転生シズクのTS異世界転移スカヴェンジャー   作:さろんぱす。

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#04 エロい自動人形

 ――ホテルモスクワの最上階室。

 

 ホテルのオーナー兼支配人であるバララ・イーカは動画を見ていた。

 自室の情報端末に映っているのは研究所攻略の映像。

 ドザエモンズ討伐の依頼に対して、証拠としてシズクから渡された物である。

 

「さーて、ドザエモンズはどうなったのかしらね」

 

 手元のグラスに高級な酒を注ぎ、椅子の背もたれに体を預けてモニターを見る。

 

 ――モグモグ、バリバリ、ムシャムシャ。

 

 映像が始まると、研究所の入口前で宇宙ゴキブリに食われている歩哨が写った。

 

「ええぇ……」

 

 イキナリな光景にバララ・イーカの顔がひきつる。

 だがその間も画面の中では、宇宙ゴキブリと呼ばれるミュータントが美味しそうに人間を頬張っていた。だが――

 

 ――ドゴォーーッ!!

 

 それらは重装備の戦車とロボによって爆散した。

 12.7mmと榴弾の雨だ。5.56mmを弾いた化物が、紙のように引きさかれていく。

 

「あー、うちにも重機関銃を設置するべきかしら……」

 

 そうして研究所に入ると、今度はブクブクに太った肉袋が出てきた。

 ホテルを襲ったドザエモンズの一人、ドザミの成れの果てらしい。

 人間の頭サイズのヒルを吐き出す様は大変気持ち悪い。

 

「うわ、きもちわるっ! 全然可愛そうとは思わないけど、流石にこれは予想外ね……」

 

 がその肉袋もすぐ肉片に変わった。今度は30mmの嵐だ。

 軍の戦闘機動車がメインに据えるほどの武装であり、恐らく耐えられる生物はいない。

 

 それからドーム場の戦闘も、シズクはひたすら30mmで暴れていく。

 相手が変異した化け物というのもあるが、暴力を行使する事に全く躊躇がない。

 おまけに上の階では肉片が再生しないよう、速乾性建材を撒き散らす念の入れようだ。

 

「こいつらはお化け退治のプロか何かか?」

 

 バララ・イーカは素直な感想を呟いた。

 なんせ余りにも手際が良すぎる。まるで害虫の駆除業者のようだ。

 その後も何匹か見苦しい姿の化物が出てきたが、流れ作業でサクサクと始末されていく。

 

 そうして最後まで動画を見続けた。

 

「全く酷いテーマパークだこと。……それにしても人間って30mmを撃てるのね。眼鏡がチャームポイントっぽいし、2つ名が付くとしたら合わせて”30mm眼鏡”とかになるのかしら?」

 

 いや、そんな酷い2つ名が付くわけないわねー、アハハハハ。

 そんなことを思いながらバララ・イーカは酒を飲んだ。依頼は完了されたと判断して。

 

 この後、街の商人会議でポロっと冗談で零したせいでこの2つ名が轟く事になるなど、まだこの時は知る由もなかった……。

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

 ――組合にプラントを提出(放置)した翌日。

 

 半日ほどダラケたシズク達は、昼過ぎに官営武器店を訪れていた。

 理由はもちろん、研究所から回収した物品を捌くためだ。

 

「たのもーう! コンテナ5個とロボ10機。どこに置いたら良い?」

 

「あー、そんなにあるなら店の裏の方にお願い。表に置かれると商売の邪魔よぉ。一時休店にしてくるから待ってなさい」

 

 シズクは店の主―水銀 燈(みずぎあかり)―に事情を説明し、大型トレーラーを言われた場所に移動させる。

 

 店の裏は駐車場になっていた。トラックが4台は止めれる広さだ。

 囲いの壁は無いが屋根は有り、例え雨でも問題なく荷物の積み下ろしが出来るだろう。

 

 シズクはベルルンと協力しながら、回収したお宝を店の裏口そばに積み上げる。

 ティアは()()()()()()にシズクの後ろに隠れていた。

 

「それで、このコンテナと中身を査定して欲しいんだけど」

 

「ふむふむ、じゃあ順番に見ていくわ」

 

 まず見てもらったのは1メートル四方のコンテナが5つである。

 物資保管庫で見つけた箱で、全て保全機能が生きているお値打ち物。

 しかも内3つは中身も満載だ。

 

「幾らの値段がつくかワクワクしてきた」

 

「これって保全機能付の小型コンテナじゃないのぉ。物流系の商人が飛びつくやつよ? 中を見せてもらうわね」

 

 店主はコンテナを一つずつ丁寧に確認していった。

 蓋を開け機能を確かめ、ナノマシンが生きてるかをチェックし、中身も個別に手に取る。

 

 そうして鑑定に掛かった時間は15分ほど。

 内3つは中身が100個ずつ詰まっていた、という事を考慮すると凄まじい手際だ。

 

「重力軽減機能は死んでるから、コンテナ自体は一つ1万円ってとこね。中身はそれぞれ1つで、完全な精密部品が40円、中容量記憶媒体が100円、高性能防護服が120円になるわ」

 

「その辺は使わないから全部売りで。ってことは合計で7万6千円。やったねティア、大金持ちだよ!!」

 

「ななまんろくせんえん……」

 

 これらは今のところ使い道がないので、全て売っても構わないだろう。

 精密部品も自動人形用らしく、ロボットの修理には向かないとのことだ。

 ならば持っていてもしかたない。

 

 金額を聞いて呆然とするティアを置いて、シズクは話を次に進めた。

 続けて見てもらったのは研究所で回収したロボットたち。

 

「それから次はロボットが沢山。でもこれは直して使うから、修理に必要なパーツの見積もりだけよろしく」

 

「運搬ロボ5機、整備ロボ2機、ブラックメイル3機。……随分と取ってきたわねぇ。私としては何機か売って欲しい所だけど、まぁ自分たちで使うのならしょうがないわ」

 

 そう言われてもシズクは売る気がなかった。

 もうこれらはすでに使い道が決まっているのだ。

 

 運搬ロボは遺跡での運搬、整備ロボは回収したロボなんかの整備・修理。

 そしてブラックメイルはガレージの警備に回す予定である。

 

 ガレージにはタレットも備え付けられていたが、やはり警備ロボは置いておいた方が良いだろう。盗人が来ないとも限らないし。

 

「んー、どれも傷んでるわねぇ。完全に直すなら装甲ユニット(25円)を45個に、精密部品ユニット(40円)が29個ってとこかしら。内訳は運搬と整備ロボが装甲3+精密2、ブラックメイルが装甲8+精密5よ。一機あたりね」

 

「2285円(1125円+1160円)か、結構かかる」

 

「何言ってるのよぉ。いま何万円も稼いだでしょう? もっとジャンジャン使いなさい」

 

 確かに稼ぎからすれば、この程度の出費は端金だろう。

 それにロボット10機が数千円で手に入ると考えれば格安だ。

 

 まぁ自分達で修理する必要はあるが。そこはベルルンに任せれば良い。

 先に整備ロボを直せば、手数が増えて効率も上がるはずである。

 修理部品の見積もりが終わると、次にシズクは自動人形の胴体部分を取り出した。

 

「それから、この自動人形の胴体なんだけど、なにか分かる?」

 

「んー、この和服と型番……たぶん鹿角型ね。出雲重工製の特注モデルで、完品なら100万以上するはずだわ。頭と下半身はどうしたの?」

 

「ダッチワイフの研究で使われちゃってた」

 

「ダッチワイフ???」

 

「はい。本当にダッチワイフの研究でした」

 

 店主は一瞬で何いってんだコイツ、みたいな顔になった。

 ジト目で変態を見るような目だ。やってたのはあの研究所の職員なのに酷い。

 

 だがどうやら、あの研究所はすごい人形からパーツ取りしてエロ研究をしていたようだ。

 まじで好き勝手やっていたらしい。

 まぁ値段から考えると研究材料が無くなって泣く泣く、みたいな感じだろうけど。

 

 どうせなら完品で残しててくれれば良いものを……。

 

「それで胴体だけ持ってても無駄なんで、中の重力操作装置と小型融合炉を取り出して使おうかなって」

 

「ちょっと勿体ない気もするけど、確かに胴体だけあってしょうがないわねぇ。で、どうするつもりなの?」

 

「ベルルンに組み込むつもり。ここって改造も依頼できる?」

 

「そりゃ出来なくもないわ。詳しい知り合いがいるから。でも少し勿体ないわねぇ……」

 

 と言われても、頭部と下半身が入手できない以上はバラすしかないだろう。

 これらについてシズクがティアと相談して考えた使い道は3つ。

 別に自動人形に組み込む、ポチコマに搭載する、そして最後がベルルンの強化パーツにする、である。

 

 このうち最初のは、初めから組み込まれた自動人形を買えば済む事だ。

 なので真っ先に却下された。

 

 それから次にポチコマへの搭載もメリットがあまりない。

 というのも装置1つで何十トンもある戦車を浮かせたりするのは無理らしい。

 また重力操作で止めれる弾丸は、戦車の装甲で弾けるとか。つまりほぼ変わらないのである。

 

 なのでベルルンに強化パーツとして組み込むことにした。

 こちらは重力で反動を制御することで、今まで使えなかった重火器が使用可能になる。

 それから持ち運べる重量も増えるなど、メリットが多々ある。

 

 ただし最終的な決め手はシズクの「強化されたワンオフの機体ってカッコイイやん?」という浪漫思考だったが。

 

「あとベルルンに付けれそうな強化パーツとかない? 金ならあるぞ(ガチ)」

 

「そういう事なら良いのがあるわよぉ!!」

 

 シズクがそう告げると、店主は嬉々として店に戻った。今までとはうって変わって。

 まるで不良在庫を押し付けるカモを見つけた! と言わんばかりの勢いだ。

 

「はい、おまたせぇー! こ・れ・がイチオシの強化パーツよぉー!!」

 

 そうして持って来られたのは、四角い箱に腕と武器をくっつけたような武装だった。

 蓋を閉じたコンテナ複数をテーブル代わりにし、その上に並べられたそれを、シズクとティアはしげしげと覗き込む。

 

「長方形の箱に、アーム3本に、武器3種……。なにこれ?」

 

「これは元は日本IAI製のIron Maiden(アイアンメイデン)っていう自動人形の強化パーツなんだけどね? ちょっと細部を弄れば、警備ロボにも載せれるはずよぉ」

 

 中央の黒い箱から3本のアームが飛び出ている。

 アームの先には、それぞれ違う武器が固定されていた。

 

