転生シズクのTS異世界転移スカヴェンジャー   作:さろんぱす。

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組合員の名前を「城鐘シロエ」に変更。
また長くなったけど、短編だから許されるはず。


#02 宝箱を割りに行こう

 ――ジジ、ジジジジジ……。

 

 高級ホテルのリビングで、ロボットがハンダ付けされていた。

 床に並ぶのは半壊した4体。そこへ別の1体が慎重に手を伸ばす。

 行われているのはヘッド部分の取替作業だ。

 

「――ベルルン(ベルゼルガ)、あとどれぐらい掛かりそう?」

 

 シズクは椅子に腰掛けながら、軽い調子で新たな従僕に問い掛けた。

 なんとなく付けてみた愛称で。

 

『推定完了時刻ハ、4時間後ニナリマス』

 

 それに無機質な機械音で答えたのは、ロボット達を修理しているロボット。

 一般にベルゼルガと呼ばれる重装警備ロボだ。

 

「頭交換だけなのに結構かかるなぁ」

 

 リビングにはシズクとベルゼルガしかいない。

 今日の活動がよほど疲れたのか、ティアはとっくにベッドで睡眠している。

 遺跡での活動に加え、帰宅後もシズクと体の高ぶりをぶつけ合って体力が付きたのだ。

 

「ティアはヤリ疲れて寝ちゃったし。どうしよっかなー」

 

 そのため暇になったシズクは一人で、ベルゼルガの修理作業を見守っていた。

 使い方を習ったPDA(携帯端末)で、この世界の兵器カタログを眺めたりしながら。

 

「やっぱり次は多脚戦車が欲しいなぁ……。それにしてもロボがロボを直す図って結構シュール」

 

『メタルビートル2時間、ロクショウ2時間ガ必要デス』

 

 ベルゼルガは予想時間を答えながら、器用にマニピュレーターを動かす。

 このロボを手に入れたのは商業施設だが、そこではメンテナンス機も兼ねていたらしい。

 腕には本来無い5指のマニピュレーターが付いていて、専用のルーチン(行動プログラム)も導入されていた。

 

 おかげで、こうして他ロボットの修理が可能だった。

 

「こういうの共食い修理(ニコイチ)っていうんだっけ」

 

 床には同じ機種の警備ロボが2体ずつ並んでいる。

 それぞれ頭と体の、どちらかだけが壊れた状態で。

 まるで後々の修理を見越して壊されたかのようだ。

 

「まぁ時間は掛かってもいいから宜しくね。そろそろ寝よう」

 

『――命令受諾。修理作業ヲ続行シマス』

 

 ベルゼルガはボディが壊れたロボから、無事なヘッドを外す。

 次にそれを、ヘッドだけ壊れたロボへと移植する。

 こうして無事なパーツ同士を組み合わせ、あとは首部の回線を繋げば、まともなロボが1体出来上がるという寸法だ。

 

 眠りについたシズクが起きた頃には、作業は無事に完了。

 修理されたメタルビートルとロクショウはダイニングに並び立ち、文字通り鋼鉄の意思で主の指示を待ち構えていた。

 

「お、ちゃんと直ったんだ」

 

『――修理完了シマシタ』

 

「よろしい。では――売りに行こう」

 

 しかし使われるかどうかは話が別である。

 哀れ、直った2体はバイク用リヤカーに載せられ、その使命を果たすこと無く官営武器店へ運ばれた。

 

 

 

「建物は普通の民家っぽいね。コンクリートに似た素材で作れた箱型の」

 

「上は生活空間でしょうか? 店は2階建ての1階部分だけみたいですね」

 

 官営武器店と呼ばれる店は、スカベンジャー組合事務所の近くにあった。

 文字通り国から認められた人間が運営する、武器の総合取り扱い所である。

 

「――あっ、すみません」

 

「いえいえ、おきにせずー」

 

 シズクが大型二輪を停めて入店しようとすると、ちょうど出てきた客とすれ違った。

 12.7mmの重機関銃を軽々と肩に担いだ、自身に満ち溢れた青年だ。

 ピカピカの服を着て笑顔だったが、その身には「なにがQだよ!!」と叫びそうな雰囲気を纏っていた。

 

「同業のスカヴェンジャーかな? あの機関銃って40kgぐらいなかったっけ」

 

「たぶんそうだと思います。恐らくかなり上級の方ではないでしょうか」

 

 店内には銃器と弾薬が綺麗に整列されていた。

 奥には店主だと思わしき30代前後と思わしき女性がいる。

 

「はぁい! 乳酸菌とってるぅー?」

 

 シズク達が近づくとゴスロリ衣装に身を包んだ、銀髪の女性が声を上げた。

 金色の十字模様が入った黒いドレスを着て、こちらもファッションなのか背中から黒い羽を生やしている。

 

「いらっしゃい。ここは私、水銀燈(みずぎあかり)お姉さんのお店よぉ~。さぁ、お金を落としていきなさーい!! もちろん乳酸菌飲料も売ってるわぁ。どう?」

 

「乳酸菌はいらないです。あとそのゴスロリってなにかの罰ゲーム?」

 

「似合うでしょぉ~? だから乳酸菌飲料も買いなさい。健康にもいいのよぉ」

 

「服と乳酸菌関係なくね?」

 

 妙にハイテンションで声が高い。それとやけに乳酸菌押しだ。

 手にはヤクルトのような白い飲料が握られており、それを遠慮なくゴキュゴキュと飲み干している。

 

「ぷっはぁ~~~!! 今日も乳酸菌キメて商売が上手い!!」

 

「それ上手いと美味いを掛けてるの? それで、ここってロボットの買い取り可能? 警備ロボが2体なんだけど」

 

「あらぁ、上級のスカヴェンジャーだったのかしら? さっきのシンジさんに続いて幸先がいいわねぇー。まぁうちは何でも買い取るわよ。ただしガラクタ以外ね!!」

 

 どうやら先程すれ違った男性はシンジという名前のようだ。

 店主がさん付けしている事から、かなり上級の人らしい。

 

「えーと、この2体なんですけど。あとパーツとか」

 

 許可を取ったシズクは修理した警備ロボ2体を並べた。

 それとついでに壊れた方のボディとヘッドも。

 持っていても使い道がないから、ついでに売ってしまえという魂胆だ。

 

「あらIAI製のメタルビートルとロクショウじゃない。それって人気モデルで需要が高いわよぉ。ちゃんと動くみたいだし、売ってくれるなら1体1000円で買い取るわ。壊れてるパーツは、おまけして全部で100円ね」

 

 きちんと動く警備ロボ2体を見せると、査定した店主は唇に指を当ててフフフと笑った。

 随分と機嫌が良さそうだ。この警備ロボットは人気で需要が高く、売り先には困らないらしい。

 

「ってことは全部で2100円か。なんともボロい商売だ。ティアもそう思わない? あっ、持ち込んだのは全売りで」

 

「まいどぉー!」

 

「いえ普通だと4級って、1日頑張って10円ぐらいの稼ぎなんですけど……」

 

 21世紀の地球価格に換算すると210万円である。

 普通の人が何年も掛けて貯める額。それが一日の稼ぎだ。

 

「なんというかボロい、ボロすぎる……」

 

「じゃあそれは全部引き取るわね。……ここでは見ない顔だけど、他で慣らした口かしら?」

 

「いや昨日が初めて。4級遺跡なせいか警備ロボ5体しか居なくてさぁ」

 

「始めてで警備ロボを倒した……ですって……。こりゃまた随分と有望そうな新人だこと。金庫からお金取ってくるわぁ。お品書きでも見ながら待ってて」

 

