転生シズクのTS異世界転移スカヴェンジャー   作:さろんぱす。

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#01 始まりの一日

 ――荒野でトラックが横転した。

 

 側面後方より放たれたグレネード弾の直撃。

 助手席は爆炎と共に吹き飛び、衝撃によって運転手側に車体が傾く。

 トラックはそのまま倒れ、地面を引っ掻きながら黒い煙を上げて停止した。

 

 ――そこに複数の襲撃者が襲いかかった。

 

 大型二輪に跨った、()()()()()を付けた略奪者達である。

 だがトラックに、もはや逃げる力は残っていない。

 このままで車内は地獄と化し、さらなる悲鳴が荒野に響く事だろう。

 

 しかし何事にも例外はある。

 そんな世紀末を解決できそうな人物が、近くの小丘から現場を眺めていたのだ。

 

 ――ズボンを下ろして、その中身を確かめながら。

 

「うわー、私のおっぱい消えてオチンチン生えてる。これがTS異世界転移ッッッ……!!」

 

 その声には緊張感などまるで無かった。

 ただ事実を確認するかのように独り言を呟き、ズボンを戻して小丘を下っていく。

 おそらくは略奪パーティの開催中だろう、転倒トラックに向かって。

 

「まっ、いっか。()()()()()()したんだから。これぐらい不思議じゃないよね」

 

 その人物は別の世界の住人だった。

 

 短く揃えた黒い髪に黒い瞳。黒いセーターに頑丈そうなジーパンを履いている。

 首から下げているのは金十字のペンダント。

 幼く見える童顔に大きな額縁眼鏡を掛けた彼女。……いや今は()()()()()()は、シズク=ムラサキという名前だった。

 

 ハンターxハンターと呼ばれる漫画の世界。

 そこへ知識を持ったまま原作キャラとして生まれた()()()であり、更にほんの数秒前にこの世界へやってきたばかりの()()()()()だ。

 

「それより、さっさと助けに行かないと。せっかく恩を売って情報を手に入れるチャンス。私……いや俺? じゃなきゃ見逃しちゃうね!!」

 

 シズクは歩きながら「ん~」と一度背伸びをし、体の末端から徐々に力を入れていく。

 足側も同じく。そして最後にピョンピョンと軽く飛ぶ。戦闘前の調子確認である。

 

「おっぱいバランサーが無くなって違和感がすごーい。慣れるまでちょっと掛かりそう」

 

 そうして男になった体の動きを一通り試すと、シズクは続けて別の能力を行使する。

 それは【念】と呼ばれる力。不可視の生命オーラを滾らせる事によって、身体能力を飛躍的に上昇させる事が出来る技術だ。

 

「おっ【念】はいつどおりと。これなら何とかなりそう」

 

 シズクという原作キャラに転生し、生まれた時から鍛え続けた力だ。その年月は20年以上。

 もはや呼吸するかのように自然と扱える。これさえあれば、シズクはどこでも生きていける自信があった。

 

「後はなんか股間に違和感が……あっ、下着は女物のままだからチンコが窮屈だったのか。……とりあえずブラとパンツは脱いどこう。このままだと変態すぎる」

 

 上下どちらも紐タイプである。

 素早くサイドの結び目を外して、まとめてポケットに収納した。

 

「他に持ってこれたのは服と愛用のリボルバー。それとナニカがドはまりしてたエロ本(ジャンルはTS異世界転移物)だけか。……本はとりあえずお腹に入れとこう」

 

 そうしてやっと確認を済ませたシズクは、大地を翔けるかのように疾走を始めた。

 

 生え有るファーストコンタクトに選ばれたのは、一人で外に残った黒マスクだ。

 恐らく警戒のためだろう。大型二輪に腰掛けて、つまらなそうに銃を弄っている。

 

「ハロー、ボンジュール、こんにちは。楽しいことしてるね。ちょっと混ぜてよ」

 

 そこへシズクは気づかれずに後ろから迫り、頭に銃口を突きつけた。

 転移前から使用し続けている自慢の武器――漆黒の50口径5連装リボルバーを。

 古き良きアメリカンスタイルの挨拶。荒野であるからか、開拓時代風のノリだった。

 

「はっ? なんだテメェは。どこから湧きやがった。俺たちは黒犬団だぞ」

 

 当たり前だが、帰ってきたのは辛辣な言葉。

 口が続けば「ナメてるとぶっ殺すぞ」と言わんばかりの野蛮さだ。

 

「OKOK。その言葉が聞きたかった」

 

 だがシズクからすれば今はそれで十分。

 ここで()()()()()()()()()だと分かれば、他は些細な問題だ。

 

「なん……ry」

 

 ――ドパンッ!!

 

 相手の言葉を遮り、シズクは容赦なく引き金を引いた。

 チャンバー(弾倉)が回転し撃鉄が落ち、尻に火を付けられた銃弾が飛び出す。

 

 50口径のマグナム弾だ。7.62mmの軍用ライフルすら超える威力を持つ。

 その銃弾はチャチな防具など関係ないとばかりに、被っていたマスクごと頭に風穴を開ける。

 黒マスクは大型二輪に抱きつくように倒れ、ドクドクと流れ出る血が大地を汚し始めた。

 

「お~、こっちでも銃は普通に有効と。よしよし、これならやってけそう」

 

 シズクは倒した相手を数秒観察し、その死体が動きださない事を確かめる。

 前の世界(ハンターxハンター世界)では極稀に居たのだ。死んでも当たり前のように動き出す化物共が。

 なので警戒は怠れない。

 

「さーて、中はどんな感じかなー?」

 

 シズクは上機嫌でコンテナの後部ドアに近づく。

 トラック本体が横倒れしてるせいで、ドアは上から吊られた暖簾のような状態だ。

 しょうがないので屈んで中を覗き込む。

 

 ……中には地獄のような光景が広がっていた。

 外の一人と同じ黒のマスクを付けた4人によって。

 

 男は殺されて床に倒れ、女は略奪者に犯されている。

 驚くべきは、その女達もみんな()()()()()()事だろう。

 

(それぞれ首、心臓、頭の上半分、が無い……うわっ、グロっ!!)

 

 特に最後は酷かった。

 体をガクガクと揺らされる度に、()()()が飛び散っていた。周囲をベチャベチャと汚して。

 

 まだ覗いただけなのに、漂ってくる臭いはかなりきつい。

 血と糞尿に脳漿が混ざった汚臭が鼻を突く。

 

「これは酷い。あの幻影旅団だって屍姦はしてなかったのに」

 

 どうやら、この略奪者(黒マスク)共はみんな死体愛好者(ネクロフィリア)だったようだ。

 各員が好きなシュチエーションに女を()()()らしい。

 

 その証拠に4人目の略奪者は今正に、生き残っていた少女の腹を裂こうとしていた。

 このままでは略奪者が握る刃によって、少女は物言わぬオブジェクトと化してしまうだろう。

 

「いやぁ……!! 助けてっ……!!!」

 

 だがその少女はシズクに気づくと手を伸ばした。

 見開いた眼がシズクを捉える。恐怖に涙を流しながら。必死に助けを求める瞳だった。

 

「んー、まぁいっか。ついでだし」

 

 その視線に貫かれたシズクは中へと踏み込んだ。

 その動きには一切の躊躇が無い。微塵の動揺と緊張も。

 

 ――なぜなら、この程度の地獄は前の世界で()()()()光景だから。

 

「おい、なんだ」「まだ一人いるぞ」「武器を持て」「黒犬団をナメてんのか」

 

 対してシズクに気づいた略奪者たちは、慌てて武器を構え始めた。

 

 だがその動きはシズクからすれば酷く()()()

 敵の認識、行動の開始、武器の準備。全て動作が一般人の範疇だった。

 それは超一流の念能力者であるシズクから見れば、あくびが出るほどの遅さだという事。

 

「警告なんて上等なものはあげない。――お前らは死ね」

 

