キラキラ道場破りツアー☆   作:湯瀬 煉

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うーーーーん、結末に困る二人。
結果にいろんな意見があるかもしれませんが、取敢えず私の解釈ということで。

















以下本編


天奏vs神奏【シルヴァリオサーガのネタバレ注意】

 理性的に、冷静に、明らかに勝負をリードしているのは神奏だった。

 

 天奏の無限出力上昇能力は確かに凄まじい。核の炎は戦場を吹き飛ばし、消し飛ばし、融解させながら弾き飛ばしている。

 圧巻だ。ただ戦い続けるだけで、自分と同格かそれ以上の敵と戦っているという事実に奮い立つ度、カグツチは凄まじく強化されていく。

 

 大量の爆炎による圧殺、事象の地平線(ブラックホール)、そしてその果てにある縮退星まで。あらゆる技を尽くしたにもかかわらず。

 

「いいや」

 

「まったく」

 

「問題なし!」

 

 闇の粒子があふれ、絶対防御が防ぎ、絶対回避にて逃げ回り、破壊光線、自動追尾腐食弾、分子結合分解、強制冷却などの様々な極晃星(スフィア)が集まり、カウンターが叩き込まれる。

 

「出力無限上昇能力? そうさな、確かに驚異的かつ王道だよ。

 だが裏を返せば闇のような細かい理屈は介在しない単純なものだ。希望(ヒカリ)は恐ろしく理不尽だが、その分対策は当然詰んでいるさ。

 お前、迷惑だとか言われたことはないか? 邪魔だから消えてくれと、大義を踏みにじり自分のためだけに逆襲を受けたことはないか?」

「……つまりお前はこういうのか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と」

 

 グレンファルトは光に狂わない。闇に嘆かない。

 飽和した希望と絶望を力に変えて突き進む人間だ。

 だからこそ、希望だけを頼りに戦う光狂いを理性的に叩き潰せる。

 

「少なくとも、闇側の奴らはお前を逃がさないぞ。

 (人奏)ならばともかく、お前ではどうあがいても一対多数の構図からは逃げられんだろう。

 もちろんその()()の不利ではお前は倒せんのだろう。ゆえに()()()()

 

 言葉の直後、グレンファルトの周囲に存在していた極晃星(スフィア)は一つ残らカグツチに似た兵器――アメノクラトへと変わり、拳で、脚で、星光で、カグツチへと殺到していく。

 

 どこまでも正解。

 ゆえに負けない。圧勝の二文字を確実なものとしていく。

 

 相手が覚醒したならば?

 こちらは相手が覚醒するたびに殺意を増す闇をあてがえばいい。勝手に光狂いどもは戦いを挑んでいく。

 相手の出力上昇に合わせて勝手に周りの人々が出力を高めていくから、自分から何か手を下すまでもない。

 

 

 すべて読める。詰将棋の盤面は覆らない。

 なぜなら、千年間、国を治めるため、或いはかつての誓いのため、絶えず観察をやめなかったからだ。失敗を重ねるたびに、絶望を味わうたびに強くなって、成長するたび、勝利するたびに成長した。

 

「お前の執念、努力には敬意を払うよ、カグツチ。お前は凄まじい。

 だが、すでに大和からお前の任務は解かれているだろう。今や大和は俺に託されている。なあ、どうだ? 無謀な戦いは止めて、俺に協力しないか?

 目的と手段を間違えてはならんよ。お前の目的は大和を救うこと。そのための聖戦、そのための大和降誕だろう。ならば、ここで俺と争ってなんとする?」

 

 ならばこそ膝を折れと、言葉を尽くし正論を叩きつける。

 だが分かっている。光狂いはエゴで他人を救おうとする人種なれば、正論では止まらない。

 

 ゆえに。

 

「だからどうした? 己はその程度では止まらん」

 

「断て、ベルグシュライン」

「御意」

 

 瞬時、グレンファルトの背後に現れた剣士が刃を振えば、刃の射程よりはるか遠くにいるカグツチの四肢が、胴体が切断される。

 

 男の名はウィリアム・ベルングシュライン。斬空真剣(ティルフィング)のあだ名を持つ絶対剣士である。とはいっても、在り方は刀剣のそれに近しいが。

 主の呼び声に素早く反応し、仕事を粛々と熟す様は、まさに、仕事人という言葉が相応しい。

 

 さて、継戦能力は完全に奪った。 後は極晃星が殺到すれば、原子レベルにまで解体することも出来るだろう。

 存外に呆気ない終わりだった、と背を向けかけた刹那。

 

「……なに?」

 

 上半身だけになったカグツチが突撃した。

 迫り来る極晃星を、熱量で押し返していく。この光景に、さしもの神奏とて瞠目──しない。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 肉薄したカグツチの首を、自らの剣で切断する。

