キラキラ道場破りツアー☆   作:湯瀬 煉

16 / 21
ぶっちゃけ決着は決めているけれど決着が着く気がしていない
そんな安心院さんvsベルるんの続きです。


安心院なじみvsベルン②

 安心院さんのボス系スキルである神になるスキル『過身様ごっこ(スペックオーバー)』、答を知るスキル『模範記憶(マニュアルメモリ)』、カリスマのスキル『蹴愚政治(サーカスアンドサーカス)』、世界創造のスキル『頓智創造(インテリジェントスタート)、歴史を変えるスキル『歴史的かなり違い(イニシャライズヒストリー)』、宇宙を作るスキル『生まれたての宇宙(ベイビープラネット)』……これらを用いれば、安心院なじみは事実上覇道神になれる。『神となって宇宙を創る』という点だけ考えるのなら何ら問題はない。

 しかし問題は、どのような覇道を流出するか。そこが不確定では覇道の鬩ぎ合いには発展せず、ベルンの有利は覆せない。一応、他のスキルも組み合わせれば過去の覇道をなぞることは出来る。永劫回帰、死者の軍勢、時間停止……そうしたもので微かな対抗は可能だろう。しかしオリジナルと比べれば性能が落ちることもまた、確かである。神座とは結局のところ思いの強さの勝負。本人以上に本人の思想を得るなど不可能に近い。否、可能だがその純度でベルンに対抗出来るかは不明である。何より───

「わっはっはっ。誘ったんだね、ベルンちゃん。出来るか分からないことなら、僕はやらざるをえないじゃないか!」

安心院なじみは出来ないことを探していた人外。目の前に挑戦がぶら下げられたのなら、挑まざるを得ないだろう。安心院なじみは、そうせざるを得ない。

 ゆえ、なじみが流出するのは大前提である。しかし問題がひとつ。彼女の気質は求道であり、自身の変化にしか注目していないという点。世界規模に影響をもたらせる反面、世界を変えたいという強烈な願いを抱くようなタイプの人間ではない。

 求道型の流出で覇道に対抗が出来ないわけでは無い。しかしベルンはあえてその選択肢をなじみに提示しなかった。そしてなじみはベルンの脳内を覗くことで求道神の存在を知っているが、ベルンの明らかな挑発により、目標は覇道神に絞っている。その心はただひとつ、安心院さんが覇道型になったらどうなるのか見てみたい、である。

「さぁ頑張れ安心院さん。私は一切、手を緩めないからな!!」

 欲望には忠実に従う主義であるベルンはゆえに、なじみに歴代の座を見せつけることを決定した。残滓技──かつての座の名残りを叩きつけることで強引に学習させていく。

 第一神座、解析不能。第二神座探索開始。

 第二神座残滓、発見。解析完了。

「どうか聞き届けたまえ真我。

 まず初めに感じたのは『嫌悪』──求めしものはただ唯一の不変。

 善、悪、美、欲、無神、揺らぎ揺蕩う信念とやら。良かろう、では貴様ら不変に取り込んでやる。

 罪を抱いて罰に生きろ。悪を喰らう悪となれ。──堕天奈落」

 汚濁、汚辱、万物等しく穢れ腐り落ちるべし。

 ベルンが左掌を相手へと向けると同時、白い炎が噴き出した。なじみはとっさに後方へ跳躍することで炎を回避する。そうでなければ、間違いなくここで勝敗が着いていただろう。

 かすかに炎に触れたなじみの髪の毛が腐り落ちる。彼女がその髪を切り落としていなければ、全身に腐敗が回ってなじみは死んでいただろう。無価値の炎、白痴の炎。第二天を作った者のひとりが持つ凶悪無比な攻撃である。しかしなじみがしたように、被弾箇所を切り落とせれば被害はそこだけで済む。これに続くのは、そうした対処の難しい残滓である。

「アクセス――我がシン

 まず感じたのは『悲嘆』――求めしものは救済

 なぜ奪い なぜ殺し なぜ憎む人の子よ ああなぜ 私はこんなに罪深い

 ならば清めん 原罪浄化せよ――悲想天

 