「背中に固定する外装で、先についている武器は20mmのガトリング砲、対戦車バズーカ、そして9連装のマイクロロケットランチャーよ。ちゃんと整備されていからすぐ使えるわ」

 

「どれも重そうだけど、これアームが折れたりしないの?」

 

 武器の重量に対して、それを支えるアームは細い。

 通常なら持ち上げることすら無理そうだ。

 これで発砲なんてしようものなら、きっとアームはぽっきりと折れてしまうだろう。

 

「そこは重力操作装置でマウントされるから大丈夫よぉ。おまけに内蔵の位相空間から弾は自動装填されるわ。……ちなみに1万5千円になりまーす!!」

 

「いや高くね? 誰が買うのこれ?」

 

「……あの、そこまで出すなら警備ロボ3体買って、それぞれに武器もたせた方が安いんじゃ」

 

 重力操作装置付きなせいか、警備ロボが5体以上買える値段だった。

 だが利便性、リスクの分散、どちらを取っても警備ロボを買い足した方がマシだろう。

 武装も余った金で人間用のを持たせれば良い。つまりほぼ産廃だ。

 

「そーなのよねー。おまけにマウントしてくれるだけで、使うには手で固定する必要があるの。あと重力操作装置に電力を供給し続けるすごいジェネレーターも必要だったり」

 

「それむりじゃね? 聞いてるだけで産廃っぽいんだけど」

 

「あっ、やっぱりそう思う? だから全く売れないのよねぇ……。でも貴方なら、このロマンが分かるでしょぉ?」

 

「……確かに複数の量産機より、一機で無双するほうがカッコいい」

 

「またシズクさんが丸め込まれようとしてる……」

 

 ティアは不安そうだったが、シズクは店主の言うことも一理ある、と頷いた。

 やはり量産機より改造機。そして改造機より特別機だ。

 

 どんなロボアニメでも、特別機が群れる雑魚を一掃するのは心が踊るものだ。

 殺したくなんかないのにぃぃーーっ!! とか言いながら引き金を引きたーい!! シズクはそう思った。

 

「でしょでしょ! そして今ならなんと胸部の増加装甲に、頭部の保護バイザーまで付いてくるわぁ! ついでに改造費もサービスでタダにしちゃう!!」

 

「なにそれ悔しいけど買っちゃう(即決)。遺跡に行かない時は外しておけるように加工もよろ。あと両腕の5.56mm銃って大口径に出来ない? 改造費がタダなら他も強化しときたい」

 

 シズクは金にあかせて限界までベルルンを強化することにした。

 なんせ金は沢山あるのだ。こうなったら出来る限りやるつもりになった。

 

「んー、内蔵式だと7.62mm(500円)が限界ねぇ。それ以上はマニピュレーターなしの専用腕になるわ」

 

「ふむふむ。じゃあ腕は7.62mmでいいや。指が無くて家事が出来ないのは困るし。他にシールドとかレーダーとか強化出来そうなのは?」

 

「そうねぇ、それなら浮遊型の追随装甲(5000円)に、高性能の羽型アンテナ(1000円)、あとロケットなんかの迎撃装置(4000円)とかどうかしら?」

 

 続けて店から出てきたのは分厚い鉄板だ。

 内蔵された重力操作装置で空中に浮いていた。それが全部で8枚。

 それから今の物より一回り大型の羽に、小型筒状の発射器のようなもの。

 

「この装甲は結構おすすめよぉ。バラして必要な枚数だけ使えばいいし、自由に陣形を変えることが出来るわ。それからアンテナは今のと交換。両羽を取り外して片羽になるわね。それでも現在より高性能化するから、遺跡内の探索が楽になるはずよぉ」

 

 装備全部で2万5千500円だ。警備ロボが何体も買える。

 それも全て一体を強化する為に使おうというのだ。

 もはやロマン以外の何物でもないだろう。だがそれが良い。

 

「――全部買いで。ベルルンの強化案としてはこれぐらいかな?」

 

「まいどありぃ~!! 貴方はいい客だわぁ」

 

 シズクは迷わず全部買った。店主は飛び上がって喜んだ。

 これがエロゲなら高感度ゲージがグーンと上昇したことだろう。

 乳酸菌臭いので上がっても意味はないが。

 

「それと前にカタログで見た5mm口径レイルガン(6千円)ってのも2つ」

 

「……レールガンなんてどこで使うもりよぉ。まさ自分で撃つつもりかしら?」

 

「いやこっちはビーストマスター用。腕が2本空いてるから丁度いいかなって」

 

 続けてシズクはビーストマスターの装備に付いて相談を始めた。

 鹵獲した時、4本の腕には武装が2つ付いていたが、下腕の2本は無手のままだった。

 なのでこちらにも武装を持たせよう、という寸法である。

 

「どうせなら一番すごい武装がいいよね!!」

 

「あのシズクさん。ビーストマスターは足が無いので、備え付けになると思うんですけど。やっぱり借りてるガレージに設置するんですか?」

 

「流石にそれは盗人対策としては過剰じゃないかしら? ていうか街中でそんなの撃ったら捕まるわよ」

 

「なに言ってんの。……ポチコマ(戦車)に乗せればいいじゃん!!」

 

「「えっ」」

 

 シズクはティアと店主の不安を突っぱねた。

 元よりガレージに備え付ける気などなかったのだ。だってそれは余りにも勿体ない。

 

 なのでどうにかして移動しながら使えないかと考えて……。

 そして気づいてしまったのだ。

 

 ――あれ? ポチの尻尾の上が空いてるじゃん!! と。

 

 なんせ元々は120mmの大砲が付いていた場所だ。

 いまは12.7mmを2門付けているが、重量的にはまだまだ余裕がある。

 ならばビーストマスターを丸ごと乗っける事も可能だろう。

 

「これならきっと戦車も吹き飛ばせる!!」

 

「あの軍用多脚戦車の動力なら確かに使えるし、正面装甲も抜けるでしょうけどぉ……。でも誰と戦うつもりなの?」

 

 店主の説明によれば、このレールガンは結構な電力が必要らしい。

 だがポチコマの動力は中型融合炉のグレードB(ミリタリーVer)である。

 これは特注の自動人形などに使われている、小型融合炉のグレードA(スペシャルVer)に匹敵する。

 

 なんで野盗が持ち逃げできたのか不思議な高性能炉だ。

 なので撃つことは可能だとか。ならば使わない手はないだろう。

 

「じゃあビーストマスターの追加武装も決まりっと」

 

「まぁ私としては店にお金を落としてくれるなら文句ないわ」

 

「いいんですかそれで。危険物を売った責任とかあるんじゃ」

 

「そんな物は犬にでも食わせておきなさぁーい!」

 

 商売に一段落ついたシズク達は、コンテナを引き渡して一度休憩を取った。

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

 店主がルンルンと嬉しそうにコンテナを仕舞い込んだ後。

 シズクは自陣に更なる強化を施そうと、再び商売の話を切り出した。

 

 なんせコレだけ買ってもまだまだ金は余っているのだ。

 まらば懐に抱えておくより装備に費やしたほうが有意義だろう。

 何故なら、金はあの世には持っていけないのだから。

 

「エロカッコイイ自動人形とか無い? 予算は10万円ぐらいで。他人が持って無さそうなレア品だとなお良し」

 

「一応聞いておくけど、そんなにお金あるのぉ?」

 

「それなら大丈夫。ここに来る前に組合に寄ったけど、プラントの売却(強制)費で、ポンッ! と10万円くれたから」

 

 研究所から回収したプラントとデータは、予想以上の大金になった。

 ホテルモスクワからの依頼料も併せれば10万6千円だ。

 21世紀の物価換算で約1億円。何でも買えそうな額だった。

 

「ああ、プラントまで回収してたのね。普通は2級のスカベンジャーでも初見じゃ無理って聞くけど。……あなた完全に等級詐欺だわぁ。まぁ、待ってなさい。そういうことなら丁度いいのがあるわよ(2回目)!!」

 

 店主がウキウキとした雰囲気で、再び店の奥に引っ込で行く。

 それも途中からはスキップで。よっぽど売ってしまいたい商品があるらしい。

 

「はーい、おまたせー!! これが家で一番オススメの自動人形よぉ!!」

 

 しばらく待って出てきたのは、棺型の保管具で眠る一体の自動人形だった。

 

「おおおおお!!!」

 

 シズクはその自動人形に釘付けになった。

 

「うわ、すごい造形ですね」

 

「そうでしょう。しかもこれ未起動の新品よぉ」

 

 長い銀髪に薄い褐色肌をした、ボンキュボンのムチムチボディだ。

 服は黒いドレスのごとき装甲に、ミニスカートとハイソックスと眼鏡のJKコーデ。

 だが額には赤い水晶のようなものが埋まったバイザーがあり、耳も菱形のパーツで覆われていてロボっぽい。

 

 おまけに背中にはバラされた大鎌だと思わしき武器がある。

 恐らく専用武器なのだろう。かわいい女の子にデッカイ武器。――まさにロマンの塊である。

 

「なにこれ、めっちゃエロイ。セクサロイドかな? ほっしぃー!!」

 

「正式名称T-elos Re:(テロス リフレイン)。ヴェクターインダストリー社製の生体式戦闘人形T-elos型、その最終モデルよ。近接戦闘特化だから貴方達にぴったりじゃないかしら?」

 

「なるほど。近接要員は是非とも欲しかった所……。なんという慧眼!!」

 

「完全にチームの構成が把握されてますね」

 

 そうは言っても、装備は全てこの店で買っているのだ。

 ならば把握されてしまうのはしょうがない。

 

 それに今後のことを考えると、近接要員は確かに必要だろう。

 接近された時の保険になるし、首を刎ねさせればロボや装甲スーツの鹵獲が楽になる。

 

「ちなみに売り文句は『公私をガッチリ守ります』だったらしいわぁ。あとセクサロイド機能も搭載されているので、男女のアレコレも可能となっておりまーす! 必要なら娼婦ルーチンも店で売ってるわ。流石に専用のエロパッチはないけど」

 

「エロくてカッコイイとか最高じゃん。……専用のエロパッチも必ず見つけなきゃ」

 

「ああ、気に入ったんですね……」

 

 だが何よりもシズクが気に入ったのは、その造形だった。

 胸も尻もたゆんたゆん!! 今すぐスカートを捲りたくなってくる。これはエロスですわ!!