 ロボットを引き取った店主は、機嫌良く店の奥に引っ込んだ。

 その間にシズクは渡された商品リストの冊子をティアと眺める。

 人間用、人形用、ロボ用とページが分かれていて、中には武器の名前がずらりと並ぶ。

 

 シズクはその中から最も心惹かれた物を指さした。

 

「……この『手持ち式30mmガトリング』っての良くない?」

 

「いやそれ、自動人形用って書かれてますよ!?」

 

 シズクの選択にティアが慌ててツッコミを入れる。

 

 だが記載の簡略説明によれば、人が持てるぐらいにサイズダウンされているらしい。

 21世紀の地球では有り得ないサイズである。ただし発射レートは分間200発まで落とされているようだが。

 

 おまけに弾はカーボンスティックを消費して自動生成。

 本体内部の位相空間に600発まで格納可能とある。

 

「ならば相応の筋肉さえあれば、人でも撃てるのではなかろうか? これは買えと神が言っている」

 

「確かにシズクさんなら撃てそうですけど。……でもロボットとか壊れて剥ぎ取れなくなりますよ?」

 

 確かに機械相手では過剰火力過ぎるだろう。

 剥ぎ取りや回収ができなくなってしまい、儲けが激減するのは予想に難しくない。

 

 だが元より剥ぎ取らない相手なら問題ないのではなかろうか? 例えば――人とか。

 

「えっ、やだなぁ。撃つのは人相手に決まってるじゃん」

 

「30mmで人間撃つ気なんですか!?」

 

 元より人間の体など回収しない。二束三文にすらならないのだから。

 なら盛大に壊しても良いよね! の精神だった。

 

「じゃあこの30mmは購入確定として、ティアはなんか欲しいのある? 仕事道具なんだから遠慮は無しだよ」

 

「……それなら5.7mmの消音器付き拳銃と短機関銃。あと手榴弾も買っておいて良いですか?」

 

「おっ、手榴弾は良いね!! どうせなら全種類買っておこう。ニ個ずつぐらい。あと単分子の武器も使ってみたいかな」

 

「店にある種類は破片、閃光、煙幕、チャフ、EMPですね。単分子カッターとブレードは高品質のを数本でいいと思います」

 

 そうして、あれこれと買うものを吟味している内に、店主が代金を持って戻ってきた。

 シズクは差し出された21枚の100円札を受け取り、代わりに購入したい品物を告げた。

 

「……はい、おまたせ。それで何を買ってくれるのかしら?」

 

「この30mmガトリングっていうの、一つ下さい」

 

「あら、人形まで持ってたのぉ?」

 

「いえ自分で撃ちます。気合で」

 

「ああ、頭がお馬鹿さんな人だったのね……」

 

 人の身で30mmを使おうとするシズクに、店主は明らかにドン引きしていた。

 それでも商品自体は普通に売ってくれたが。金さえ払えば文句はないらしい。

 

「んー、体感で重量は100kgぐらい?」

 

 シズクは運ばれてきた30mmガトリングを持ち上げた。

 M134ミニガンを大きくしたような形状だ。

 全長は2メートル内に収まっていて、3つの銃身(バレル)が鉛色に輝いてカッコイイ。

 

「よっと、これなら全然いける」

 

 幅広い吊り下げ用の紐をたすき掛すると、ずっしりとした重量が肩に掛かる。

 だがシズクは気にせずホッチキスの針のような上部取ってを左手で攫み、上に付き出したグリップを右手で握った。

 

 腰だめで打つ姿勢である。このまま車の屋根にでも乗れば、中々絵になる事だろう。

 

「なんで生身でソレを振り回せるのよぉ……」

 

「本当に持てるんですね……」

 

 店主とティアは唖然としていたが、シズクにとっては驚くほどのことではない。

 なんせ前の世界には、50kgのヨーヨーをニ個持って暴れる子供だっていたのだから。

 

「……うん、軽い軽い。反動は撃ってみないと分からないけど、まぁ大丈夫そうかな」

 

 そのまま左右にブンブンと振り回してみるも、特に問題は無さそうだった。

 シズクは他の装備と一緒に料金を支払い、買い物を済ませた。

 

 ・警備ロボ2体と壊れたパーツ を売った(2100円)

 ・30mmガトリングx1 を購入した(500円)

 ・手榴弾各種(20個) を購入した(100円)

 ・5.7mm拳銃(消音器付き) を購入した(30円)

 ・5.7mm短機関銃 を購入した(70円)

 ・単分子カッター4本 を購入した(40円)

 ・単分子ブレード2本 を購入した(40円)

 ・必要な弾薬とカーボンスティック を購入した(20円分)

 ・差し引きで1300円 を手に入れた

 ・オマケでヤクルトx2(無料)を渡された

 

「あっ、ヤクルト意外と美味しい。……後ちょっと聞きたいんだけど野盗の塒とか知らない? 足として装甲車が欲しくて」

 

 ついでにシズクは野盗について尋ねた。

 ヤクルトをチューチューキメながら。

 

「……あなた今まで何してたのぉ? そこで野盗から奪うって発想はヤバイわ。余ったお金でトラックでも買いなさいよぉ」

 

「えー、でもティアの話だとこの変は開拓途中で、かなり荒れてて野盗も多いとか。なら奪えば無料で手に入るじゃん!!」

 

 現在使っている大型二輪はボロなので、もっとマシな車が欲しかったのだ。

 そして効率厨でもあるシズクからすれば、敵から奪えそうな物を買うというのは、最初から選択肢に無いものだった。

 

「あはははは!! お馬鹿さんねぇ。……でもちょっと気に入ったわ。野盗については組合で聞きなさい。確か軍から討伐依頼が出てたはずよぉ」

 

「あっ、組合って遺跡以外の依頼も受けれたんだ」

 

「ここら辺は治安が悪いので、そのせいかもしれません」

 

 よっぽど面白かったのか、店主は上機嫌に笑い声を上げた。

 

 

 

「――野盗をぶっ殺したいです。情報プリーズ」

 

「あの、装甲車とか所持してそうなグループでお願いします」

 

「昨日の登録に続けて、また君たちか……。いきなりその物言いはどうかと思うよ」

 

 組合の受付で順番が回ってくると、シズクは要件を単刀直入に切り出した。

 対応した昨日と同じ腹黒そうな眼鏡の組合員―城鐘シロエ―は、やる気が無さそうに端末を叩く。

 

「ここで野盗の討伐依頼が受けれると聞いた件について」

 

「……報酬は20円+夜盗の耳一組みにつき5円だよ?」

 

「本当にそれだけしか出ないの? しょっぱすぎない?」

 

「ああ、だから誰もやろうとしないんだ。ちなみに装甲車を複数台持つ規模の野盗だとか」

 

 シズクからしても報酬はかなり少ないと思える。

 それに、それだけの装甲車を持つということは、かなりの人数がいることだろう。

 普通の人なら絶対に受けないはずだ。

 

 だが倒す力さえあれば装甲車を鹵獲するチャンスでもある。

 なのでシズクは受けてみることにした。

 

「倒したら塒の物資は全部貰っていいんだよね? 場所プリーズ」

 

「あっ、まじでヤル気なんだ。じゃあ終わったら報告だけしてくれ。3日経って連絡がなければ失敗したとみなすから」

 

「ほいほい。それでコレって他に受けてる人はいるの?」

 

「ハハハ、軍を一度返り討ちにしてる野盗達だよ? こんな安い報酬で受ける訳無いだろ」

 

「ちょっ、なんですかそれ!? シズクさん止めましょうよ」

 

 普通なら味方が居ないと知れば、依頼はキャンセルするだろう。

 

 だがはシズクにとって好都合だ。

 他人が来ないなら遠慮なく固有能力(ゲート・オブ・デメキング)が使える。

 敵の戦力にもよるが、野盗が人間の集団なら蹴散らすのは簡単だろう。

 