 悪態をつきながらシズクは機械のような正確さで発砲した。

 結果、トラックに響いた音は4回だけ。

 抜かれた銃は見事にワンショットワンキルを達成し、一瞬で物言わぬ死体を量産した。

 

「どうやら腰のナニは抜けなかったみたいだね。まじ受ける~」

 

 頭を撃ち抜かれた略奪者達が倒れる。

 ごきげんな調子で女と繋がったまま。その死に様は不気味なオブジェクトのようだ。

 

「さて大丈夫だった? 聞こえてるなら警戒してる間に服を直して」

 

「……っ! はい!」

 

 シズクは生き残った少女に声をかける。油断なくリロードを行いながら。

 これが実は略奪者の仲間で背中を刺す係でした、なんてパターンだと笑えないからだ。

 

 ギリギリで命を救われた少女は泣きながら返事をして、ゴソゴソと身を整えた。

 

「あ、あの……有難うございました」

 

「んー、ついでだから良いよ。中を改めるから荷物持って外に出てて」

 

 だがシズクが心配していたような事は起きなかった。

 なんとか身を整えた少女は、おどおどしくお礼を述べて外に出ていった。

 

「さて、では少し物色させて貰うとしますか。……転移からの賊発見殲滅ってテンプレだなぁ」

 

 そうして全部が片付くと、シズクはそんな事を考えながら、死体と荷物に手を伸ばした。

 無惨に殺された方は可愛そうだと思う。だがそれによって行動が鈍ることはない。

 

 なんせシズクは邪神に殺されて転生し、その後も6歳から裏に関わって生きてきた人間だ。

 この程度で動揺するような神経はしていないし、箱入りお嬢様のような純真さなど、とっくに失ってしまっている。

 

「持ってた武器は7.62mmライフルにブレードね。でも汚れが酷いからコレは無しで」

 

 だからシズクは止まらずに行動する。足元に広がる地獄のような光景を無視して。

 強烈な臭いが鼻を突くが、我慢して死体を順にチェックしていく。汚物に触らないよう気をつけながら慎重に。

 

「おっ、大きい荷物袋があるじゃん! これなら沢山持っていけそう。まずは食料と水かな? あとは金になりそうな物っと」

 

 シズクは大きめの袋を手に入れると、その中に必要になりそうな物資を詰め込んだ。

 食料と思わしき物を中心に。他には換金できそうな貴金属類と電子機器。そして紙幣と貨幣。

 

 終わったら運転席も覗いてみたが、こちらは死体が一つ転がっていただけだった。

 

「うわー、こっちは首の骨が折れてる。もしかしてトラックが転倒した時かな?」

 

 他に外傷がないので、恐らく間違っていないと思われる。

 運転手の死体からはマネークリップと拳銃を見つけた。

 

「おっ、サイフみっけー。あと拳銃は……なんだ9mmか」

 

 他にもインパネのダッシュボードを開き、助手席のグローブボックスを手探る。

 遮光用のサンバイザーまで下ろして裏を見るも、目につく物は何もなかった。

 

 そうして最終的に

 ・水と携帯食料:推定3日分

 ・宝石(全て鑑定書無し):少々

 ・小型の携帯端末:5個

 ・9mm拳銃:1挺

 ・お金:約1200円、を手に入れた。

 

「……えっ、いやいや『1円札』『100円札』って何? ジャラジャラあった小銭も、刻印が『銭』と『厘』なんですけど」

 

 シズクは手に入れた紙幣と通貨をみて首を傾げる。

 どれも昔に使われていた物だった。確か明治とか昭和そんな時代に。

 

 だがこれは少しおかしい。

 なんせこの車や銃は、もっと後の技術で作られていると思われるからだ。

 

「このトラックは技術的に20世紀以降のっぽいんだけどなぁ。どういうこと?」

 

 考えていた時代考察が一気に意味不明になった。

 だがここで考えるには情報が足りない。

 なのでシズクは通貨については一旦保留し、集めた物資を持って外に出る。

 

 扉の側には助けた少女が座り混んでいた。だがその表情は絶望的に暗い。

 外に出てからも泣き続けたのか。頬にはいまだ乾かぬ涙の跡が残っていた。

 

(まぁ、あんな目に会えば当たり前か……。まっ、貴重な情報源だし優しくしとこう)

 

 シズクは出来るだけ笑顔を作り、優しい声で少女を気遣う。

 ついでに見つけた水筒の水とタオルを使い、濡れタオルを作って渡した。

 

「おませた。それで体は大丈夫だった? これで汚れ拭いて。綺麗な顔が台無しだよ?」

 

 もちろん打算マシマシの行動だ。

 可愛そうだとか甘ったれた理由では断じてない。

 この水が貴重であるほど、少女は恩を感じてくれるだろう。

 

 シズクは思った。――このまま優しくして依存させよう、と。

 

「あ、はい。なんとかギリギリ……」

 

「そっか、それは良かった」

 

 シズクは少女に身を清めさせながら、改めてその全身を観察する。

 年齢はたぶん16歳ぐらい。涙の後が残る瞳の色は青だった。

 

 身長低めなのに胸はかなり大きい。トランジスタグラマーだ。

 髪型は橙色の髪をリボンで留めたショートツイン。

 服は黒シャツのインナーに白ジャケットを羽織って、下は白いスカートを履いている。

 

(うーん、このままアイドルでもやれそうな子だなぁ)

 

 シズクの目から見ても、率直に言ってかなり可愛い子だ。特に隠せていない臍がキュート。

 

 本来ならこのまま抱きしめて更に好感度アップを狙う所だ。

 だがここに長居するのは()()()()()()気がする。

 

 なのでシズクは思考を切り替え、とっとと移動を始めることにした。

 

「それでこれからの当てはある? こっちは街に向かうつもりだけど」

 

「あ、あの、できれば連れて行って欲しいです……」

 

「OK。別にいいよ。ちょうど道案内が欲しかったし」

 

 元よりどの方角に街があるかど分かっていない。

 なので同行してくれるのはシズクとしても都合が良い。

 

 すぐに抜いておいたキーを差し込み大型二輪のエンジンを掛ける。

 最初に殺した黒マスクが乗っていた物である。その駆動音は驚くほど静かだった。

 だが基本は地球のバイクとほとんど同じようだ。これなら運転は出来るだろう。集めたは荷物は荷台にくくりつける。

 

「それと一応自己紹介しておくと、こっちの名前はシズク=ムラサキ。そっちは?」

 

「あっ、私はティア・ナランスターです。あの、本当に有難うございました」

 

 それとせっかくなのでお互いに自己紹介も済ませておく。

 TSしたばかりで一人称が定まらないので、シズクはこっちとそっちで代用した。

 だがそれでも、しっかりと意味は通じたようだ。これで街までの案内役&話し相手が確保できた。

 

「それからコイツの武器は貰っていこう。あんまり汚れてないし」

 

 死んでいる黒マスクを地面に転がして装備を剥ぎ取る。

 肩掛けの紐に吊るされていたのは7.62mmのライフル銃。

 アタッチメントでグレネードランチャーまで付いている。トラックへ榴弾を撃ち込んだのはコレのようだ。

 

 追加で

 ・7.62mmライフル(グレネードランチャー付き)と弾薬少々、を手に入れた。

 

「整備は不十分みたいだけど。それでも最悪、交換品ぐらいにはなるか。じゃあ後ろに乗って掴まって」

 

「は、はい。あの、失礼します」

 

 ティアが座席に跨ろうと片足を上げる。

 チラリと見えた下着は――履かれていない。スカートの奥は丸見えだった。

 

「おっ、下の毛が薄いタイプ……。って、ちょっと待って。下着は?」

 

「……あの、それが破られてしまって。他も全部グチャグチャに」

 

 ティアが顔を真赤にしながら、恥ずかしそうに申告する。

 恐らく引きちぎられたのだろう。予備の衣服もダメにされたようだ。

 

 だがそういうことならば、()()()()ものがある。

 シズクはポケットから戦闘前に脱いだパンツを取り出すと、それをそのままティアに渡した。

 