 

「……でもお高いんでしょう?」

 

「それが今ならなんと……10万円ぴったりのご奉仕価格よ!!」

 

「完全に足元見てる!!! でも買っちゃう!!(ビクンビクン)」

 

 シズクは迷わず飛びついた。

 頑張って回収したプラントの代金が、一瞬ですっ飛んでしまったが後悔はない。

 

「うーん、10万円はちょっと勿体ない気もしますけど」

 

「何言ってんのティア。プラント1個でこれだけ金になったんだよ? つまりこの金で装備整えて、またプラント発掘しまくれば大儲けってことじゃん!」

 

「それ完全に破滅するタイプの思考よぉ……」

 

 ならばその為に金を使うのは何も間違っては居ないはずだ。

 コスパなど考えてはいけない。ロマンとエロスは何よりも大事なものだから。

 そして両方が詰まったこの自動人形は、是が非でも購入しなければならなかった。

 

「あとはこの際、使いそうなルーチンもまとめて買っとこう。銃器取扱、重火器取扱、CQB、近接戦闘、運転、奉仕、整備修理、ハッキング、娼婦。全部LvAが欲しい。幾ら?」

 

 せっかくなのでルーチン(動作プログラム)も最高のものに変更する。

 今使っているLvCは習熟級、LvBでも熟練級だ。だがLvAなら達人級になるのだ。

 

 運転ルーチンで例えればC級はペーパードライバーで、B級はゴールド免許。

 そしてA級はプロドライバーである。更新すれば豆腐を崩さず峠を攻めることすら可能になるだろう。

 

「金があるならLvAにしない理由がない」

 

「待ちなさい。どうせなら攻勢防壁も買うべきよぉ。せっかくの人形とロボがハックされて奪われるのは嫌でしょう? 今なら3連防壁が1000円でお買い得よ。通常の攻性防壁も300円ぽっきり」

 

「攻性防壁! そういうのもあるんだ。ティアも必要だと思う?」

 

「絶対に必要でしょう。あればハックも楽になります。今まで時間をかけていた部分を強行できるようになるので」

 

 攻勢防壁とはハッキングを受けた時に身代わりになってくれる装置だ。

 しかも相手にウィルスを送り込んで逆に破壊するタイプらしい。

 

 確かに奪われるのは絶対にゴメンだし、未来の情報セキュリティなんて分からない。

 なので防壁は積んでおいたほうが良いだろう。

 最低でもシズクとティアの端末に、ベルルンとポチコマと、この自動人形の分は必要だ。

 

「じゃあメインPT用に3連を5個、それから他のロボ用に単体のを10個よろしく」

 

「ほいきた。LvAルーチンは一つ1600円だから。細かい部分はオマケするとして……差し引き8万5千円でいいわ!!」

 

「残金約2万1千円か。意外と残ったな」

 

「いや16万も使っちゃってますけど!?」

 

 売却益が7万6千円で、購入費が16万2185円だ。

 なので1185円がオマケされたことになる。

 最初の修理パーツ費が半額になった。よっぽど在庫がはけたのが嬉しいらしい。

 

「あとこれはタダの好奇心で聞くんだけど、何で武器店に人形があるの? こういうのって普通は人形専門店とかに行くんじゃ」

 

「そうですね。普通の街なら戦闘人形、警備ロボ、愛玩用人形で店が分かれてると思います」

 

「ああ、それはねぇ。ちょっと前に高知で最大の人形店が閉店したからよぉ。……まぁ私の父親の店だったんだけどね。そのせいで在庫が全部こっちに回ってきたの。でも急だったから飾る場所がなくて……」

 

 なるほどそういうことか。

 どうやら普通の官営武器店には、こういった品は置かれていないようだ。

 別の街に行く機会があれば気をつけたほうが良いだろう。今のところ予定は無いけど。

 

「なーる。んじゃこれ代金ね。全部100円札になるけど良い?」

 

 理由が分かってスッキリしたシズクは札束を複数取り出す。

 一束が100枚なので分厚い。それを丸ごと店主に手渡した。

 

「まいどありぃ~~~♪ 改造には3日ほど貰うわね。 ……ところで私も一つ聞いて良いかしら?」

 

「ん、なにか知りたいことでも?」

 

 全ての取引が終わると、今度は店主の方から話を切り出してきた。

 どうしても聞きたいことがあるようだ。

 シズクは最初から当たりが付いていたが、あえてすっとぼけて店主の反応を伺った。

 

「取引が終わった今だからこそ言うけど。……そっちのティアって子はどうして、ずっと()()()()()()()()()()の?」

 

「おお、やっと聞いてくれた!!」

 

 シズクはその質問に喜んだ。だが対象的にティアは恥ずかしそうに顔を逸らした。

 店主はあえて取引が終わるまで触れないようにしていたが、実はトレーラーから降りた時にはすでに、ティアは頭以外が透明だったのだ。

 

 空中に頭だけが浮かぶ姿はお化けのよう。

 しかしこれは熱光学迷彩を纏っているからである。

 どうしてそんな事をしているかというと、理由は熱光学迷彩の中にあった。

 

「それはね……調教中だからだよ!!」

 

 シズクは、はい御開帳~と言いながら、ノリノリでティアが纏う熱光学迷彩を開いた。

 

 ――中身はビキニ水着だった。

 

 布面積が小さな白い水着が、太陽の光を浴びて輝いている。

 一応ブーツとソックスは身につけているものの、それが逆にエロさに拍車をかけていた。まごうことなき痴女スタイルである。

 

「あああああ、見っ、見ないで下さい!!!」

 

「すごいでしょ? 前の遺跡で見つけたんだ。透け透けスケベ水着っていうの」

 

「あー、やっぱり貴方達って、そういう関係なのねぇ……」

 

 恥ずかしくて頬を染めたティアが、少しでも体を隠そうと身をくねらせる。

 前傾姿勢になって左手で胸を庇い、右手で股間を隠そうとする姿は、誘っているようにしか見えなかった。

 

「全くティアは自信なさげなのに、おっぱいは自信満々だなぁ」

 

 シズクは手を添え下から持ち上げるように弾く。

 ティアのお乳がバインバインと上下に揺れた。

 

「あ、あの。これは好きで着てる訳じゃなくて、その命令されてしかたなく……」

 

「ちなみにこの水着は濡れると透けるから。見られて興奮すると……」

 

「あー……、じゃ、じゃあ私は修理に必要な物を持ってくるわねぇ。人形は置いてくから、起動とインプリティングはそっちでやりなさーい」

 

 あまりの光景にドン引きした店主が、札束を抱えながら店に戻っていく。

 大額の取引で大金を手にしたからか、その動きは微妙にぎこち無い。まさか処女だとでも言うのだろうか。

 

「では新入りを目覚めさせるとしますか。眠ったお姫様には口づけで良いんだっけ?」

 

「それは昔の童話では……。箱にボタンが付いてますよ。あと、もう服を着ていいですか?」

 

「せっかくだから帰るまではダメ。てか服は置いてきたし。あと迷彩使いすぎるとバッテリー切れるから気をつけてね?」

 

「そ、そんな!!」

 

 絶望に染まったティアを横に、シズクは人形のスイッチへ手を伸ばす。

 棺の上部に付いていた「起動用」と書かれたボタンを押すと、横たわっていた人形の目が見開かれる。

 

 瞼の下にあったのは青色のアイカメラだ。

 電源が入った自動人形はシズクの顔を見つめたまま、淡々と起動シーケンスを開始した。

 

「――機動。

 

 各部システム――オールグリーン。

 

 思考――オールグリーン。

 

 全行程――問題なし。

 

 ――続けてインプリンティングを開始。制御者を捕捉……完了。

 

 マスターを認識しました。AIを起動します」

 

 どうやら無事にマスター登録は終わったらしい。

 自動人形は無機質な機械音でAIの起動を告げると起立。

 

「貴様がマスターか。

 

 ――ワタシはT-elos!

 

 ワレこそ完全なるもの、そして私こそが秩序だ!!」

 

 その場で堂々と腕を組み、自信満々に名乗りを上げた。

 それを聞いたシズクは突っ込まずには居られなかった。

 軽く背伸びしたせいか胸がたゆんと揺れ、ミニスカートがフワッと舞って中身が丸見えになった件に付いて。

 

「――いや、そのエロさで秩序は無理でしょ。エロスギィ!!」

 

「いやあの。これって多分、初回起動用に設定された固定挨拶だと思います」

 

「これが固定挨拶……だと……」

 

 再び熱光学迷彩を纏ったティアが、人形の起動について補足する。

 それによると、これは設定された初回用のセリフと動作らしい。

 

 なんということだろう。

 ということは先程のスカートと乳の動きも計算された物ということになる。

 きっと開発者はエロジジイに違いない。

 

「ならばそのご期待に沿った名前が必要か……。よし、貴方の名前は『エロス』だ!!」

 

「――パーソナルネームに『エロス』を設定。……ってエロスってなんだ!?」

 

「おおっ、ベルルンと違って人間っぽい喋り方。へぇー、自動人形ってこんななんだ」

 

 そのまま固有名を付けると、新しい従僕―エロス―は、声を張り上げた。

 こんなドスケベボディをしておいて、エロ人形扱いは嫌らしい。ボディだけでなく、性格までワガママなようだ。

 

 シズクは一瞬でこの自動人形を気に入った。

 

「それはそれですごく唆る。帰ったら早速、娼婦ルーチンを入れよう(確定)」

 

「おい、ちょっとまて。まさか私をセクサロイド扱いするつもりなのか!?」

 

 エロスはよっぽど嫌なのか、両手を上下にブンブン振りながら抗議した。

 もしかしたら戦闘用人形としてのプライトみたいのが有るのかもしれない。

 

 だがその動きは子供が駄々をこねるようで可愛いだけだ。

 それもオッパイが揺れるせいで、むしろ私こそがエロスだと主張しているようにも見える。

 

「大体合ってる。隣りにいるティアがサブマスターだから。仲良くね?」

 

「――了解。サブマスター登録完了。……じゃなくて!! 私は近接戦最強の自動人形なんだぞ!!」

 

「うーん、この反応。急に素直になるとか。弄られ系の素直クールって感じで最高」

 

 この見た目とのギャップ!