「じゃあ手続きするから免許を出してくれ。それと君は昨日の功績で4級に昇給したから。これで5級(ウジムシ)は卒業だね」

 

「ねぇねぇティア、級ってそんなすぐに上がるもんなの?」

 

「えっと、4級には割りと。3級も功績次第みたいです。ただ、準2級に上がるのは最低でも半年以上かかるとか」

 

 シズクは奥に引っ込んだ腹黒眼鏡を待つ間に、昇級についてティアに聞いた。

 どうやら昇給に試験などは無いらしく、全ては組合の評価次第だそうだ。

 

 ちなみに通称は5級(ウジムシ)→4級(ハイエナ)→3級(トリ)と呼ばれているとか。

 5級は地面を這い回る虫。

 4級は他人の食い残しを漁る獣。

 3級でようやく一人前。 という扱いらしい。

 

「試験の人手が足りないのか、それとも適当なのか……。ところでティアは装甲車って運転できる?」

 

「マニュアルがあれば一台ぐらいは何とか。……ベルゼルガに運転ルーチンを入れておくのはどうでしょう?」

 

「そっかロボって運転も出来るんだ。武器店に売られてたよね。あとサーモグラフィー付きの双眼鏡とかも買っておこう」

 

 シズクは新しい免許を受け取ると、武器店で追加の買い物をしてからホテルに戻った。

 

 追加で

 ・AI用運転ルーチンLvCx1 を購入した(200円)

 ・サーモグラフィー付きの双眼鏡x2 を購入した(100円)

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

 ――その日の深夜。

 

「んー、雲が多くて月が出てない!! これは絶好の夜襲日和!!」

 

 襲撃の準備を整えたシズクたちは、野盗の塒から1kmほど離れた場所にいた。

 ただしそれは地上でない。シズクの固有能力によって化現した大きなデメキンの上。

 

 そしてそのデメキンが泳いでいるのは――空の上、であった。

 

「もしかして、こういうの慣れてるんですか?」

 

「うん。実は奇襲と襲撃は得意。……私のデメちゃんは最強なんだ!!」

 

 恐るべき事にシズクのデメキンは空を飛べるのだ。

 速度は時速60kmと余り出ないが、それでも上空を行けば地雷等の罠に掛かることはない。

 おまけにこの世界は飛べる乗物が乏しいようで、上空への警戒は酷く薄かった。

 

「おかげで楽々奇襲できる有様だよ!!」

 

 そのまま真上まで進んだシズクは、一気にデメキンを急降下させる。

 野盗の塒は2階建ての砦を改造したものだ。居住部に倉庫が横付けされている。

 

「見張りは居住部の屋上に3人だけか」

 

 見張りは集まらずに一定の距離を取って分散し、建物の縁に狙撃銃を載せている。

 サボらずに警戒態勢を取っている事から、どうやら練度はそこそこあるようだ。

 

 だが上空から敵が来るのは想定外だったのか、彼らはシズク達に気づけなかった。

 

(ステンバーイ、ステンバーイ……GO!!!)

 

 シズクはある程度の距離まで近づくと、音もなく両手のナイフを投擲。

 放たれた2本は狙い通りに見張りの頭にへと突き刺さり、最後の一人は背中からティアに撃たれた。

 彼らは一言も声をだすこと無く地に伏せた。

 

「……見張りの排除、クリアーっと」

 

「こんなに簡単に行くなんて……」

 

「まぁ人間なんてこんなもんでしょ。認識できなければ対応は無理だからね。おっ、狙撃銃3丁ゲットー。しかもサーマル付きじゃん」

 

 音もなく見張りを片付けたシズクは、デメキンの口からベルゼルガを呼び出した。

 続けて右手の装備も分子カッターに変更する。

 

「ティアとベルゼルガはココで見張りをよろしく。この狙撃銃は置いてくから、逃げ出す敵はジャンジャン撃って。いい?」

 

「わ、分かりました。でもシズクさんもお気をつけて」

 

『――任務了解。任務了解』

 

 シズクは手に入れた狙撃銃をティアとベルゼルガに渡した。

 7.62mmなので、対人なら十分だろう。

 

 それにベルゼルガには改造された小手部分に内蔵の5.56mmもある。

 もし屋上に近づく者が入れば蜂の巣にされるはずだ。

 

「ではでは、まずはこの部屋から行きますか!!」

 

 一人で屋上からの階段を降りたシズクは、まず一番近くの部屋に入った。

 ハックされることを恐れてか、内部に監視カメラはないらしい。

 

 扉を開ける前には【念】によって生命のオーラを広げる。半径5メートルほどへ。

 こうすることでオーラの範囲内を知覚できるのだ。

 

(中にいる敵は一人だけと。……おじゃましまーす!!)

 

 扉のロックは単分子カッターで切断。

 野盗が声を出す前に、左手でナイフを投げて殺害。

 殺された野盗は自慰中だったのか下半身が丸出しがったが、シズクは何事もなかったかのように部屋を出た。

 

 そうして5部屋ほど片付け続けると、ついに集団が屯している部屋を見つけた。

 そっと中を伺ってみれば遊戯室なのか、20人ほどが飲みながらカードで遊んでいる。

 

(うーむ、この人数のサイレントキルは流石に自信ない。……隠密行動はここまでかな)

 

 コソコソするのは諦めたシズクは、単分子カッターを腰に戻す。

 それから背中に背負っていた30mmガトリングを構え、ドアを蹴り開けて部屋に突入する。

 

「――パーティの時間だオラァ!!!」

 

「「「「はっ?」」」」

 

 シズクを見た野盗達は眼を丸くして固まった。

 仲間が冗談を言いながら入って来た、とでも思ったのだろうか。

 だが実際は見知らぬ相手が、ゴツイ銃器をもってエントリーだ。

 これを想定して動けと言うのは無理がある。

 

 シズクはそんな野盗に向かって、躊躇なくトリガーを引いた。

 3つの銃身が静かにカラカラと回転を始め。

 ついで盛大なマズルフラッシュを焚きながら、銃口から30mmの特大弾が吐き出された。

 

「あの世のサンタさんから、ちょっと速いプレゼントだぜぇ!!!」

 

 ――ズドドドドドドドドドッ!!!!

 

 発射レートが抑えられているだけあって、バラ撒かれる弾はそれほど多くはない。

 マシンガンの1/3ぐらいだ。だがその発射音は一発一発が異常に重かった。

 

 そして威力は――文字通り桁違いだ。対物狙撃銃すら比較に成らない。

 

「「「「ぎゃぁあああああああ!!!!」」」」

 

 部屋の中に野盗共の絶叫が満ちる。

 掠るだけで人間が切れ飛んでいた。直撃した場合など木端微塵だ。

 

 しかもそれでも弾の勢いは止まらない。

 ガランガランと排莢を床に叩きつけながら、後ろにいた人間も纏めてミンチに変えていく。

 

 これが21世紀の武器であれば、同時に極大の反動が発生しただろう。

 しかしこの30mmガトリングは発射レートを落とされ、未来の減衰技術が組み込まれた一品だ。

 

 結果、発生した反動はシズクにとって、十分に扱える程度まで減衰されていた。

 むろん【念】による身体強化は必須であるが。

 

「うっはぁ!! なにこれしゅごいッッッ!!!!」

 

 ほんの数秒撃っただけで、楽しくカードで遊んでいた野盗たちはいなくなった。

 文字通りの全滅である。今頃はきっと地獄でお疲れ様パーティでもやっていることだろう。

 

「っしゃー! このままドンドンいくぞぉー!!」

 

 テンションが上がってきたシズクは、ウキウキで部屋から駆け出した。

 外には銃声を聞いて湧き出してきた野盗がいっぱいだった。

 

