キラキラ道場破りツアー☆   作:湯瀬 煉

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エミヤオルタの過去が開帳されたので、書きたくなりました。
よろしくな、ノミヤ!!


正義の味方

 キンキンキンキンキン!!

 

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!

 

 特異点に刃がぶつかる音が鳴り響く。

 両者ともにルールは理解したから、戸惑わない。片方は疑問を挟まず、片方は考察を組み上げながら、しかしどちらも、戦闘を止めるつもりは欠片もないらしい。

 

「……ふむ、観客は一人のみか。しかし、戦わせるためだけに死者召喚まで成し遂げてしまうとは」

「そんなにこの闘技場の仕組みが気になるかね。仕事前になぜ、どうしてと細かい疑問を持つこと事態、あまり良いこととは思わないが?」

 

 赤い弓兵が尋ねれば。

 

「仕事、か。その口ぶりからして、このような時代には慣れているのかな? 私はこうした呼ばれ方は初めての事ゆえに、少々困惑しているところなのだ」

「よく言ったものだ。こちらの攻撃を悉く撃ち落としながらいうことではないだろう」

 

 眼鏡をかけた美上丈の男は苦笑する。

 

 眼鏡の男は笑顔のままに、弓兵から振り下ろされた()()を剛剣で受けながしながら、相手の胸部へ掌底突きを繰り出した。

 直撃。そのまま弓兵は吹き飛ぶものの、瞬時に双剣が弓矢へと早変わりして、五本の矢が音速を超えて連射された。

 

 弓兵――英霊エミヤは、この状態について深く考察することを早々に諦めている。そのようなことに気を取られていては敵わない相手であると判断したゆえに。通常、英霊は同等の神秘を保有する攻撃でしか傷付けられない。しかしこの男はそれが可能なのだ。恐ろしいのは、魔術でなく、総合的な戦闘能力と恐ろしい先読みの能力のみで、こちらの攻撃に対処しているというところ。

 眼鏡の男――ギルベルト・ハーヴェスは、この世界の作られた目的やルールを朧げながらに理解し始めていた。そして相手もまた、同じ立場にある事。しかし別世界の存在であること。そこまで炯眼で見通した上に、それらすべての要素を考慮する必要がないと理解した。

 

 

 エミヤが着地しようとした瞬間、両手に握る干将と莫邪が爆ぜる。

 投影魔術(レプリカ)とはいえ、大した威力の攻撃である。しかし一番の問題は、相手がどうやってその事象を起こしたのかが全く分からないということ。

 

 見えない攻撃――何らかの魔術なのだろうが、タネがいまだに掴めない。

 むやみに攻撃を続けても打開策はなく、だが止まれば次の瞬間―――

 

 地面が爆ぜる。

 地雷でも設置してあったかのような威力だが、火薬のにおいは欠片も感じなかった。

 

「ちッ」

 

 体勢を崩されながらも突撃して来た相手の剣を、新たに作り上げた干将と莫邪で弾いた。更に勢いを殺さずに回し蹴り―――長身を数メートル先まで蹴り飛ばすことに成功する。

 

「創生せよ、天に描いた星辰を――我らはきらめく流れ星」

 

 だが問題なしと。

 相手は悠然とこちらへ歩み寄る。ならばとこちらが駆け寄り心臓、喉へと刺突を繰り出せば、刃の軌道が勝手に曲がり、蹴りが鳩尾に刺さる。

 相手の表情は変わらず笑顔のまま。

 優勢なのは相手のはずだというのに、逆転を期待するようにこちらの動作をつぶさに観察し、爛々と目を輝かせている。

 

「いざ並べ、死後裁判は開かれた。

 眠りに微睡む魂魄ならば、我が法廷に凛と立て。

 公正無私の判決に賄賂も媚態も通じはしない。

 宿業見通す炯眼は、清白たる裁きのために重ねた功徳を抉り出す」

 

 ゆえに攻撃。攻撃攻撃攻撃攻撃――攻撃の手は緩めない。

 負けじと受け止め、受け流し、回避しながら反撃していくのだが、まったく重要器官は攻撃出来ない状態だった。

 斬撃の嵐、剣舞はそれこそ、舞のように止まらず、流麗さと苛烈さをもって進行していく。

 

「汝、穢れた罪人ならば禊の罰を受けるべし。

 地獄の責め苦にのたうちながら、苦悶の淵へと沈むのだ。

 汝、尊き善人ならば恐れることなど何も無し。

 敬虔な光の使徒に万代不易の祝福を」

 

