キラキラ道場破りツアー☆   作:湯瀬 煉

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描きたかったこのバトル!
閃奏と邪竜の勝負を見たので書いてみました。


天霆と滅亡剣【前編】

 金髪碧眼の軍人と、赤髪の長身が向き合う。

 “お互いへの記憶が消える”というルールの元、二人とも相手の知識など欠片も有していない状態だったが──。

 

 金髪の軍人、軍事帝国アドラー第37代総統、クリストファー・ヴァルゼライドは即座に、相手が己の打ち倒すべき“悪”だと理解した。

 赤髪の長身、傭兵集団『強欲竜団(ファヴニル)』の長、ファヴニル・ダインスレイフは即座に、相手が己の求める“光”だと理解した。

 

 ゆえに。名前すら分からない。相手が何者かなど知る由もないにも関わらず、二人は同時に駆け出す。

 

「しゃァッ!!」

 

 ダインスレイフは両腕に装着した竜爪(ジャマダハル)を振るい、相手をひき肉へ変えてやろうと暴れ回る。攻撃は暴風の如く。鍛えられ、ずば抜けた戦闘センスと独特な武器を自在に振るうというトリッキーさは、常人ならば既に10回以上は死んでいる。

 

「ふッ──!」

 

 ゆえに、それをさばき切り、更には反撃まで繰り出しているヴァルゼライドは流石だった。7刀を自在に抜刀、納刀、居合刺突と叩き込み続ける。二刀は“正しく”相手を殺す軌道を描き、その精密さを更新し続ける。

 

 斬撃刺突防御、刺突刺突刺突回避斬撃。

 斬撃斬撃刺突刺突刺突斬撃回避斬撃刺突防御斬撃刺突防御斬撃斬撃斬撃回避刺突斬撃刺突刺突刺突防御回避斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬撃───。

 

 止まらない乱舞。

 音速域に達して尚も加速する攻撃はどれも一撃必殺。だがお互い、恐怖や諦観の欠けた英雄と邪竜(かいぶつ)であるがゆえ、足りない、足りない、まだだと進撃を続ける。

 

「良いねェ、最高だッ! 俺好みの獲物じゃねえか!

 まだまだ死ぬんじゃねェぞッ」

「貴様を生かしたまま死ぬ訳にはいかん。ここで必ず粉砕する」

 

 鷹の目に宿る赫怒。

 邪竜が欲する度、それに勝る怒りと鍛錬の連撃。全撃必殺の乱れ打ちは止まらず、確実にダインスレイフを削っていくが、しかし。

 

「そうさ、まだだ。まだまだ!」

 

 ()()()()()で耐えて反撃する。勢いは増していくばかり。

 ヴァルゼライドが逆手に持った右の剣を振り下ろせば、右の竜爪で受け止めて左の爪が相手の顔を引き裂こうと迫り。それを相手の剣で受け止められるが、そもそもそんなの想定内だと相手の鳩尾へと右脚を叩き込んだ。

 

「ふッ──!」

 

 だがそれも()()()()()()ように、蹴り飛ばされる寸前に剣先をダインスレイフの目へと向けていたヴァルゼライドは、剣に宿る閃光を瞬時に放って目眩しに用いた。相手を見ていたダインスレイフにとってすれば避けられぬ閃光爆弾だ。視界が白熱し、隙を晒───さない。

 

 すぐさま飛びかかってきたヴァルゼライドの顎を正確に蹴り上げて追撃を阻止すると、すぐさま左の爪で胴体を切り裂こうと竜爪が一閃された。

 だがヴァルゼライドには通じない。蹴りこそ食らったものの、続く一手は片方の剣で受け止め逆に刺突を相手の心臓へと繰り出してみせる。

 攻撃姿勢だったダインスレイフにそれを躱すことなど出来ず。刃が心臓を貫いた。

 

 完璧な致命傷。これはもはや、決着を付ける一撃だったことは間違いなく。

 

「流石だ………。認めよう、お前こそ、俺の、不死身の英雄(ジークフリード)…………………………………………………ォ? ぉ、お、お」

 

 と、呟いた瞬間に。

 

 

 

 邪竜はその、今にも閉じようとしていた目を大きく見開いて。

 

「オォォォォォ───オォォォォォォォォォォォォ!!

 会いたかった、逢いたかった……逢いたかったぜ()()()()()()()()()()()()()()()ォォォ!!」

 

 

 歓喜の咆哮を轟かせた。

 

 

 今際の際で、溢れんばかりの執念が、妄執が、相手についての記憶を必ず失うというルールを()()()()()()()()()、邪竜は歓喜のあまり()()()()()()()()()()()()()()

 ありえない奇跡を同時にふたつも起こしておきながら、邪竜ファヴニル・ダインスレイフは一切驚かない。喜ばない。なぜならば()()()()()()()なのだから。

 本気でやれば、やってやれないことなんて無いのだから。

 

 溢れんばかりの欲望が、朽ちた死肉を蘇らせる。

 お前は必ず喰らうのみ。誰にも渡さぬ、己のものだと。

 

 始まる起動詠唱(ランゲージ)は人外のもの。

 此処に、英雄殺しを誓った滅亡剣は降臨する。

 

「天昇せよ、我が守護星──鋼の恒星(ほむら)を掲げるがためッ」

 