 もちろん、薙ぎ払いながら進んだ。――嬉々として30mmを撃ちながら。

 

「退避! 退避だ!!」「逃げろぉおお!!」「メディーーック!!!」

 

「あっはっはっは!! 壁待ちしたってなぁ、無駄なんだよぉ!!!」

 

 恐るべきはその火力と【念】による固有能力のコンボだろう。

 

 シズクはデメキンを2匹呼び出すと、片方を廊下の天井伝いに先行させた。

 そして手元に残した一匹の口へと30mmを発射。

 

 2匹の口の中は繋っている為、銃弾は天井に浮かぶデメキンから飛び出した。

 こうして空間を超えて、角待ちをしていた野盗たちに30mmの雨が降り注ぐ。

 

「ぎゃあああああ!」「いやだああああ」「たすけてええええ」

 

「この30mmは反動と銃身長で取り回しが悪いけど、デメちゃんがいれば室内も全然いけるね!」

 

 シズクは野盗達を殺戮しながら塒を進む。

 定期的に生命のオーラを広げる事で、隠れてやり過ごそうとする者を見つけながら。

 

 部屋に引き籠もろうとするニートは、容赦なく壁毎撃ち抜いた。

 

 

 

 一方、強襲された側の野盗たちは倉庫に集合していた。

 居住部からは早々に逃げ出し、代わりに倉庫で籠城の構えである。

 

「あの音……恐らく30mmだぜ」

 

「なんだそりゃ、正気じゃねぇぞ……!!!」

 

「ってことは戦闘サイボーグか? ふざけんなよクソ野郎っ!!!」

 

 シズクの戦闘力を恐れた野盗達が、口々に鳴き毎をのたまう。

 だがそれでもパニックになって逃げ惑うような様子はない。

 

 彼らは依頼では野盗となっていたが、実際は軍を抜けた脱走兵の集まりだ。

 曲がりなりにも訓練を受けている為、秩序だった行動を取れるのである。

 その上、装備も一般の野盗よりよほど整っていた。

 

「装甲スーツの着用いそげ!! 俺は多脚戦車に行く!!」

 

「武器は持ったな!? しっかり構えろ!!!」

 

 彼らの倉庫には「装甲スーツ」と呼ばれる装備が5機ほどあった。

 サベージと呼ばれる機種で、蛙のような寸胴型の全長は2メートルちょっと。

 パワードスーツに装甲を付けて武器をもたせた代物だ。

 

 他には鎮座している中装甲車が3台ほど。

 彼らが野盗化する際に軍から持ち出した備品、そして同士からの横流し品である。

 

「このまま逃げても、装甲車じゃ30mmは耐えられないからな」

 

「ああ、こうなったら殺るしかねぇ……」

 

「敵は一人なんだ。一発当てればどうにかなる、はずだ……」

 

 野盗たちは各々が武器を持ち、シズクがやってくるのを待ち構えた。 

 装甲車をバリケード代わりに配置し、その後ろに身を隠して。

 

「お、おい。あの浮いている魚はなんだ?」

 

「待て。あれは、まだ撃つなっ!!」

 

「あれは……金魚、いやデメキン……?」

 

 だがそこに突然あらわれたのは、3メートルほどのデメキンだ。

 それも地面から6メートルほど離れた倉庫の天井付近に、フヨフヨと浮かんでいた。

 

 ――ギョッギョッギョ!!

 

 そして、その口がグワッと開かれた時――彼らは意識を失った。

 

 

 

「よーし、この2階はクリア! 次に行こっと」

 

 2階を片付けたシズクは一階に降りて来ていた。

 有り余る暴力によって蹂躙され、2階に生存者は一人も残っていない。

 あとは1階に残る野盗共を片付ければ、晴れてこの塒のブツはシズクの物になる。

 

「なんだけど1階は罠が多すぎ。遅延戦闘のつもりなのかな?」

 

 しかし野盗は正面から戦うのは無理だと悟ったのか、廊下を罠だらけにしていた。

 角にはクレイモア。通路にはワイヤーと連結された手榴弾にショットガン。そして落とし穴。

 

 これが怒りのステイホームだ! と言わんばかりである。

 だがあることさえ分かっていれば、シズクにとっては問題にならない。

 

「ってことでデメちゃんGOー!!」

 

 シズクは化現させた複数の小型デメキンを先行させる。

 角に向かって廊下を這わせ、あるいは罠がありそうな部分に向かって空中を突撃だ。

 漢解除と呼ばれる、体当たりによる罠の解除(起爆)方法である。

 

 ――ぎょぎょーん!?

 

「デデェーン! デメちゃん、アウト~~~!!」

 

 もちろん罠にかかったデメキンは粉々になる。

 だが破裂した次の瞬間には、再び中空に出現していた。――それも無傷の姿で。

 

 なんせこのデメキンは【念】によって生命のオーラを元に化現されたもの。

 つまり壊れても何度でも呼び出せるのだ。狭い室内での罠解除にはうってつけである。

 落とし穴もオーラによって事前に検知すれば、躱すのは難しくない。

 

「おっ、ここは倉庫かな? ラストだと良いんだけど」

 

 シズクは罠を食い破りながら廊下を進んだ。

 そして最後にたどり着いたのは倉庫と思わしき場所。中には大勢の気配があった。

 

「壁越しの斉射で片付けたい所だけど……んー、ここの壁だけ妙に頑丈だ」

 

 何か大事な物でもあるのか、倉庫周りの壁はやけに強固だ。

 外からぶち抜くのは可能でも、威力はかなり落ちてしまうだろう。

 

 それも出入り口は一箇所しか見当たらない。

 シャッターが降りている正面だけだ。こちらは簡単に開くだろう。

 

「どうしよっかなー。30mmも残弾3割切ってるし。まぁいつもの手で行こう」

 

 シズクはまず中の様子を調べることにした。

 まず一部を蹴り飛ばして、シャッターを強引にこじ開ける。

 

「おっ、明り付いてるじゃん」

 

 意外なことに倉庫内は照明で明るかった。

 恐らく野盗達はシズクを見つけることを優先したのだろう。

 暗いままにして見失うよりも、確実に見つけて数の利で叩こうという算段だ。

 

 シズクは手鏡を投げた。内部が見れるように角度を調整して。

 ポイっと放られた鏡は地に落ちて砕けてしまったが、写った映像は確認できた。

 

「なんかゴツイ蛙っぽいのがいたけど、あれが装甲スーツって奴か。あと装甲車が3台」

 

 敵は倉庫の奥で装甲車を横にして並べ、盾代わりにして待ち構えているようだ。

 8輪駆動の中装甲タイプ。車上の銃座には誰も座っていない。シャッター越しに撃たれるのを避ける為だろう。

 

 周囲には生身の人間が10人。それから装甲スーツが5体もいた。

 持ってたのは25mmのヘビィマシンガン。

 このまま入り口から姿を見せれば、構えた重火器の洗礼を受けるのは間違いない。

 

「さすがに25mmは食らったら死ねる。かといってココから30mm撃ったら装甲車がダメになるし。んー、どうにかして敵だけ倒せないかな。あっ、そうだ!!」

 

 シズクはその場で数秒だけ考え、まず複数のデメキンを化現させた。

 手前に小さいのを5体と、隣に3メートルのを一体だ。

 

「ほーれ、エサの時間だぞ~」

 

 続けて5種類の手榴弾を、一つずつ小型デメキンに咥えさせる。

 金魚に餌を与えているように見えが、実際は危険な爆発物である。

 中空に浮かび手榴弾を咥えるデメキンは、かなり不気味な光景だった。

 

「後は残りの手榴弾のピンを紐で結んでっと」

 