「そっか。だが安心してほしい。――ならば、このパンツを進呈しよう」

 

「えっ」

 

 このまま乗るとお尻が大変そうだからだ。

 今日は紐のハーフバック(黒)だったので、履かないよりはマシになるだろう。

 

 渡されたティアは驚くも、結局は黙ってそれを受け取った。

 

(略奪者が暴れる世紀末っぽい世界でも、ノーパンは恥ずかしい物なんだ……)

 

 シズクはそんなズレた事を考えた。

 その間にティアは器用に腰を浮かし、バイクに跨ったままパンツを履いた。

 前かがみになった上半身を、シズクの背中に押し付けながら。後ろからみたらきっと丸見えだっただろう。

 

「あのこれっ、ちょっと暖かいのは」

 

「だって脱ぎたてだからね!」

 

「履いてたんですか!?」

 

 シズクは驚くティアに笑顔で、ぐっと親指を立てる。

 ティアは顔を真赤にしたが、諦めたのか渋々シズクに抱きついた。

 

 先ほどと同じ様に二つのタワワな弾力がシズクの背中に伝わる。

 シズクは思った。ポヨンポヨンだ、と。

 

 ――ティアがノーブラであることを把握した。

 

「無くしてから分かる、この素晴らしさよ」

 

「えっ、なんですか?」

 

「いや何でも無い。それよりさっさと行こう。方向指示よろ」

 

「わ、分かりました」

 

 準備が終わるとシズクは早速、大型二輪を発信させる。

 道なんて分からないのでティアが指さす方へ。

 

 そうして走り出すと、ほんの数分で転倒したトラックは見えなくなった。

 この大型二輪も整備状況は悪かったが、ただ走らせるだけなら大丈夫そうだった。

 サスペンションにガタが来ているのか、乗り心地は良くないが。

 

「あの、一つ聞いてもいいですか?」

 

「ん、なに?」

 

「……どうして女のパンツを履いてたんですか?」

 

「おっ、それ聞いちゃうんだ? んー、その答えは……ただの趣味だよ!」

 

「えぇぇー……まさか変態(ボソッ」

 

 質問を面白がったシズクはノリで適当なことを言った。

 以降、ドン引きさせたせいかティアとの会話は捗らなかった。

 

 ――代わりに女下着を履く男は変態である事が判明した。

 

 

 

 ◆◆◆  ◆◆◆

 

 

 

「おっ、人工物が見えてきた! あの看板の文字は……『コウチ』?」

 

 最初の戦闘から2時間ほど走りつづけて、シズクはついに街へ辿り着いた。

 その入り口の看板には、デカデカとした文字で「ようこそコウチへ!」と書かれている。

 

(よかった。文字も普通に読める。これは幸先いいぞ~)

 

 シズクは密かに心の中で喜ぶ。読み書きを習い直す必要が無くなったことに。

 世界全体がどうかは不明だが、この地域で使われているのは日本語な模様だ。

 

「街の中に入った後はどうしますか?」

 

「まずは宿を取ろう。そして汚れを落として腹拵え。あと日用品の購入も必要かな」

 

 問題無く入れた市内を走っていると、初めにボロボロの浮浪者達が目についた。

 続けて銃を持ってウロウロしている軍人らしき者たちの姿も。

 どうやら街の治安は、あまり良くないらしい。

 

 それでもシズク達は聞き込みをしながら宿泊先を探した。

 最終的に選んだのは、セキュリティが高そうな高級ホテルである。

 

「名前は……ホテルモスクワ、か」

 

 特殊部隊の残党が根城にしてそうな雰囲気のホテルだ。

 

 駐車場で大型二輪を止めて入り口に進む。

 残った水で出来るだけ汚れを落とし、荷物にあった消臭剤で臭いも消してから。

 

 ホテルは12階建てビルだった。

 それも最近、壁を塗り直したのか、建物の外観は外も中も綺麗に整えられていた。

 

「おっ、これは期待できそう」

 

「本当にここに泊まるんですか? 一泊()()()ですよ?」

 

 値段の事を言われても物価が分からない。

 なのでどれだけ高いのは今のところ不明だ。

 

「もちろん。あと、あの()()()()知ってる?」

 

 しかしシズクには、それ以上に気になることがあった。

 受付の左右には全長1.5メートル前後のロボットが立っていたのだ。カブトムシを模した様な造形の。

 

「ああ、あれはKBT(カブトムシ)型警備ロボのメタルビートルですね。下手なことをするとテーザーガンで撃たれます」

 

「……飾りじゃなくて警備用なんだ。走ったりするの?」

 

「それはもちろん。高いホテルだと大体は設置されています」

 

「そっかー、当たり前なんだー」

 

 シズクの中で、またこの世界の技術的考察が意味不明になっていく。

 その場から発砲するだけならまだしも、動くとはどういうことなのか。

 

 言ってることが本当なら、確実に21世紀の地球より未来の技術だ。

 

(ていうかメタルビートルて。あれ完全にメダロットじゃん。……版権買われたのかな? でも良いなぁ欲しい。どこに売ってるんだろ)

 

 シズクはそんな事を考えながらロビーまで進んだ。

 予約無しの飛び入りだったが、問題なく部屋は取れた。

 特に注意されるような事もなく。警戒していた分だけ拍子抜けだ。

 

(まぁ最初は受付さんも値踏みするような目線だったけどね!!)

 

 だがポケットから金を出すと態度が変わった。

 続けて渡された用紙を読んでサインすると、もう完全に客を見る目になっていた。

 

 なぜこんな()()なことで態度が変わるのか。少し不思議だ。

 

「ついでに必要な物も買っとこう。ティアも遠慮なく持ってきて」

 

「わ、わかりました」

 

 部屋が取れたら次は必要なものを見繕う。

 幸いなことにホテル内の一角には売店―小さなコンビニ程度の広さ―があった。

 

 中の棚には商品がズラズラと並んでいる。

 貼られていた札の値段は、21世紀の1/1000ぐらいだ。

 

「ということはつまり、物価が1000倍ってことか」

 

 この世界の1円=21世紀の1000円、ということだ。

 ただしこのレートだと高級ホテルが2万円は安すぎるので、その辺はまた違うのだろう。

 ちなみに1円=100銭で、1銭=100厘、な模様。

 

「いまのと同じ様な衣服を3日分ぐらい買っとこいう。あと生活用品に、これは……護身用コート?」

 

「……これはお目が高い。お客様、そちらは防刃防弾仕様のコートでございます」

 

「ホテルの売店で防刃防弾……?」

 

 寄ってきた店員の説明にシズクは驚く。

 

「はい、今の世は何が起こるか分かりませんから。そのコートは9mmのFMJ弾まで防ぐことが可能です。他は向こうの護身用具コーナーに」

 

 更に案内された一角には、スタンガンや警棒などが提示されていた。

 他にもヘルメットやボディーアーマーなどの防具から、小銃と弾薬まで置いてある。

 

 ここはただのホテルなはずなのに。妙に充実した銃撃戦のラインナップだ。

 

「……でもせっかくなので色々買う。まとめて会計よろしく」

 

「合計で150円になります」

 

 シズクは他にもアレコレと手出し、店員に金を支払った。

 ちゃんと適正価格であることをティアに確認してから。

 

 ・防刃防弾コート

 ・3日分の衣服

 ・新品の水筒と背嚢

 ・最低限の医療品

 ・50口径マグナム弾とグレネード弾各種

 ・その他の小物、を手に入れた。

 

 ちなみシズクが持ってきた銃の弾も売られていた。

 

(銃本体の金属強度も、弾の寸法も、転移前の世界と全く同じ!! うーん、実に不思議だなー)

 

 この世界は未来の地球なはずなのにおかしい。

 だが答えは出なさそうなので、シズクはご都合主義という事にして考えるのを止めた。

 

「買い物は終わったし、部屋に行ってみよう」

 

