キラキラ道場破りツアー☆   作:湯瀬 煉

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勢いを大切にして書いています。


人の勇気に愛を込めて 【後編】

「ロッズ・フロォム・ゴォォドッ!」

 

 再び叫ばれる兵器の名前。星が昇るような時間でもないにも関わらず、空に無数の光が出現する。

 咄嗟に飛びのいたヴリトラのいた場所、どころではなく。戦場全域に降り注ぐのは神の杖。精密に、空から鉄塊が落下し、空母をめちゃくちゃに破壊していく。

 

 その総数、数十万基。そのすべてが、邪竜を討つべく乾いても湿ってもいない泡をまとい、必殺技として繰り出されている。サーヴァントの基準でいえば、並みの対軍宝具などよりよほど強い。

 だが今の彼女にしてみれば、その程度の傷で止まるはずがないのだ。その身にいくつもの神の杖を受けながら、天へと吼え立て、一斉に甘粕へと突撃する。

 

「まだまだァ!」

 

 だがそんなこと、彼はとっくに承知の上だ。

 

「――終段(ついだん)・顕象――」

 

 盧生の権利は大きく分けて二種類ある。

 

 人類の無意識、つまりは夢を現実に持ち出す権利、そして夢を夢のまま封じる権利、このふたつだ。

 主に用いられるのは前者。とはいえ、どのような夢を持ち出すのかというのも種類があるのだ。

 

 単純にイメージ通りの現象を引き起こすというもの。己の望みや価値観が反映された固有技。そして、人類が生み出した神格の召喚。

 

 神格の召喚、それこそ終段。己と親和性の高い概念を持つ神格、英雄、怪物を召喚し、使役できるという能力。これがあるゆえ、盧生は最強の召喚士と呼ばれるのだ。

 

 度重なる破壊兵器と神話生物の本気の攻撃によりぼろぼろになった空母を海底へ沈めるように新しく出現したのは。黄金の龍。その頭は成層圏にも達しかけており、その巨大さがよくわかるだろう。

 

 関東いちえんにとぐろを巻く神龍―――黄龍と呼ばれる存在である。

 

 今や、人型の女と男など豆粒のように思えるほどのサイズの戦闘が起こっていた。

 下から見上げるのは青い炎で出来た多頭竜。上から見下ろすのは黄金の龍。

 

 龍が吼える。ただそれだけで、分子レベルで万物が砕け散り、分解されていく。青い竜も少々怯んだが、微かに微笑んで見せると黄龍の動きが止まった。

 

「ほぉ。これもダメか」

 

 黄龍は大地の化身である。地球の地殻エネルギーの具神化であり、彼が死ねば地球そのものが死ぬといっていい。だがしかし、ヴリトラは豊穣や春をせき止める者。黄龍に対しては有利が取れる。

 

「わえを誰と心得るか。大地の化身など、せき止めてしまえば良いだけよ」

 

 黄金の龍体を、炎が駆け上がる。甘粕の身の丈を超え、炎の壁が立ち塞がるまで三秒も必要なかった。

 

「変幻の鱗にて閉ざさる天よ。地よ、大食の腭にて飲まるる地よ。その嘆きすら阻み塞ぐが大いなる蛇―――

 魔よ、悉く天地を塞げ(アスラシュレーシュタ)』!」

 

 宝具、真名開帳。ヴリトラの奥義が解き放たれた。

 アギトが広がり、甘粕を飲み込まんとする。蒼炎の龍体からすれば彼など豆粒のように小さく、逃すことなどありえない。甘粕に逃れる手段など存在しなかった。

 

 人外は人より強い。

 当たり前の法則の通り、彼は追い詰められる。

 

 だが――

 

 甘粕正彦は諦めない。

 

 なぜならば

 

「諦めなければ、夢はいつかきっと叶うと、信じているッ! 俺はまだ、まだ負けてなどいない――ッ!」

 

 吼えると共に、素早く印を結び、終の段を発動させる。

 呼び起こすのは最強に最も近しい神格。ヴリトラとも縁があるはずだ。ならばここの適任など奴しかいない。

 

唵・摩訶迦羅耶娑婆訶(オン・マカキャラヤソワカ)ァ!

 ――終段・顕象――」

 

 炎が全身を包む。牙を突き立てられて、血しぶきが上がる。一瞬後にはかみ砕かれ、死ぬだろう。

 だが()()()()()()()()のだから。

 

大黒天摩訶迦羅(マハーカーラ)ァァ!!」

 

 呼び出されるのはマハーカーラ。大黒天。つまり、破壊神の究極たるシヴァ神である。

 召喚された直後に、神話にて三つの悪魔の都市を滅ぼした三叉鉾が繰り出される。破格の威力を持つ一撃を前に、ヴリトラの宝具が吹き飛ばされた。

 

「……がッ、は。まさか、のう。――じゃが」

 

 現れた人体のヴリトラも無事じゃない。吹き飛ばされ、今も海に真っ逆さまに落ちかけている。

 

 だがこちらも甘粕と同類なのだ。ゆえに諦めることなく、竜の息吹(ドラゴンブレス)で決着をつけようとした。

 

 だが、だがしかし。

 

「やがて夜が明け闇が晴れ、お前の心を照らすまで、我が心を灯として抱くがいい──終段顕象

 

 (いで)い黎明、光輝を運べ──明けの明星!!」《/b》

 

 すでに対策済みだ。

 甘粕の頭上に、熾天使の証明(六枚翼)を広げた聖なる使者がいる。名は明けの明星、ルシフェル。サタンと堕ちる前の、最強最上格の天使である。

 

「もちろん、我が主。

 彼女は魔性。私が主の御名において、邪悪なる竜を裁きましょう」

 

 羽の一枚一枚から数千条のレーザーが放たれる。乱射される灼熱の破壊光線は一撃ですら彼女を滅ぼすには足りるだろう。だが安心しない、慢心しない、油断はない。全力で、必ず悪を滅ぼすのみ。

 

「ご、ぐ…………ごふ……ぁっ! キヒヒヒ……やりおる。

 いいじゃろう。わえは不滅の魔、この程度では死なん。じゃが、この勝負。わえの負けじゃ!」

 

 落ちていく。

 落ちていく。

 海に真っ逆さまに落ちた程度で、ヴリトラは滅びないだろう。天使の攻撃すら、一時的な致命傷にすぎず、完全に消滅しきることはできない。

 

 それがヴリトラという魔ゆえに。何度打倒されようとも、再び脅威として立ちふさがる。

 

 だが()()()()()()()()。存分に勇気は見れた、と。

 

 

 ヴリトラは、海の中に沈んでいった。




自分でも最後まで決着がどうなるか決めかねてましたが、こんな終わり方でどうでしょう。
せっかくFGOのキャラ出したし、甘粕なんて面白いキャラが暴れてくれたのでいろんな人に見てもらえるといいなあ、なんて思ってます。
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