 最後は咥えさせたのとは別の手榴弾を、5種類纏めて一つにする。

 全てのピンに紐を通し、一度に引き抜けるようにした。

 終わったら咥えさせた手榴弾の安全ピンを素早く抜く。

 

 ――そして倉庫内に突撃させた。

 

 小型デメキン達はすぐに撃ち落とされてしまうも、ピンを抜かれていた手榴弾が爆発する。

 倉庫内の出入り口付近は、煙が立ち籠めて視認性が低下。

 ばら撒かれた金属片とパルスによって、装甲スーツ達もサーチが難しくなった。

 

「ちっ、こしゃくな真似を。弾幕で煙を吹きとばせ!!」

 

 だが野盗達も黙って待ったりはしない。

 彼らは煙が晴れる前に出入り口に向けて弾幕を張った。

 入口が一箇所しか無いのであれば、そこを通さなければ良いという判断だ。

 

 しかしそのせいで、次の出来事への対応が遅れた。

 倉庫の天井付近に、突如として3メートルほどのデメキンが出現したのだ。

 

 もちろんコレもシズクの力である。

 実はこの能力は10メートル内であれば、どこにでも化現させることが可能なのだ。

 そのデメキンは不気味に笑いながら、口から手榴弾を吐き出した。

 

 ――5種が一纏めにされた物を。

 

「なんだと!?」「手榴弾だ!!」「伏せろぉお!!」

 

 突然降ってきた危険な礫に、ガン待ちしていた傭兵たちが慌てて伏せる。

 

 ――だがその反応は遅すぎた。

 

 頭上で炸裂した破片と閃光によって、生身だった野盗は戦闘力を奪われ。

 煙幕とチャフとEMPにより、装甲スーツのセンサー類が纏めてダウン。

 

 そこに満を持してシズクが飛び出してきた。

 中空にいた大きなデメキンの口から、――水泳の飛び込みのような姿勢で。

 

「ここでダイナミックエントリーだぁー!!」

 

 シズクは空中で一回転すると、一番端にあった装甲車の裏へ華麗に着地。

 即座に30mmの斉射を始めた。シズクから見て一直線に並ぶ、野盗達の横っ面に向かって。

 

 ――ズドドドドドドドドドドド!!!!!

 

 30mmの重い発砲音と、ガランガランと薬莢が地面にぶつかる音が倉庫に満ちる。

 

 この威力には流石の装甲スーツも耐えきれなかった。

 残弾を撃ち切った頃に残っていたのは、ボロボロの装甲スーツが2機だけ。

 

「転移能力、だと。なんなんだテメェは……」

 

「んー、強いて言うなら――正義の味方、かな?」

 

「なっ、ふざけ……」

 

 シズクは軽い口調で答えながら、無慈悲に単分子カッターを振るう。

 必死に立ち上がった装甲スーツの首を跳ね、床で藻掻いていた最後の一機に止めを刺す。

 

 これで倉庫内に動くものはシズク以外にいなくなった。

 それでいて、お目当ての装甲車には被弾なしだ。

 

「終わりかな? よっしゃ、装甲車ゲットだぜー!!」

 

 目的を達成したシズクは、嬉しそうに勝鬨をあげた。

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ……」

 

 ベルゼルガと二人で屋上に残ったティアは、塒から逃げ出した野盗達を狙撃していた。

 銃を構えサーマルスコープを覗き、敵の背にレティクル(中心)を合わせて引き金を引く。

 

 狙い撃つのは予想以上に簡単だった。

 野盗たちは地雷を避ける為か同じ場所を、それも走って逃げていくからだ。

 

 つまり特定地点に向けて銃を構えておけば、野盗の方から視界に入ってくれるのである。

 おまけに距離も短く偏差する必要はない。これでは逆に外すほうが難しいだろう。

 

「これで五人目っと。ベルゼルガの方はどう?」

 

『――コチラモ順調。コチラモ順調』

 

 ティアは撃ち終わったマガジンを替えながら、隣に立つロボに問い掛ける。 

 周囲の警戒もベルゼルガがやってくれていた。なので後ろを取られるような心配はいらない。

 

「これなら、もうすぐ終わりそうね。シズクさんの方は大丈夫かな?」

 

 ティアは敵地とは思えないほどリラックスした精神で、たんたんと自分の仕事をこなしていた。

 

 ――しかしそんな時である。

 

 覗いていたスコープの先で異変が起こり始めた。

 倉庫横の地面がゆっくりと盛り上がり、左右に開いていったのだ。

 

「地面の一部が動いてる? あれは……大型の多脚戦車!!」

 

『――敵性体ノ出現ヲ確認。射撃許可申請』

 

「ダメよ。アレに生半可な攻撃は効かないわ」

 

 出てきのは大きな蠍のような造形をした多脚戦車だった。

 軍で使われている頑丈なタイプだ。手持ちの火力では歯が立たない。

 

「たぶん通じるのはチャフとEMPグレぐらいね。でもシズクさんの邪魔になったらダメだし。タイミングを計らないと」

 

 ティアは驚きながら、野盗達がまだ諦めていないことを悟った。

 

 

 

 シズクがルンルンとした気分で倉庫から出ると、――外には多脚戦車が出現していた。

 

『許さんぞ!! 絶対に許さんぞ貴様ァアアアア!!!』

 

「――はっ?」

 

 それはHAW206Cという型番を持つ、軍用の大型重装多脚戦車だった。

 6本足で全体的にカク付いた、サソリのような造形だ。

 10式戦車より一回り大きく、相当な重量があるのか動く度にガシャン、ドスン! と重そうな音が響く。

 

 前に伸びた両腕には、12.7mmの3銃身ガトリングが。

 垂直に上へ伸びた尻尾は2階部分にまで及び、その先には大砲――120mmの砲身があった。

 

『良くも俺の仲間を!! ――死ねぇええええ!!!』

 

 乗り込んでいた操縦士は、倉庫からシズクが出てきた事で仲間の全滅を悟ると、怒りのまま大砲をぶっ放した。

 

「うおっ! あぶねっ!!」

 

 シズクはオーラを足に集中させ、その砲弾を横っ飛びで回避した。

 同時に化現済みだったデメキンを盾にし、衝撃波から逃れる。

 

 だが代わりに砲弾は倉庫の内部で炸裂した。

 シャッターを突き破り――中に止まっていた装甲車にぶつかって。

 

「あーーーッ!! せっかく無傷で手に入れた装甲車ァーーーー!!!」

 

 シズクは思わず悲鳴を上げた。今までの頑張りを虚無にする光景に。

 しかしそんな思いをかき消すかのように、続けてHAW206Cは機銃を放った。

 

『くたばれぇえええ!!!!』

 

 対物狙撃銃にも使われる12.7mm弾が、両腕の3銃身ガトリングから放たれる。

 分間1000発を超えるレートが2門だ。

 

 シズクはその弾幕をデメキンで反射したが、しかし敵の分厚い装甲にはほとんど効果がない。

 

「うっそだろ、おい。12.7mmで装甲がちょっと凹むだけとか」

 

『銃弾を反射しただと!? この化物がッ!!!』

 

 シズクは反射先を微調整し、両腕の機銃を壊しにかかる。

 だがHAW206Cはさせまいと、小刻みに動いて着弾先をずらす。

 

「――チッ、大人しく壊れればいいものを」

 

『うるせぇ、キサマこそとっとくたばれ!!』

 

 シズクはそのまま回避行動を続けながら、敵が大砲を撃ってくるのを待った。

 だが反射能力に気づいたHAW206Cは主砲を撃たない。

 牽制のつもりなのか、ウィンウィンと左右に砲身を動かすだけだ。

 

「もしかして倉庫に籠城してたのって、この戦車と挟み撃ちにするつもりだったのかな?」

 