 全身から虐めてオーラが吹き出ているかのようだ。

 なかなかおもしろい性格付けがされた人形である。

 

「後でご褒美に正の字を書いてあげるね。お尻に」

 

「お尻に!?」

 

 そのシズクの宣言にエロスが唖然とした表示を浮かべる。

 ミニスカートを履いてお尻に正の字とかエロすぎる。青少年の性癖を破壊してしまいそう。

 シズクはいつかエロスをJCに偽装し、街を歩かせようと心に決めた。

 

「何にせよ、これから宜しくねエロス!! あっ、私はシズク=ムラサキだよ」

 

「シズクさんはこう言ってるけど、近接戦闘では頼りにしてるから。あと、わたしはティア・ナランスターで、隣にいるベルゼルガ型ロボがベルルン。後ろにいる大型の多脚戦車がポチコマよ」

 

『IAI製DVL型重装警備ロボットのベルルンだ。よろしく頼む』

 

『剣菱製HAW206C型大型多脚戦車のポチコマでーす! わ~い、後輩ができた~~!!』

 

 周囲のメンバーが次々に自己紹介を始める。

 エロスにとって幸いなことに、ティーバックさん等と言って煽る輩はいなかった。

 基本的にこのメンツで非常識なのはシズクだけである。

 

「――主関係者の固有名を登録、こちらこそよろしく。それとサブマスターは常識人のようで何よりだ」

 

「起動してすぐの人形に非常識扱いされた件について。そしてティアの真の姿を見ても同じことが言えるかな?」

 

「ちょっ、熱光学迷彩引っ張らないでください!!!」

 

 エロスの眼の前で、再びティアのエロ水着姿が晒される。

 しかも少し生地が薄くなっていた。とくに股間の部分が躊躇だ。

 さっき店主に見られたせいで興奮してしまったらしい。

 

「……前言を撤回する。サブマスターも変態だと認識。――なんて所に買われてしまったんだ」

 

 そんなティアを見たエロスは、その場で頭を抱えてしまった。

 どうやら相互理解はうまくいったようだ。これならきっと、すぐに馴染めるだろう。

 シズクはエロスの頭を撫でながら、上手くやっていけそうだと満足気に頷いた。

 

「それじゃベルルン、後で迎えに来るから。大人しくしとくんだよ? では改造よろしく」

 

「えっと、重力操作ルーチンは専用の小型端末があったので使って下さい」

 

『――了解しました。パワーアップに期待します』

 

「任せなさぁーい。いい感じに仕上げてあげるわぁ」

 

 整備ロボの1機の修理を終えたベルルンを店主に預ける。

 内装・外装ともに超強化されるとあって、ベルルンはどこか嬉しそうだ。

 

 それからシズクはショックを受けたエロスを連れて車取引所へ。

 車取引所ではビーストマスターとレールガンを見せ、ポチの尻尾への据え付けを御大将に依頼した。

 

「なるほど分かった。これは腕がなるのであーる!!」

 

「おっ、意外と乗り気だ。断られる可能性も考えてたのに」

 

「ああ、何せビーストマスターを丸ごと戦車に組み込むなど初めてだからな。心が踊らんと言えば嘘になる」

 

 珍しい改造だったせいか、御大将は2つ返事で改造を引き受けてくれた。

 この合体依頼は技術屋としても楽しい仕事らしい。

 

「貴様だとて可能なら自身でやるのではないか?」

 

「確かに面白そうだし自分でやるかも。それで料金は?」

 

「まぁ金は5千円もあれば良いだろう。今は急ぎの仕事もないし期間は3日だ。それとビーストマスターの脳殻は戦車の方に移植するぞ? なんせ大容量特別規格脳殻だ。使わなければ勿体ない」

 

 大容量特別規格脳殻とは、大規模な兵器を制御する為の特別な脳殻だ。

 御大将が言うには、今までの一般脳殻とは処理速度が全然違うらしい。

 使えば照準とか予測とか、より細かい部分に制御が行き渡るようになるとか。

 

「その辺は全部任せるから。いい感じによろしく。ポチも元気でね?」

 

「うむ、承った。大船に乗ったつもりで任せるがよいのであーる!!」

 

『はーい! 大人しく改造されてまーす!!』

 

 シズクは面倒なので全部丸投げした。

 説明されても分からないし、こういうのはプロに任せるのが一番だ。

 

 全ての用事を終えたシズクは御大将にポチを預け、ティアとエロスを連れてガレージに戻った。

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

 月200円で借りたガレージは物流倉庫並みに広い建物だった。

 横幅は約50メートル。奥行きも同じぐらい有り、天井も6メートルと高い。

 大型多脚戦車とフルトレーラーが何台も入る広さである。

 

 壁もコンクリートのような素材で組まれた、しっかりとした作りだ。

 シャッターさえ降ろしてしまえば、中の音は外にほとんど漏れなくなる。

 

 シズクは中央にあるシャッターをリモコンで操作し、トレーラーを中に入れてエンジンを切った。

 

「はい到着ー。さぁ二人共降りて」

 

「ここがお前達の住まいなのか?」

 

「いや、ここは借りてるだけのガレージ。住んでるのはホテルの方だよ。まぁそのうちコッチに住むかもしれないけどね」

 

 このガレージは入って左側奥に2階部分が作られている。

 鉄筋で無理やり一階と二階を区切ったような形で、階段を登った先にはプレハブ小屋のような部屋があった。

 

 これは前の借り主が、事務所として使うために設置したものらしい。

 作りかけの秘密基地みたいなので、シズクは割と気にいっていた。

 

「二人は荷物を持って二階に上がってて」

 

「では中を案内しておきます」

 

「了解した。ロッカーは全部持っていくぞ」

 

 シズクが運転席から見ていると、降りたティアとエロスが階段を登っていく。

 個室の鍵を開けるためにティアが先行し、後をエロスが付いていく形だ。

 

 エロスは右手に大鎌を持ち、左手で3台のロッカーを運んでいた。

 横倒しにした上で縦に重ね、それを左手一本で見事に持ち上げている。

 

 すごいのは階段を登る時も体幹がぐらつかないことだ。

 体とロッカーが一体化したような見事なバランスだった。

 よほど高性能な平衡器(バランサー)が積まれているらしい。

 

「修理の順番は、もう一台の整備ロボ→ブラックメイル→運搬ロボ、でよろしく」

 

『了解。了解』

 

 シズクは整備ロボに修理の優先順位を伝えると、すぐに二人の跡を追う。

 入ってすぐのリビング(キッチン兼)では、エロスがティアの指示に従ってロッカーを設置中。

 3つ全てが同じ部屋に置かれたが、隣は仮眠室だからこれで正解だ。

 

 ちなみにココはちゃんとトイレも付いているし、電気と上下水道も使える。

 なので後は風呂さえ備え付ければ、普通に暮らすことも不可能ではない。

 

 シズクはリビングの椅子に座り、いったんお茶を飲んで一服。

 それから、やっておくべきことを切り出した。

 

「では性能テストも兼ねて。さっそくエロスと一戦やってみよう」

 

「あのそれって、男女のおつきあい的な意味ですか?」

 

「おい待て! いきなりワタシは娼婦にされるのか!?」

 

 シズクの発言に連れの二人はドン引きしていた。

 

「いや違う違う。それも後でやるけど、まずは近接用の自動人形がどれぐらい強いのか試そうと思ってさ。ちょっと戦ってみようかなって」

 

 しかしやろうとしているのは戦闘力の把握である。

 なんせ今までは人形や義体のような『人の型をした機械』と戦う機会はなかった。

 なのでシズクはエロスの実力把握も兼ねて、人型機械との戦いを経験してみようと思ったのだ。

 

「なんだ、そういうことですか」

 

「少し焦ったが了解した。――ならば、ヴェクターインダストリー社の力をご覧に入れるとしよう!!」

 

 戦いを理解したエロスは嬉しそうに両手で大釜を構えた。

 どうやら「それも後でやる」というセリフは聞かなかった事にしたらしい。

 スルーまで出来るとか流石は高級な自動人形である。

 

「じゃあガレージの中でね。シャッターは降ろしたから外に音は聞こえないよ」

 

「壁は利用しても良いんだな? 身体テストなら大釜の機能は使わないでおくぞ」

 

 エロスが持ってるのは「熱振動徹甲大鎌」という武器だ。

 説明書によれば、起動すると刃の先端が高熱化し、更に微細に振動する。

 これにより、どんな物でも簡単に切り裂けるという、物騒な獲物である。

 

 だが今回はテストなので、その機能は起動されていない。

 同じ様にシズクも工作用レンチを両手に持つ。単分子カッターの代わりに。

 ぶっちゃけ接近戦は自信がないが、だからこそ身体能力によるゴリ押しは良いテストになるだろう。

 

 シズク達は部屋から出て、ガレージの中央で向かい合った。

 

「いっくよー」

 

「――来い!!」

 

 宣言とともにシズクが全身にオーラを限界まで滾らせ、エロスに向かって踏み込む。

 

 ――たった一歩。

 

 されど20メートルを飛び上がる脚力でだ。

 常人であれば見失うほどの速度での移動。そして攻撃。

 

「えっ!?」

 

 シズクの姿を見失ったティアが驚きの声を上げた時。

 一瞬で距離を詰めたシズクは、エロスに向かってレンチを振り下ろしていた。

 

 ――ガキンッ!!

 

 だがそれをエロスは余裕を持って、大鎌の柄で受け止める。

 シズクはそのまま力を込めて押し込もうとするも、お互いの獲物は中央から動かない。

 

「人間の癖にえらく早いな。おまけに腕力も相当だぞ。まさか半変異、あるいはESP持ちか?」

 

「いやただの人間だよ。まぁ身体能力は普通の人よりちょっとだけ高いけどね!! あと金魚の召喚と、空間系の能力もある。――こんな風に!!」

 

 シズクは力を抜いてバックステップしながら、具現化したデメキンを飛ばした。

 30cmサイズが全部で6匹。狙いはエロスのホッペと首、乳と脇腹、股間と太ももだ。

 

「気の強い女はエロ攻撃に弱いって、相場は決まってるんだよね!!」

 

「なんだそれは。やはり主は変態じゃないか。――フッ!!」

 

 対してエロスは手に持った大鎌をくるくると回転させる。

 右手側面で縦に一回転、続けて右下から左上に薙ぎ、最後は自分ごと右へくるっと。

 それだけで全てのデメキンが両断されていた。

 

 剣やナイフとは根本的に違う動きだ。

 かといって槍と棒なんかの長物とも微妙に違う。

 例えば薙ぎ払いは単に横に振るのではなく、大鎌を微妙に回転させて引っ掛けるような動作が含まれていた。

 

 この辺は刃が内側についている故の動きだろう。

 軽い振りで6匹を仕留めたエロスは、柄頭をシズクに突きつけて笑みを作った。

 

「おー。流石、戦闘用の自動人形。認識も反射速度もバッチリじゃん」

 

「当たり前だろう。なんならサブマシンガンの銃撃だって全て躱してみせるぞ」

 