 直後に、液体のように波打つ地面。1秒ごとに周囲の物質が邪竜の支配領域(たから)へと変わっていく。

 

「美しい──見渡す限りの財宝よ。父を殺して奪った宝石、真紅に濡れる金貨の山は、どうしてこれほど艶めきながら心を捉えて離さぬのか。煌びやかな輝き以外もはや瞳に映りもしない誰にも渡さぬ、己のものだ。

 毒の吐息を吹き付けて狂える竜は悦に浸る」

 

 かつてファヴニル・ダインスレイフはただの、どこにでも居る小悪党だった。

 いてもいなくても変わらない、いくらでも代わりがいる小物。ゆえ、当然のように切り捨てられる立場にあり。

 

 所属していた巨大麻薬密売組織を滅ぼさんと進撃する英雄(クリストファー・ヴァルゼライド)によって断罪されることになる。

 

 英雄の一太刀を浴びてなお、奇跡的に生き残った彼の胸にあるのは、ただひたすらに()()だった。

 

 英雄は()()で俺たちを殺そうとしている。何百倍という人数差すら度外視して、()()で怒っているから迷わない。

 それに対して自分はどうだ? これまで何回、本気で何かに臨んだのだろう。……いいや、無かったはずだ。なんて恥ずかしいことだろう。本気でやればやってやれない事はないのに。

 ああ、ああ、だからこそ。

 

「その幸福ごと渇きを穿ち、鱗を切り裂く鋼の剣。巣穴に轟く断末魔。邪悪な魔性は露と散り、英雄譚が幕開けた。

 

 恐れを知らぬ不死身の勇者よ。認めよう、貴様は人の至宝であり我が黄金に他ならぬと

 

 恥じて、悔いて、憧れて。

 だから、英雄が()()()滅ぼす悪となれるように。

 

 俺はファヴニル(英雄の滅ぼした邪竜)(にして)ダインスレイフ(英雄を滅ぼす魔剣)に成ったのだ。

 

「壮麗な威光を前に溢れんばかりの欲望が朽ちた屍肉を甦らせる。

 ゆえに必ず喰らうのみ。誰にも渡さぬ、己のものだ。

 滅びと終わりを告げるべく、その背に魔剣を突き立てよう!

 

 俺を殺しに来いよ。来てくれ待ち遠しいぞ、と牙を鳴らし鱗を震わせてひたすら英雄の君臨するアドラーを進撃し続けた。

 お前こそ我が光、我が黄金。ゆえに寄越せと。

 

 その執念が、妄執が、欲望が、此処に発現する。

 

 

超新星(Metalnova)──邪竜戦記、英雄殺しの滅亡剣(S i g u r d b a n e D a i n s l e i f

)ッッ!!」

 

 

 刹那、英雄の足元が竜の鱗のようにささくれ立ち、一つ一つが銃弾のように殺到した。

 それをヴァルゼライドが両刀で断ち切りながら進むのを予測して進行方向から巨大な竜爪がその体を串刺しにしようと迫る。

 だがヴァルゼライドも流石というか。それを一刀両断してさらに加速。ダインスレイフの懐まで駆け抜ける。だが仕掛けられる側も想定内だ。

 巧妙な足さばきで相手の背後を取ると、左右の竜爪で交互に切り付け背中から内臓まで抉ってやろうとする。

 相手が凡人ならば、目の前から敵が消えたと錯覚している間に体が斜めに切り落とされていただろう。

 

 だがそれは、相手が凡人の場合に限る。

 相手は稀代の英雄、クリストファー・ヴァルゼライド。斬撃の勢いを利用して体を回転させれば、両刀で爪を防ぎつつ膝で顎を蹴り抜いた。

 

 だがヴァルゼライドがこちらの想定以上なんて()()()()()()と。直後に相手の足元の地面が1匹の龍のように変形し、ヴァルゼライドの体を飲み込んで地面へと潜航を開始した。

 

 通常を超えるカタルシスと、それに応じた覚醒、諸要素が組み合った超出力により、英雄の肉体を地下へ地下へと埋め込んでやろうと捩じ込み続ける。当然、下に行けば行くほど地盤は固く、人間砕岩機と化したヴァルゼライドにしてはたまったものでは無いだろう。

 否、とうに死んでいてもおかしくは無い。

 

 だが、しかし(やはり)──。

 

「いいや、まだだ!」

 

 岩盤を、硬い地面を、紙のように切り刻みながら地下から英雄が出現する。

 

「そう、まだだ!!」

 

 だから、邪竜は事前に用意していた数百もの石を銃弾として、復帰直後のヴァルゼライドへと殺到させる。

 だが、しかし(やはり)。自分に当たる物のみ切り裂いて華麗に着地してみせた。

 

「やっぱ本物は違うぜ。そうさ、そうとも、この背中だからこそ───!」

 

 俺は憧れたのだ、と。

 更に覚醒を繰り返してダインスレイフは周囲の物質を操り続ける。

 

 ファヴニル・ダインスレイフの能力は『物質再整形』。物質界において頂点に君臨する力に他ならないのだから。

 

 戦いは佳境に至る。




とりあえずここで一区切りして、後編へ続けます。
終わりが見えんぞ、光狂いどもめ。
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