 戦車が出てきた位置を考えれば、割りと間違っていないように思える。

 シズクは壁と木を利用して3次元的に飛び跳ね、戦車の銃弾をかわし続けた。

 

「ああもう面倒くさい! 30mmが残ってればなぁ……」

 

 だが使っていた30mmはホテルに転送済みだ。

 改めて取り出しても残弾は残っておらず撃つことは出来ない。

 つまり、お互いに決め手を欠けた膠着状態である。

 

 だがそこに――上から手榴弾が降ってきた。

 

「――シズクさん!!」

 

 HAW206Cに向かって投げられたのは、対機械用に買った2種の手榴弾だった。

 それは戦車の背で一度バウンドすると、爆発してその中身を撒き散らす。

 

「おっ、EMPとチャフかな? ナイスゥー!!」

 

 空中に広がったのは金属片と電磁パルスだ。

 レーダーは使い物にならなくなり、電子機器が起用不全に陥った。

 

『仲間がいただと!?』

 

「ボッチ扱いすんな!」

 

 その隙を逃さずシズクは飛んだ。HAW206Cに向かって。

 更に空中で化現させたデメキンを何度か蹴ってフェイントを交え、空中を移動して戦車の背に着地する。

 

「えーと、昨日の夜に読んだ兵器カタログによれば、乗車口は確かこの辺にあったはず」

 

 丸い乗車口を確認したシズクは、腰の単分子ブレードを抜いた。

 

『き、きさま離れろぉおおお!!』

 

 気づいたHAW206Cは、振り落とそうと必死に機体を動かす。

 同時に主砲もブンブンと振り回す慌てようだ。しかし短砲なせいで全く届いていない。

 

「おー、どうやら背中は安地みたいだね!! でも、いちおう大砲にデメちゃんを被せとこ」

 

 その間にシズクは乗車口を塞ぐ装甲にブレードを突き立てる。

 ブレードは水に差し込まれたかのように、抵抗なく装甲に沈んだ。

 そのまま缶詰の蓋を開けるようにブレードを動す。

 

オープン、セサミッ(開けゴマ)!! ……なんちゃって」

 

 ロックを切断した蓋を引き抜くと、上を見上げた操縦士と目があった。

 

『げぇっ!!』

 

「対単分子コーティングしてないとか、油断しすぎじゃね?」

 

 シズクは中に上半身を突っ込んで、強引に操縦士の頭を捻る。

 

 ――ゴキリッ!! と鈍い音がして、首の骨を折られた操縦士は死亡した。

 

「ふー、これで本当にラストかな。ちょっと驚いたけど、欲しかった多脚戦車まで手に入るとかラッキー」

 

 そう言いながら暫く警戒を続けるも、これ以上敵が出てくることはなかった。

 PDAでティアに連絡をいれると、死体を引きずり出して外に捨てた。

 

「シズクさん! 大丈夫ですか?」

 

「もちろん。ナイス援護だったよー!!」

 

 シズクは降りてきたティアを抱きしめる。

 褒めながらスキンシップだ。やはり老若男女問わず、頑張った時には褒めるのが一番。

 こうして頑張れば褒めてくれると脳に刷り込むことで、徐々に依存度を深めていくのだ。

 

「さぁココから先は、お楽しみの物色タイムだ!!」

 

「はい!! 何でも言って下さい!!」

 

(うーん、チョロイ!! 尻尾があったらブンブン振られてそう……)

 

 そんな失礼なことを考えながら、シズクは1階から物色を始めた。

 戦車はベルゼルガに見張っておいてもらう。

 

 一番多かったのは個人携帯用の武装だ。

 ライフル系のメイン武装にサブウェポンが人数分。ただしシズクの攻撃で大半が壊れていたが。

 

「でも30mm撃つのは気持ちよかったから(大満足)」

 

「メインは7.62mmで統一していたみたいですね。サブは9mm。それとPDA」

 

「その辺は全部売却かな。持ってても微妙だし」

 

 シズク達は動作しそうな物だけを回収すると、続いて今度は倉庫へ向かった。

 

「ベルゼルガも装甲車なら運転できるみたいです」

 

「まじで? ルーチンてすごい。帰ったら家事とか入れよう」

 

『命令受諾。何時デモ発進可能デス』

 

 多脚戦車はすでに起動状態。なので軽く走らせるだけなら誰でも可能のようだ。

 時代が進んでも足でアクセルとブレーキ、そして手でハンドルは変わらないらしい。

 

 なので戦車はシズクが運転して帰ることに。

 無事な装甲車2台はベルゼルガとティアが担当になった。

 なお、大砲を食らった装甲車は爆散してダメな模様。

 

 そうして車の処理を決めると、最後に多脚戦車の隠し格納庫を探った。

 

「多脚戦車の格納庫だけど、武器庫も兼用してたのかな? 火薬の匂いがすごい」

 

「戦車の予備武装に……。あっ、携帯式のロケット発射機までありますよ」

 

「RPG-7みたいもんか。ぶっ放したら気持ちよさそう。……おっ、金庫があるじゃん!!」

 

 オーラを広げて格納庫を歩いていると、壁に隠された小型の開閉扉を見つけた。

 単分子ブレードで壁を切断すると、中には金庫が隠されていた。

 

 だがこちらはしっかり対単分子コーティングされているようだ。

 単分子ブレードを振るも刃はジャリジャリと音を立て、金属片を散らしながら壊れて使い物にならなくなった。

 

 しょうがなくシズクは愛用の50口径拳銃を、ドアノッカー代わりにして金庫をこじ開けた。

 

「さて、中身は……100円札が30枚もある!!」

 

「プール金だったのでしょうか? 個々人から回収した分と併せれば5000円になりますね」

 

「あとは黒いPDAに集合写真? それから……触手!?」

 

 出てきたのは紙幣の束と、黒いPDA。

 それから軍人達の集合写真に、最後は――ヌメヌメしている淫具のような()()

 

「なんぞこれ!?」

 

 エロ漫画に出てきそうなピンク色の小型触手だ。

 1センチほどの太さで30センチ程度の長さである。

 

「まさか未来技術のエロアイテムだったりとか……?」

 

 シズクが恐る恐る手を近づけてみると、触手は先端を擦り付けてきた。

 

『――ニャァァーン』

 

「うわぁ、ウネウネしながら鳴いてる。すごくキモイ!!」

 

 スリスリと鼻先を押し当て、じゃれ付く子猫のようだ。

 見た目はエロい触手だけど。

 

「あのこれ、たぶん走狗(マウス)、って奴じゃないでしょうか?」

 

「走狗て。どうみても触手でしょ?」

 

「いえ走狗っていうのは、生物を模した高性能なPDAみたいなもので。ハッキングとかで役に立つと聞いたことがあります」

 

「これ情報端末なの??」

 

 だがよく見れば確かに、触手には機械への接続用端子があった。

 ということは本当に、このスケベ触手は情報端末の一種であるようだ。未来人の業は深い。

 

「ほほう、ならコレも持っていこう。名前は――ニャンドラ、で!!」

 

 猫っぽい鳴き声(ニャン)と、グネグネボディが多頭竜(ヒュドラ)の首っぽい所からの命名だ。

 

「じゃあこれはティアが使ってね。……パンツの中に入れておこう」

 

「いやそれはちょっと。パンツから触手出してハッキングって、変態すぎますよ……」

 

 ちなみに黒いPDAの方は、ロックが掛かっていて中身が見れなかった。

 手に入れたばかりの走狗も使えそうにない。

 

「というか接続できそうな端子部が無いもんね」

 

「ハッキング対策でしょうね」

 

 流石に鍵(触手型走狗)と宝箱を、同じ金庫に入れたりはしてなかったらしい。

 

