アリクイさんチームの台詞わかりやすく「にゃ」「もも」「ピヨ」で分けちゃってるの、ちょっと安易かなぁと悩むところ
今日は良い事尽くめだった。
何と言ってもチームが2つも加入したのはとても大きい。
風紀委員さん達―カモさんチームは、戦車道は初心者ながら、チームとしての統率はちゃんと存在しており、日頃の業務がこうして転用できているのは心強い。
そして自動車部―レオポンさんチームは、元からメカニックなところと運転に精通しているとはいえ、西住さんや私が特に重点的に指導をせずとも、戦力として申し分のない動きができていた。ティーガーという抱えるところが多い戦車を、あのように乗り回せるのはとても心強い。
何はともあれ、練習後。思いつめたような表情をしていた会長たちに、西住さん共々生徒会室へと呼ばれた。
次の試合の舞台が雪原という事もあって、北上している大洗女子学園は、季節は夏だというのに長袖を着用しなければならない程、寒気の下にあった。
「はふぅ、うま、これよ、これ」
「砲門ちゃん、よく食べるねぇ」
「ねぇ、西住さん。このアンコウは水産科の子たちから貰ったやつなの」
「いや、アンコウの入手経路は良いですから」
話があるというので来たのだが、いつもの堂々と、そして飄々としている生徒会長のぎこちなさは、私たちに誤魔化しているものがあるかのような振る舞いで、まぁまぁ、という体で鍋も振る舞われた。
うーん、これだ。下手に味付けという味付けをせず、シンプルな調味料たちとアンコウの出汁という出汁で鍋の下地は完璧である。
特にこの唐揚げも最高だ。こうして鍋の汁につけて食べると、うん、大正解。こういうのだよなぁ、と言語野を放棄して味覚を納得させる。
「これは有志生徒が各自で好きに配合したアサガオの展覧会。これは全国囲碁サッカーの応援に行った時で……」
「おー、すげー」
西住さんも、生徒会の皆さんも箸がそこまで進まなかったようなので、私が完食した後
会長はアルバムを取り出して、私たちに見せた。
一つ、一つの写真には、なるほど思い出が込められており、小山さんや角谷会長、そして河嶋さんの顔には、いつも見せぬ慈しみの表情が見て取れる。
尤も、話を聞きに来たという西住さんは容赦なく「思い出話は良いですから」と、節々で話を切り上げたが、それはそれとしてアルバムのページは進んだ。
思い出という思い出を聞かされた私たちはそのまま帰宅の途についていた。
「結局、話って何だったんでしょう」
「食事をして、思い出話をしたかったて訳では無さそうでしたもんねぇ」
得心が行かぬままであったが、私としては腹いっぱいになれたので、そこまで気にかかることではなかった。
西住さんは頭上に「?」を浮かべているが、確かに生徒会は不審であった。
考えを巡らせ、空を見上げると雪がしんしんと降り続ける。
次はいよいよプラウダ校と戦うことになる。誰が何を言おうと去年の優勝校だ。
しかし、昼間の練習で河嶋さんが吠えたように『負ける訳にはいかない』
競技に挑む以上は、その心構えでぶつかるべきであろう。
そうと思えば、ちょうど良いタイミングである。
「西住さん」
「はい?」
「折角ですし、ウチに来て作戦会議しまへんか?」
「え、え~~!? い、いいんですか!」
「え、えぇ、まぁ」
ここから私の家はそう遠くないので、誘ってみたが思った以上に食いついてくださった。どこか嬉しい反面、その圧に思わず後ずさる。
話を伺うに、西住さんは家元の娘さんという事で、そういった交流がどうにも少ない、いや、無かったそうである。
そうともなれば、こうして舞い上がるのはおかしくない。
「さ、どうぞ」
「お、お邪魔、します」
誰とて初めて入る家は、借りて来た猫のようになるものだ。
私の部屋は女子高生としては家具やグッズが少ない。そういったものへの興味はあるが、3年間しか住まないと思うと、どうにも荷物は少なくしようと考えてしまう自分がいるからだ。
それだけに、目に入ってしまうものがあるとすれば、それは私が獲得した賞状やトロフィーを飾った棚であろう。
リビングに入った西住さんは自然と棚の前へと興味深そうに近づいた。
「わぁ! 砲門さん、これって」
「はい、今まで獲得したもんです。上の段が中学時代、下の段が小学生ン時です」
「凄い、こんなに……」
全日本戦車道大会小学生部門敢闘賞、戦車道京都府ジュニア大会優勝、戦車道京都府大会山城リーグ中学生部門優勝、戦車道京都府大会中学生部門優勝、戦車道関西大会京都府代表金賞、戦車道全国大会中学生部門関西大会敢闘賞……その他色々とあるが、先ほどの生徒会のように、どれも思い出がある。まだ十代だというのに、それが懐かしいと思ってしまう程だ。
写真に映える、いたずらに成功したようなクソガキの笑みを浮かべている自分に西住さんは興味津々と見つめている。
……………気恥ずかしい!