 そうして買い物を終えると、シズク達は取った部屋に移動した。

 渡されたカードキーでドアを開くと、玄関からまっすぐ伸びる廊下があった。

 その先がダイニングで隣がベッドルーム。途中には風呂とトイレの扉だ。

 

「シンプルな構成だけど広くて良い部屋。まずはお湯を貯めてお風呂に入ろう。これでようやくサッパリできる。あとルームサービスも頼んでと」

 

 シズク達は()()で風呂を使った。暖かなお湯で戦闘と荒野の移動による汚れを落とす。

 それからルームサービスで腹を満たした。運ばれてきた時間は指定通りだ。

 

 そうしてようやく一息つくと、シズクは改めてティアと向き合った。これから先の事を話すために。

 

「それで、連れて行って下さいって。アナタは何が出来るの?」

 

「……銃の扱いが少しと、あとハッキングもちょっとぐらいなら。お願いします。何でもするので連れて行って下さい」

 

 何故か()()()()()に入っているティアに、シズクは優しい声で()()の確認を取る。

 

「んっ、今何でもするって言ったよね?」

 

「……言いました。その、怖いんです。目をつぶると今日襲ってきたアイツらが浮かんできて。だから……だめですか?」

 

「OKOK、その言葉が聞きたかった(2回目)」

 

 瞳を潤和せて恥ずかしそうに呟くティアを、シズクは満面の笑みで抱きしめた。

 ティアの柔らかな体の感触と、香る石鹸の匂いを感じながら、シズクは薄く笑っていた。

 なぜならコレこそ望んでいた展開だったからだ。

 

(っしゃー、案内役ゲットー!!!)

 

 なんせ、せっかくの情報源だ。

 おまけに向こうには命を救ってもらったという弱みまである。

 

 ならば()()()()()()させるのは難しいことではない。

 これこそ数多の創作物で転生者達が行ってきた、由緒正しい異世界生活術(奴隷の作り方)である。

 

(やっぱテンプレは最強なんだなって)

 

 テンプレ。それは異世界に行った時の教科書。

 その中には必要な行動が、これでもかと凝縮されてるのだ。

 

 ここまで来れば後この少女を案内役にして、この世界を楽しめば良いだけ。

 

「じゃあ今からティアは身の回りの世話係(意味深)ってことで」

 

「は、はい。……あ、あの、始めてなので、できれば優しくしてもらえると(ゴニョゴニョ」

 

「大丈夫だ。まかせて。まぁ同室を希望した時点で、こうなるのは察してたけどね。あんな目にあったら一人じゃ寝れないよねー」

 

 言質を取ったシズクはティアの服を一枚ずつ脱がしていく。

 でもせっかく男になったんだから、チンチン使っても良いよね! などと思いながら。

 

 ピンク色の可愛いブラを取ると、巨大なお乳が自己主張していた。下はやはり毛が薄い。

 そして脱がし終わると十分に前戯を施してから、ついにオチンチンを解き放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――股間のビッグマグナムのロックが解除されました。なんちゃって♡」

 

「んひぃいいい♡ 私のマガジンポーチに♡ 太筒型マガジン装着されちゃうのぉおおお~~~♡♡♡」

 

 当たり前だが童貞ボーイに我慢なんて無理だった。

 場違いなオヤジギャグを飛ばしてみるも、熱くなった銃身は一向に冷却されない。

 

「ていうかティアも期待してたんでしょ? 避妊薬に媚薬まで買っちゃって♪」

 

「そ、しょれは♡ 始めてが痛くないようにって♡♡♡」

 

 シズクに攻められるティアは、始めてとは思えないほどエロい声を上げていた。

 なんと3倍希釈と書かれた媚薬を、間違えて原液のまま飲んでしまっていたのだ。

 

「はいはい。じゃあ一緒にいっぱい気持ちよくなりましょうね~~♪」

 

「あっあっあっ♡ 優しく♡ そこ噛んじゃらめぇ♡♡♡」

 

 シズクはその事に途中で気づいたが、このまま攻め続けることにした。

 だって飲んでしまったものはしょうがない。ならばエロエロ娘にしてしまおう! という魂胆だった。

 

「うんうん、いい感じに蕩けてる! じゃあ、この世界について教えてくれる? おっ、またティアの弱い所はっけーん」

 

「は、はひぃ♡ なんでも聞いてくださぃいいい♡♡♡」

 

 そうしてティアの身と心をグチョグチョにしながら、シズクは必要なことを聞き出していった。

 

 この国が「皇国」と呼ばれていること。

 ここは開拓中の土地であること。それも推定では四国の高知市跡と思われる。

 

「……しかもAIで自立行動するロボットに自動人形ってマジで? 放射能で変異したミュータントが暴れてるとかさぁ」

 

「あああ♡ しゅりしゅりしゅごぃいいいい♡♡♡」

 

「兵器の方も多脚戦車に携帯レールガン。そして重力制御装置。……SFの世界じゃねーか!!」

 

 おまけに一度、文明崩壊までしてるという。

 おかげで地球は丸ごと放射能で汚染中。だがそれでも人類はしぶとく生き残っているとか。

 

「どうりで使われてる技術がチグハグなはずだよ」

 

「この姿勢♡ ふかいぃいいい~♡ 奥っ、キモチいいっ♡♡♡」

 

 ただし技術は大分失われていて、今は昔の遺跡を掘り起こして使っていると。

 聞けば聞くほど過酷な世界のようだ。当たり前だが義務教育なんて上等な物はない。

 

「ホテルの受付の対応が変わったのも、ちゃんと読み書き出来たからか……」

 

 金を持っていたのと併せて、一端の人物だと判断されたのだ。

 

「キス♡ キスください♡ いっぱい♡ いっぱい♡♡♡」

 

「はいはい。いくらでもしてあげるからねー」

 

 シズクは膝に載せていたティアを持ち上げ前後を入れ替える。

 正面から抱き合う形にしてキスすると、ティアは瞳をトロンとさせながら抱きついてきた。

 

「とりあえず今日はこんな所かな。一気に聞いても忘れそうだから、残りは明日以降にしよう」

 

 そうして最低限必要なことを聞き終わった頃には、とっくに日が変わっていた。

 シズクは眠ったティアの横顔を眺めながら、この世界に転移した時のことを思い出した。

 

『シズク! シズク!! TS異世界転移してー?』

 

『……ナニカ、その手に持つアイテム(同人誌)は、何処のダンジョン()から手に入れたのかな?』

 

『ミルキー!!』

 

『OK。ちょっとあの豚ボコってくる』

 

 たしかこんなノリだったはずである。

 そして気づけばティアと出会った荒野に立っていたのだ。

 

 原作知識を生かしてナニカと仲良くなったのだが、それが良かったのか悪かったのか。

 なんでも願いを叶えるという力を持つナニカは、稀に無茶振りをするようになってしまっていた。

 

「まぁ今更慌ててもしょうがないか。ならこの世界を楽しもう。まずはやっぱお金かな? あとロボットとかも欲しい。……あっ、意外と楽しそう」

 

 その後、シズクはティアを抱きまくら代わりにして眠りについた。

 推定90超えだと思われるおっぱいは、とてつもなく気持ちよかった。

 

 

 

 ◆◆◆  ◆◆◆

 

 

 

 ――ティアの新品マガジンに白い弾丸をたっぷり装填した翌日。

 

「ドロボウだぁーーー!!」

 

「全員伏せろぉーーー!!」

 

 出かけようとシズク達が一階に降りると、突然こんな声が聞こえてきた。

 

「おっ、トラブルかな?」

 

「ドロボウ騒ぎみたいですね」

 

 エレベーターが開いた先のロビーでは、猫耳タイツの3人組が暴れていた。

 片手に荷物を抱え、もう片手の手で腰撃ちしているのは9mm短機関銃。

 

 それに対応しているのは2体のロボットである。

 KBT(カブトムシ)型の警備ロボ、メタルビートルが鎮圧用のテーザーガンを撃っていた。

 