「本当に? そんなに動きに自信があるの?」

 

「もちろんだ。全て回避して見せる。ヴェクターインダストリー製に不可能はない(キリッ)」

 

 エロスはその場でフッと薄く笑う。すごいドヤ顔だ。

 それを見たシズクも同じ様に笑みを浮かべた。

 ただしコチラは楽しい玩具を見つけたような、嫌らしい笑みだったが。

 

「そんなに自信があるなら装甲はいらないね。――じゃあ服は全部脱ごっか」

 

「えっ!? いやまて、それに何の意味があるんだ!」

 

「決まってるんじゃん。――趣味だよ!!」

 

 続けて放たれたのは無慈悲な全裸命令である。

 だが自動人形は主の命令に逆らえない。

 この世界にはロボット三原則なんてお優しい物はないのだ。

 

「あっ、でも手足はそのままでいいから」

 

「変態! 変態!! 変態!!!」

 

 命令には逆らえないエロスは、精一杯の抗議をしながら服を脱いでいく。

 最初にスカートを外し、続けてレオタード型の装甲服を床に落とした。

 

 終われば胴体部だけ丸出しの変態人形が出来上がりである。

 シズクはエロスに向かって拳を握り、グッと親指を立てた。

 

「ナイスエロス!! 変態っぽくて実に良い。このまま街に繰り出せそうなスタイルだね」

 

「あの、流石にそれは捕まるかと……。場合によってはエロスが没収されちゃいますよ」

 

「おい、やらせるなよ! いいか、絶対にやらせるなよ!!」

 

「ではもう少し続けてみよう」

 

 シズクは丸出しになったエロスと再び対峙する。

 それから何度も武器を打ち合わせ、エロスの性能を把握していった。

 

 二人は壁を蹴って飛び、天井を走って、武器を振るう。

 真っ逆様に落ちながら。それでいて地面寸前で180度上下を入れ替えて着地。

 更にシズクは左右にフェイントを入れ、後ろの死角からもデメキンを凸らせる。

 

「これはどうかな?」

 

「――あまいぞ!!」

 

 だがエロスはその全てに対応してみせた。

 柄を引き寄せ、刃を地面と水平に構えて回転。

 体の横から刃が飛び出したような姿で、後ろから迫るデメキンを切断してのける。

 

 見た目はネタ武器のような大鎌だが、エロスは手足のように扱えるようだ。

 振るう姿は驚くほど様になっていた。……ただし全裸だが。

 

「おお、後ろに眼が付いてるみたい。その大鎌も完全に使いこなしてるね。ルーチンどうなってるの? 剣術か槍術?」

 

「聞いて驚け! ワタシ専用の『大鎌使いLvS』ルーチンだ!! 剣術・槍斧術・軽業・重力制御の複合。社の戦闘部門が総力を上げて作った最高傑作だぞ!!」

 

「わざわざ大鎌使わせる為に専用のプログラム開発しちゃうとか。エロスの会社も十分にHENTAIだなぁ」

 

 やはり自動人形を作る所はどこも頭がおかしいようだ。

 しかし、戦闘自動人形とは伊達では無いようで、その身体能力はかなりのもの。

 スペックを聞いてみれば、全身の筋力は300kg以上の物を軽く持ち上げ、認識速度は世界をコマ送りにして見えるほどだと言う。

 

 更に高い演算能力によって即座に最適な行動を取ってくる。

 これでは普通の人間が何十人いても絶対に勝てないだろう。

 

 今はお互いに手加減しているからヒットこそ無いものの、固有能力(ゲートオブデメキング)なしの、純粋な近接戦闘ではシズクでも勝ち目がなさそうだ。

 

 ちなみに重力操作装置も内蔵されているが、これは大鎌戦闘の補助に特化した調整がされていて、他に使うのは無理らしい。

 

「うーん、強いなぁ。これは買って正解だったかも」

 

「そうだろう、そうだろう。だからそろそろ服を着せろ。な?」

 

「いいよ。でも最後におっぱい揉んでからね。――動くな」

 

「おまっ!!」

 

 最後にエロスの動きを止めたシズクは、そのワガママボディに抱きつき谷間に顔を埋める。

 

 エロスの体は人間と同じ様に温かかった。

 だが胸の奥から聴こえてくるのは心臓の鼓動ではない。

 小さなモーターのような炉心の声に、全身を引っ張るワイヤーとシリンダーの駆動音。

 

 コレだけ人間のように振る舞えても、やはり中身に詰まっているのは機械らしい。

 これほどの物を作り上げるなんて、人間の技術ってすごい。

 

「うーん、でもこうして訓練できるのは良いね。ココに住むのも有りかも。あと服を着なくても捕まらないし。ティアはどう思う?」

 

「そうですね。ここなら銃の訓練も出来ますし、環境を整えて住むのも有りかと。それにポチコマも寂しくないでしょうから」

 

「たしかに。一人だけここに置いてたら拗そうだなぁ」

 

 シズクは苦笑しながら、ここに住むための改装について思考を馳せる。

 風呂と装備保管庫は作るべきだろう。場所は2階部屋の真下がちょうどよい。

 それからリビングから風呂に直通する階段も欲しい。

 

「んー、ここって1万円で買える? 改装費と家具で2千円かかるとして……お金も余ってるし、やっちゃおうかな」

 

「ホテルだと生活費が月1200円ですから。1年ちょっとで元は取れますね」

 

「良いから! 早く離して服を着せろぉ!!」

 

 シズクが今後について考えていると、抱きしめられたままのエロスが抗議を上げた。

 どうも自動人形の癖に恥ずかしいという気持ちがあるらしい。疑似感情回路というやつだろうか。

 

「……ティア、丁度いいからエロスに娼婦ルーチンいれちゃって」

 

「わかりました。……有線でちょっとチクっとするからねー? 痛くないですよ―?」

 

「ワタシは子供か!! おい、なんだその触手は!? あああああ、やっぱり副主も変態だぁー!!!」

 

 シズクの指示に従い、ティアがエロスに触手型の狗走を近づける。

 首後ろにある情報端子に先端を接続。

 すぐにサブマスター権限で娼婦ルーチンのインストールを始めた。

 

「そろそろホテルに戻ろっか。移動してる間にインストールも終わるよね」

 

「だいたい5分ぐらいですね。装甲車を使いましょう」

 

「あっ あっ あっ。 ……純戦闘、なのにっ!!」

 

 そしてホテルに付いた頃には、エロスは立派な娼婦になっていた。

 部屋を取ってシャワーを浴びたシズクは、ベッドの上でエロスと2戦目を始めた。

 

「おー、気持ちいい。下の中も人間と変わらないね。さすが兼用セクサロイド」

 

「ち、ちがうっ♡ ワタシは♡ 純戦闘用の♡ 自動人形だぞぉ♡♡♡♡」

 

「そんな目にハートマーク浮かべて戦闘用は無理でしょ」

 

 エロスはベッドに上がると、達人級(LvA)の娼婦へと豹変した。

 上半身だけを起こしたシズクの首に腕を絡めて抱きつき、自発的に腰を振りながら蕩けた表情でおねだりだ。

 

「だめ♡ 強いのだめ♡ 初めてなんだ。や、やさしくしろぉ♡♡♡」

 

「なんということだろう。あんなに嫌がっていたエロスが熟練の媚声を!! ……ルーチンってすごいね」

 

「(ルーチンで)熟練娼婦なのに処女とか。これもう分からないですね……」

 

「は、はやく♡ 早くして♡ もっと沢山虐めて下さい、ご主人さまぁ~♡♡♡」

 

 どんな男でも一発で落とせそうな動作である。

 シズクはそんなエロスを隅々まで堪能していく。

 しかもエロスは有機転換炉という装置まで備えていて、飲み込んだものを全てエネルギーに変えれるらしい。

 

「ティアとエロスのダブルペロペロやばーい!!」

 

「ワタシ♡ ペロペロ。ワタシ戦闘用なのに♡ ペロペロ。でも舐めるの止まらない♡♡♡」

 

「(負担が減るから)エロスはこのままで♡ ペロペロ。お願いします♡♡♡」

 

 つまり何を流し込んでもOKということである。

 途中からはティアも一緒に混ざり、ダブルご奉仕でシズクを大いに満足させた。

 

「さて明日からはどうしよっかな? エロスはやりたいこととかある?」

 

「あっ♡ あっ♡ おっぱい♡ もっと、おっぱい虐めて♡♡♡」

 

 シズクは寝てしまったティアを左手で抱き寄せながら、右手でエロスのおっぱいを堪能する。

 キメの細かいスベスベの肌だ。少し力を込めれば嫌らしく形が変わる。

 中身は動力炉を守るために衝撃吸収装置が詰まっているらしいが、こうして触れる分には人間の胸と変わらない様に思えた。

 

「……まぁベルルンとポチコマの改造が終わるまでは情報収集でもしとこっか。戦う相手を選んでおこう」

 

 エロスという新戦力は手に入れたが、2機が戻るまでは大人しくしておくべきだろう。

 どうせ改造後にはテストを兼ねた実践が必要なのだから、それなら揃って活躍できる場所を探しておいが方が良い。

 

「それに仲間外れにしたらベルルンとポチコマがいじけそうだからね。そろそろ寝るから護衛はよろしく」

 

「まかしぇろ♡ ワタシは社の傑作戦闘用自動人形♡ 床の中だって♡♡ 完璧に守って見しぇる♡♡♡」

 

「うーん、これはまさに『公私をガッチリ守ります』な自動人形。買ってよかった(確信)」

 

 今後の予定を軽く決めたシズクは、寝床をエロスにまかせて眠りについた。

 

 なお翌日、シズクが目を覚ました時。

 エロスは部屋の片隅で座り込み、壁に向かって体操座りで固まっていた。

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

「野盗のクズ共をぶっ飛ばしたいかーーーー!!」

 

『『「「いぇーーい!! がんほぉーーーーーー!!!!」」』』

 

 3日後の夜。ベルルンとポチコマを回収したシズクは街から離れた山中に居た。

 メンバーはシズクとティアに機械の従僕が3機。フルメンバーな上に全員が完全武装だ。

 

「まっ、今回は新入と新装備のテストも兼ねてるから軽く行こう。あと今日はこのまま4箇所襲う予定だからサクサク行くよー」

 

「あの、一晩で何箇所も襲おうとしてるのに、軽くとか言われても……」

 

「大丈夫だよティア。下調べは終わってるから。行ける行ける!!」

 

 日が落ちたばかりの山で、シズクは堂々と胸を張って言い切る。

 なんせ本日中に襲撃しようとしている野盗拠点は()()()である。

 これはこの3日間の間に、バララ・イーカに調べてもらった情報だった。

 

 まずは野盗に襲われた商人達からの陳情が3件。

 こちらは元農民や稼げなかったスカベンジャー達の成れの果て。

 

 ただしく野盗の集団だ。やはりこういう情報は商人が一番詳しいらしい。

 出来れば奪われた物資の奪還も頼むと言われたので、そこだけ気をつける必要がある。

 

「陳情までされるって、街の商人の代表みたいなポジだよね」

 

「はい。ものすごく頼りにされているのだと思います。バララ・イーカさん本人は迷惑そうでしたけど」

 

 きっと商人達も強(そうな)者の下で凌ごうと必死なのだろう。

 軍が当てにならないから。

 

 というかもう1つの方は、また兵隊さんの集団脱走だ。

 噂では一個小隊、約60人が逃げ出したとか。

 それも戦車と装甲スーツも持ち出されている可能性が高いらしい。

 つまりネギをしょった鴨である。

 

「それにしても余りにも治安が悪い。この地域の軍はどうなってるんだろう? この調子でじゃんじゃん脱走して欲しい」

 

 上の方が中抜きや横流しをして、末端は貧困しているのだろうか?