「西住さん! 私は資料用意しときますんで、冷蔵庫からイチゴ出してください。甘いもんでも食べながらの方が冴える思いますし」
「あ、はい! 分かりました!」
ソ連の戦車一覧を描いた本や、戦車道の公式試合の記録などをとにかく本棚から取り出す。
プラウダ高校ともなれば資料はぞろぞろあるもので、こういった事には困らない。
映像記録も豊富にあるだろうし、パソコンとテレビ繋いで大画面で見てやろう。
リビングに戻ると、西住さんが冷蔵庫の前で固まっていた。
「ど、どないしましたん?」
「冷蔵庫、イチゴだらけでどれから出せばよいのか分かんなくて」
「あ! あぁあぁあぁあぁ、あの、それ、実家から送られたやつです! や、地元結構イチゴの産地やってるんで、そんでいっぱい送って来よって……病んでるとかじゃないですからね!」
あたふたする私を見て、西住さんが笑みを浮かべる。
適当にイチゴをボウルに放り込んで水で洗えばよろしかろう。
テーブルに試合会場の地図を広げ、準備は整った。
「言うまでもありませんが、今回は雪原での試合となります」
「はい」
「開始地点はここで、向こうさんは多分この辺やと思います」
「…………」
西住さんが地図とにらめっこ。
雪原での試合、私は何度か経験したが、豊富という訳でもない。
「戦車はもちろん、今回の場合環境においてプラウダ高校は私たちよりも有利に展開すると思います」
「はい」
「ですので、今回は慎重に動き、焦らず確実に一つ一つの戦車を撃破しようと思うのですが」「分かりました。私も同意です」
「うん、それでプラウダが使う戦車なんですけど……」
「T34のシリーズを中心に持ってくるとして、IS-2、IS-3、KV2なんかが出てくると思います」
「T34で隊を編成して……どこかに誘引して、他の貫通性や火力の高い車両で一気に砲撃ってところかな」
「恐らくは。少なくとも戦力の差からしてプラウダらしくない作戦をとってくるとは思えません」
「うん、でも、それなら……」
良い作戦を思いつくには糖分だと言い訳して、イチゴを手づかみで適当に取ったその瞬間。西住さんに閃きが降りたようだ。
「えっと…その……あ、愛さん!」
「…え、あ、はい!」
「す、すみません! その…別働隊をお願いしたいんですけど……」
思わず名前で呼ばれたが、良い気しかしない。
西住流の家元の娘という以前に、学友としてお近づきになりたいお人なのは間違いないからだ。
でも、名前呼びは、こう、めっちゃ、ゾクゾクする、嬉しい
「別動隊ですか。 ……確かに2チームも加わって、以前より手広く展開はできます。しかし、プラウダの誘引作戦を考えますと、戦力は分けず、集中して確実にそれぞれの戦車を撃破する方が良いと思いますが」
「もし、プラウダが私たちをどこかに誘い込むとすれば、囮の車両を何両かこちらに向かわせると思うんです」
「はい」
「その場合、囮、誘引、包囲、という3つの編成で来るはずです。それに対して私たちは本隊が囮と誘引部隊を、そして別動隊が先行して想定したポイントを把握しながら包囲部隊の車両を撃破…うぅん、引き付ける事でプラウダの作戦を逆手に取ります」
「なるほど、良い案やと思います。それなら、別動隊の面子ですが……」
「今回は八九式をフラッグ車にしようと思います。夜間の試合で、この天候なら車体はできるだけ小さい方が良いと思うので。そこで別動隊は、アリクイさん、レオポンチームの小隊編成で行こうと思います」
「了解しました。そこで相手の包囲が想定されるポイントですが、地図を見る限りは主に3つ。この開けた平野部のところと、森林地帯のとこ、そんで集落のとこやと思うのですが」
「……森林地帯はむしろ小さい車体の多い私達の方が有利。平野部で戦うには三突や、ポルシェティーガーの砲は脅威かも。集落群を包囲ポイントだと想定します」
「確かにここならウチらの機動力も火力も制限される……よし、じゃあここですね。そんなら次は本隊の進行ルートですが」
西住さんは日頃おどおどとされているが、戦車道のこととなれば矍鑠としておられる。
一つ一つの決定にそう時間はかからず、その論理も明快。
正直、プラウダ相手では意見がぶつかると思ったところがあるのでイチゴも用意したのだが、無用の心配であった。
ボウルを傾けて、飲むようにイチゴを頬張る。
「雪、えらく積もって来ましたね」
「うん…そうだ、防寒用に色々と交換しておかないと」
