キラキラ道場破りツアー☆   作:湯瀬 煉

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こういうノリが好きです


色即絶空空即絶色、撃滅するは血縁鎖

「砕けや殴らせろやぶっ飛べェ!!」

「知るか死ねェ!!!」

 

 おはようございます、ベルンだゾ。

 

 此処は特異点。ざっくりと言えば色んな世界に繋がったご都合主義のカタマリである。

 

 理屈? はは、オリキャラ出してる時点で察してよね!! そんなもんはない。

 納得したいなら結界術を大規模に行い、他者と自己の意識のみを、“戦うために呼び寄せる”という縛りで結界の中に閉じ込めていると考えればいい。

 

 

 

 

 対戦相手は汚れた衣装の若い男。眼光は鋭く口には犬歯が覗くが、まあチンピラにしか見えないだろう。

 しかし否。相手は決して只人ではありえない。

 

 

 拳がかち合う。蹴り足が相手の腹に刺さる。だが止まらない。

 此方が戦車の砲撃にも等しいパワーでぶん殴っているにも関わらず、さばいて流して反撃の拳を叩き込んでいるのがいい証拠だ。全身打ちのめす衝撃は、見事内側だけ壊すから外面の硬さなど関係ない。

 

 殴る殴る殴る蹴る、蹴り飛ばして回避して殴る。拳の乱舞はいっそ見惚れそうなくらいで、いやしかし乱暴で凶暴で警戒が緩められない。

「えげつないな。

 体術とか体を硬くする夢だとか、色んな技術で守ってるはずなんだか。これはお前の能力か?」

 相手の拳は強烈過ぎるほどに強烈だ。その種が異能ならば一応、理解出来るだろう。どういった力かも分からんでもない

 しかし相手はニヤニヤと笑みを崩さず。

「経絡秘孔だよ。人間の究極。努力の延長であり、修練を積めば誰にでもできることさ。

 人間舐めたらいかんぜ、おい」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、己の認識を鈍らせていた。たとえ私が、この空間を作るきっかけである水銀の蛇と邂逅しても、戦っている最中は相手が何者かなんて覚えていないだろう。

 

 「これが技量によって生み出されたものだって? はは、冗談キツイぜ」

 いや、技量も凄まじいのだろう。能力だけならここまで追い詰められることは無い。知識と経験で対抗策を即座に作り出すことなど容易いのだから。

 

 つまりそれが出来ないほどの超技量。というかタネが割れてもシンプルに拳法が極められていて、簡単に崩せない。

 

 相手へと突撃する男は依然、傲岸不遜に、傍若無人に、笑って拳を振るうのみ。

「どうしたよ嬢ちゃん! 防戦一方じゃつまらねえ物足りねえ満足出来ねぇ! さっきの気迫は良かったぜ。だからなあ、魅せてくれよッッ」

 相手の拳を受け止めれば刹那、無関係のはずの胸元に衝撃が走り、呼吸が止まった。生身の人間が受ければ今頃、どデカい風穴が空いているだろう。

 しかしまあ、そんな程度で止まる訳にはいかず。代わりに私は、手のひらから烈火を迸らせて、相手を劫火で包んだ。人間には耐えられない、というか鉄でも溶けるだろう。これならどうかと、相手の方を睨みつけた刹那──

「いいねェ! 盛り上がって来たじゃねぇかッ」

 顔面を殴りつける拳は相手のもの。刹那に己の体は後方へと数十メートルに及び吹き飛んだ。

 

「拳を“当てる”ことに特化した拳法か。っていうと、方向(ベクトル)操作とかか?」

 触れたら勝ち、というものだと、ベクトル変換、或いは即死などが思いつく。一撃必殺の拳ならそれこそ、殴られた時点で何かしらの変化が起きているはずで、ただ痛いだけならば、シンプルな身体強化ないしは微かでも触れればダメージを与えられる能力だということ。

「呵々! 言ったろ。これは人間の努力の延長線上だ。お前もいつかは出来るかもしれんぜ? こういうこともよォッ!」

 己が吹き飛んだ先に銃弾のように迫る男。既に頭蓋が割れて脳漿をぶちまけてもおかしくは無い程の威力の拳を叩き込んで起きながら、私がまだ生きていると信じて踏み込む。

 すぐさま繰り出されたドロップキックを横に転がって回避すれば、着地後すぐに身を捻り空中で体を横回転させながら拳を振り下ろしてくる。それ下がって回避したのに、頭上に衝撃が走り、地面に叩き付けられる。

 

 訳が分からない。

 ただ少なくとも、相手は格闘戦においては無類の強さを誇るだろう。この男を打ち倒すためには、遠方から砲撃でも浴びせるしかあるまい。

 そんな風に思考している間にも、相手は空振りした拳を支えに体を回転させれば、回し蹴りを顔面へと叩き込んで来た。それを咄嗟に、顔面の前で腕をクロスさせてガードすると、容易に体が浮きあがってぶっ飛ぶ。

