『めだかボックス』を読んだ少年少女なら誰しも想像し創造したことがあるのではないでしょうか。安心院さんと安心院さん型のオリキャラの対決です。
結構、色んな作品の専門用語まみれなのでご注意ください。
「なんとなく、君とは気が合う気がしているんだ」
ベルンは開口一番にそう告げて
「いやそんなわけねーだろ」
安心院なじみは一瞬で否定した。
しかしベルンは、そんな彼女を慈しむように笑う。まるで会話という概念が消失してしまっているようで、延々と暗闇で独り言を語り続けるような態度は、聞く者すべてを不愉快にするだろう。
彼女の話のような一方通行の廊下。それが、今回の戦いの舞台だ。一直線、隣接する部屋もなし。ここは学校の廊下を模してはいるものの、本来の廊下の役割──部屋と部屋を繋ぐ機能を消失していた。
ベルンの独り言が再開する。
「出来ないことを探すことと可能性の探求は似ていると思うんだ。誠に勝手ながら君の脳内を見たけれど、随分長いこと頑張ったじゃないか。やはり私と君は似ているよ。気が合うと思う」
「はっはっはっ。そういうところが僕とお前じゃ合わないって言ってるんだ」
安心院なじみ──女子高生にしか見えないただの人外は言葉を紡ぎながら後方へと跳躍した。彼女は一京二千八百五十八兆五百十九億六千七百六十三万三千八百六十五個ものスキルを有し、攻撃防御回避反撃のすべてをスキルで補える。しかしそれはそれとして、動けないわけではない。そうでなければ回避直後に安心院のいた場所へ叩きつけられた拳を回避することは出来なかっただろう。ベルンの拳は文字通り床を殴り砕き、粉塵と共に拳大のコンクリがなじみへめがけて飛んでいった。
「───不倶戴天」
いくら人外とてコンクリ直撃は避けたいものだ。巨大な塊はなじみへ肉薄した傍から紫電によって撃ち落とされて消えた。粉塵が空けた時、そこに居たのは──。
「どうなってるんだよ、それ」
拳が鉱石のように変化した、女軍人の姿だった。なじみが見ている間にも、メリメリと音を立てて鉱質性の棘が生えていく。
「“
私たちの使う
だから私は、
言葉は最後まで紡がれることなく途絶えた。ベルンの背後に、なじみが立っていた。刀を片手に持ったなじみが立っていた。
「能力の説明中に攻撃するのはご法度とはいうけども。いくら何でも喋りすぎだろ。隙だらけだったぜ」
ベルンが膝をつく。肩から脇腹まで袈裟に切り裂かれた肉体からは血が絶え間なく流れ、内臓や骨も覗く。致命傷であることは誰の目にも明らかで、だからこそこの二人の間では言葉にするまでもなく。
「──応用し、平行世界、メタ的に言えば別作品のキャラクターを観測することにした。後はリソースさえあれば幾らでも再現可能ってわけだ。
ああ皆まで言うな。それだとオリジナルには勝てないっていうコピー能力者あるあるが発動するって言いたいんだろ?」
「能力の開示……、呪術的な“縛り”も兼ねてるのかい? だとすると僕は困ってしまうな。たったの一京二千八百五十八兆五百十九億六千七百六十三万三千八百六十五個しかないスキルでどう対応してみせようか」
当然、生きているだろうという前提でなじみは相手に斬りかかった。相手の言葉などお構いなく、ベルンは自分の能力をひけらかしながら手の中に日本刀を生み出し、なじみの刀を受け止めてみせる。
「何事も極めてしまえば問題ない」
しかし、なじみの攻撃を物理的に受け止めたところでなんの意味があるだろう。彼女ならば刀身に触れずとも対象を切り刻むことなど容易い。刀が接触した次の瞬間、ベルンの両腕に無数の切り傷が生まれた。傷は秒ごとに深まり、腕を切断しようとしてくる。
「既存の物を掛け合わせ、新しいものを創造する──それは人類の営みそのもの。ゆえに我が道に、なんの間違いもあるまい」
腕から吹き出した血は鉱石のように固まると、鞭のようにしなりながら、銃弾のように素早き飛び、ドリルのように回転しながらなじみの心臓を抉ろうと接近する。
血液を操作する能力、魔法というものは数多と存在する。ベルンが注目したのは、操作性の高い『
「面白い組み合わせだとは思うけれど、僕とは相性悪いんじゃねーの?」
なじみはいつでも、居たい場所に居ることが出来る。ゆえに大半の攻撃は回避するまでもなく──。
「そうだな。
転移した場所の真上から血で出来た杭が発生し、女子高生の肉体を串刺した。この血は血を操る魔法のようにしなり、うねり敵を捉えるような攻撃ではない。機関銃のように連射され、津波のように飲み込む吸精の杭。
「カズィクル・ベイ」
本来の名前は
「能力バトルのインフレ対決には種類がある。
ひとつはお互いの超パワーの押し付け合い。もうひとつはメタ張り合戦だ。分かりやすくいえば遍殺即霊体となった真人に如何に全力の黒閃を叩き込めるかの勝負をした虎杖悠二みたいなことをするか、承太郎とDIOみたいなことを繰り返すのかの二択なんだが、僕はメタ合戦の勝負はあんまり好きじゃなくてね。メタ張りって一回は驚くけど、それが連続するとつまらなくなるだろう?