 だが軍を辞めるならまだしも装備を盗んで脱走。しかも民間の商人を襲うのは完全にアウトだ。

 遠慮も手加減もする必要はないだろう。というか公式に討伐依頼が出ている。

 

「ならば正義はコチラに有る。ぶち殺しても問題ない。……正義がなくても殺るけど」

 

「途中から本音が漏れてますよ? でも装甲スーツは美味しそうです」

 

「だよねー。1台で4000円ぐらいかな? 売ったお金でパインサラダを食べよう」

 

 思わずティアがシズクに突っ込む。

 しかし美味しそうなどと言ってる事から、ティアも考え方が大分シズクに汚染されている模様だった。

 

「……おいベルルンとポチコマ。ワタシ達の主はあんなこと言ってるが大丈夫なのか?」

 

『――大丈夫でしょう。前にも似たような事をやりましたので』

 

『そうそう。僕らはビューンて走ってガーって撃てば良いんだよ。僕はやったことないけど』

 

「……やったことないって、ダメじゃないか」

 

 シズクの発言に対して、付いてきている3体の従僕が意見を述べる。

 とはいえ誰も嫌がっては居ない。エロスも不安げなことを口にしているが、実際は戦闘が楽しみな様子だった。

 

「ではこれより襲撃作戦を実行する!! 方法は前と同じく上空からの奇襲。ベルルンとエロスは一緒に突入。ティアとポチコマは1kmまで近づいて待機、()()の準備をしておいて」

 

 指示を出したシズクは遠くにある工業施設跡を見据えた。

 最初の襲撃に選んだのは脱走兵の塒だ。建物は7階建てビルと倉庫が一棟ずつ。 

 北にビル、南に倉庫と隣接していて、正面玄関はどちらも西向きだ。囲む壁はない。

 

 ただし周囲は平地で見晴らしがよく、普通に近づくのは大変困難だろう。

 それに地面には地雷が埋められているだろうし、狙撃銃を持った見張りだっているはずだ。

 

「けど空から行けば関係ないんだよなぁ」

 

 だがその程度の障害は全く意味を持たなかった。

 シズクはデメキンを化現させると背に乗って飛び、前回と同じ様に雲に紛れて接近。

 

(おっ、屋上は2人だけか。よしサクっと殺そう)

 

 上空からビルの屋上に急降下し、即座に5.7mmの銃口を見張りに向けた。

 

 ――パスパスパスパス。

 

 夜空にサプレッサーで減音された銃声が4回。

 見張りの二人はあっさりと崩れ落ちた。

 撃ち抜いたのは首を2回ずつだ。確実に生きてはいないだろう。

 

(よーし、まずは倉庫に行くぞー)

 

 しかし前回と同じなのはココまでだった。

 シズクは熱光学迷彩で姿を消すと、ビルの屋上から飛び降りた。

 

 更に掛けている眼鏡の壁透過機能をオンにする。

 途端に眼鏡のレンズがモノクロに変わり、擬似的に可視化されたビル内の光景が写しだされる。

 

(7階…6階…5階……クリア)

 

 この眼鏡は特殊な音波を使い、壁を透視することが出来る隠密用アイテムだ。

 ドアを開けずに中の様子を見れる為、こういった斥候仕事では大変に重宝する。

 犯罪者御用達の素晴らしい小道具である。

 

(4階……おっ、リーダーっぽい人みっけ! あと大勢集まってる部屋は……3階にあった!!)

 

 シズクは握力で窓の縁に捕まりながら、1階層ずつ中の様子をチェックしていった。

 特に知りたかったのはリーダーと大勢が屯してる部屋である。これを両方見つけることが出来たのは幸いだ。

 

 それから地上に降りたら倉庫に近づき、隠れた場所で能力を使いベルルンとエロスを呼び出した。

 

「飛行能力に空間転移だと? ワタシ達の主はどうなってるんだ……」

 

「はいはい。お世辞はいいから。エロスは倉庫内の制圧よろしく。戦闘用自動人形の力を見せてね?」

 

「任せろっ!!」

 

 命令を貰ったエロスが張り切って大鎌を構える。

 シズクが眼鏡で透視してみると、倉庫の中は30メートル四方の空間が広がっていた。

 

 入って右の壁際には中型の装甲スーツが8機も駐機している。

 それから中央の奥に装甲車が4台と、そして左側に中型の多脚戦車が2台。

 かなり気合の入った野盗たちのようだ。

 

 入口は西側に一つしか無い。だが縦横4メートルのシャッターは開きっぱなし。

 天井の明りも全部付いていて、警備のためなのか複数の人間が居た。

 

 シズクは使っていた装備をエロスに手渡す。

 

「はいこれ、壁透視眼鏡と熱光学迷彩。便利だから使って」

 

「……中は全部で10人か。入口付近に2、中央に6、壁際1、最奥に1か」

 

 エロスも眼鏡で中を確認する。詰めている野盗は全部で10人だ。

 ただし襲撃されるとは思ってないのか、全員がダラダラと時間を潰していた。

 

 入口の見張りは椅子に座っておしゃべり。中央に集まっている者はカードに夢中。

 壁を背に酒を飲んでいる者もいれば、一番奥に座り込んでいる者もいる。

 

「……では行くぞ」

 

 エロスは熱光学迷彩を纏い、姿を隠すと突入を始めた。

 まず入口付近の二人を通りすがりに刃で両断する。

 中空から突如として大鎌が出現し、それが首を刈りとる姿は正に死神のようだ。

 

「まず2つ!!」

 

 一瞬で入口の見張りを片付けたエロスは、部屋の中央へ一気に踏むこむ。

 シズクから見ても凄まじい速度だった。これは人間では有り得ない体の動かし方が出来るからだろう。

 

 そうして速度を乗せて振るわれた大鎌の横薙ぎは、カードに興じていた6人の首を纏めて刎ね飛ばした。

 

「これで8つ!!」

 

 更にその首が地面に落ちる前に、エロスは壁際で飲んでいた一人に飛びかかった。

 突如起こった同僚の死に動揺して固まった敵を、勢いのまま上から下に大釜を振るい真っ二つ。

 

「9つ!」

 

 最後に最も奥に居た一人を、下から斜めに切り上げる。

 慌てて腰の武器へ手を伸ばした手ごと、左腰から右肩までを両断。

 

「……10ッ! よし、これで任務完了だ。フフ、この調子でどんどん行くぞ!!」

 

 こうして倉庫の中にいた10人は血の肉袋と化した。

 突入から全滅まで10秒かかっていない。あっという間の出来事だ。

 

 気を良くしたエロスは満足げに頷くと、大鎌を担いでシズクの元へ帰還する。

 その姿は今にも歌い出しそうなほど喜びに満ちていた。尻尾が有れば間違いなく大きく振られているだろう。

 

「終わったぞ!!」

 

「うわー、すごいね! この人数をこんな数秒で片付けるなんて。中々できることじゃないよ!!」

 

「ふふん、そうだろう。なんせワタシは最高の近接用自動人形だからな!!」

 

 そんなエロスを、シズクは賞賛を持って迎えた。

 笑顔でポンポンと肩を叩きながら、よくやったと声をかける。

 褒めて餌を与え実行させまた褒める。ただしく「犬の飼い方」であった。

 

「じゃあティアとポチワンに連絡いれよう。エロスはここで運搬の手伝い。ベルルンは外でビルから来る敵の対応よろしく」

 

『「――了解」』

 

 シズクは外をベルルンに任せ、倉庫内物資の回収を始める。

 まずは倉庫内の監視カメラを全て打抜く。それからティアとポチコマに連絡を入れた。

 

「あっ、もしもしティア? いま倉庫の制圧終わったから。予定通りによろしく~」

 

 ここまでは全て予定通りである。

 ビルの方に敵はまだ残っているが、しかしそちらは後回しだ。

 なんせ前回は屋上から順に殲滅して行った結果、敵に武装する余裕を与えてしまったのだから。

 

「欲しい装備で引きこもられるとか面倒すぎたんだよね。壊したらダメになるし。でもこれなら楽ちん!」

 

 なので今回は先に武装を奪う事にした。

 そう、逆だったのだ。

 

 『襲撃』してから『奪う』のではない。

 『奪って』から『襲撃』するのが正しい作法(略奪)だった。

 

 少なくとも、これなら取りこぼしは無くなる。

 シズクはその事を前回の襲撃でよく理解した。

 

「はーい、じゃあこの高そうな装備達は仕舞っちゃおうね~♪」

 

「これではどちらが盗賊か分からんな……」

 

 シズクの嬉しそうな声とともに、倉庫の端で化現された巨大なデメキンが口を開ける。

 多脚戦車、装甲車、装甲スーツ。その全てが飲み込まれていった。

 ガレージで待機していたロボ達が牽引フックを引っ掛け、コンテナを外したトレーラーに引っ張られて、戦車が一台ずつ消えていく。

 

「よしよし、これで利益は確定。では――殲滅をはじめよう」

 

 気を良くしたシズクはビルの方へと耳を澄ます。

 聞こえてきたのは建物が揺れるほどの轟音。

 

 ――楽しい楽しいパーティの始まりの合図である。

 

 

 

「……シズクさんから連絡が来たわ」

 

『わーい、ついに新装備のお披露目だー!』

 