「防寒……そうや、明日練習終わったらみんなで食べモン買いに行きません?」
「え?」
「試合用にです。万が一、長期戦になると胃袋からやる気が取られますんで」
私が関西ジュニアチャンプになった試合は、冬場の東近江市であった。相手は兵庫選抜。
鈴鹿山脈や地元の山、田畑に降りしきる雪の中で、戦車道の試合はとてもしんどかった。
手がかじかんで動けないだの、吹雪で前が見えないだのの泥試合だ。
「あぁ、それも大事ですよね……う~ん! 美味しい!」
「でしょう! ささ、もっと食べてください。もう仰山ありますんで」
作戦の話は大まかに決まった。後は明日、細かいところを詰めておけば良いだろう。
まずは、JK二人。イチゴパーティを楽しもうではないか。
プラウダ戦に臨むという事は、準決勝を意味する。
既に試合会場は雪の中。雪こそおさまったが予報ではまた降り出すようだ。
「ホーモンさん、お弁当とカップ麺全部入れ終わったよ」
「これ全部食べ切るピヨ?」
「はい。何ぞ良かったら好きに食べていただいて結構ですからね」
「こんなに食べきれないもも!」
アリクイさんチームともだいぶ打ち解けて、三式の動かし方も以前よりはるかに上達した。
この試合できっと戦力になってくれるであろう。
おかげで、古いパソコン(コア9とか10800チとか書かれてるやつ)をねこにゃーさんから譲ってくださり私のオンゲ環境も良好になった。家宝としよう
私たちは早速携帯ゲーム機でオンライン対戦を始めるが、これは時間つぶしというよりも試合前の集中にちょうど良いからだ。
「これ、準決勝なんだよね……」
「そう思うと緊張してきたもも」
「でも、ホーモンさんはどっしりしてるピヨ」
さりとて、アリクイさんチームは未だ初心者である事には変わらない
むしろ、初心者だからこそ準決勝決勝も気兼ねなく動いていただけるかと思っていたが、どうにもアンツィオ戦が応えたようだ。
開始早々の撃破というのは確かに脳裏に残ってしまう。
「いや、心臓バクバクですわ。ジュニアじゃイキってましたけど、高校生部門なんなったら、試合のレベルガクンと上がりますし」
「そうなの?」
「全員高校からやり始めるようなら、まだ何とかなる思うんですけど……小学校から初めてなお高校でもやりたいって人が結構いるんで」
戦車道と言わず、進学を理由に部活動や習い事をきっぱりやめる人がもちろんいる。
そして戦車道に限って言えば、やはり乙女の嗜みとしてはいささか鉄と油臭いところがあり、試合の遠征も華々しいもので本人はともかく親御さんの方が音を上げる事もお話としては聞いている。
それだけに中学で3年間、いや小学生の時からやっているような者の経験値はどれほどであろうか
そして高校生から始める人達。経験者たち相手にしがみつきながら、時にその才能を開花させる伸びしろと楽しみ方は如何ばかりであろうか
戦車道高校生部門。常にギラ星が輝いていると言えよう。
「ウチも1年ブランク空いてるってんで、ここではデカい面させてもろてますけどぶふぉぉ!」
「あ」
「当たっちゃった」
したり顔で喋ろうとした顔面に雪玉が直撃した。
犯人は誰と言わないが、ウサギさんチームである。大野ちゃんと、宇津木ちゃんがきょとんとこっち見てるね
まぁ、この積雪は私自身も心楽しむところが無くは無いし、こうして盛り上がるのも仕方がない。
何せ私は彼女らの指導役も兼ねていた身。ここは一つ大人の対応をしようではないか
「ねこにゃー! ももがー! ぴよたん! フォーメーションアリクイ! こっちも応戦や!」
「らじゃーだにゃ!」
「先輩怒らせちゃった!」
自然とアリクイさんチームとウサギさんチームによる対抗雪合戦となっていた。
やんややんやと投げてるうちに体があったまってくる
雪は降ると言われたら降るけど……という地域で生まれ育った私にとって、目の前の銀世界は興奮冷めやらぬばかりであった。
「先輩、あれ」
「あぁ?」
澤ちゃんに指を示されて見えたのは、なんかでっかいお車
上に鉄筋みたいなのを4つか5つ以上備えており、牽引車の先頭っぽい
中から降りてきたのはパツキンの小っちゃい子と、タッパのでかいクールビューティ
こちらは知っている。プラウダ高校戦車道と言えば、カチューシャとノンナである。
「ぷ、あははははははは! このカチューシャは笑わせる為に、こんな戦車用意したのね、ね!」
御大層な挨拶と憤りたいが、目の前の少女は傲岸不遜を許される実力を有している。