君は、そういう勝負がお好みかな?」
だから彼女は、杭を足場にして無傷で立っていた。串刺しにされた事実などまるでなかったかのようだった。
「付き合う分には構わないけど、せっかくなら好きな勝負をした方がいいんじゃないかな?」
「いいのか? それだと多分、「安心院なじみに読者が求めてるもの」とは違うものをお出ししてしまうが」
人外
「
「……それはごもっとも。
それに、時流的に理屈ありきの硬派で真面目な能力バトルより頭ハッピーな俺TUEEEE‼が望まれていることは火を見るよりも明らかだ。
じゃあ全力で
彼女らの望む人外魔境決戦は、これまで通りで済むはずもなく。
ベルンは宣言と共になじみに指先を向ける。次の瞬間、廊下を埋め尽くすような闇色の劫火が噴き出し、一瞬にしてなじみを飲み込んだ。炎の色は次第に青みを増し、勢いを増して───
「熱線!!」
細い糸のように凝縮された核熱線がなじみの心臓めがけて伸びた。それをなじみは手元の刀で一刀両断。斬撃を飛ばして反撃を仕掛けてくる。劫火ごときでは倒れないことは互いにとって当たり前。そして反撃が来ることさえ、想定内。線攻撃である竹割の斬撃をサイドステップで回避すると同時、虚空から抜いた刀で次の斬撃、その次の斬撃、次のその次のその次の斬撃までも撃ち落としていく。斬撃の間隔が狭くなろうと何の問題があるだろう。この二人に、不可能など存在しない。今、このときのベルンの攻撃は
「世界を断つ斬撃ィ!!」
となるまでに進化しているのだから。
刀 を振り下ろし、なじみの一刀両断を狙う。まともに当たれば即死の攻撃であり、付け加えれば世界を断ち切る一撃であるがゆえに、通常の防御ではまったく意味がないのだ。もっともなじみに『通常の防御』があるのかといわれれば、まあ、ないだろうが。
「まるで大砲だね。だがその分隙も多い。理不尽になりすぎないよう調節したがるのは、君の癖かな、ベルンちゃん」
斬撃を身のこなしで回避すると、お返しに指先を突き付け、衝撃波を放った。ベルンは車にはね飛ばされたかのような衝撃と共に体は数十メートルと後退しながら上下にバウンドする。
「良いだろう? ラスボスは攻略可能な敵でなければならないんだ。だが同時に、勝てないと絶望させるほどに強くなければならない」
跳ねながら、ベルンは腰を捻り、右手を左腰へ回した。その姿を見て、なじみは刀剣を魔杖に切り替え魔法を練り始める。
「まるで、意図的に調節を入れないと無敵みたいに言うじゃないか」
「ああ、もちろんだ」
体が水平になると同時、ベルンは拳を抜き空間を
ラスボスとして、敵として、そもそものキャラクターとして、ベルンの強さは欲張り過ぎる。メタを張った小技から威力重視の大技まで、作品を超えた膨大なコピー技を持ち、肉体は頑丈でそれなりに機敏に動ける。弱点という概念失念しているようなスペックである。攻撃を叩き込める隙が多い程度の弱点があって初めて、攻略方法が出てくる感覚はある。ゲームで考えるなら、ある程度ゲームが下手でも倒せる敵だろう。
だがその隙が、ベルン自身が自ら生み出しているものだとするならば──。そして安心院なじみには確信がある。相手には、まだもう一段階上のギアが存在する、と。
「来る──」
いつものベルンならば、そこまで『至る』のは遠慮していた。この力はジャンル違いであり、あくまで相手の土俵で競ってこその勝負であるとしていた。だが彼女自身の願いを、全力投球のラスボス戦を行うがために、その美学を、遠慮を、自ら廃することを決定した。右手を掲げると同時に、彼女は詠唱を開始する。
「