 集合写真の方は、ただの思い出写真っぽい。

 恐らくココにいた野盗が、軍を抜ける前に撮ったものだろう。

 残念だが、関係者に逆恨みされると面倒なので燃やした。

 

「さて、取るものも取ったし。最後に写真を取って帰ろうか。ニャンドラはティアの胸元に入れて、と」

 

『―ニャァーン!!』

 

「ちょっ、ダメッ……!! あっ、中で動い、たらぁ……ッッ!!」

 

「乳首足す乳首は? ――はい、ニップル!!」

 

 シズク達は最後に戦車の上で写真を撮影。

 多脚戦車を運転しながら、コウチの街へと帰還した。

 

 ――遺跡に住み着いていた野盗の群れ(脱走兵)を殲滅した。

 

 ・7.62mmライフルx15

 ・9mm拳銃x12

 ・普通のPDAx14

 ・サーマル付き7.62mm狙撃銃x3

 ・単分子カッターx12

 ・手榴弾x15

 ・クレイモアx5

 ・回転式グレネードランチャーx3

 ・対戦車ロケット発射機x3

 ・対戦車ロケットx9

 ・12.7mmガトリング x2

 ・中型装甲車x2

 ・壊れた装甲スーツx5

 ・大型多脚戦車x1

 ・紙幣5000円分

 ・触手型走狗(命名ニャンドラ)、を手に入れた。

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

「おいすー、全滅させてきたぞ。ほい証拠(野盗の耳&写真ポイー)」

 

「まじでヤリきった、だと……」

 

 仕事を終えたシズクはまず組合に向った。

 いつもと同じ列に並び、組合員の城鐘シロエに撮影しておいた写真を見せる。

 

 写っているのは大型の多脚戦車の上に乗り、ピースをするシズク達だ。

 それも手前の地面には、ボロボロになった装甲スーツまで積まれていた。

 

「装甲スーツ5機に多脚戦車まで居たけど余裕でした。持ってきたから売れるとこ教えて」

 

「……ちなみにこれは興味本位で聞くんだけど、一体どうやって?」

 

「この30mmで蜂の巣にしたった(笑)」

 

 シズクは背中に背負っていた30mmガトリングを手に取り、その場でブンブンと振ってみせる。

 

「嘘だろ……」

 

 対応した城鐘シロエは絶句した。

 だが写真と実演を見せられては、認めない訳にはいかない。

 

「あとこれ、隠し金庫にあったヤバそうなPDA。ロックが掛かってて中身が見れないんだけど、武器店で売っちゃっていい?」

 

「ハハハ、ダメに決まってるだろ。組合でボッシュートだ!!」

 

 続けてシズクは懐からPDAを取り出し机に置く。

 それをシロエは焦りながら確保。そのまま急いで作業を進め始めた。

 

「ああ、報酬は確認が取れてからだよ。それともしPDAに重要な情報が詰まっていたらボーナスがでるから」

 

「ほんとぉ?」

 

 そして最後に報酬について告げてから、席を立って奥に引っ込んでしまった。

 席には「受け付け停止中」と書かれた札を置いて。本日の業務はおしまいらしい。

 

「報酬は塒を確認してからかー。まぁしょうがないね」

 

「組合の対応はどうでしたか?」

 

「ぜんぶ確認が取れてからだってー。んじゃ車屋に売りに行こう」

 

 外に出たシズクは、車を見張っていたティア達と合流。

 周りではボロボロの装備のスカベンジャー達が、物欲しそうに車を見ていた。

 

「あの、前方にいる人が邪魔なんですが」

 

「引かれる方が悪い。――行け!!」

 

『命令受諾。出発シマス』

 

 たが遠慮なく発信させて車屋に向かう。

 装甲車は2台もいらないので、売って金に変えようという算段だ。

 

「店は開いてるよね?」

 

「とっくに日は昇ってますし、恐らくやっていると思います」

 

 塒での物色に時間を掛けたせいか、街に戻った時にはとっくに日が登っていた。

 組合は開いていた事だし、車屋の方もやっていることだろう。

 

 カーショップの場所は大通りを西の方角だ。

 車列をズラズラと並べて進んで行くと、そこには建物があった。

 だがその建物は色々とおかしい。

 

 なんと壁に囲まれた敷地の中央にあったのは、堂々と鎮座した――戦艦。

 

「なにあれ!? すごい浪漫勢の匂いがするッ!!!」

 

「昔の船を引き上げて、建物の代わりにしてるみたいですね」

 

 敷地の入口に掛かっていた看板には「ギンガ・ナム艦隊車取引所」とあった。

 入場用のドアには「誰でもウェルカーーーム!!」という文字が、真っ赤なペンキでデカデカと書かれている。

 

「たのもぅーー!!」

 

 シズクがワクワクしながら入店すると、中には多数の車が展示されていた。

 戦艦の横っ腹をくり抜いて作られた、車の格納庫だった。

 端には多数の椅子が並べられたスペースがある。きっとそこが売買場所だろう。

 

「――絶好調(いらっしゃいませ)であーる!!!」

 

 近づいてみると、筋肉がムキムキの大男に出迎えられた。

 目を引くのは青い大量の毛髪。アフロを崩して後ろに流したようにモジャモジャだ。

 腰にはオレンジ色の刀鞘と思わしき物が差されていた。

 

「よくぞ来た若人たちよ!! 初顔だな? 小生はこの取引所の御大将であーる!!」

 

 やけにテンションが高い人物だ。

 ジャケットの胸ポケットに挟んだ社員プレートには「御大将 ギムギンガ・ナム」とある。

 まじで御大将という役職の人らしい。どれぐらい偉いのか全然分からない。

 

「それで本日は購入か? それとも買取であるか?」

 

「んー、とりあえずは買取希望かなぁ。表に停めた装甲車と、可能なら装甲スーツの査定も」

 

「おお、装甲スーツ!! 装甲スーツは良いぞ!!」

 

 しかしシズクにとって、この程度のキャラは慣れっこだ。

 なので気にせず査定をお願いした。

 御大将はシズク達を連れて外に出ていき、サクサクと車の査定を進めていった。

 

「ふむ、装甲車は1台1600円で買い取ろう」

 

 中々の額だ。なんせ、この世界の稼ぎは中流層が月100円程度である。

 普通に生活すれば一年以上、働かずに暮らせるだろう。

 

 ただし店内で掲示されている同型には、4000円の値札がつけられていたが。

 

「もしかして買い取りって4かけ(0.4倍)?」

 

「基本はそうだ。まさか不満か?」

 

「いや全然。保存とメンテの手間を考えたらそんなもんじゃ。こんな広い敷地だと場所代も高そうだし」

 

「ほお、どうやら分かっているようだな。馬鹿は大抵ゴネるのだが……。よし、装甲スーツの方も終わったぞ。大破した3機が各300円。中破した2機は各800円だ」

 

「どうしますかシズクさん?」

 

「無事な装甲車一台だけ残して、あとは全売りでよろしく。合計で4100円か」

 

 シズクは迷わず車を売り払った。ただし自分たち用に1台はしっかり確保しておく。

 これでもうガクガク揺れる大型二輪に乗る必要はなくなる。

 

「それから戦車とかロボって、ここで修理は可能? 出来れば改造も」

 

「軍用の多脚戦車、それもHAW206C型(6本足タイプ)のようだが……。これをどこで手に入れた?」

 

 続けてシズクは回収してきた大型多脚戦車の交渉に入った。

 乗車口はくり抜いてしまったので、最低でもここを直さないと乗り回すのは非常に不安が残る。

 

「組合にあった野盗退治で襲われた。でも倒すのはそんなに難しくなかったよ」

 

「まさか軍が出していた依頼か?」

 

