出オチ魔王に徒手がインストールされたら 作:レンガチェッカー
『ご気分の方はどうでしょうか?』
「大丈夫だ。少々頭がふらつく程度で問題ない。」
ナイトの側でモラクスは休んでいる。
結論としてモラクスは武闘家デュラに敗北した。
勝敗を決したのはデュラの仕掛けたクロスカウンター。
それが顔面に直撃したからだ。
今の姿は傍から見れば大きな鎧の騎士の腕によりかかっているという二度見確実な光景でもあった。
肝心の勝者であるデュラは近所の村人の誤解を解きに行動している。
どうやら村の子どもにデュラが誰かとケンカしてると思われて誰か止めてくれる人間を呼んでいた模様。
嫌われてる素振りはなくその子どもの兄貴分みたいだ。
【邪】に名を連ねる魔王、モラクスの前で取り繕うことに意味はない。
心の奥底は掴めなくてもおおよその人間性は少し観察すれば把握できる。
モラクスに映る彼の姿は強く精神の呪縛もなくどこまでの気のいい人間。
話す言葉に品はあまりないが人間の醜さというものを感じられない。
だからこそ思う。
デュラのような人間が既にいるのに何を導けと?
醜い心を持つ人間がいるように美しい心を持つ人間がいる。
ならば彼らは必ずどうであれ新しい時代に進めるはず。
魔王はいずれ人間から出るだろう。
ならば我らのような魔王は不要。
しかし大義がなくてもこの身には命、またはそれに近いものがある。
そうであるからにはもって300年、生きなくてはならない。
せめて生き方だけは考えよう。
自分は【邪】の魔王。
「…あぁ、そうだ。」
モクラスは小声で呟く。
「【邪】なんだ、なら…」
あの男のようなあり方の魔王になりたい。
「こうも清々しいと心が…考えが…変わる。【邪】に対して邪で在りたいな、と。」
本当は邪に邪であっても美しいと思える存在ではないのだろう。
でも指針やフレーズとしてはおもしろいかもしれない。
「モラクス頼む!ちょっと、いやガッツリ俺の釈明に手伝ってくれ!とても誤解されているから!」
ここの村はとても賑やかだ。
生きるなら悪くない。
「……わかりました。…ありがとう、ナイト。」
ゆっくりと立ち上がる。
_________
ダーナル村は住人は知らずとも、とある魔王と魔物が時々訪れる不思議な村になっていた。
それとは別にダーナル村から近い都市にある闘技場では二人の武闘家が誕生した。
モラクスとデュラだ。
闘技場での有力者は獣人、エルフなどの種族が多い。
人間よりも突出した長所があるからだ。
人間にも以前から強者はいるが魔法を主体に闘う者が勝ちやすい傾向でその中で武器を持たず闘う二人は異常、しかし人気を得た。
もっともモラクスが魔王だということはナイト以外知る由もないことではあったのだが。
数ヶ月も経てば闘技場の戦士たちにも変化が発生し、魔法主体で挑む者も格闘戦に詰められたときに状況に応じては近接武器による格闘で対抗するような近接戦重視の環境になった。
ことの発端は_
「おん?カネが稼げる場所?」
「はい。」
人間のいる所では何かと金が必要になる。
魔王はダンジョン運営により物資を調達することが基本だが生まれたばかりの新人魔王はそういうわけにもいかない。
ダンジョンコアとかなるものを設置すれば運営開始となる。
しかし今それを行うと魔王は設置した場所から離れるのは難しくなる。
ダンジョンコアを破壊されると魔王の力を失うらしい。
コアの防衛をするような戦力が必要だ。
しかしモラクスは既に魔王のあり方に疑問を抱き、魔王による干渉で多数の人間の命が失われるようなダンジョンを作りたくはないと考えている。
ナイトに相談した。
すると「私が集めて来ましょう」と答えるため流石に止めた。
最近ナイトがヤバい。
献身的で理想の配下のため素晴らしいがここ数日でお世話されすぎている。
配下に直接頭なしに稼がせるのは申し訳ないため自力で稼げる方法を探してデュラに尋ねた。
「普通に日雇いとかもこの村でやってるが…」
彼は畑の手入れを終わらせひと休憩している。
ちらりとモラクスを見た。
「んなこと聞きたいって感じでもねぇな。それなりの額が貰えるとなるとな…ダンジョン、他は闘技場で戦って…か?」
ダンジョンは論外だ。
流石に他の魔王の業務妨害になる。
闘技場は言葉の知識としてはわかる。
ダンジョン同様身体を張るもののそちらが無難だろう。
「…闘技場?」
「おう。興味あるか?」
「えぇ。」
デュラは少し考えてから…
「そんじゃいくか。」
彼はモラクスとナイトを連れて行く。
モクラスがなぜ人間の使う貨幣を欲しているのか?