廊下に亀裂が入る。縦横無尽に、今にも崩れそうなほどに細かく。それが物理的な損傷によるものでないことは明らかだろう。外的要因で壊れるならば、とうにこの廊下は壊れている。ゆえにこれは廊下の損傷ではなく進化。この空間を作り上げた神本人の覚醒に由来する、環境そのものの聖域化である。
「
亀裂から炎が覗く。その炎は次第に勢いを増し、詠唱が進むたびに廊下内を激しく熱しながら亀裂を押し広げていく。それは羽化の瞬間を待つさなぎのように。
「
如何様にも染まる、あらゆる者を呼び込める透明無色、変幻自在の闘技場──今は廊下の形を取った特異点がついに、創造主の法によって塗り染められる。
「
ガラス面の様に、砕け散る空間。廊下であることは一切変わらないが、明確に、これまでとは異なる法則が流れていた。
「……どこまで、勇者有利のギミックにしてんだよ」
「馬鹿だなあ。これは両者平等だよ。お互いに、無制限に、
なじみが咄嗟に両腕を交差する。一瞬の防御姿勢。これをしなければ、彼女の肉体は吹き飛んでいただろう。座標攻撃──彼女のいた場所を中心に連続して爆発が発生する。使ったのは燃焼反応発生能力。この能力を用いているとき、酸素や水素のみならず窒素や二酸化炭素すらも常温で爆発する性質を持つようになってしまう。しかも一撃の威力は核爆発にも匹敵するだろう。狭い廊下でそんなものが起きれば結果は必然。逃げ場のない熱と衝撃と閃光がなじみを襲う。さらに爆破には追加属性を付与してある。
「どこに逃げても追いかけてくる爆煙、か。無理やりにでも逃げようとするだけ無駄ってわけかい?」
「そうとも。無限に広がる爆心──追いかけ回すのだけは得意な
なじみはいかなるスキルを用いても逃げ切れないと判断するや否や、防御に専念することにした。しかし防御を固めれば、防御無視の攻撃を繰り出すのは当然である。防御貫通ではなく、防御しても意味のない攻撃。あるいは防御そのものを打ち砕く攻撃であることが望ましい。ゆえに選ぶのは、新西暦の肉弾派二名。
「どッせい!!!」
衝撃操作能力、そして強制脆性結晶化能力。どんな防御も脆性結晶に変え、そして与えた衝撃が炸裂する場所を操作することで相手の弱点へと打撃を届けるというコンボ技。親を求めた飢えるストレイドの魂と子と国を守る父性との魂の合成は驚異的なシンクロ率を発揮し、能力の効果をはね上げた。だからこそ。
「ばっきゅん!」
なじみは当然のように相手の背後に出現し、指先からエネルギーを放つ。拳よりは脅威度の低い爆発をスキルで防ぎながら攻勢に出たのだ。エネルギーは先ほどのベルンを吹き飛ばした衝撃波とは威力が桁違いであり、この攻撃は遠方の星すら爆発四散させるほどの破壊力を持つ。。しかし流出位階、文字通り
否である。なぜならベルンは、安心院なじみも自分も、同時に強化しているからだ。両者ともに元とは異次元の強さを発揮しており、エネルギーを受けたベルンは防御に用いた両腕を消し飛ばされつつ数百メートルも吹き飛んだ。
「凄いなこれは。まさに──」
「分かったかな? 私の
なじみは呆れて笑った。ベルンは満足に笑った。
「
ふたりの声が重なる。
ベルンが流出する『畜生道青銅神在月』はあらゆる生命が自我、願望を持ち、あらゆる願いが精神力に応じて叶えられる世界。ゆえに進化を望むものは果てなく進化し続け、停滞を望むものは未来永劫、不朽にして不変である。どこまで行けるのか、どこまで願いが忠実に叶うかは思いの強さ次第であり、そんな世界に
元より異次元とされる安心院がこの座からの強化を受ければかなり無法な力を得ることになるだろう。だがしかし、もちろん、この能力にはお決まりの弱点がある。
「……まったく。動きやすすぎるってのも考えものだな」
強化に肉体が着いていけないのである。この流出は単細胞生物が多細胞生物、それも人間などの複雑な生命にまで一気に進化させてしまうような強力すぎる成長促進作用がある。それが問題なのだ。簡単にいうと、本人のやる気しか参照しないので肉体的には無理でも強引に成立させてしまうのである。