 キンキンキンキンキン――

 

「これぞ白夜の審判である。

 さあ正しき者よ、この聖印を受けるがよい。

 約束された繁栄を極楽浄土で齎そう」

 

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン―――

 

超新星(metalnova)――楽園を照らす光輝よ(St.stigma)、正義たれ(Elysium)

 

 ギルベルトの(星辰光)が本格発動する。

 

 ギルベルト本来の音速剣舞、そして不可視の地雷原、見えざる衝撃、不可解な斬撃の歪み……。一人の英霊を追い詰めるのに、これだけあれば十分過ぎた。

 さらに、未来が見えているかのような牽制と先制、綺麗にはまるカウンター。

 

「貴様……何者だ?」

 

 思わず問いかけずにはいられない。

 自分の力を過信しているわけではないが、この状態は異常といえる。

 

 強いとは思っていた。

 ただの人ではないとも感じていた。

 しかし、ここまで手が届かない存在だとは思えなかった。

 

 剣の英霊のように華やかな剣技と豪快な魔力放出があるわけではない。

 槍の英霊のような俊敏さも必ず相手を貫く呪いがあるわけでもない。

 弓の英霊のように、圧倒的な物量で蹂躙してくるわけでも、

 騎馬の英霊のような縦横無尽の機動力があるわけでも、

 魔術の英霊のような神域の時空間操作でもなく。

 狂戦士の英霊のようなタフネス、パワフルには遠く及ばない。

 

 だが、それでも。

 目の前の男は、英霊を前に優勢を保ち続けている。

 

 対してギルベルトが浮かべるのは、変わらない笑顔。彼は少し照れくさそうに告白する。

 

「いや、そう大した者ではないのだよ。

 分かりやすくいえば強化人間、人間兵器というべきかな。

 ああ、私個人が何者かと問うたならば―――」

 

 放たれた赤原猟犬(フルディング)は、射手が無事な限りはいくらでも標的を襲い続ける。

 ゆえに必殺と射たのだが。

 

 結果は想像以上。

 数回弾くともはや自動で剣はギルベルトを外れ、相殺しあって爆散した。その間に放った矢はギルベルトの肩などを貫いたはずだが、全く気にする様子はない。普通に抜いて、普通に投げ捨てた。

 

 そうだ。一番恐ろしいのはこういうところだ。

 脇腹、肩、或いは頬を掠めたり、太ももを浅く切ったり。傷をつけることに何回かは成功している。だが相手は決して止まらないのだ。

 本来人にあるべき、躊躇いや恐怖という概念を欠損している。

 

「私は光を尊ぶ守護の盾――"正義の味方"に成りたいと希う者。

 ここには()()存在しない楽園の守護者――『審判者(ラダマンテュス)』とでも呼んでほしい」

「正義の味方……だと……?」

 

 それはエミヤの原初の願い。託された理想であり、自分が目指したモノではあるものの。

 その本質が九十九人を助けるために、一人を犠牲にするものだと彼は知っている。その夢が地獄だと知っている。

 

 だが――彼は見誤っている。

 ギルベルトという男は、それ以上の地獄であるのだから。

 

「そうとも。

 君の戦闘技術は大変すばらしいが、しかし君自身の精神はすり減っているように見える。

 君の努力は結局のところ殺人技術に過ぎず、ならばこそ、誰かのためにと振るっても、利用しつくされ、最後には君が守りたかった者らによって使い潰されてしまうだろう。恐らくだが、君の立場は一般に汚れ仕事と呼ばれるものなのではないかな? 君は大衆のために尽くし、しかし大衆からは後ろ指を指されている。ゆえに君は、そのように摩耗してしまっている……と、そのように見えるのだが。

 善人とはそういうものなのだよ。他人のために努力して、報われることなく、正当な評価すら下る前に理不尽な逆襲に遭ってしまう。

 それでは勝者が哀れだろう? 努力が出来て、清廉で、そんな英雄が、何の努力もしていない者に脅かされるなど道理が通らないではないか」

 

 ゆえに、勝者に報いを。

 努力すれば必ず幸福が訪れると、人類に知ってもらうために。

 

「だから私は、客観的な評価システムを作りたい。

 その者の学力や運動成績から算出した基礎能力、態度に基づいて基礎点を与え、朝起きればプラス何点、夢を持てばプラス何点、努力すればプラス何点、逆に寝坊すればマイナス何点、夢を諦めればマイナス何点、不正をすればマイナス何点……と常住坐臥を評価し、点数に応じて報酬、もしくは罰を与えるのだよ。