それに反論できるほど、大洗女子の保有戦車がいささか特徴的なものばかりなのは、私としても認めている節がある。
聞き耳を立てずとも、自信家らしいカチューシャさんは大きな声で我々に堂々と宣戦をなされに来た。
ノンナさんに肩車されているが、いや、ノンナさん脚線美すごいなぁ。
挨拶そのものは会長さんが引き受けていたが、別れ際、西住さんの存在に気づいたようで、去年の優勝について『感謝』の言葉を伝えられた。
カチューシャさん言葉キツ過ぎますて、と思い西住さんの方を見ると、お顔が曇りがかっている。
「じゃあね~、ピロシキ~」
「ダスヴィダーニャ」
あ、ウチには何も無いんやと安堵するも、2年前のジュニアチャンプなんてそんなものかぁと、ちょっぴりさみしさに包まれる
試合直前のミーティング
先ほどの宣戦布告もあってか、にわかに浮ついてるような雰囲気が見て取れた。
西住さんが相手の出方を伺うと言ったところで、カエサルさんが申し出る。
「ゆっくりも良いが、ここは一気に攻めたらどうだろう」
それを皮切りに各チームから積極案を推す声が続出した。日頃は、慎重派な澤ちゃんまで同意している。
カチューシャさんの煽りに思うところがあったのだろう。
プラウダ相手に勢いを武器に臨むのであれば、知波単並みのそれが最低限求められる。
副隊長として、諫めるべきか、ノるべきか
私が悩んでいる間に、西住さんが答えを出した。
「分かりました。一気に攻めます」
アンコウチームの面々より出た疑問の声に、長期戦になるとプラウダ側が有利になる、みんなが勢いに乗っているならと説明したが、納得したというよりも吹っ切れたような気がしないでもない。
「相手は強敵ですが、頑張りましょう!」
おぉー!とあがる鬨の声。急な作戦変更も戦車道の醍醐味と思えば、これも楽しまないとね。
すわ、戦車に乗るぞと踵を返して、私を呼び止めたのは西住さんだった。
「愛さん」
「うん? どないしました?」
「愛さんは作戦通り、ゆっくり集落群へ直進してください」
「……分かりました」
やはり吹っ切れただけのようであった。思惑の程は、後日伺おう
「今から準決勝です! 積極的に行きますが、行動自体は作戦通りのルートで行きます! パンツァーフォー!」
「レオポンチームはウチらアリクイについてきてください! 戦車、発進!」
準決勝が始まった!
本隊と一拍遅れて、アリクイ&レオポン別動隊が動き始める。
ここで改めて確認。
事前の作戦に置いて、この別動隊の意義は、プラウダが展開するであろう誘引作戦における敵本隊の動向を把握することであり、その本隊の布陣が予想される集落群へ直進し、これを攻撃、誘引作戦そのものの火力を分散させることにある。
さて、その場合、我々は本隊と別動隊で常に歩調、進軍速度を合わせなければならないが、西住さんのお考えによると、別動隊はゆっくり行った方が良いようだ。
「ねぇ、このスピードで大丈夫なの?」
レオポンチームの車長ナカジマさんからの疑問は尤もである。
「はい。ウチらはゆっくり行きます」
「え、でもさっき、アグレッシブに行くって……」
「ウチら別動隊は、ここぞというタイミングでプラウダを引っ掻き回す事が重要です。ティーガーの88ミリなんぞ、正に脅威ですし。その為には、何はともあれ安全に集落群へ向かわんとあきません。そこでスピード出して、音ギュンギュン鳴らしながら行ったら、敵に気づかれてまうかもしれませんので」
「なるほど」
「早くスピード出したいなぁ」
「我慢我慢」
とりあえずこの説明で良いかな。レオポンチームも納得してくれたようで、別動隊は一路集落群へ向かう。
「準決勝、緊張するにゃ」
「今日こそ、初撃破するピヨ!」
「……唐揚げ臭いもも!」
アリクイさんチームも意気軒昂で何よりだ。
前回の撃破で沈んでしまわないかと気がかりであったが、杞憂という熟語の意味を思い知らされる。
進む風景に変化はなく、そこは雪国であった。
何を思ったのか空を見上げると雪がしんしんと降って来る。どこか意味深げだ。
「なんか歌まで聞こえてきたな……うぅ、寒っ」
誤字脱字などがあればご報告ください。
2023年10月9日追記
まずはガルパン最終章第4話公開おめでとうございます!
さて、本作についてですがご覧のように更新が止まっております……
実はPCが今夏の猛暑に耐えかねて壊れてしまいました(涙
ですので、現在PCの新調に向けて動いており、うまくいけば年内には投稿できます!