 ケララー ケマドー ヴァタヴォー ハマイム ベキルボー ヴェハシェメン ベアツモタヴ

 されば6足6節6羽の眷属、海の砂より多く天の星すら暴食する悪なる虫ども。

 汝が王たる我が呼びかけに応じ此処に集え

 そして全ての血と虐の許に、神の名までも我が思いのままとならん。喰らい、貪り、埋め尽くせ

 来たれ、ゴグマゴォオグッ!!」

 なじみの体内に、違和感が生じる。第三天、明星の残滓のひとつ、『暴食』の原罪であるゴグマゴグはあらゆる罪を──個我を喰らい尽くす。

 あらゆる悪を根絶するという同じ渇望を抱いた第二天と第三天だが、悪という概念に対してはまったく真逆の立場を取る。あくまで悪を喰らう悪の楽園である第二神座においては残滓もまた清さ、正しさとはかけ離れていて凶悪だが、悪を個々の違いと定義し他我の違いを漂白した第三神座では潔癖すぎるほどに浄滅、漂白、粛清のための残滓が残っている。ただし残滓技の特性上、第二神座、第三神座の残滓は本来のそれほどの強制力、威力を持たない。

 残滓技の威力は、それを行使する座の残滓となった座への理解度で変動する。どういう想いのもとに生じた座なのか、残滓なのか、それを理解し使ってこそ残滓技は本来の威力を発揮する。ゆえに、必中にして強力な残滓であるゴグマゴグであってもなじみを絶命までは追い詰めることが出来なかった。刀剣系のスキルを用いて、触れたものを悉く切断することでゴグマゴグを鏖殺してのけた。

「うーん、イマイチ惹かれないね。 他にはないのかな?」

「もちろん、あるとも。むしろここからが私のお気に入りだよ」

 続いて繰り出されるのはある意味でなじみとは真逆の思想の神。総てを愛す、総てを壊す黄金の獣。

「我が愛は破壊の情

 まず感じたのは『礼賛』――求めしものは全霊の境地

 ああ なぜだ なぜ耐えられぬ 抱擁どころか 柔肌を撫でただけでなぜ砕ける なんたる無情――

 森羅万象 この世は総じて繊細にすぎるから

 愛でるためにまずは壊そう 死を想え 断崖の果てを飛翔しろ

 私は総てを愛している――修羅道至高天。

 

 怒りの日 終末の時 天地万物は灰燼と化し

 ダビデとシビラの予言のごとくに砕け散る

 たとえどれほどの戦慄が待ち受けようとも 審判者が来たり

 厳しく糾され 一つ余さず燃え去り消える

 我が総軍に響き渡れ 妙なる調べ 開戦の号砲よ

 皆すべからく玉座の下に集うべし

 彼の日 涙と罪の裁きを 卿ら灰より蘇らん

 されば天主よ その時彼らを許したまえ

 慈悲深き者よ 今永遠の死を与える エェイメェン

 ドゥゾルスト・ディエスイレ

 攻撃性だけならば歴代随一。死者を率いる魔軍の将、黄金の神性が輝き出す。

 手中に黄金の槍が生じた。その槍は美しく荘厳で、触れるには同様に神格であるベルンといえども多少の傷を覚悟しなければならないだろう。その槍こそはかつて神の子を貫いた聖槍なれば、正統な担い手である黄金以外に巧みに操れる者などいない。だが単に扱うだけであれば凡愚でも出来る。使い方は、本人を見てきたからよく分かる。相手の心臓へめがけて聖槍を投げると同時に、槍は黄金に輝き始める。

 聖槍は最速にして必中必殺。道理を無視して、いかなるものよりも早くなじみを貫くだろう。そして貫ぬいた相手は即死するのがこの槍なれば、この一投で決着は着いたといっても過言ではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 概念上の死など、この人外を止める要因足りえない。突き刺さった槍を強引に引き抜き、なじみが反撃を仕掛けようとした刹那──

Verweile doch du bist so schön(時よ止まれ、君は誰よりも美しいから)───」

 発動するのは時間停止の理。彼とは共闘した仲であり、彼の在り方についてはおおよそ理解している。覇道への理解度がそのまま残滓の強制力の再現度を表すというのなら、この理は安心院なじみすらも数秒間拘束出来るだろう。

 その隙にベルンは両手を掲げ、指揮者のように振るう。

アクタ・エスト・ファーブラァッ!

