出オチ魔王に徒手がインストールされたら 作:レンガチェッカー
夜会についてみんなで考えた翌日、日課のトレーニングを終えたモラクスはバラムに呼ばれた。
衣装が到着したと。
「これだよ。ほら。」
バラムが衣装の入っている包みを開くとそれはあった。
「…触れても?」
「もちろん。」
モラクスは衣装を取り出す。
広げると黒い服だとわかる。
カソック(神父の衣装)とジュストコール(貴族の衣装)を組み合わせたような服ではあったが普段着用してるものより装飾が増え、材質も硬い。
服の傷を考えなければ戦闘用の服としても着用可能だろう。
「それじゃあ羽織ってみようか。」
バラムの言葉のままに衣装を羽織る。
手に取ったそれは普段着ているものよりも重く感じた。
きっと服はそこまで重くない。
緊張しているせいでもあるのだろう。
見た目は常識内の魔王らしさ、イメージは控えめだが魔王らしくなどするやる気はないため悪くない。
「ありがとうバラム。素晴らしいとしか自分には表現できないが。」
思わず笑みを浮かべる。
「そうかい。気に入ってくれて良かった。あまり言うべきじゃないけどまぁまぁ力を入れて作って貰ったから嬉しいよ。」
バラムはもう一つ何かを渡す。
衣装だった。
「君のカーボンウィザードにも、ね。」
前に提案した偽装用の衣装が入っているとのこと。
端から見える色から青や白を基調としたものみたいだった。
突然、ドアをノックする音が聞こえた。
『ナイトです。お時間が近いので来ました。』
『ボクもいるよー!』
「…僕は構わないよモラクス。」
バラムの言葉に頷く。
「来てくれ。」
「おっ邪魔しまぁーっす!」
『失礼します。』
ウィザード、続いてナイトが入って来る。
バラムから渡された畳まれている衣装をウィザードに見せる。
「バラムが用意してくれた。君に着せるものだ。」
「うおぉ!これが…ありがとうバラム様!」
ウィザードが衣装を広げどのようなものかがわかるようになった。
全体的に白が目立つドレスの上に形だけ残したローブが別にある。
また氷の意匠が腰部や袖で煌めく。
「わぁ。」
「夜会まで時間もあまりないから適当な部屋で着替えるといいよ。」
「着替えてきたよ!どう?どうかな?」
数分程後にウィザードが戻ってきた。
そこらを回ったり軽く踊るような素振りをして近づきこちらに聞いてくる。
大きさは合っているように見える。
魔物には夜会用の衣装は必要ないが綺羅びやかだ。
しかし1人で着られる用に設計されているため割りと自然な、それこそウィザードが召喚されたときに着用していた衣装と言われても無理がない用にできている。
水系統の魔法使いにしっかり見える。
とても完成度が高い。
(いけないな。ウィザードはそういうことが聞きたい訳ではないのにな。)
「まぁ、その…なんだ。似合ってるな。」
「…?あっ、そっかー。ボクに目を奪われた感じかぁー。それは仕方ないよ。」
咄嗟に思いつけずにらしいことが言えずではあったが大丈夫だったようだ。
「……ナイトからも何か言ってくれ。」
『夜会では魔物の能力をあまり見せないため確実に隠蔽できるかと。』
「……あ、うん。」
そういったことではない、とモラクスは心の中で思った。
「モラクスの言った通り似合っているよ。」
「ありがとう!」
バラムの助け舟で真顔になったウィザードは再び笑顔を見せた。
「もうそろそろかな?来るよ。」
バラムが人差し指を立て静かにするよう促す。
〚星の子らよ。時は満ちた。集え、輝け、そして己が存在を示せ。〛
ここにいる誰でもない者の声がした。
視界は歪み感覚は消失していく。
意識が鮮明に戻る。
風が吹き外にいるとわかる。
「ここは…」
とても精巧にできた作りものの世界に感じた。
空は青く未だ日が落ちずに星がまたたく矛盾、庭園は何者にも手入れされたように見えない。
目前の白い宮殿と思わしき建築物は圧巻の一言に尽きる。
「この施設をみんながパレス魔王と呼んでいる。さっきの声は僕たちの創造主の声。」
バラムが先導し宮殿へ進む。
「他の魔王もいるだろうし行くよモラクス。君たちも。」
非常に広い。
それしか感想がない。
既に何人か使用人、その先のホールに到着した魔王とその従者らしき者達が中にいた。
「内装もすごいな。魔王の集会とはこうも格式高い印象があるか。」
「すっごく広いねー!」
『……』
モラクスは自分やバラム以外の魔王はあまり知らない。
そのため魔王の容姿は様々で人型に何か魔物を足したような姿なのだと今知った。
人間や鬼やリザードマン、他にもいろいろといる。
あたりを確認しているとバラムが耳打ちする。
「夜会で僕から言えることとして最後に…ずっと警戒して身構えるのは良くないね。適度に楽しむといいよ。」
「わかった。」
バラムは伝え終わると軽く手を振り別の場所へ向かった。
新入りの魔王とはいえ保護者同伴はしていない。
親代わりをする魔王も極力関わらないみたいだ。
一番近くに魔王が二人、共をする魔物がそれぞれ鎧甲冑型とカエル型?