村に自身のダンジョンコアを設置しようと考えているからだ。
村に設置すればダンジョン運営のための糧、人の感情を集めることができるしダンジョンを発達させる必要もない。
ただ問題があるとすれば村が寂れてしまうとダンジョンポイントと呼ばれるものが獲得しにくくなる。
さらにダーナル村は【岩】の魔王のダンジョンありきで急速な発展をした。
モラクスよりも早く生まれた魔王のため、【岩】の魔王が死ぬとダンジョン運営に支障が発生する。
下手をすれば寿命より早く死んだり村が寂れたりするかもしれない。
デメリットが当然付いてくる。
一番は魔王同士の戦争に使えないことだ。
村人への危害、損害云々を除いても【岩】の魔王のダンジョンの中継地の側面があるためここでの魔王の戦争は【岩】のダンジョンへ人間が行きにくくなる。
それは【岩】の魔王に中指を上げるようなものだろう。
もっとも【岩】のダンジョンは鉱石が豊富なため諦める人間がいるかは別になるが。
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都市コルニクスにて
モラクス、ナイト、デュラはコルニクスと呼ばれる都市へ来た。
ダーナル村も充分規模が大きかった。
コルニクスはそれよりもずっと発展しているように見える。
とてもきらびやかな都市だった。
時代が周辺の町より100年程先に進んでいるとモラクスは思う。
「道、建物、人、どれをとっても圧巻ですね。」
「そりゃ【岩】の恩恵でここは大儲けだからな。…人で言ったらお前さんの従者の着けてる鎧の方が俺はすげーと思うがな。」
「それはありがとうございます。」
『お褒めいただき光栄です。』
確かにナイトの鎧はとても丈夫で装飾も凝っている。
本物の騎士は知らぬがデュラの反応からナイトのものの方が質がいいのかもしれない。
「さて、見学も悪くはねぇがそんなことしてたら日が暮れちまう。とっとと行くぞ。」
デュラの先導でコルニクスの娯楽施設が集まる場所へたどり着く。
闘技場、コルニクス最大の娯楽施設。
施設の外側から、中で今も誰かが戦っているのか観客の大きな声援、叫びが聴こえる。
「そっちにはようがねぇ。稼ぐならこっちだ。」
デュラは親指で背後の方向を指す。
闘技場よりかなり小さい石造りの建物が見られる。
「あっちは花形闘士…まぁ人気者の奴が闘う所だ。観客としていくなら構わんがお前さんのような顔も名前も知られてねぇ奴には関係ねぇな。」
「デュラはここで闘ったり_」
「まぁな。もう十年以上前にちょいとだけ。誰もきっと覚えちゃいないだろうさ。」
デュラの指した建物、第2闘技場は中は少々薄暗く、天井がありそこに鉱石らしき石が光中を照らしていた。
室内では闘う闘士?まばらで客と思われる人はほとんどいない。
受付場所も人がいないため暇そうにしている。
3人で入ったとき彼らの反応は驚いている人が数人いたが理由はナイトか?デュラか?
「人が少ないですね。」
「第1で大盛り上がりだからな。その間ここはガラガラだ。」
第1、第1闘技場。
観客の熱気が強く感じられた先程の闘技場。
そこの試合が終わればこっちにも客が来るそうだ。
「今のうち受付行ってきな。どうせしばらく暇だ。」
「はい、では。」
受付にはやることがなくて暇に見える人がいる。
彼女が担当だろう。
「あの、こちらで受付をやってますか?」
「……!は、はいっ!こちらでしています。」
「闘技場に始めて来ましたがここで参加の申請はできますか?」
「参加ですね。少々お待ち下さい。」
担当の担当は部屋の奥に移動し書類を持ってきた。
「おまたせしました。闘士申請についてご説明します。」
受付担当から説明がされる。
内容は
○登録者の名前決め(リングネーム)
○最初はアマチュアファイト→兵士、冒険者などの戦闘職以外の者で戦えるかどうかを審査するための入門戦
○入門戦突破後は充分な実績を積むまで第2闘技場で闘うこと
○試合時の最低限のルール
極力相手が死ぬようなことはしない
金的など一部急所攻撃は狙って行わない
観客、スタッフに危害を加えない
戦闘以外の犯罪行為の禁止
○試合のスケジュール
だった。
「_こちらからは以上のことをご説明しましたが大丈夫でしょうか?」
「はい。ありがとうございます。」
「では
「わかりました。」
モラクスは受付が終わりナイト、デュラのいるホールに戻る。
『お疲れ様です。』
「ん?あぁ終わったか?」
「受付は終わりました。入門戦というものをするらしいですね。1時間くらいあとからやるようだがナイトはどうする?」
『いつでもお側にいます。』
「ナイトがそれでいいなら。」
登録から約1時間後、入門戦が始まる知らせが闘技場内部をまわっていたモラクスらに届いた。
「お前さんが負けるとは思えねぇが、まぁいい試合をやれよ。」
『ご武運を…』
「二人ともありがとう。」
モラクスは会場へと向かった。