凄そうなチートスキルもらって転生したけど何もなかった。 作:OC
よろしくお願いします。
転生といえば、異世界で特別な存在になることだと俺は思う。
不満のある現状を打破し、優れた才能を手に入れて生まれ変わる。
その過程で主人公は女性に好かれたり、他人に一目おかれたり、権威ある立場を手に入れる。
別にそれが全てというわけではないが、俺が転生モノに求めるのは端的にいえばそういうものだ。
物語の中でくらい、トントン拍子に全てが上手くいくっていう幻想くらい持ってもいいんじゃないかってこと。
とはいえ物語だって多くの場合は山あり谷あり、失敗だって当然する。
むしろそれが物語を面白くもするんだからな。
でもさ、普通それって、成功というカタルシスを得るための踏み台みたいなもんだろ?
成功しても何もありませんでしたっていうのはそうそうない。
だって何も面白くないじゃないか。
そして、現実はそんな風にうまくはいかない。
失敗ばかりの理不尽が人生だ。
でも、時には誰の目から見ても成功だっていうものはある。
だから物語ほど因果関係はすっきりしていなくたって。
人生ってのも成功と失敗は裏表……のはずなんだ。
はず、なんだけどなぁ。
どうしてか、俺の
問題はそれが決して失敗というわけではないということだ。
あくまで成功。
異世界に転生し、前世よりも恵まれていることに違いはない。
でも、なんか惜しい。
そう、俺の人生はとにもかくにも、何もかもが“惜しい”人生何じゃないかと思うんだ。
@@
気がつくと、俺は色とりどりの宝石みたいな石が埋め込まれた空間にいた。
ゴツゴツとした岩肌に宝石――魔石がまじり、なかなかに壮観な光景だ。
警戒しながら周囲を見渡し、危険がないことを確認すると一息をつく。
同時に、手にしていた帰還用の魔道具である羽根ペンを懐にしまった。
「当たりみたいだな……」
そこは、一言で言えば明らかに何か良さげなものがおいてありそうな空間だ。
ダンジョンの転移装置から飛ばされた場所としては、最上級の当たりと言えるだろう。
下手すると、目の前に俺でも勝てないような魔物が鎮座していて即襲いかかってくるなんてこともあるからな。
見れば、中央には明らかに豪華な感じの台座と、一本の剣があった。
その剣は柄から何からとにかく豪華な感じで、鍔の部分にはきれいな宝石まで取り付けられている。
明らかに、伝説の剣としか言いようのない見た目だ。
俺はそれに近づいていく。
トラップのようなものは無いようだし、これはおそらくこの剣がこの部屋の全てだろう。
ただ、だからこそこの剣にはある問題がある。
この世界において、時折ダンジョンで見つかった剣が抜けないという問題が発生する。
こういう伝説の剣にありがちな問題なのだが、簡単にいえば適正がないと抜けないのだ。
ほら、伝説の剣って勇者が抜くものだろ?
だからこの世界にも、そういう適性がないと抜けない剣ってのがあちこちにあるんだ。
中にはそれを観光の名物にしてるところもある。
抜けたらこの剣はあなたのものですよ、っていう。
俺はやらないけど。
何故やらないかって?
答えはとても単純だ。
俺は目の前の剣に手をかけると、勢いよくそれを、
すぽっと引き抜いた。
それはもう、気持ちいいくらいあっさりと。
「やっぱりな」
解っていたことだ。
こういう剣、俺なら簡単に引き抜けるって。
だから、そういう観光の目玉になってる剣を俺が引き抜くことはできない。
だって長年そうやって目玉になってるものを引き抜くと色々と面倒なんだ。
地元の人達が。
そういう面倒は御免なので、俺はそういう見世物にされている伝説の剣は抜かないことにしている。
他にも理由はあるけれど……
「ついでに魔石も回収してくか」
とにかく、今は剣を回収して、ついでに魔石も回収していく。
魔石ってのは呼んで字のごとく。
魔力を含んだ石。
魔道具の燃料や素材、時には魔術の媒体にも遣われるこの世界の超便利リソース。
これだけアレば、結構な値段で買い取ってもらえるだろう。
伝説の剣の副産物としては、とても有用だと言える。
伝説の剣はこれから鑑定してもらわないといけないので、俺は手持ちの剣で魔石を削り取りにかかる。
そう、鑑定だ。
こういうダンジョンで見つけたものは、ギルドの専任鑑定士に鑑定してもらわないと値段をつけられない。
これが曲者なのだ。
俺が見世物の剣を抜かないもう一つの理由、それは――
@@
「はい、こちらが推定伝説の剣……正式名称“魔竜滅紫剣”の査定額になりまーす」
「どれどれ……って
――そして、ある程度想像してはいたものの、無慈悲に鑑定士から告げられた言葉に俺は思わず不満を叫んでしまった。
あれから、探索を切り上げて戻ってきた俺は、早速伝説の剣をギルドに持ち込んで鑑定を依頼した。
ギルド、異世界によくある冒険者のたまり場。
依頼をこなしたり、取ってきた素材を売却したり、仲間たちと適当に屯したりする場所。
俺はその機能の一つである鑑定をしにきたのだ。
もちろん、伝説の剣……とついでに魔石を売っぱらうために。
「あ、こっちが一緒に持ち込んだ魔石の査定額でーす」
「……うわ、伝説の剣の十倍」
「凄いんですよこの魔石! 純度が最上級レベルなんです。これ全部売り払えば一ヶ月は暮らせちゃう!」
「伝説の剣を売り払えば豪邸が立たないかなぁー!」
「無理でーす」
笑顔の鑑定士ちゃん……見た目十四くらいのちょっと癖のある長めの紫髪で、一房だけまとめた髪がチャームポイントだが、実年齢不明……がバッサリと俺の一言を切り捨てる。
俺が冒険者になった頃からお世話になっているからって、こいつほんま……仮にも俺はお客様やぞ!