 だが強盗達の方が一枚上手のようだ。

 猫耳タイツは手慣れた動きで手榴弾を投げると、その隙に窓ガラスを破って逃げてしまった。

 

 シズクは()()()()()流れ弾の9mm弾を捨てながら歩きだした。

 その光景を見ていた、エレベーター横の従業員が目を大きく開いて驚く。

 こんなことが出来るのも【念】のちょっとした応用である。

 

「こういう襲撃って、よくあるの?」

 

「はい、割りと。今回は人に被害が無さそうなので、まだマシな方です。……ていうか、なんで銃弾をキャッチできるんですか」

 

「それは秘密。それより今のうちにさっさと行こう。このまま突っ立っていても邪魔だし」

 

 ロビーは飛び散ったガラスやテーブルの破片でいっぱいだ。

 だがシズクはそれらを全無視して受付に向かう。

 顔を引きつらせている従業員へ部屋の鍵を返すと、駐車場で大型二輪に乗って道路に出た。

 

 シズク達が向かったのは、とある組織の建物だ。

 昨夜、密着補給しながらティアから聞き出した「スカベンジャー組合」の事務所である。

 

屍肉喰らい(スカベンジャー)、ねぇ。訓練無しで人を遺跡に放り込んで遺物回収させるとか、本当に終末後だなぁ」

 

「一言で言えば『遺跡に入っての回収業』ですね。シズクさんなら間違いなく稼げると思います」

 

「でも普通の人はガンガン死ぬんでしょ?」

 

「そうですね。遺跡は危険も多いですから」

 

 ティアの話によれば旧文明の建物に侵入し、残っている物資を持ち出すお仕事らしい。

 運が良ければ一攫千金もあり得るが、逆に一瞬で死んでしまう事も多いとか。ハイリスクハイリターンだ。

 

 それでもシズクがこの仕事を選んだのは――ただの()()、である。

 

「傭兵って選択肢もあったけど、でもやっぱりロボットとか多脚戦車が欲しいから!!」

 

「それならスカベンジャーで見つけるのが一番速いですね」

 

 そんな理由でシズクはスカベンジャーになることにしたのだ。

 PDAを見ながら指示を出すティアの案内に従って道路を進む。

 

「それにしても、まさかそのPDAが主流なんて」

 

「あると便利ですよ? 色々とダウンロードも出来ますし」

 

 それと、この世界では主にPDA(携帯端末)ラップトップ(ノートパソコン)がメインで使われているらしい。

 さらに都市ごとの市民用中継電波が使えるようになっていて、地図やソフトを落とせるようだ。

 

 そうして、しばらく大型二輪を走らせると、付いた場所にあったのは箱型の建物だった。

 

「なんか市役所みたいだね」

 

「そうですね。中も同じ様な作りです」

 

 駐車場に大型二輪を止めて入ってみると、まさにその通りだった。

 奥には複数のカウンターがあり、その前に並ぶ人達がいる。完全に役所だ。

 どれだけ未来になっても、効率を考えると結局はこの形になるらしい。

 

「並ぶのはもちろん一番人が少ない列」

 

 シズクは迷わず一番人が少ない列に並んだ。

 それから待ってる間に、室内の一人一人に目を向ける。

 

(何だか雑魚っぽいのが多いなぁ……)

 

 一番大勢なのは何もかも足りてないような人たちだ。

 彼らは手入れ不足でボロボロの拳銃を腰に下げ、防具など何も付けていない。

 見るからに不安になりそうな格好だった。

 

(そんな装備で大丈夫か? すぐ死にそう。後は……おっ、獣人っぽいのがいる)

 

 他には少数だが頭にケモ耳を生やしたり、尻尾を下げている者がいた。

 それから耳の場所にゴツイ機械が付いている者や、露出した肌が鋼色の者も。

 

(あれが半ミュータントか。ところどころ機械っぽい人は戦闘義体ってやつかな?)

 

 皮膚がテカテカと輝いている。装甲化しているのか、かなり硬そう。

 現代FPSにファンタジーとSFを混ぜたような光景だ。

 

 シズクはそうして黙って周囲を観察しながら、じっと自分の番を待った。

 

「はい、次の方~。ご要件は何でしょう?」

 

 だが残念。番が回ってきた時、シズクの目の前にいた受付業務員は男だった。

 黒髪でメガネを掛けて、胡散臭そうな雰囲気を纏っている。

 

「いや。なんで男が受付にいんの? ――チェンジで」

 

「ちょ、ちょっとシズクさん、何言ってるんですか!?」

 

 シズクは即座に苦情を入れる。

 担当は目の前にいるので、一々書いて出さなくて良いので楽ちんだ。

 

「だってやっぱり受付は可愛い女の子じゃないと。朝からマジ萎えるわー。どうりで、この列だけ人が少ない訳だ」

 

「煩いな。ボクだって女の子に変わってほしいさ」

 

 対して受付の男は悪態をついた。腹黒そうな笑顔で。

 その容姿を一言で例えるなら、ログホラの主人公(ゲーム内)だろう。

 胸元のネームプレートには「城 鐘恵(じょう しょうえ)」と文字が記入されている。

 

「それで今日の要件は? できれば急用でも思い出してくれると嬉しいのだけど」

 

「残念、スカベンジャーの新規登録で。早く働いてどうぞ」

 

「あー、新規ね。じゃあコレに記入を」

 

 しかし今更、並び直すのは大変面倒だ。

 なのでシズクは大人しく用件を告げ、差し出された用紙を読んで名前を記入する。

 氏名欄には名字と名前の区分がなかった。どうやらこの変は適当でいいらしい。 

 

「んじゃ『シズク=ムラサキ』と。これでよろしく」

 

「なんだ、ちゃんと読み書きできる人じゃないか。いきなり喧嘩を売られたから、蛮族が来たかと思ったよ」

 

「でも蛮族もスカベンジャーにはなれるんでしょ?」

 

「それはもちろん、うちは来る者拒まずさ。まぁ棍棒は売ってないけどね。……ちょっと待っててくれ、申請書を通してくる」

 

 書類を渡すと更に暫く待たされ、それからようやく免許が交付される。

 試験なんてものはなかった。全て自己責任ということらしい。面倒がなくて大変結構だ。

 

「はい、これが免許。最初だから5級スタートだね」

 

(これ21世紀の運転免許じゃね? 写真は無いけど)

 

 渡されたのは手の平大サイズのカードだ。

 見た目は過去の地球で使われていた免許証っぽい。

 左上には大きく「5級」と文字が書かれている。

 

 スカベンジャーはこの「級」で身分を区別してるらしい。

 その等級は5,4,3,準2,2,準1、1の7段階。5が下で、1が上だ。

 2級まで行くと通り名が付いて、周囲にドヤ顔できるようになるとか。

 

「それで早速、遺跡に行くかい? あっ、許可が出てない遺跡とか、おすすめだよ。入ったら捕まるから」

 

 言い方が一々嫌味ったらしくてウザい。だが実際は遠回しの警告だろう。

 級で分けて管理されている以上、勝手に入ってただで済むはずがない。

 

(あぶね、勝手にはいるところだったよ……)

 

 危うく最初から詰むところだった。

 シズクにとっては、犯罪はバレなければ犯罪じゃないのだ。

 どこぞのギャンブラー理論である。

 

「それでどうする? あと一応聞くけどスカベンジ(発掘)方法は知ってるかな?」

 

「ぶん殴って持ってくればいいんでしょ? 近くて稼げそうなとこで。それとティアの免許は使える?」

 

「あの。私は一応4級なので、それで入れるとこをお願いします」

 

「……殴るて。なんだやっぱり蛮族じゃないか。まぁ4級の保護者がいるなら……こんな所かな」

 

 カタカタッ、ターンッ! と勢いよくキーボードが打たれ、結果が出たらしい端末が差し出される。

 

 シズクは提示された端末画面を覗き込む。

 そこには遺跡だと思わしき建物と、そのデータが表示されていた。

 