片割れは何故か夜会のために用意されたであろう衣装じゃない村に住む人と変わらない衣類を着用していることに疑問を覚える。
まだ距離があるため彼らの会話はなんとなくで聞くと新人魔王だとわかった。
新人魔王ならばと近づく。
ナイトは特になにも言わずウィザードは「えっ、」と引き気味だが無視というのはもっと良くない。
鎧甲冑の魔物を従える魔王が何か怪しい勧誘をカエルの魔物を従える魔王へしているためもっともな反応だとわかりはする。
何より凄まじい予感がした。
「失礼。お二人で何を話しているか気になった。私は【邪】の魔王、モラクス。君達は?」
「あぁ、始めまして。僕はザガン。【鋼】の魔王だ。」
「…お、おではノロウェってい、いうんだな。【粘】の魔王なんだな。」
ノロウェの人物像はこれだけで大体わかる。
臆病か気弱、あるいは両方の性格だと思われる。
ザガンはまだわからない。
どこかバラムに近いものを感じるが。
「新人の魔王であってるかな?」
「そうさ。僕もノロウェも。」
「んだ。」
予想は合っていた。
「良かった。私も新入りだから少し心配した。なんというかな、雰囲気が重苦しいように思えて。」
「ははは、恐らくみんなそうだよ。このヒリつく感覚はまだなれないね。」
「不気味なんだな…おではあんまり好きじゃない。」
実際にそれなりに生きた魔王達は獲物を見るような目でこちらを眺めることがわかるため不快感はある。
「こうやって話すのも何かの縁だ。あたりを周りながら君達と話したい。」
「他の魔王の様子を観察できるからそうしよう。」
「ついていくだ。」
3人+魔物で様子見兼情報共有をしていると先達の魔王は旧友と会話をしたり複数で品定めをしていることが大体把握できた。
「な、と、とても怖い。本当に大丈夫だ?」
ノロウェは怖気づく。
「大丈夫さノロウェ。複数でいればそうそう目をつけられない。」
ザガンがそれを宥める。
「目をつけられるとしたら能力がすごい奴や中途半端に強いやつだろう。心当たりは?」
「親をする魔王から相手にされなかったおでには関係ないだ。」
「…そうか。」
しんみりとする雰囲気の中で気配を感じた。
確実に強者とわかる気配を。
(なんだ?いかにここで戦闘は行わないと押されても、緊張が走る!)
気配は後方のホール入口にある扉が開いた瞬間からか。
「いた。」
一人の魔王と魔物が3体。
魔物はスケルトンとドワーフに狐の獣人。
普通に考えたら弱い。
だが不釣り合いなほどかの魔王は自信がありすぎる。
気配がどうこう以前にどう考えても腹に一物あるだろうと状況証拠だけでもわかる。
『ギャハハハ!!』
『スケルトンとか魔物の生成に失敗したかぁ!』
……なんて?と疑問に思う。
流石におかしいとわかるはずだ。
それくらいわかると知りながら冗談込みで高笑いしてるのか本当に引っかかったのか。
「なんだあれは?」
ザガンも不思議そうに眺めていた。
自分同様に何か気づくことがあったのか?
モラクス「魔物を鎧などで隠すのであれば(他に気弱な演技でもして上手く立ち回れたら)分からなかったかもしれないが…」
ザガン「どうにか(自分が弱い魔物しか使えないことを隠すことが)できただろうよ。」
「そ、そうなのか?」
「「そうだな(ね)。」」
パーフェクトコミュニケーション()