 シズクがホクホク顔で戦車を仕舞っていた頃。

 ティアはポチワンのコックピットに座り、塒から1kmほど西の場所に潜んでいた。

 ここは周囲が林になっており、距離もあるお陰で向こうからは把握されない。

 

 ただしコチラからは向こうが丸見えである。

 戦車内部のモニターには高性能なサーモグラフィーによって、ビルの様子がモロクロで映し出されている。

 

 さらにシズクから送られてきたデータによって、ビルの構造と狙うべき場所も判明済みだ。

 

「ではやりましょうか。――尻尾部、ビーストマスター展開ッ!!」

 

『りょうかーい。ビーストマスター、展開はじめー!!』

 

 ティアが号令をかけると、ポチコマは新しい武装を解き放った。

 プシューと空気の抜けるような音がし、尻尾の先にあった半球状の装甲が前後に割れる。

 垂直に立つ尻尾に格納されていたのは、修復されたビーストマスター。拠点防衛用の重兵器型ロボットだった。

 

 もちろん元々あった武装も整備されピカピカである。

 近接した敵をハリネズミに変える多連装タレットガン、ロケットを撃ち落とす大型圧搾光砲(迎撃レーザー)

 そして戦車の装甲すら吹き飛ばす対装甲超圧搾光砲(対戦車ビーム)

 

 しかしそれだけではない。機体には更なる武装が追加されていた。

 ビーストマスターは4本ある内、下側の両手を尻尾の内へと()()する。

 

 途端に尻尾の左右に取り付けられていた、下向きの細長い箱が動き始める。

 装甲に覆われた全長1.8メートルにもおよぶ長身が、上部を軸にして回転。

 

 戦車本体にぶつからないよう後ろから270℃グルっと回り、前に突き出した状態でストップ。

 その状態で箱を覆う外装甲が上下に分離していく。

 

 ――中に収められていたのは、5mm口径のレールガンだった。

 

 戦車から戦闘ヘリまで、地上と空のあらゆる物を撃破可能な凶悪な武装だ。

 非戦闘中に傷つかないようにとコンシールド加工を施された砲塔は、身を覆う装甲板から解き放たれることで、その無慈悲な姿を白日のもとに晒しだした。

 

 ――それが尻尾の左右に1門ずつ。

 

 ビーストマスターの細腕では反動を受けきれないと判断された為、尻尾に直接取り付ける形になった武装である。

 

「距離1000。風はほぼ無風。目標速度なし。何か異常は?」

 

『電力供給ヨシッ! 砲塔動作確認ッ! ……もんだいなーし!!』

 

 ティアの命令に従い、ポチコマの操作によって砲身に命が宿る。

 電力を供給されたレールガンは5mmの砲弾を装填。

 尻尾の先ごと横回転し、更に上下角を調整して対象のビルにその砲先を向けた。

 

「分かってると思うけど、間違ってもシズクさん達がいる倉庫に当てちゃダメよ?」

 

『やだなー、そんなミスはしませんよー。この程度の距離なら間違いなーし!』

 

「それなら良いんだけど。……ならば目標設定よ。左砲塔射目標――野盗の塒ビル4階、()()()()()()。右砲塔射目標――同ビル3階、()()()()()()()()()()

 

『はーい! ――目標をロック。何時でも撃てまーす!』

 

 モニターに映るビルの2箇所に赤い丸が重なり、隣にLock!と文字が表示された。

 狙っているのは連絡のあった優先目標のいる場所である。

 

 そう、シズクは遠距離攻撃で敵を一掃しようとしていた。

 誰がやると思うだろうか。レールガンで()()()()()()()狙撃しようだなどと。

 ゴルゴだってやらないだろう。だが余りにも狂気的で――そして有効な手だった。

 

「なら最終安全装置を解除。――発射ッ!!」

 

『――ふぁいやー!!』

 

 万全の準備を確認したティアはついに発射を命じた。

 途端、流し込まれた膨大な電流が狂気と化してレールガンを活性化させる。

 

 砲身の内部レールからスパークが迸り、載せられた弾丸がローレンツ力によって一瞬で加速。

 圧倒的な速度で砲塔から飛び出した5mmの弾は、わずか1mm秒の時間で目標を穿つ。

 

 ――部屋に居た人間を一瞬で蒸発させた。

 

 窓から飛び込んだ弾丸は、寸分の狙いも違わず野盗の長を直撃。

 吹かせていたタバコごと彼の体を爆散させ奥の壁を吹き飛ばし、更に遅れてきた衝撃波が内部を粉々に破壊。

 

 部屋は巨大なスクリューでかき混ぜられたかの如き有様だ。

 拡大されたポチコマ内のモニターには、何十トンの鉄球クレーンでぶん殴られたようなビルの惨状が映し出されていた。大勢が屯していた方の部屋も似たような状態だった。

 

『すとらい~く!!』

 

「まだよ。次目標はビル一階正面の出入り口、及び()()()()

 

『目標確認! レールガン次弾装填開始~~!』

 

 だがまだまだ砲撃は終わらない。

 レールガンから過電圧の負荷で壊れたヒューズが薬莢にように排出され、新しいヒューズが弾丸とセットで再装填される。

 

 砲身は冷却のためカバーがクローバーのように4つに開き、水蒸気を拭き出しながら熱の排出を始めた。

 

 ――そして20秒後。

 

 再び撃てる準備が整った5mmレールガンは、哀れな野盗に向けて破壊の力を解き放つ。

 今度はビルの1階が撃ち抜かれ、衝撃とソニックブームで出入り口の野盗達を一掃。建物を支える主要な柱をへし折っていく。

 

 ――それが何度も繰り返される。

 

 遠くに見えるビルが倒壊を始めたのは、それから丁度1分後だった。

 

 

 

「……倉庫が襲撃されてるぞ!!」

 

「良いから急げ!! 装甲スーツを持っていかれたら大損だぞ!!」

 

『――来ましたね』

 

 レールガンを打ち込まれ揺れるビルから出てきた20人ほどの野盗。

 物資を持って逃げようと倉庫に向かう彼らに対して、ベルルンはたった1機で対峙していた。

 

 だがそこに悲壮感はまるでない。

 なぜならその身には、主に授けられた新たな力が宿っているから。

 むしろ簡単だと言わんばかりの堂々とした姿だ。

 

『――生まれ変わったこの身は、もはや野盗ごとき相手に成らないと判断します』

 

 強化改造を施されたベルルンの外見はかなり変わっていた。

 先ず目につくのは追加装甲に覆われた頭部と胸部。

 それから背中から伸びた3本のアームと、その先についている武装。

 

『――全武装展開。問題なし』

 

 右肩上部へ伸びたアームの先には多連装のマイクロロケットランチャー。

 右腰の横へ伸びるアームには対戦車バズーカ。

 そして左腰の隣アームにマウントされているのが20mmバルカンである。

 

 ベルルンはそのうち、バズーカと20mmバルカンを手に持った。

 

『――肩部レーダー起動。動体反応……20名』

 

 更にベルゼルガ型の特徴とも言える肩羽レーダーは取り外されていた。

 右肩部の羽は完全に撤去され、代わりに左肩部は黒い文様が描かれた、より高性能な羽レーダーに変更されている。

 

 電磁波、熱、音、動体、振動……複合された複数の探知機能によって敵の姿は丸見えだった。

 

『――浮遊装甲陣形:ファランクス』

 

 最後に周囲に浮かぶ計8枚の装甲板。

 1枚1枚が縦1.5メートル、横70cm。厚さは8cmに及ぶ鉄板。

 内4枚は体を守るように前方に浮かび、残りは左肩の後ろで羽にように広がっている。まるで鋼の堕天使の如き姿だ。

 

『――エネルギーも今までとは比べ物になりません』

 

 おまけに換装された動力は最高グレードの小型融合炉だ。

 有り余るパワーを全身に与え続け、頭部の迎撃用圧搾光砲を連発可能に。

 内蔵された重力操作装置は全ての動きを補正し、近づいた敵の動きすら阻害する。

 

 それはもはやラスボスすら務まりそうなほど超スペックの機体であった。

 

「おい、何かいるぞ!」

 

「なんだ? って、ただの警備ロボットじゃねぇか」

 

「ま、まて。なんかヤバそうだぞ!? なんだありゃぁ……」

 

 ビルから出てきた野盗たちが、ベルルンの姿を見て立ち止まる。

 ベルルンはそんな野盗たちを見据えると、その身を飾る武装を解き放った。

 

『――では、お持て成しを始めしょう』

 

 重力操作で右肩部の多連装ロケットランチャーを固定し一斉発射。

 9連装のランチャーから放たれたマイクロロケット弾が、野盗たちに降り注ぎ10名が爆散。

 

 混乱と痛みで悲鳴が上がった所へ、続けて右手に保持されたバズーカが撃ち込まれる。

 84mmの無反動砲だ。直撃した人間が爆ぜ、その周囲にいた6人が衝撃波で倒れた。

 

 それでも生き残った幸運な者には、左手の20mmバルカンをプレゼント。

 金切音を上げて発射される弾丸が体を引き裂き、血飛沫を上げながら命を刈り取っていく。

 なお、弾は内蔵の位相空間より自動装填されるので、この程度で弾切れする心配はない。

 

 ――こうして外に出てきた野盗達は、一瞬で全滅してしまった。

 

『――リロード。何とあっけない。おっと、中から撃ってきましたか』

 

 それでも野盗達はまだまだいる。

 彼らは爆炎に焼かれた仲間を見て外は不利だと悟ったのか、ビルの2階から銃撃を始めた。

 

 携帯用の軽機関銃に突撃銃だ。

 中にはRPGー7のような物を担いで、ロケット弾を飛ばしてくいる者までいる。

 

『――無駄だと判断いたします』

 

 だが前方に浮かぶ装甲板はその全てを弾く。

 なんせ8cmという厚みは、戦車の正面装甲とほぼ同じ厚さなのだ。

 小銃ごときでは相手にすらならず、20mmの対物弾ですら貫けない。ガキンガキンと金属同士の音を鳴らすばかり。

 

 まさしく戦車に生身で挑むようなものだった。

 ロケット弾も圧搾光砲に迎撃され、簡単に撃ち落とされてしまう。

 

『――ですがそろそろ。来ましたね』

 

 更にそんな野盗達が籠もるビルそのものへ、再び遠方より音を連れた砲撃が飛来した。

 轟音と衝撃波によってビルが揺れ、パニックに陥った野盗達が窓から飛び降りる。

 

『――逃しません。受けた命は「殲滅」ですので。……褒めて頂けるでしょうか?』

 

