責任とれ!!!!!!」」

「え?え?何で2人とも息が合ってるちゃ!?」

「「お前のせいだ(や)!!」」

予想外のダックでの反撃を喰らいラムは戸惑う。二人から怒られる事には慣れているが二人が息を合わせてるのが予想外すぎたのだ。

「わ〜んくらいよせまいよこわいよ〜!」

ドームだった瓦礫の残骸の山で、ズタボロの3人の喧嘩と瓦礫の下の一人の男の悲鳴、そして無数のタコから戻れた債務者達、黒焦げ墨まみれの黒服やバニーガール、袴男と博変王などの気絶者が夕陽の景色に染め上がっていた。

燃え焦げた札束が雪のように降り注ぎ、灰へと帰っていく光景は部外者ならばとても美しく感じただろう。

「お兄ちゃんお姉ちゃん、ありがとだっちゃー!」

だが、なんとか燃えずに残った3千円ちょいを抱えて家へと走って帰っていくタコから戻れた少年にもその光景はきっと美しかっただろう。

 

結局本日得たものは、金ではなく破壊と暴力の果てに芽生えた…。

 

後日、友引町の喫茶店ではたまにこんな光景が見られる。

「ラムの奴、また変な物買ってきて俺に……かくしかかくしか」

「ラムちゃん、この前2人でお茶した時…あだこだあだこだ……」

「でもな〜あいつ悪気がないのが怒鳴りづらい!」

「ほんまや!怒ってるこっちが分からずやみたいやんけ!」

「「あ〜〜〜!!ラムのアホ~~~!!!」」

あれから、苦楽を共にした二人には特定の人物を挟んだ恋愛抜きの奇妙な絆、同族意識が生まれていた。お互いお金がないためコーヒー一杯で粘るくどくどした(愛ゆえの)愚痴大会と同刻、あたるの部屋にいたラムはくしゃみをした。

「へっくち!」

「なんやラムちゃん、風邪か?」

「ううん、なんか噂されてる気がするっちゃ!」

まったく、この子はモテる女である。

 

 

 




2期楽しみです。あと3,4エピソードは書きたいですね。
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