 まず感じたのは『諦観』――求めしものは未知の祝福

飽いている 諦めている 疎ましい 煩わしい。ああ何故 総てが既知に見えるのだ。

 輝く女神よ 宝石よ どうかその慈悲をもって 喜劇に幕を引いておくれ。

あなたに恋をしたマルグリット! その抱擁に辿り着くまで、那由多の果てまで繰り返してみせん――永劫回帰!」

 ベルンが生まれた時代、ベルンを生み出した神、彼女らが父にして恋情を抱く覇道神。第四神座、永劫水銀回帰(オメガエイヴィヒカイト)の祖、水銀。

「Et arma et verba vulnerant Et arma

 Fortuna amicos conciliat inopia amicos probat Exempla

 Levis est fortuna id cito reposcit quod dedit

 Non solum fortuna ipsa est caeca sed etiam eos caecos facit quos semper adiuvat

 Misce stultitiam consiliis brevem dulce est desipere in loc

 Ede bibe lude post mortem nulla voluptas

 Acta est fabula(未知の結末を見る)!」

 硬直直後、身動きのできないなじみに流星群が降り注いだ。覇道神にしてみれば髪の毛一本にも満たない軽量の魂を消費するだけで使える技だが、隕石衝突以上の威力を有している。同格──覇道神モドキでも無ければ真っ当に受けて無事には済むまい。

 だがなじみは『過身様ごっこ(スペックーオーバー)』で自身の格を引き上げると同時に、複数のスキルで耐久力を底上げしている。時間停止の理を無理やりに引きちぎりながらも、人外は問題なく流星群を耐え抜いた。しかし───。

「Sic itur ad astra」

 永劫回帰はベルンの始まり。彼女の渇望に密接に関わりのある存在なれば、残滓にて使える技の量、質、共に他の座とは一線を画する。

「Dura lex sed lex──.」

 発生する異常重力場。ありえないほどの負荷がなじみに与えられると同時に、戦場たる廊下全域すらも重力源に引き付けられて軋んだ。

 水銀いわく、グレート・アトラクター。先の流星群の威力をさらに超え、多元宇宙すらもまとめて押し潰せるに違いない。那由多と連なる平行世界、その全てそのものである覇道神の繰り出す技であり、そんな覇道神を滅ぼすための技なのだから、当然だろう。

 なじみが成ろうとしているのはそういう存在。安心院なじみが安心院なじみであるゆえに同様の存在になることは難しくないかもしれないが、それでも破格の存在であることは間違いない。

「やらせるかよ」

 ただし、酷い言い方をしてしまえば規模や威力が桁違いなだけである。否、そう思えるだけの『凄み』がなじみにはある。重力場に対抗するように肉体を維持するなじみに、ベルンは手を伸ばす。

 握手を求めるためか。否である。

 拳を叩きつけるためか。否である。

 これは指揮のため。先代の神、憧れの神の模倣をすべく、ベルンは星を操り星辰を整え、破壊の技を奏でる。

「Deum colit qui novit.」

 重力場であるグレート・アトラクター。これに耐えることを想定し、次に使うならばこれだろう。

「Aurea mediocritas.」

 グランドクロス。並行宇宙まとめてすべての星を十字に並べ、極大規模のそれを引き起こす。発生するのは異常な潮汐力。通常のグランドクロスが潮汐力を変化させ、時に地球の潮をかき乱すように、その結果発生する膨大なエネルギーは、神格の肉体でさえ内部沸騰させ、粉砕するほどの威力を持つ。

 外へ外へと膨張し圧縮に耐えていたなじみからすればたまったものではない。例えるならば、綱引きで突然相手が手を離したようなもの。

 なじみ肉体が、内側から弾ける。だがその直前に彼女は肉体の維持にスキルを総動員して補完に向けた。

「……間一髪、なんとか間に合ったよ。

 しかし分からないな。この星を操る神はどんな願いを基に宇宙を創ったんだ?」

「回帰したい、だよ。

 しかし、複数の願いがごちゃ混ぜになっているゆえにそれらすべてを総合し占星の神となった。回帰したい、愛する女に抱かれて逝きたい、既知感を払しょくしたい、死にたい、まだ死にたくない……、総じて運命を覆したいという、運命操作の渇望だ。

 これはお前の願いにも似たようなところがあるんじゃないかな?」

 不可能なことを見つけたい、ままならない人生を謳歌したい、普通の人とは対極にある上手くいかないという経験を味わいたいという願い。それこそが安心院なじみの原動力に他ならない。

 これにて、歴代の座を巡る教材はお終い。ここからはなじみがどのような座を流出させるかの話に移行する。




覇道神の安心院さん、覇道院さんは未だ構想中だ!!!!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。