なじみといえどありえない趙火力。まるで全力ダッシュした後の様に彼女は膝をついた。その隙を、ベルンは見逃さない。
「───
消し飛んだ腕を即座に生やしたベルンは両手を前へ突き出し、特大のビームを放った。それはほとんど逃げ場のないほどの大規模な貫通攻撃魔法。あらゆる防御、耐性を貫通し、人外を必ず殺す魔法として完成した一撃が放たれた。
だが安心院なじみは三兆四千二十一億九千三百八十二万二千三百十二年ほど生きた人外である。たかが千年生きた魔法使いが改良を施した魔法を、たかが四万年程度生きた神が改造した程度では凌駕するなど不可能。即座に対抗魔法を生成し防ぎ切ってみせると同時に、自らの消耗分を相手に押し付ける。『
「さすがの対応力……! だが
疲労感、消耗、だが問題無し。肉体よりも精神が勝る神在月ではどんなダメージも気合があれば乗り越えられる。テンションが上がっている今ならば、一瞬で全快まで回復可能である。
対してなじみの場合、過度な強化を抑え込むにはベルンの法則そのものを抑えなければならないのだ。その方法そのものはそう難しくはない。固有結界のように、領域展開のように、世界の外殻を押し合う異界勝負であるがゆえ、なじみもまた世界を作ればいいのである。しかし問題は、世界法則を創造し世界へ流出させるという行為が可能か否か。
ベルンが神座に至った者以外に流出をしないようにしているのも、そこが問題なのだ。世界法則を自分色に塗り潰してしまえば、相手も法則を流出させない限りは決して対等な勝負にならない。例えば、流出と同じように自らの心象を反映させた空間を広げる技術──領域展開の中では最も洗練されているだろう『無量空処』を持つ五条悟であれば、覇道創造程度であれば領域の
まず異界の広さが違う。片や数百メートルが限度の領域展開、片や惑星はおろか宇宙規模にまで広がる流出、世界を侵食する勢いも強さも前者が勝ることはありえない。そしてそもそもの目的が違う。領域展開は呪術戦の奥義であり、流出は世界への侵食行為である。
ゆえに流出とは、出してしまえばほぼ確定で相手を自法則に巻き込める技であり、使えばほぼこちらの有利が確定してしまう技である。例外があるとするならば精神力によるバフを有効にすると森羅万象を叩き割り相対性理論を敗北させる光狂いくらいか。そんな出し得技を使って勝って嬉しいかと言われれば、かなりグレーといったところだろう。
しかし今回に関しては、ベルンは安心院なじみを過小評価していた、と見るべきだろう。なにせ彼女は、平等なだけの人外、安心院なじみなのだから。
「では、弟分のような男だった球磨川くんを真似てみよう。生憎と僕は彼ほど才能溢れてないんで、
なじみが左手を掲げると同時、腕を組み、ベルンは彼女を見守る体勢に入った。それはまるで、己が娘の成長を見守るがごとくに。
「来るか、安心院さんの流出。そうだよなあ、クロスオーバーなんだから、そういう無茶苦茶を引き起こさないとな!!」
太字が使えなくなったので今回はここまでです!!!
「安心院さんと戦いたいんだぜ〜」「どうせならなんでもありめいたベルンで行くんだぜ〜」と軽い気持ちで書いたらコレですよ。
光狂いの時も思ったけど白熱しすぎだろいい加減にしろ。なんでインフレしていくバトルってどんどん書いてしまうのでしょう。
追記
執筆中に気付いたんですけど年齢順に並べると
安心院さん>>>(越えられない壁)>>ベルン>>>>フリーレン>>その他多くの人類なんですね。安心院さんってすんごい長寿だなあ。今度メルクリウスと老人のような会話して欲しい。