「そうそう、それ。120mmで撃たれた時はビックリしたけどねー」

 

「いや、ビックリで済むのはシズクさんだけじゃ……」

 

「なんと!! どうやら見た目によらずタフガイのようだな」

 

 シズクは野盗の塒での出来事を、掻い摘んで聞かせた。

 御大将はその内容に驚いていたが、話しながらも調査の手は止めていない。

 

「ふーむ、急ぎで修理が必要なのは乗車口だな。あと装甲も一部は取り替えた方がいいぞ。併せて1000円だ」

 

「やっぱ装甲もかー。まぁ凹んだり焦げちゃってるもんね」

 

 跳ね返した12.7mm弾による損傷だ。

 動きは止められなかったが、しっかりとダメージは積み重ねていたらしい。

 ならばここでしっかりとメンテナンスしておいたほうが良いだろう。

 

「それと改造したいとも言っていたが、案は考えてあるのか?」

 

「えーと、まず中を二人乗りにして、外にベルゼルガ用マウントの設置。自動で動くAIとか付けたいかな。あと足先も荒れ地が余裕で走れるようにしたい」

 

「それぐらいならば可能だ。あと尻尾の120mm砲はコチラで買い取ろう。長距離で30mmを超える火砲は許可が降りんからな。自動装填装置もあるし1500円だ」

 

「大砲ダメってまじで? じゃあ代わりに12.7mmのガトリング2つ付けといて。予備のがあるから。それとマウントラッチも」

 

 どうやら口径が大きすぎる火砲は禁止らしい。

 だが戦車ごと回収されるのは困るので、取り外して別の武装を取り付けることになった。

 格納庫に保管されていた戦車の予備パーツである。

 

「こんなところか? 戦車は修理で1000円。内部と足の改造が2000に、機銃の設置が200だな」

 

「ベルゼルガのメンテは? あとスペックアップとか」

 

「装甲板の取替に500円。情報媒体を大型化するなら追加で300だ。ついでにAIも少し改良しておいてやろう」

 

 ついでにベルゼルガのメンテも頼んでおく。

 いくら自己メンテナスが可能とは言え、やはり長年動いて装甲が劣化していたのだろう。

 それとせっかくだから強化もしておくことにした。

 

「てことは全部で4000円か。それでよろしく」

 

「よろしい。金払いの良い客は好きだぞ。そら、残った1600円だ。時間としては1週間ほど掛かるだろう」

 

 車・装甲スーツ・大砲の買取額が5600円。

 そこから修理・改造代4000円を引き、残りが1600円だ。

 

 シズクは受け取った札の枚数を数え、無造作にポケットへ突っ込んだ。

 

 ・装甲スーツ5機を売った(2500円)

 ・装甲車1台を売った(1600円)

 ・120mm砲を売った(1500円)

 ・多脚戦車の改良を依頼した(3200円)

 ・ベルゼルガの修理強化を依頼した(800円)

 ・差し引きで1600円を手に入れた。

 

「ところで戦車を運用するなら貸しガレージもどうだ? 我が社は不動産も扱っているのであーる!!」

 

「えー、まだ商売する気なの? そろそろ一度、帰りたいんだけど」

 

「しかし装甲車と戦車を野ざらしとは行くまい。馬鹿な輩がパーツ取りしようと寄ってくるぞ」

 

「治安わるっ!!」

 

 だがまだ終わりではない。なんせ車には置いておく場所も必要だ。

 シズクたちはホテル暮らしだが、流石に車数台分のスペースは迷惑だろう。

 必要以上に駐車場を占領すれば、追い出される可能性が高い。

 

「もう面倒だから適当でいいよ。壁ありで広くて頑丈で防音なとこでよろ」

 

「めちゃくちゃ注文付けておるではないか! だがそれなら丁度いい所がある。月200円だ!!」

 

「いやそれ、ちょっと高い? 高くない??」

 

「一度見せても貰えますか?」

 

 シズクは商売上手な御大将に案内され、結局は倉庫を改良したガレージを契約した。

 ただし開始時期は多脚戦車を受け取ってからになったが。

 

 それから官営武器店へ、残りの武器を売り払いに。

 ただしサーマル付きの狙撃銃と、爆発物系は取っておいた。

 こちらは単価が安いので、数が多くても大した額にはならなかった。

 

 ・7.62mmライフルx8 を売った(112円)

 ・9mm拳銃x12 を売った(24円)

 ・普通のPDAx7 を売った(140円)

 ・7.62mm狙撃ライフル(サーマル無し)x5 を売った(80円)

 ・7.62mm中機関銃x5 を売った(200円)

 ・単分子カッターx12 を売った(12円)

 ・貸しガレージを契約した(月200円)

 ・差し引き368円、を手に入れた。

 

 

 そうしてホテルに戻った頃には、すでに太陽は真上に登っていた。

 二人は一緒に風呂と飯を済ませ、ベッドで裸プロレスの第一ラウンドに突入。

 

「今日は色々と大変だったなぁ」

 

「なんだか野盗の塒より、その後の方が疲れた気がします……」

 

 賢者タイムになったシズクは仰向けのままベッドに体を沈ませ、幸せそうな顔をしたティアを抱き寄せて髪を撫でた。

 

 そうしながらふと、組合で登録した時から気になっていたことを思い出した。

 それはスカベンジャーとして、ティアが4級を持っていたことだ。

 

「そういえばティアって4級だけど、ずっとソロでやってたの?」

 

「いえ、前は一級のチームにいたんです。下っ端でしたけど。4級はその時の名残と言いますか」

 

 聞けばティアは元々1級のチームにいたらしい。

 上級のチームに入っていると、その分だけ級も上がりやすいようだ。

 

「ふーん。それがまた何であんな目に?」

 

「……独立して最初の仕事で失敗したんです。それで別の街でやり直そうと()()のトラックに乗ったら……」

 

「装備とかは?」

 

「失敗した仕事の賠償で無くなってしまいました。貯金もほとんど」

 

「なるほどねー。それで抵抗できずに殺されそうになってたんだ」

 

 4級なら略奪者に応戦できたのでは? と思ったが、装備がなかったようだ。

 銃も無しで荒野に出るのは無謀という他ないが、きっとそれだけ早く前の街から出たかったのだろう。

 

 乗ったトラックはものすごく怪しいが。

 料金無料と書かれたタクシー並の有り得なさだ。

 

「前のチームに戻る気は?」

 

「いえ元々そっちも居心地が悪かったので戻るつもりは無くて……」

 

「それはどうして?」

 

「一級のチームだけあって、すごい人ばかりだったんですけど。私は凡人なので同期にもドンドン置いていかれちゃって。肩身が狭かったといいますか」

 

 話しを聞いていると、ティアの顔はドンドン暗くなっていった。

 だが話事態はシズクにとっては好都合だ。

 

「オッケー。そういうことなら、このままチームを続けよう。あとは……」

 

 答えに満足したシズクは上体だけ起こして、サイドテーブル上の酒瓶を掴む。

 そして酒を口に含んでから唇を押し付けた。アルコールの口移し。

 

「ちょっ、んんんんっ……!!!」

 

 飲みきれずに溢れた酒が、ティアの頬を伝って落ちていく。

 聞きたいことを終えたシズクは、ティアに酒を流し込みながら第二ラウンドを始めた。

 

「こういうスキルも覚えようね♡」

 

「ひゃ、ひゃい…………♡♡♡」

 

 酒と快楽で蕩けるティアを相手に、逃げられないように快楽付にしなくちゃ。と思いながら。

 

 ――数日後、組合に呼び出されたシズクは3級に昇格した。




30mmを撃って、多脚戦車を出したかっただけなんです。
あとチラシの裏に移動するか迷い中。
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