 そうすれば面倒な対人関係も解消しよう? どちらが上で、どちらが下かは点数を見れば分かるのだから。努力した人間が不当な目に遭うことも無いはずだ。なぜなら、努力を欠いている人間にはその程度の価値しかないのだから。

 全人類、平等に。

 正しくて、清廉潔白で、努力家で、誰かのため、より希望溢れる未来のため、進める人間に報いが降りるように。

 才能、立場、出身……そうした()()()()()()は許さないしさせはしないとも」

 

 ギルベルトの言葉を聞いたエミヤは、思わず固まっていた。

 

 言っていることがまず正気ではない。

 自分のように、疑いもせず馬鹿な理想に打ち込み続ける人間をのみ尊び、途中で折れたり諦めたら価値が低いから見下されて当然――という社会を作りたいといっているのだ。

 一切気持つを緩めず、自分の歪みにすら無頓着なまま。目指したならば貫けというのだ。

 

 眩暈がする。

 なんて、なんて馬鹿げているのだろう。

 

 たとえばつまり、『正義の味方』として排除しなければならない大切な人を救うため、ただ一人の男としてその少女のために戦うという行為を、愚行と見なしマイナス評価をつけることであり。

 たとえば世界平和のために戦い続けた男が、目の前の家族との幸せをのみ考えることに唾を吐く行為であり。

 

 努力が報われるといえば聞こえはいいが、実際のところは全人類を振るいにかけているだけだろう。

 ギルベルトは正義『だけ』の味方であって、人々を助ける『正義の味方』では決してない。

 

 

 知らない99人を助けるのではなく、理性的な判断基準の元、有能な人材のみ助けるのがギルベルトの理想なのだ。

 

「どうかね。君にもこの理想は、共感して貰えると思うのだが」

 狂気じみた理想を掲げつつ、それを何とも思わない精神。欠片も間違ってはいないという確信に満ちた表情。

 ……総合して、相手はおかしい。

 

「いいや、全く。残念ながら、仕事に私情は持ち込まない主義でね」

 

 ゆえに出るのは拒絶だ。

 この男に乗っかってしまうのは、あまりに恐ろしいし──自分のような贋作(捻くれ者)を肯定するつもりは毛頭ない。

 

 

 右手を左胸へと当てる。

 己の拍動を感じるように。

 

 ──心の中で、撃鉄が下ろされた──

 

 

 I am the bone of my sword.(── 体は剣で出来ている)

 

 Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で 心は硝子)

 

 I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗)

 

 Unknown to Death.(ただの一度も敗走はなく)

 

 Nor known to Life.(ただの一度も理解されない)

 

 Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う)

 

 Yet, those hands will never hold anything.(故に、生涯に意味はなく)

 

 So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.(その体は、きっと剣で出来ていた)

 

「なるほど」

 

 ギルベルトは感心する。

 

 それは固有結界。

 自らの心象風景を現実に展開する大魔術である。

 

 英霊としての切り札──『宝具』をこの弓兵は持たないが、ある意味ではこれこそ、彼の『宝具』かもしれない。

 

 無限に広がる荒野と、そこに刺さった無数の武器。

 数多の剣を内包したその世界こそが、英霊エミヤの人生そのものである。

 

 恐ろしいのが、荒野に突き刺さる武器のいくつかは宝具であること。彼自身は宝具を持たないが、他人の宝具を見て再現できるということである。

 

 だがギルベルトは変わらない笑顔で荒野を見渡すのみ。決して気圧されない。

 

「仕方がない。私がこの理想を語ると、皆、君のような顔をする。だが止まらんし、私は間違っていると思わない。

 実力行使といこう。敗者が勝者に屈服するのは、当たり前の道理なのだから」

 

 

 

 

 

 数十分後。

 そこには、倒れたギルベルトの姿があった。

 しかしエミヤの姿も、また存在しない。

 

 彼はそういうものだ。

 誰も知らない、見ない。静かに人を殺して、静かに人を助ける。

 

 だが、それでも。正義の味方は報いを与えることなく、顔も名前も知らない誰かのために身を粉にして戦い続けるのだ。

 それが、彼らゆえに。




桜ルートの衛宮をギルベルトが見たら「(´・ω・`)」って顔しそうだなって。
むしろ優先して桜を攻撃してそうですよね。
だからお前は糞眼鏡なんだぞ、糞眼鏡。
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