※今回は二人に大和について会話させたかったので、記憶消去はしていません。
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↓↓以下本編↓↓
「迦具土神壱型か。随分懐かしいものを見た。よもやそこまで完全に近い姿で残っていたとはな」
「それは己も同じことだよ、九条榛士。大和の居残りは己のみだと思っていた」
鋼鉄で囲まれた、一キロほどの大きさの闘技場。その中央にて、二人の男が対峙している。
長い黒髪を持つ屈強な男と、長い金髪をなびかせた美男。
どちらも筋肉隆々、鋭く熱を持った眼差しは同じでありながら、後者の方が流麗、雅にしてか細い印象を与えるのは、きっと纏う気配のせいだろう。
黒髪の方はどこまでも
対する金髪の方は、人間離れしてしまっている。狡猾で知略的、理性的。人らしさを微かに感じるものの、その在り方はどこまで神仏などの超越者と変わりない。
「皮肉なものだな。おそらく俺がここまで至る1000年ほど前では、お前の方が機械的なヤツだった」
「人である御身が機械的になり、機械である己が人間的になる、か。否、そう不思議ではあるまいよ。
己の宿敵は人の極点であったが、どこか機械的な面も感じられた。あれが俗にいう、悟りというものであるならば。死なず、朽ちず、生き続ければ誰しも
生まれつき
ところで、と今度はカグツチから声をかける。
カグツチの目的と相手の、九条榛士という名前だった男の目的は一致するか否か。
「己は大和の再興を目指している。下ろす場所も決めた。
そちらも同じ目的で動いているのであれば、己に合流するといい」
カグツチにとってすればそれは地上に残された大和の遺物が皆考えることで、ゆえ必要なのはどちらが上か、という勝負のみ。ならばこそ、計画を明かしたのだが。
九条榛士──
「いや、大和を地上に下ろす計画は考えていないな。
俺はむしろ、大和は廃絶すべきと、そう思っているのだが」
爽やかに、当たり前の道理を説くように、お前が復活させようと思っているものを完全に亡きものにすると、男は告げた。
「なに………?」
流石のカグツチも、これには困惑しかない。
つまりこの男の言っていることは、故郷を棄てるという宣言なのだから。
まだ今の大和──
だがこの男はそんなことを望んでいなかったのだ。
もはや古き故郷は不要という境地に至っていた。
「そう驚くことでもないだろう?
俺は、俺たち研究員たちは世界を変える大破壊の原因を作った。
ならば、責任をとって、より素晴らしい世界に作り替えなければならない。
この世に生まれてきただけで幸福になれる──そんな理想の世界へと世界を
カグツチは咄嗟に、世界を変えた原因は他国の工作員による破壊工作だろう、と口を挟みかけた。
だが、しかし直後気付く。
彼にとって、もはや動機はさしたる問題ではないのだろう。
決めたから、誓ったから、最後まで貫く。その意思のみ。
「なるほど、なるほど……」
嬉しそうに、兵器は笑う。
その姿勢、その生き方、とことんまでに宿敵に似ていたがゆえに。
「であれば、もはや言葉は不要だな」
闘志を燃やすのみ。
それに応えて、グレンファルトもまた、剣を抜いた。
「ほぉ、本当に人間臭くなったな、お前。
であれば俺の神天地にて、お前も救ってやるさ。必ずな」
言葉は、同時に。
「天昇せよ、我が守護星──鋼の
「天創せよ、我が守護星──鋼の
それぞれの守護星へと、片割れへと、語り掛けた。
即座に応じる比翼。
これをもって、戦の火蓋が切られる。
「おお、輝かしきかな天孫よ。葦原中国を治めるがため、高天原より邇邇芸命を眼下の星へと遣わせ給え」
「天地陰陽、造化三神、別天津神、神世七代。
果て無く広がる八百万、葦原中津国を森羅の秩序が不朽と照らす。袂を分かった今でさえ高天原の繁栄を認めざるは得ぬだろう」
燃え盛る炎が、空気中に漂うのを視認できるほどの濃度へ達したエネルギー粒子たちが、鋼の空間を覆い尽くす。
「日向の高千穂、久士布流多気へと五伴緒を従えて。禍津に穢れし我らが大地をどうか光で照らし給えと、畏み畏み申すのだ」
「然れば、国津を生きる
たとえ勇者にあらずとも、我が黄金の宮殿は遍く祈りを歓待するのだ」
燃え盛る熱が鋼鉄たちを溶かしていく。
だが、更に熱く、暑く──迦具土神の光熱は上昇し続ける。
「剣と鏡と勾玉は、三徳示す
とりわけ猛き叢雲よ、いざや此の頸刎ねるがよい──
我は
「奈落の底から浄土まで、殿上人から貧夫まで。
誰そ彼時はもう過ぎた──万有、残らず
宝石が樹木の形をとって地面に繁殖していく。
次々成長し、空間に作用し、
先に比翼が反応したのは、カグツチの方だった。この世界の秩序を崩し、己の世界を創ろうとする男の横暴を、悪の敵は逃がさない。
『天翔けよ、光の翼──
絢爛たる輝きにて照らし導き慈しもう。遍く闇を、偉大な雷火で焼き尽くせ』
応、と答える代わりに、詠唱を結ぶ。
カグツチは今、神星から天を奏でる者へ進化しようとしていた。
「ならばこそ、来たれ
煌めく誇りよ、天へ轟け。尊き銀河を目指すのだ!