 

「確実に人外だろうが、おまえ!!」

「呵々! それをアンタがいうかい。ビームに爆破に硬化に、走力強化と、これまで色々やったじゃねぇの。どうなってんだそれ? いいや、言わなくてもいいがね。その方が面白い。アンタもオレにとやかくいえるような()()()じゃねえってことだよ」

 

 そうだ。私は()()()()()()()()()という力を用いて応戦している。邯鄲法と呼ばれるそれは、アタック、ディフェンス、マジック、キャンセル、クリエイトの五つの部門に分かれ、それぞれの分野を組み合わせたり個別で用いたりして、様々な事象を引き起こせる。知っている範囲不可能はない。

 

 今も、重力をキャンセルして相手の攻撃威力を用いて更に上へ上へ、上昇して拳を届かせないように飛んでいる。しかし惑星の持つ遠心力で宇宙でぶっ飛んだりしないのもまた、夢だから。

「狙い撃ち、し放題ってことだなァ!!」

 空中に出現させるのは五十発近い火炎球。それを立て続けに叩き込みまくれば、さしもの相手も死ぬと、――それが道理であろうに。

「カカカカ! 効きやしねぇよそんなもの」

「しかし、おまえもここまでは拳も届くまい――よ?」

 ゆえに叩くのみ、と決めた瞬間に己の頭上にまで飛び上がって拳を組み合わせる男。

 馬鹿な。ここは上空二百メートルだぞ!?

「そらよォ!!」

 ハンマーのように打ち下ろされた打撃は見事頭を捉えて、砲弾のように私は地面に落ちて行く。しかし。

「落ちるのは、おまえだ!!」

 咄嗟に相手の襟首を掴み、空中で上下を入れ替えればこの通り、相手は地面に叩き付けられて、私はその上に着地する。地面に生じる蜘蛛の巣状のヒビは、相手の墜落ダメージの大きさを物語る。

 

 だが、しかし。いいや、やはり。

「いいねぇ、いいねぇ! 最高だッ!」

 ()()()()。相手は此方の攻撃など無かったかのように笑い続け、そして私の腹を蹴り飛ばして体勢を整えた。

「出し惜しみは、出来ないか」

「そろそろ体も温まってきた頃だしなァ。いい加減ガチで()りあおうぜ」

 屈託なく笑う姿は悪餓鬼のそれで、しかし無邪気。互いに戦闘の中で生きる身ゆえに、ノリは弁えているから心はひとつ。以心伝心で、己の最高火力を叩き込むと決めた。

 

 最初に仕掛けたのはやはりというか、より鉄火場に慣れ親しんだ男の方。己が何者なのかと、呵呵大笑しながら叫ぶ。

天昇せよ我が守護星──鋼の恒星(ほむら)を掲げるがためッ

 始まる起動詠唱(ランゲージ)人造惑星(プラネテス)のもの。異次元のエネルギー粒子を用いた星辰体(アステリズム)をより駆使できる兵器であり、ロストテクノロジーの応用。凄まじい耐久性も、人間から掛け離れた身体能力も、なるほど正体を知れば納得がいく。

 生命としての次元が、段階が、位階が違う。その上での超絶技巧が組み合わされば、ただの拳ですら戦車の砲撃や戦闘機の爆撃に等しい。

森羅万象、天地を握る老いさらばえた支配者め。古びた玉座がそれほどまでに恋しいか? 何故そうまでしがみ付く。

 憤怒に歪み血走る眼球(まなこ)、皺を刻んだ悪鬼の相貌。見るに耐えない、怖気が走る、なんと貴様は醜悪なのだ

 殴る殴る殴る蹴る殴る蹴り飛ばして回避して殴る。

 そこに込められた技術と星光は緩急激しく、正確無比に、時にフェイントすら混じえた超絶技。恐らくは人の究極。確かに、起こせる結果は甚大だが技能そのものは心技体極まった格闘術の神髄に他ならない。

その大口で我が子を喰らい飲み下すのが幸福ならば、いずれ破滅は訪れよう。汝を討つは、汝の継嗣。血の連鎖には抗えない。

 鎌を振るい暴威をかざした代償が、積もり積もって現れる。かつて御身がそうした如く、他ならぬ血縁に王位は簒奪されるのだ

 クロノス、いやこれはクロノスを殺したゼウスの事か。

 親殺しの執念を語る拳士はしかしきっと、天に唾吐くことも、弱小を握り潰すことも殊更に考えることは無い。戦って学んで知って、立ち上がって戦う。死ぬまでやりたいように突き進み続けること。それこそヤツのやり方なのだろう。