 1.大規模な倉庫群  危険度E/利益F  ※団体侵入

 2.中規模な工業施設 危険度E-/利益E ※団体侵入

 3.小規模な工場跡  危険度F-/利益F- ※ほぼ何もない

 4.中規模な商業施設 危険度D-/利益E ※警備システム有り

 

 ここから選べということだろう。

 それと危険度/利益はFが少なく、Aほど期待値が高いらしい。

 

「んー、この中だと4番かなぁ。1と2の団体侵入はだるそうだからパス。それと3は何の意味があるの?」

 

「そりゃ新人が気分を味わう為さ。……では4の商業施設で連絡しておこう。送迎は?」

 

「足はあるからパスで。ティア、建物まで行けそう? あと詳細とかあったら情報プリーズ」

 

「大丈夫だと思います。PDAもありますから。データを転送して貰えますか?」

 

「うーん、有能」

 

「分かった。じゃあ纏めてそっちのPDAに転送しておくよ。適当に頑張ってくれ。それでは次の方~」

 

 それで終わりだとばかりに受付の男は次を呼んだ。

 どうやらサポートはこれだけらしい。

 

「さっぱりしてるなぁ。まぁ後は本人達の実力次第ってことか。んじゃ行ってみよう。案内よろ」

 

 シズク達は指定の遺跡へと、大型二輪を走らせた。

 

 

 

 ◆◆◆  ◆◆◆

 

 

 

「――はい。という訳で走ること一時間。やっと遺跡に到着しました」

 

「うう、まだ腰がガクガクしてる……」

 

 指定の遺跡は壁に囲まれたショッピングモールだった。 

 

 入り口側にはライフル銃を構えた軍人が二人。

 彼らは遺跡の見張りらしい。だが真面目にやる気はなさそうだ。

 ふたりともタバコを吹かしてダラけている。

 

「中に入りたいんですけどー」

 

「ああ、連絡は来てる。とっとと進んでくれ」

 

「へいへい」

 

 シズクは発行されたばかりの免許を見せて中に入る。

 外壁の内に大型二輪を停め、装備を整えてから商業施設の建物に近づく。

 

 建物は3階建てのようで、一階の出入り口には銃撃戦の後が残っていた。

 

「装備はリボルバーと特殊警棒。背中には7.62mmライフル。防具は防刃防弾コート。……全て良し!! そっちは?」

 

「頂いた9mm、PDA共に問題ありません」

 

 そんな建物を前に、シズクは装備を改めて確認する。

 弾丸は装填済み。右腰には買ったばかりの特殊警棒が釣ってある。

 

 ティアの方は9mm拳銃にPDA。こちらもシズクと同じコートを羽織っていた。

 

「後は建物から金目の物を持って帰ればいいんだよね? さっさと行こう」

 

「待って下さい! 貰った資料によると1階は何も残ってようで。それと2階に上がる階段が崩れて使えなくなっているみたいですね」

 

「ふむふむ。なら一階はスルー推奨と。他に注意することは?」

 

「2階に残った警備ロボあり。これとの戦闘で階段が崩れたようです」

 

 説明によれば、2階に上がる唯一の階段は使用不可らしい。

 エレベーターも止まっているようだ。

 おまけに何とか階段の瓦礫をどかしても、その先では警備ロボがガン待ちしている可能性が高いとか。

 

「なるほど。通りで私達以外に誰も来てない訳だ。ならばここは屋上から行こう!!」

 

「ロープでも掛けて登るんですか?」

 

「何言ってんの。――飛べばいいじゃん!!」

 

「……えっ」

 

 シズクは有無を言わさず飛んだ。ティアをお姫様抱っこして垂直跳びだ。

 ダンッ! という音を残し、たった一度の跳躍で15メートル上の屋上に付いた。

 飛ぶ瞬間に足に生命オーラを集めることで、ジャンプ力を何十倍にも跳ね上げたのだ。

 

「うそっ……」

 

「はいはい、いくよー」

 

 シズクはそのまま屋上の出入り口を蹴り開ける。

 先程見せたジャンプ力で放たれる蹴りだ。こちらの威力も常人の数十倍である。

 あわれ蝶番は弾け飛び、鉄製の扉は悲鳴のような軋みを上げて倒れていった。

 

「換気されてないのかな? 埃が溜まってるねー」

 

 そのまま埃が塗れの階段を降りていく。

 長年、掃除していなかったのか、漂っている空気も黴くさい。

 

「まずはどこから行こっか?」

 

「えっと、それなら社長室はどうでしょうか? 残っていた案内板によれば、この3階の中央にあるようです」

 

「金目のものがありそうだから採用」

 

 シズクはティアの案内に沿って社長室を目指す。

 慎重にクリアリングしながら進んで行ったが、特にハプニングもなく辿り着いた。

 

 ドアは鍵が掛かっていなかったので開けて中に入ると、さっそく部屋の物色を始める。

 

「おっ、メインデスクの裏に真っ赤なボタン発見! これってアレだよね、緊急時用の奴」

 

「絶対に押さないで下さいね? たまに知識のない5級が押して、駆けつけた警備ロボに殺されたりしてますから。フリじゃないですよ?」

 

「分かってる分かってる。そんな馬鹿と一緒にしないでよ。――分かって押すんだから。ポチっとな」

 

「ちょっとぉおおおおお!!!!」

 

 シズクは遠慮なく真っ赤なボタンを押した。

 途端に部屋中にビービービーと響き渡る警戒音。まるでエヴァの警報のよう。

 

 すると壁の一部がガコンッ! と開き、中からゴツイ警備ロボが飛び出してきた。

 

『――警告!! 警告!! 侵入差ヲ発見シマシタ!!』

 

「おおっ! (未来の)セキュリティすげー」

 

 出てきたのはホテルで見たのと同じKBT(カブトムシ)型の警備ロボだ。

 警備ロボはシズクを認識すると、右手に持つ9mm短機関銃(サブマシンガン)を構える。

 だがその動きはホテルで見た2体よりも更に遅い。

 

「おっと、意外と殺意が高い。強盗かテロリスト対策のボタンだったのかな? なら試してみよう。――おいでデメちゃん!!」

 

 その間にシズクは自身の固有能力を発動させた。

 体から吹き出した生命オーラが形となり、とある生物が化現する。

 

 ――ギョッギョッギョ!!

 

 突如、何もなかった空中に真っ赤なデメキンが出現する。

 ビチビチと嬉しそうに跳ねる、全長1メートル超えの魚が2体。

 

『――侵入者ヲ排除シマス。侵入者ヲ排除シマス』

 

 そこに警備ロボが射撃を開始した。

 だがその弾丸が()()したのは、撃った()()()()()()だった。

 

 放たれた弾丸は斜線上に割り込んだ一匹のデメキンに()()()()()と、その隣に浮く()()()()()()から飛び出してきたのだ。

 

『――理解不能。理解不能』

 

 予想外の事態に警備ロボがエラーを吐き出す。

 だがこれこそが、このデメキンに宿る固有能力。

 

 一言で言えば――「どこでもドア」である。

 

 2匹のデメキンは口の中を連結し、弾丸を相手に跳ね返したのだ。

 

「いやいやいや、なんですかそれ!?」

 

「これ? これは私の固有能力だよ。名前は――金魚王の遺産(ゲート・オブ・デメキング)

 

 床に伏せるティアがびっくりしながら説明を求める。

 シズクは自慢げに笑顔を作ると、躊躇なく能力を説明した。

 

「これは『空間を繋ぐ』金魚を呼び出す能力なんだ。フフフ、すごいでしょ?」

 

「まさかESPですか!? 確かにすごい……。しかも空間系なんて激レアですよ……」

 

「そうそう、たぶんそんな感じ。他人には秘密でよろしくね?」

 

 念能力を説明しても理解されそうにないので、シズクは適当な事を言ってごまかした。

 

 だがこれは射撃戦では、ほぼ無敵の能力だ。

 空間そのものを繋ぐため、バズーカからミサイルまで何でも跳ね返せる。

 

