呪霊とか永劫破壊の設定は細かく考えずに読んでください…………。
黄金の殿堂。
絢爛の極みであり、しかし不吉な予感を感じさせるような“城”の中に、二人はいた。
「私の城……を再現したものか。よく出来ている。可能ならばこの世界を作った本人とも是非、競ってみたいものだが……今は卿が相手のようだな」
「そう寂しいこと言わないでよ。前座で終わるつもりなんて無いからさ」
金髪のなびかせた黄金の獣──ラインハルト・ハイドリヒ。
そしてツギハギのような肉体の呪霊──真人。
「無論」
相手の言葉に、ハイドリヒは口角を上げる。
それでこそ、と歓迎するように。
「私は総てを愛している。卿もまた、我が愛を向ける対象だとも」
その一言が放たれた瞬間、空気が緊迫した。
ただの言葉だというのに、偽りの城が震え、奮っている。主の再臨を言祝ぐように、その輝きを増していく。
光とはすなわちエネルギーであり、熱を放つもの。
ゆえに“それ”は、一等星のような光と熱を放出しながら担い手の手に握られた。
神殺しの槍──
今戦闘をしていたのが真人以外の呪霊だったならば、この時点で決着が着いてしまっていただろう。
真人という呪霊は唯一、魂について『知覚』している呪霊である。
ゆえに理解出来た。防御が出来た。
だが結局、防御したところでどうにもならない攻撃というものは存在する。
「はは……!! なんだよ、それ!!」
真人の身体が吹っ飛ばされていく。
理由は単純で明快。ハイドリヒの神槍が原因である。
彼の聖遺物──『聖約・運命の神槍』は、存在がもはや一つの世界として成立してしまっている、選ばれし存在にしか触れられない武装。その穂先が向けられただけで、脆弱な存在強度では魂ごと消滅してしまうだろう。
事実、特級呪霊である真人ですら呪力で魂を守らなければ蒸発するところだったのである。ただ吹き飛ばされただけで済んだのはむしろ、幸運だったというべきだろう。
だが、戦闘はまだ始まったばかり。ましてハイドリヒの強さは、強力無比な武器のみに依存するものではない。
「卿、魂を知覚しているのか」
その言葉と共に槍が振り下ろされる。
咄嗟に両腕を交差させ呪力で防いだ真人だったが、一撃の重さに足が床に沈む。
戦いというジャンルにおいて、彼に不足しているものなど存在しない。
しかし真人は成長途中。強敵との闘いの中でより強くなっていく。
「俺は
肉体の形は魂に引っ張られる。
自覚的に自らの魂の形を変形させれば、連動して肉体の形も変わるものだ。
魂の形を知っている真人は、魂の形状を操作できる。
ゆえ、たとえば手のひらから槍を射出することも可能であり。
放たれた二振りの槍がハイドリヒの眼球へ迫る。普通ならば、柔らかい目玉など容易く貫かれるだろう。そのまま脳まで貫きかねない。
しかし結果は異なる。槍は目玉に受け止められて静止する。だが驚かしには充分であり、その間に真人は防御を解き、相手の腹部に掌を当てる。
「──“無為転変”」
真人の術式、無為転変。
その効果──魂の形状操作。その術式効果は自分のモノのみに留まらず。
頭部変形。それだけで人は死ぬ。
だがそれは“常識的な”話だろう。
真人は脅威度を見誤っている。
いや、正確にいえば、彼のいた世界に、この獣と同次元の脅威が存在しなかったゆえに。測ることなど出来やしなかったのだ。
「なんだ──? 魂が」
ラインハルト・ハイドリヒを構築しているのは数百万にも及ぶ魂。
そのうちの一つに干渉したところで─────。
「卿」
顔を上げる。
その先には、満面の笑みを浮かべたハイドリヒがいて。
次の瞬間。天地が入れ替わる。高速で回転する視界に認識が追い付かない。
激痛、激痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛………死。
「私を退屈させるな」
吹き飛んだ先で槍を構えている男が見える。
次の瞬間、五体が弾け飛ぶような衝撃を受けて更に身体が吹き飛ぶ。
ただ槍で殴られた衝撃とは考えられない。
「しょうがないなっ!!」
ならばと隠し持っていた人間を変形し圧縮したものを取り出し、三メートルにも拡大したり、腕足を巨大化させたりと改造して展開した真人が見たのは、武装した骸骨の兵隊。
「奇しくも。考えていることは同じだったようだな」
数百もの鉛玉が撃ち込まれては、ただの改造人間たちでは役に立たない。
骸骨の兵隊……真人の改造人間と同じく、魂を操作し手駒とした者らの軍勢ではあるが、決定的な違いは戦闘力の違いだろう。
真人が手をかけたのは一般人たちであるが、ハイドリヒの軍隊は紛れもなく、過酷な世界大戦時に軍隊に所属していた者たちである。
唯一、防御を完璧に済ませていた真人にも痛烈な爆撃が直撃する。
兵隊、戦車隊……。
「仕方ないな……。
多重魂」
複数の魂を掛け合わせ、生み出すのは多重魂。そして次の瞬間。
「撥体!!」
勢いよく射出。兵隊、軍隊をぶち抜いてハイドリヒに迫る。
「ほぉ……」
直撃。
ハイドリヒの身体が数メートルにおよび後退する。
ならばと。真人は更に押し込むことを決めた。
今こそ攻め時なれば、ここで畳み掛けるまで。
「領域展開」
口の中で結ばれる掌印ゆえ、妨害される心配もない。
そして効果は必殺必中。
「自閉円頓裹」
“無為転変”を非接触で発動させる。
数百万の魂──その総てへと手を伸ばしてしまえば、相手も殺せるだろうと。
無理、不可能、ありあない───そんなモノ、越えてみせると不敵に笑って。
見事、領域が消し飛ぶ。
理由はやはり、単純だ。
真人と同じように異界を展開した者がいる。
「
ラインハルト・ハイドリヒ。
黄金の獣。
「
世界大戦時に数多くの非人道的行為を行い、いまだに世界から恐れられる第三帝国の幹部――というのは彼の顔の一つに過ぎない。
聖槍の担い手である、というのも然り。
彼こそは至高天。
数百億と連なる並行宇宙を創造した存在たる神を殺すべく生まれた、神殺しの獣にして、神として世界を己の法則に染め上げる力を持つ、覇道神である。
領域展開後。術式が焼き切れた真人はしばらく変形も改造も出来ない。
しかし、術式が回復する時間など、あるはずもなく。
「ふむ。なかなか楽しめたぞ、呪霊とやら。安心して
聖槍からほとばしる破壊光。
必中にして最速にして必殺の光輝が、人より生じた呪いを完膚なきまでに消し飛ばした。
しかし真人の魂は廻る。
黄金の覇道に飲み込まれたゆえに、永劫、いかなる術によっても死ぬことなく。戦い続けることが許されたのである。
「さて。次に狙うべきは」
向ける視線はソラ。
そこにいる何者かを捉えると、彼は獰猛に微笑んだ。
「いつか必ず、卿にも挑もうか。
案ずるな。逃げはせん。なぜならば、私は――」
――私は総てを愛している――
呪霊のなかだと結構好きだったよ真人。
渋谷事変のアニメ化が楽しみだね。