産着に包んだ石塊(いしくれ)を腹へ収めたその時に、逃れられない運命は約束された未来へ変わる。

 刮目せよ、これぞ予言の成就なり

 そうしてやりたいことの一つが、親殺し。それをもって己は完成すると本気で考えている。

 製造主(おや)を殺して何を得るのか。それはきっとやらなければ分からないはずで。しかしその執着はとことん()()()()()から。

超新星(metalnova)──

 色即絶空空即絶色、撃滅するは血縁鎖(Dead end Strayed)ォォッ!」

 魔拳を真正面から受け止めて弾けた臓腑も気にせずに、1歩を踏み出すのだ。

「布流部由良由良登布流部」

 三種の夢の同時行使。固有の術理をもって迎え撃つ。

 キャンセルで相手の思考を透かし見て、クリエイトやマジックで相手への対抗策(カウンター)を創り出す。理解と双反発の夢。

──破段・顕象──

 天眼明鏡止水・阿修羅ノ扇

 叩き付ける殺意は鋭利。戦況は終盤戦(クライマックス)

 

 ゆえに名乗りあって、さあ。

「アスラ・ザ・デッドエンド──」

「第五の盧生、ベルン・フォン・カレイヒ」

「いざ尋常に、勝負しようかァッ」

 互いの異能が炸裂した。

 

 男──アスラの星辰光は極めてシンプル。そして人の技術で()()()()()()()もの。

 即ち、衝撃操作。殴られてもその衝撃を地面に流してしまえばノーダメージ、逆に自分の攻撃は別箇所や装甲の内側、或いは外側のみを狙って砕くという武術の究極。アスラ・ザ・デッドエンドは殴り合いにて最強。肉弾戦においてこれ以上に凶悪な能力はそうそうないだろう。たとえば彼の能力への推理で挙げた方向操作(ベクトル変換)ですら、能力を無効化されれば殴れるし、遠方の物──風のベクトル操作などは同レベルのサイコキネシスにて無害化出来るのだが。これはそんなことは出来ない。能力が使えなかろうが技術で出来る。遠方力場発生(サイコキネシス)? 甘い甘い。遠方攻撃なんざするより早くアスラの拳は相手を穿つだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 正しく徒手空拳の極み。能力が極まった上で、その能力を活かす星光を宿した武人こそ、アスラという魔星に違いない。

 殴る殴る殴る蹴る殴る、どの攻撃も当てることに特化したものだが、掠りでもすれば衝撃を打ち込んで相手を爆ぜさせられるのだから威力など関係ない。

 ゆえに私は、なるべく相手を直接殴り、直接殴られるように立ち回ることにした。

「ほう、こりゃなんだ。闇の琴弾きか?」

対星辰光(アンチ・アステリズム)じゃないさ。だが惜しいな。解体だよ」

 解体(キャンセル)を常に己の肉体に纏わせ衝撃操作を無効化。相手の拳を受け切るように防御(ディフェンス)を回し、そしてとにかく速度(アタック)強化。これが最善だからこの通り。高水準で回る夢は、かつて地獄のような試練を乗り越えに乗り越え、悟りを得た盧生ゆえのもの。

 だが法外な強化をしていてもアスラは止まることを知らず。どうしたどうした、止まれば死ぬぞ殺すぞさあ頑張れやと、囃し立てて殴りつけて暴れ回る。

 戦場においては獣性こそ正義。まさしく本能的に闘争を繰り返す相手の独擅場だろう。追い付けているのは一重に努力の積み重ねがあるからだが、天に輝く土星(アスラ)はそれすら軽いと一騎当千の戦闘技巧と星辰光(アステリズム)で私を追い詰めていく。

 

 そして、遂に。

「テェェェリャァアアア!!」

 衝撃操作の異能を封じられた状態で、ただの戦闘技術のみで破壊をもたらす。それは拳の直撃とともに人体を破裂させる魔拳。左の縦拳で此方の拳が砕けて、右のフックで心臓が貫かれる。

 

 正しく致命。これを受けての生存は不可能。生中な傷は直せる邯鄲法でも、体内が弾け飛べばそうはいくまい、と。アスラの凶笑が問いを投げている。

 実際その通り。ここに勝負は決した。

「てめぇの負けだな、ベルン!」

()()()()()()()。──勝利は譲らん。“勝つ”のは私だ!」

 待っていたぞ我が敵、と。

 傷口で相手の腕を拘束し、()()()()の夢を纏った右拳が相手の頭蓋を殴り抜いた。如何に強靭でも、強くとも、勝利の瞬間は隙が生まれるだろうゆえ。その瞬間に一気に、相手の身体を解体して崩壊させて粉砕する。

「ごォ──は、くは、呵々! やるじゃねぇの。

 また()ろうや……!」

「おう。何度でも、何度でも何度でもまた()ろう」

 戦闘はこれにて終わり。しかし一人の男女(バトルジャンキー)は、互いを食い殺すような目で、親友に向けるような笑みで、今生の別れを告げた。

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