 ただしこのまま反射を続けると警備ロボが壊れてしまいそうなので、これ以上ダメージを与えるのはまずい。

 

「という訳で、お次は粘着固定榴弾を発射ッ!」

 

 シズクは背中からライフルを取り出すと、グレネードランチャーから榴弾を放った。

 装填されていたのはホテルのロビーで売られていた粘着固定榴弾である。

 

 なお、安全装置は最初から省かれていて、近距離でも容赦なく爆発した。

 

『――行動不能! 行動不能!! 任務ヲ続行出来マセン!!』

 

 直撃した警備ロボは全身をネチャっとした液体に覆われ、あっという間に固定された。

 反射された弾丸によってボロボロだった所を固められた為、もう動ことは出来ない。

 

「これで拘束完了かな? んじゃハッキングよろしく」

 

「は、はいっ!!」

 

 そして動けない警備ロボへ、ティアがPDAからケーブルを伸ばして接続。

 中枢を支配して手駒にしようと、ハッキングを開始する。

 

「失敗、失敗、失敗、失敗……あっ、やっと通った!!」

 

「成功確率10%ぐらい?」

 

 最初は何度も失敗するが、10度目のトライで見事に中枢を乗っ取った。

 これでこの警備ロボはシズク達の物だ。かなりボロボロだけど。

 

「スカベンジャー、割りとちょろくない?」

 

「いや、普通の人は最初の銃撃で死にますから!! ……って後ろ!!」

 

 だが作業が終わった頃に、別の警備ロボが部屋に飛び込んできた。

 

『――増援ノ要請ヲ受諾シマシタ。コレヨリ侵入者ノ排除ニ加勢シマス』

 

 こちらはクワガタのような造形の警備ロボットだった。

 白くてスラリとした細身のボディ。頭にはハサミのような二本のアンテナ。

 武器は右手に所持されている赤熱化したブレードが一本。

 

「あ、あれはKWG(クワガタムシ)型の軽量警備ロボ! タイプ:ロクショウです! 武器は恐らく単分子ブレード!!」

 

「またメダロットか。でも武器は爪じゃなくてブレード。ってことは改造済み?」

 

 もしかして全種が作られてたりして。ベルゼルガとかもいるのかな?

 などと思いながら、シズクもホテルで買った特殊警棒を抜く。

 これは「対単分子コーティング」というナノマシンが塗布されている一品である。

 

単分子ブレード(何でも切れる刃)……一言で言えば、限界まで研いだ超超すごい刃物だっけ。ナノマシンといい、実にSFだなぁ」

 

 SF物によくある武器である。どんなに頑丈な装甲でも切れるという。

 それがこの世界ではガチで実装さているらしい。

 

 しかしこの警棒はその対策が施されている。

 分子間の隙間を埋めるナノマシンが塗布されているのだ。

 これによりロボのブレードは、ただの刃物へと成り下がっていた。

 

『――侵入者排除! 侵入者排除!』

 

「おっ、このロボは動きが速い。一流のスプリンターぐらいはある」

 

 シズクは切りかかってきたロクショウの斬撃を弾いて流す。

 お互いの重量差に気をつけながら、ブレードに警棒を打ち合わせる。

 

 何度も空間に火花が飛んだ。近接用ロボだからなのか、その動きは中々に鋭い。

 しかしロクショウの攻勢はそこまでだった。

 

「んー、こんなもんか。おつかれ」

 

 シズクは一度大きくブレードを弾くと、その隙に左手で拳銃を抜いた。

 発射された50口径の大威力弾が、狙い余さず四肢の関節部を撃ち抜く。

 

 一瞬で両手足を破壊されたロクショウは、ゴトンッと重そうな音を立てて床に転がった。

 

「……なんだ、早い分だけ脆いんだ」

 

「はい。ロクショウは速度を優先する為に、装甲が薄くなってますから」

 

 四肢を失ったロクショウはジタバタと床で藻掻いていた。

 しかし流石に未来のロボットでも、手足がなくなれば行動不能らしい。

 

 なので、こっちも同じ様にハッキングして支配下に置く。

 

「失敗、失敗……あっ、今度は5回目で通った!!」

 

 使っているのは、昨日倒した黒マスクが持っていたPDAだ。

 ティアが言うには一台だけ、そこそこな性能の物があったらしい。

 ハックツールはホテルでDL済みである。

 

「やるじゃん!! 終わったのはホテルの部屋に送っておこう」

 

「……ホテルまで空間を繋げるって、余りにも反則すぎませんか?」

 

「でっしょー? 割りと、いやかなり自慢の能力なんだ。」

 

 ハックが終わったら電源を落としてもらう。

 それからシズクはまたデメキンを呼び出し、ロボ2体をホテルの部屋に転送した。

 普通ならどうやって持ち帰るのか悩むところだが、シズクの力はそういった事を全て解消してくれる。

 

「さて、続けて2階に来てみれば……今度は3体か」

 

 それから階段を降りて2階を進むと、3体の警備ロボが集合していた。

 広い休憩スペースの一番奥だ。恐らくあの先が1階への階段なのだろう。シズク達が入ってきた通路からは距離がある。

 

 警備ロボの内訳はメタルビートルとロクショウ、そして黒紫カラーのロボが一体ずつ。

 最後のデザインは悪魔のような、ハエのような。どうみてもベルゼルガだった。

 

「一応聞いとくけど、ティアはあの黒紫のロボット知ってる?」

 

「あ、あれはまさかDVL(デビル)型の重装警備ロボ。タイプ:ベルゼルガ!? なんで4級遺跡にいるのよ……。準2級遺跡クラスじゃない!!」

 

 シズクが問いかけると、ティアが慌てながら等級詐欺だと嘆いた。

 どうやら普通の4級遺跡には、これほどの数と質の警備ロボはいないらしい。

 

「だが関係ない! 全部頂いていくぞヒャッハー!!」

 

「ちょっ、どうして正面から突っ込むんですかぁー!?」

 

 だがシズクは警棒を握って部屋に踏み込んだ。

 あのベルゼルガは、ぜひ無傷で確保しようと決めて。まっすぐロボ達へ向かっていく。

 

『――侵入者! 侵入者!』『――排除!! 排除!!』『――行動ヲ開始シマス』

 

 侵入者を認識した警備ロボ達は即座に武器を構えた。

 

 そして各々がその身に宿す火力を一斉に解き放つ。

 メタルビートルは9mm短機関銃と7.62mmライフル。角からも小型ミサイルを発射。

 

 遅れてベルゼルガが負けじと5.56mmの弾丸をぶっぱなした。

 両手に一門ずつ内蔵されていた軽機関銃だ。

 

 目の前で花火がハジケたような、一個小隊でも皆殺しにできそうな弾幕だった。

 

「シズクさんッ!!」

 

 その光景をホール入り口から見ていたティアが悲鳴を上げる。

 だがシズクは慌てなかった。だってこの程度の弾幕など()()()()だから。

 

「はいはい。この程度でピーピー騒がない」

 

 シズクは冷静に【念】でデメキンを具現した。それも今度は()()()()()()を。

 全ての攻撃はそのデメキン達の口の中に消えていく。

 そして別のデメキンの口から吐き出された。

 

 ――ただし今回は天井に向けられて。

 

 ロボの方に反射しないのは無効化のみを行い、捕獲する為の手加減だ。

 

『侵入者ヲ排除シマス』

 

「じゃまっ!!」

 

 距離が半分になった辺りで、外側からロクショウが接近してきた。

 シズクは走りながら警棒を叩き込む。振るわれたブレードを避けての一撃。

 それだけでロクショウは頭部を砕かれ、何度かビクビクと痙攣して動かなくなった。

 

「まず一体ッ!!」

 

 あっさりと一体の警備ロボの片付けたシズクは、続けてリボルバーを撃った。

 未だにバラまかれ続ける銃弾の嵐の中で、冷静にメタルビートルの頭部に狙いをつけて。

 