こほん。
「ち、ちなみに、理由を聞いておこうか……?」
俺は、気を取り直して本命だった剣が何故ただの長剣程度の査定額にしかならないのかを聞く。
これでなんか理不尽な理由で査定額減らされてたら文句言ってやる。
まぁ、こいつに限ってはそんなこと絶対にありえないだろうけど。
「いやだって」
「だって……?」
「性能的にほんとに普通の長剣と何ら変わらないんですもん……」
「ええ……魔道具じゃないのこれ……」
魔道具ってのは、一言で言えば普通の用途に加えて何かしらの効果を伴った道具だ。
マジックアイテムなんて言い換えてもいいが、この世界では魔道具で通っている。
剣の場合、まず普通の剣としての用途の他に、剣としての用途では絶対に果たせない効果が付与されている事が多い。
剣先から火の玉を生み出したり、とかな。
「一応、魔道具ではあるんですよ! 真ん中の宝石みたいなのとか、魔力を通りやすくする石ですし」
「あ、これ宝石じゃないのか……」
「まぁ、魔力を通りやすくするというだけで、後はただのガラス玉程度の価値しかないので査定にはあんまり影響しませんね……」
正直そこに関してはマジで宛が外れた。
正直に言えば伝説の剣が対した価値がないことは想定していたが、鍔の石だけは高価なものだろうと思っていたのだ。
だってめっちゃ綺麗なんだもん。
魔石ですらないとか、想定外もいいところだ。
机の脇に寄せられた――鑑定士ちゃんいわく最上級の質の――魔石と比べても遜色がないくらいピッカピカなんだけどな。
「ってか、魔道具ならいいじゃないか。なんでそこが査定に響かないんだよ」
「この剣は、
「……あっ」
スキル。
それはこの世界における最重要と言っても過言ではない代物。
スキルがあれば、見た目子供な幼女が斧を振るうとか、そういう創作の中だけのシチュエーションが現実のものとなるのだ。
人間は、そういうスキルを生まれた時から大抵一個は所有していて、物心がつくと自然とそれを把握する。
他にもスキルは、魔術などを使って武器や防具に付与することもできる。
そして目の前の剣は、スキルが既に付与された剣だ。
「――効果は?」
「“魔竜討滅S+”。人類に害なす悪竜に対し、威力上昇効果……です」
「魔竜……って」
概ね想像はついていたが、聞けば頭を抱える他はない。
だって、せめて、もう少し――
「……魔竜って、そんなの存在したのもう
――もう少し、使い道のあるスキルだったら。
まだ査定額もアップしただろうに……
「一応、例を見ないユニークスキルではありますから、好事家が買うかもしれないので長剣の相場にしてますが」
「……ああ」
「まだスキルが付与されてない方が価値がありますよ、この剣」
「…………だろうな」
俺はそんな鑑定士ちゃんの結論を聞いて、その場に崩れ落ちるしかなかった。
@@
今からずっとずっと昔の話。
人類は存亡の危機にあった。
人に害なす存在、魔族、魔竜、魔物。
そういった存在が、日夜人類を攻撃していたのだ。
伝説の剣と呼ばれるものは、そういった時代に作られた剣。
魔竜討滅というスキルも、S+という高いランクも、当時であれば計り知れない価値生んだだろう代物だ。
しかし、今の時代に魔竜は存在しない。
魔族の王は討伐され、魔族もすっかり人間と同じこの世界に暮らす普通の種族に成り果てた。
魔物だって、脅威度の高い魔物はもうダンジョンの中にしか存在しない。
今では、伝説の剣の価値なんてただの剣と何ら変わらない。
どころか、伝説の剣が伝説たる所以のせいで、むしろ価値は落ちる始末。
観光の名物になってる剣だって、歴史的な価値はともかく剣としての価値など今やぼんくら同然。
あまりにも引き抜くに見合わないのである。
それを引き抜く適正もまた、この時代には無用の長物だ。
そう、俺には伝説の剣を引き抜く適性がある。
これは俺の持つスキルによるものだ。
その名も、
勇者適正SSS+。
あまりにも高すぎる適正と、一見するとチートっぽいスキル名。
だが、そのスキルは平和になったこの世界においては、
特に何もない、ただの名前負けスキルでしかなかったのだ――