 そんな野盗たちをベルルンは冷静に刈り取っていく。

 全てを終えて合流するとシズクは全員をベタ褒めし、続けて「武器の訓練も兼ねて、これから毎日野盗を狩ろう!!」と宣った。

 

 2ヶ月後が経つ頃には、高知周辺から野盗はほとんどいなくなっていた。

 

 

 ――シズクは2ヶ月集中して野盗を狩りまくった。

 

 ・30mmを撃ちまくった。重火器取扱LvCを習得した。

 ・ティアとエロスで調教のコツを掴んだ。調教術LvCを習得した。

 ・男性化した体に慣れた。TSによる肉体動作のマイナスが消滅した。

 ・中型多脚戦車、装甲スーツ、装甲車、その他諸々を手に入れた。

 

 

 

   ◆◆◆   ◆◆◆

 

 

 

「――まずい、不味いわ!! これじゃ今月の贈り物が出来ないじゃない!!」

 

 高知の街の外縁部。憲兵隊士官用の宿舎で一人の女性が叫び声を上げていた。

 ブレザータイプの黒い軍服を纏った、第4憲兵隊副隊長を務める「カテジマ」という名の大尉である。

 

 だがしっかりとした服装とは真逆に、カテジマの顔は冷や汗に濡れ蒼白だった。

 その理由はたった1つ。このままでは上へ賄賂を送れなくなるからだ。

 

「あああああ、切り捨てられるのは嫌!! 汚職の責任を押し付けられるのもいやぁ!!!」

 

 カテジマは自らの将来を想像し、悲鳴のような叫びを上げた。

 しかし誰かに助けを求めることは出来ない。

 

 高知の軍は汚職塗れであり、誰しもが負債を押し付ける弱者を探しているのだ。

 頼った瞬間に食い物にされ、最後は笑いながら切り捨てられるだけだろう。

 

 かといって真面目な軍人を頼れば逮捕されてしまう。

 カテジマだって散々汚職に手を染め、甘い汁を吸ってきたのだから。

 このままでは確実にお先真っ暗だった。

 

「ていうか、なんで急に野盗共が全滅するのよ!? どれだけ手間を掛けて集めたと思ってるの!!」

 

 カテジマは軍を取り締まる立場にありながら、付近の野盗の元締めだった。

 憲兵という立場を利用してクズどもを集め、弱みを握り脅して手駒にしていたのだ。

 もちろん直接表に出ないようにして。

 

 そうして少しずつ増やしていった野盗こそ、カテジマの大事な収入源だった。

 街道警邏兵の巡回情報と引き換えに、収穫物の何割かを献上させていた。

 だがその手駒達は揃って消え失せてしまった。

 

「あの戦車も装甲スーツも、いずれは私の資金に変わる予定だったのよ? それを横から奪いやがって……ッ!!」

 

 大型の多脚戦車を持ち出せるように仕組んだ脱走兵も。

 その後任として装甲スーツを多数を持ち出させた脱走兵も。

 それらはたった一組のスカベンジャーチームに狩られてしまったのである。

 

 しかも装備は全て鹵獲され、現在はブイブイ乗り回されていると言う。

 途中からだんだん苛ついてきたカテジマは、机に向かって両手を叩きつけた。

 

「こうなったら、そのスカベンジャー”30mm眼鏡”のシズクってのを排除しないと。……そうよ、殺して奪えばいいんだわ!!」

 

 カテジマは悩みに悩んだ末、己の権力を利用して邪魔者を排除する事に決めた。

 その上でこっそりと財産を没収するのだ。

 

 なんせ元より野盗から鹵獲された装備は、自分の金になる予定だった物。

 ならば奪い返されても文句はないだろう。

 

「今ならまだ無茶も可能なはず。なら軍から指定依頼ってことで釣り出せるわね。平野は戦車があるしダメそうだから……、そうだ! 1級相当の無等級遺跡にでも放り込みましょう!」

 

 思いついた方法は騙して無等級遺跡に閉じ込めである。

 名目は野盗に奪われた物資の回収、とでも言っておけば良いだろう。

 あとは遺跡の防衛装置が勝手に始末してくれる。

 

「これなら手駒は必要ないし、最後は事故として処理できる……!!」

 

 自らの完璧な思いつきに、カテジナは表情を綻ばせる。

 そしてカテジマにとっては幸いなことに、使えそうな遺跡には宛があった。

 

 いざという時の逃亡先として調べた中に、とてつもなく危険な場所があったのだ。

 野盗の塒としては使えない場所だったが、こういう場合には役に立つ。

 

 カテジマは自らの頭脳をフル稼働させ、実際の計画を練り始めた。

 でもコイツの2つ名の”30mm眼鏡”って何よ。どんだけ分厚いのよ。などと思いながら。

 




自動人形はすごく迷ったけどテロッさんにしてみました。
黒紫でカラーがぴったりだからです。あと近接戦闘要員。

@以下キャラ設定
【名称】エロス 【型番】T-elos Re: 【制作】ヴェクターインダストリー社

【能力】頑強性B 破砕力A+ 精密性C 俊敏性B+ 応用性D
 ※A=一流 B=軍人 C=人並 D=苦手 E=貧弱 F=子供

【ルーチン】
 大鎌使いLvS:大鎌を扱う本機専用のプログラム(削除不可)。皆伝級
        剣術・槍斧術・軽業・重力操作の複合。2つ分のルーチン容量を占める
  CQCLvA:閉所での銃撃戦プログラム。達人級
   娼婦LvA:寝床で男を喜ばせるプログラム。達人級

【特性】
 生体式自動人形:肉の身体を持った人形。生体部品で修理可能
  純戦闘用人形:戦闘用の肉体構成。破砕力、精密性、俊敏性にプラス補正
  自動成長型AI:学習が可能な高機能AI
   素直クール:普段はクールっぽい。だがエロい命令にも素直に従う

【装備】
  熱振動徹甲大鎌:身の丈ほどの両刃鎌。超高温と振動で何でも切り裂く対物兵器
 携帯式小型電磁銃:右腰に収納された小型レールガン。7.62mm並の貫通力
  内蔵型単分子剣:左小手に内蔵されている単分子ブレード
   3連攻性防壁:ハッキングを3度防ぐユニット。相手にウイルスを流入させる

【備考】
 重力操作装置も内蔵。ただし大鎌の補助に特化している為、他の事には使えない。
 純戦闘用だが娼婦ルーチンをインストールされ立派な娼婦になった。


■■■   ■■■   ■■■   ■■■   ■■■


【パーソナルネーム】ベルルン 【型番】DVL001 【制作】米国IAI

【能力】頑強性B→A 破砕力C→B 精密性B 俊敏性D 応用性C

【特性】
 重装警備ロボ:戦闘が前提のため頑丈。頑強性にプラス補正
 自動成長型AI:学習が可能な高機能AI
   冷静沈着:いかなる状況でも冷静であろうとうする性格

【ルーチン】
 銃器取扱LvB→A  :銃器を扱うプログラム。達人級
 奉仕LvC→A    :家事炊事などを行うプログラム。達人級
 new! 重火器取扱LvA:重火器を扱うプログラム。達人級
 new! 重力操作LvB :重力を扱うプログラム。9mmまでストップ。熟練級

【装備(備付)】
 両手部5指マニュピレータ :人間のような5本の指。細かい作業が可能
 new! 両腕部内蔵7.62mm機銃:バトルライフル用の7.62mm弾を発射する内蔵銃
 new! 左肩部高性能アンテナ:各種センサーを複合した羽根型のレーダー
 new! 頭部迎撃用圧搾光砲 :ロケットやミサイルを迎撃するレーザー
 new! 3連攻性防壁    :ハッキングを3度防ぐユニット。相手にウイルスを流入させる

【new! 追加外装(着脱可能)】
 頭部防護バイザー:頭部とメインカメラを保護する装甲バイザー
 着脱式胸部装甲 :着脱式の胸部用追加装甲
 背部取付型兵装パック:重力式マウントアームに武器を3つの保持出来る
   →20mmバルカン:分間300発撃てる6銃身のガトリング。内蔵弾は1200発
   →84mmバズーカ:無反動砲。対装甲兵器。内蔵弾は12発
   →連装ランチャー:9発同時に撃てるマイクロロケット発射機。内蔵弾は45発
 追尾式浮遊装甲板:縦1.5m横70cm厚8cmの浮遊装甲。8枚セットで自由に動かせる

【備考】
 鹿角型の融合炉&重力操作装置+アイギス用の強化外装でパワーアップ。
 他にも浮遊装甲など多数の強化が施されている。
 ロボが増えたので運転と整備修理ルーチンは削除された。


■■■   ■■■   ■■■   ■■■   ■■■


【パーソナルネーム】ポチコマ 【型番】HAW206C 【制作】剣菱重工

【能力】
 頑強性S 破砕力S 精密性C 俊敏性C 応用性D

【特性】
 大型多脚戦車:6本足の多脚戦車。湿地帯以外で速度が落ちない
 自動成長型AI:学習が可能な高機能AI
  ポジティブ:明るく元気に振る舞う性格

【ルーチン】
 運転LvC→A    :乗り物を運転するプログラム。達人級
 重火器取扱LvB→A :重火器を扱うプログラム。達人級
 new! ハッキングLvA:ハッキングを行うプログラム。達人級

【装備】
 両腕部内蔵重機関銃  :12.7mm弾を発射する3銃身ガトリング
 本体内蔵照準妨害装置 :赤外線誘導、レーザー照準を妨害する装置
 new! 尻尾備付型獣王改 :尻尾に内蔵されたビーストマスター。普段は装甲に覆われている
  →大型リベットガン:左上腕備付。一度に16発の釘を飛ばすリベットガン
  →大型圧搾光砲  :右上腕備付。飛翔物迎撃用の2連装短距離レーザー
  →対装甲超圧搾光砲:頭部口内備付の対戦車ビーム。戦車の正面装甲をぶち抜ける
  →偏向力場発生装置:不可視のバリアー。範囲は狭いが30mmでも防げる
  →EMPパルサー :電磁パルスを発射する対機械兵器
  →大出力テーザー :ワイヤー付きの針で電流を流し込む装置。警備ロボすら焼ける
  →5mm口径レールガン:尻尾に固定された2門の超威力砲。コンシールド加工が施されている

【備考】
 尻尾にビーストマスターを埋め込まれてパワーアップ。ものすごい火力を手に入れた。
 なお操作は全てポチコマ側から行われる。ハッキングルーチンはティアの補助用。
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