 ――そのまま5連射

 

 全段が直撃したロボの頭部はひび割れて砕け、こちらもあっさりと片が付いた。

 

「これで2体目ッ!!」

 

 いい感じだと思いながら、シズクは最後に残しておいたベルゼルガに向かう。

 リボルバーと警棒を腰に戻し、代わりに背中から7.62mmライフルを手に持つ。

 

 そして5メートルほどの距離まで迫ると、今度は距離を維持するように動きを変えた。

 強化された肉体で壁と天上を縦横無尽に走り回り、前進してくるベルゼルガとの相対距離保つ。

 

 それからシズクはアタッチメントのグレネードランチャーを発射した。

 装填されていたのは、社長室でも使った粘着固定榴弾だ。

 

 撃ったら即座に発射筒そのものを前にズラす。

 残っていた薬莢が重力に引かれて地面に落ち、そこに新しい榴弾を突っ込み、発射筒を元の位置に戻してリロード。

 

「ほい、ニ発目っと」

 

 そのままシズクはグレネードを放ち続ける。

 両肩、両足、股関節と、動きを封じるように弾を撃ち込んでいく。

 

 ――ポンッ! ガチャンッ! シャコン! ポンッ!!

 

 規則正しい発射とリロードの音が繰り返され、5回目でついにベルゼルガは動かなくなった。

 

『――行動不能。行動不能。支援ヲ要請シマス』

 

「はい、おつかれー。これぐらいで大丈夫かな? おっし、捕獲完了!!」

 

 最後は後ろから蹴りを入れ、うつ伏せに倒せば捕獲完了だ。

 これで後はハックが終われば、負傷のない警備ロボが手に入るだろう。

 買っておいた粘着固定榴弾は使い切ってしまったが、差し引いても十分な収入になると思われる。

 

「はい、これでおしまいっと。ティア、ハッキングして」

 

「ええええぇぇ!!!!」

 

 シズクは警備ロボを全て片付けると、入口で待機していたティアを呼んだ。

 ティアはシズクの動きにかなり驚いていたが、手招きすると恐る恐るハックにチャレンジ。

 何とか20回目で中枢を乗っ取ることに成功した。

 

 ちなみに先に倒した2体はハック不要とのこと。

 というかCPUが詰まっている頭部を壊したので、修理しないと活動できないらしい。

 

「ロボも手に入れたし、そろそろ帰ろっか」

 

「そうですね。あと途中でバイク用リヤカーを買いましょう。空間絡みのESPは超希少なので、見つかるとヤバイと思います。最悪、軍の実験材料にされるかもしれません」

 

「オッケー。残りの4体は明日にでも売りに行こう。ベルゼルガは中和剤で拘束解いてっと」

 

 粘着固定榴弾の中和剤を使い、ベルゼルガの拘束を解く。

 立ち上がらせてみると、動くのは問題ないようだ。

 

『――再起動シマシタ。コレヨリ護衛ヲ開始シマス』

 

「ホテルの部屋に送るからそこで、待ってて」

 

 シズクは3体のロボをホテルの部屋に送り、それからホクホク顔で遺跡を後にした。

 

 今回の遺跡探索の結果。

 ・整備不良のDVL(デビル)型重装警備ロボット・ベルゼルガ:1体

 ・半壊したKBT(カブトムシ)型重装警備ロボット・メタルビートル:2体分

 ・半壊したKWG(クワガタムシ)型軽装警備ロボット・ロクショウ:2体分、を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが成果だ(ドヤァ)」

 

「なん……だと…………」

 

 それから報告に戻った組合で、シズクはいい笑顔でベルゼルガを披露した。

 隠すつもりなど微塵もない、堂々とした晒っぷりである。

 

「今日登録したばかりの新人が、いきなりロボットを持ってきた件について」

 

「嘘だろ……」「ああ、ロボットいいなぁ」「あれがあれば俺だって……」

 

 その成果に免許の発行時と同じ組員、城 鐘恵(じょう しょうえ)がフリーズ。

 ベルゼルガを見た周囲の者達もザワザワと騒ぎ出した。

 

 

「文明人なので警備ロボのハック余裕でした」

 

「実際にハックしたのは私ですけどね」

 

 ちなみに途中で買ったバイク用リヤカーで組合に運んだので、能力バレ対策も完璧だ。

 

「ねぇねぇどんな気持ち? 新人に予想外の成果上げられてどんな気持ち?」

 

「……ちなみに、どうやって警備ロボの動きを止めたんだい?」

 

「そりゃぶん殴ってよ。後は四肢もいだりとか」

 

「なんだ、やっぱり蛮族じゃないか(呆れ)」

 

「いや固定粘着榴弾使ったりしたので、シズクさんも面倒くさがらずに説明しましょうよ……」

 

 シズク達はそのまま組合を後にすると、ホテルに戻って祝杯を上げた。

 なお、倒した警備ロボ以外に、目ぼしい物は何も見つからなかった。

 

 シズクとティアは二人共、あまり運が良くないようだ。




履いていた(女物)パンツを助けたヒロインに渡す主人公はダメですか?
転移先は「やる夫はスカベンジャーになるようです」の世界です。ポストアポカリプス(文明崩壊の後)物。

具体的な設定としては
・転移した時期はキメラアント編の後
・リボルバー以外の装備は全ロスト
・現地の言語は日本語なので読み書きは可能
・技術が進みすぎててハッキング系は不可(1から習得が必要)
・念能力は使えるが空間移動はバレたらヤバイ(使うのに工夫が必要)

こんな感じでスタート。
解説役のティアちゃんを性的に虐めながら、徐々に戦力を整えていく的な。
あと試しに主人公をTS男化してみたり。

ステータスは以下のような感じで。

【名前】シズク=ムラサキ 【性別】♂ 【年齢】23 【出身】"HxH世界"ジャポン

【能力】
 筋力A+ 体力A+ 俊敏A+ 知能B 運勢F 注目D(なんだアイツ?)
 A=一流 B=軍人 C=人並 D=苦手 E=貧弱 F=子供

【特性】
 転移者:別世界からの来訪者。この世界の知識が欠如している。特定スキルにマイナス補正
 TS者:TransSexualいわゆる性転換。♀→♂。慣れるまで肉体動作にマイナス補正
 邪神に魅入られし者:クトゥルフの被害者。運勢がF固定。探索結果にマイナス補正

【スキル】
 念能力LvS:超一流の念能力者。戦闘時に身体能力が大幅上昇。固有能力有り
 銃器取扱LvA:銃器扱いの達人。拳銃から機関銃まで。命中+6/威力x6
 爆発物取扱LvC:爆発物を扱える。黒色火薬からC4まで。威力x4
 金魚王の遺産(ゲート・オブ・デメキング):金魚型の「どこでもドア」。ランクA以下の射撃を無効化。
          ただし射撃元が多いほど精度が下がる。部屋に人・物を転送可能。

【装備】
 特製50口径拳銃:特注の大型リボルバー。装填数は5発。7.62mmライフル以上の威力
 7.62mmライフル:略奪者が持っていた小銃。グレネードランチャー付き
 大型二輪:大型の二輪バイク。駆動発電とバッテリーの内蔵式


【名前】ティア・ナランスター 【性別】♀ 【年齢】16 【出身】不明

【能力】
 筋力C 体力C 俊敏C 知能C+ 運勢F
 A=一流 B=軍人 C=人並 D=苦手 E=貧弱 F=子供

【特性】
 ザ・凡人:どれだけ努力しても能力・スキルはBまでしか上がらない
 薄幸の星:幸運に恵まれない。運勢がF固定。探索結果にマイナス補正

【スキル】
 銃器取扱LvC:銃器を扱える。拳銃から機関銃まで。命中+4/威力x4
 ハッキングLvC:情報戦を行える。成功+4

【装備】
 9mm拳銃:ありふれた軍用拳銃
 普通のPDA:略奪者が持っていた携帯端末。性能はそこそこ
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