これが、我らの英雄譚──!」
しかしグレンファルトも負けてはいられない。
宝石樹は黄金に光輝き、膨大なエネルギーを放出し続けている。
そして、ついに。
『汝、至高の
至高絶対の
「拝跪しろ、
二つの太陽、二つの星が激突する。
苛烈なる光熱と、偉大なる支配者。
天と神。
大和が生んだ、二つのバケモノの全力が、今──。
「「
「
「
まず手始めに、摂氏にして数億度に達する炎の壁がグレンファルトに殺到した。相手が一般人であれば、熱せられた空気、そして炎の二つが相手を窒息に追い詰め、そして肉体を焼き焦がしていただろう。
火刑などの処刑において、罪人は焼け死ぬのではない。熱せられた空気により窒息するのだという。であれば、カグツチを中心として地球上でありえないほどの灼熱を発せられているこの空間は、人にとっては死地である。絞首台の上にいるのと変わらない。
更に相手は動き、相手を狙う星辰兵器なれば。
「オオオォ!!」
熱せられた合金製の拳をグレンファルトの顔面目掛けて放つ。一度ばかりでなく、二度、三度、否、何度でも。恐ろしく速くて重いラッシュで、相手の顔面を砕き、熱で焼き、即死させてやるといわんばかりに。
常に全力全霊を振るう光狂いであるカグツチに、手加減という概念は存在しない。
凄まじいがその一方、実に人外らしい戦い方といえるだろう。圧倒的な力でねじ伏せる、圧倒するという考えは、人より生まれながらに優れた存在のみに許された
ならばこそ、際立つのは人として生まれ、千年前には戦闘とは無縁であったはずの男の動き。
グレンファルト・フォン・ヴェラチュールは千年の努力でもって、生まれながらの優劣を覆す。
熱せられた空気が危険ならば、なるべく吸わなければいい。熱に関しては、
「さすがは第一世代型の
だがな。こうは思わないのか? 千年も時間があれば、苦手な分野は克服し、得意分野は伸ばしているはずだと。
約千年間、自力で立つことも出来ず思考以外の一切を封じられていたお前とは、努力の総量が違うのだよ」
努力、才能、頭脳、人脈、ステータス……
「だが──」
「まだだ、と言って理不尽にも覚醒するんだろう? 分かっているさ。だからこそ言わせてもらおうか。
カグツチの炎が奪われていく。
彼の周囲に集合するのは闇の因子、反粒子……すなわち、あらゆる異能の力を無効化し、それを引き起こす素粒子を毒に変えてしまうアンチ能力である。
「これは……ッ!?」
そう、これが
一切の差別なく、全世界の人間を運命の相手と引き合わせて極晃を描かせ、神へと変える能力。つまりは全人類規模のマッチングアプリというべきか。
神奏……グレンファルトと戦うということは、そうして生まれた大量の神と戦うということでもあるのだ。
カグツチのような、不屈で前向きで、頑張れる存在だけが、人類ではない。むしろ頑張らずに成功したい、もしくは成功者を蹴り落したいという人種は少なくないだろう。
そしてグレンファルトは、そういう人の良い所も悪い所も区別せず、願いを叶える機会を与えてしまう。力を与えてしまう。
するとこの場合、どうなるのか。
そう、力を持った屑たちは、カグツチのような雄々しく一度定めた道を突き進める人間に対して、自分勝手な羨望や劣等感に任せてカグツチを攻撃し始めるのだ。
目障りな優等生を排除するべく、なるべく努力せずに格上を袋叩きにするべく。
「しかしこの程度──」
だがしかし。そう、忘れてはならない。
カグツチは光狂い。生まれながらにして諦めるという感情を知らない落伍者である。
「まだだァッ!!」
全方位に解き放たれた熱波が、カグツチにまとわりついていた闇の粒子を吹き飛ばす。
たかが相性的な有利不利など、圧倒的な出力差でねじ伏せればいいと。
ゆえにカグツチの持つ力とは、無限出力上昇・核融合能力。ただ雄々しく、相手の小細工を踏み砕くものなのだ。
「
起爆装置を必要とせず、重水素と三重水素の核融合一段階から生み出された旧暦の戦略兵器。旧暦二十世紀から実用化を目指された、放射能を発生させない
核融合能力を持つカグツチは、大規模な装置を必要とせずそれを生み出す。
解き放たれる大熱量は絶望的なまでに巨大であり、この闘技場も欠片も残らず消し飛ばした。
だが、しかし。
「悪いが、
淡々と、事象非活性化能力を得た神が水爆を相殺する。
更には絶対零度や出力低下能力などが殺到すれば、カグツチの熱はぐんぐん失われるだろう。せっかく引き上げた出力も、直ぐに落とされては強みを活かしきれない。
──覚醒潰し。
グレンファルト・フォン・ヴェラチュールは、その術を心得ていた。
狙うのは完封。相手の為せる選択肢を潰し、
しかし忘れてはならない。
未だ、天奏と神奏の激突は、最序盤に過ぎないのだ。
後編へ続く。
天啓を得た。
とはいいつつ、見切り発車なので、後編はごゆるりとお待ちください。