 光狂いなら、上半身だけでも残っていれば来るだろう、と。相手の狂気を信じ常に手を用意している。

 千年間の、努力と研鑽、経験が揃えば敵は無し。ならばこそ勝利は確定した。

 

 希望と明日と光しか知らないような狂人など光も闇も清濁併せ呑んだ神にどうして敵うだろうか。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、ようやく剣を下ろした。

 

 次の瞬間。

 炎に包まれる総身。

 

「な……ッ!?」

 

 今度の声は、嘘でも何でもなかった。

 本心からの驚きだった。

 

 なぜなら、カグツチは斬首されたはずで───

 

()()()()()()()()()()

 ()()()ならばやったし、ならば己に出来ぬ理屈はありはしないッ!」

 

 あの男といわれて、浮かぶのは一人しかいない。

 クリストファー・ヴァルゼライド。

 近年最大の、光狂い。

 

 奴への対抗心ひとつで、目の前の兵器は首だけとなりながらも戦い続ける。

 そんな理不尽が、あってたまるかと言いかけた瞬間。グレンファルトの目の前で、再び常識が木っ端微塵に砕かれる。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 日はまた昇る。

 いつまでも、永遠に。希望の(ほむら)は尽きないのだから。

 

「いや、ありえんだろう。

 因果律の破壊はあくまで極まった集束性が成せる業であって、出力が極まっているだけのお前にはできる芸当では無い……!」

 

「ああ、だから、それがどうした?

 曰く()()、曰く()()、曰く()()などと……。貴様は誰に物を言っている。

 貴様が諦めているだけのものを、なぜ己まで諦めねばならんのだ」

 

 大量の闇の眷属は圧倒的な出力で潰した。

 光狂いどもは、滾る戦意で打ち勝った。

 そしてグレンファルトの剣は、復活してさらに強度を増した両腕で弾き、或いは斬撃事象そのものを粉砕した。

 

 目の前に立つ障害物を、ただ圧倒的な出力差で轢殺する。

 王道にして覇道。誰もが一度は憧れそして挫折していく、どこまでもまっすぐで正々堂々とした戦いぶり。

 

 ―――英雄譚が、幕明けた。

 

「神奏よ。貴様の理念は凡そ理解した。

 おそらくは、そ知らぬ他人との出会いなど苦痛であると、真に運命の相手以外との出会いは無意味であり、運命の相手との出会いこそ最高の幸福である、と。

 なるほど確かに、己は宿敵と出会って変わったろうよ。道は開かれ、己自身も大きく成長したと思っている。だが、だからといって宿敵とのみ邂逅したからなんだという? 己の救うべきは宿敵にあらず、顔も名前も知らぬ大勢の誰かであるというのに。

 そも、会いたい者としか出会えぬ世界の創造それすなわち救済であると?

 極晃星(スフィア)などという、魔法のランプを手に入れてなお、ただ人と人が出会わなければいいなどと、現実的な()()()で済ませているのは何故だ?」

 

 ここまで言われて黙って聞いているグレンファルトではない。

 そもそもカグツチは世界の救済など欠片も興味はないだろう。ならばこそ

 

「諦めであると? ほぉ、そこまでいうならば貴様はなんだ。

 俺の理想を否定する前に、大和一国のみを救う気しかない自分を顧みたらどうなんだ。結局のところ独りよがりだろう。大和にすら拒絶されただろう。

 お前のは、諦めないのではなく、単なるわがままだろう。言葉があるならば言ってみろ!」

 

 そう思うのは仕方のないことであり。

 かつ紛れもない事実だ。誰からも求められていない救いなど、単なる本人の自己満足にすぎない。まだ、求められているグレンファルトの方が納得できるというもの。

 出来る者、出来ない者、どちらも救われるベストプランを打ち立てた。問題点があれば修正するのみ。

 

「ああ、我がまま、自己満足、そう言われるのも仕方はないな。

 だが、そこに何の問題があるのだ?」

 

 ゆえに、カグツチの答えはまったく予想外以外の何者でもない。

 

「一度、すでに決めたのだ。

 ならば貫くのみよ。求められているか、いないかなど些細な問題にすぎない。

 貴様の願いは貴様のものであろうがよ。それを他人がどうこう、世界がどうこうと、生きた長さと己の視点の高さを盾に、それらしい理屈を捏ねて正当化するのは止すがいい。

 我らの聖戦(イノリ)は、あくまで我らの戦い(モノ)であったように。

 貴様の神天地(セカイ)はあくまで貴様の世界(イノリ)なのだ。

 他人という盾を最後まで外さなかった貴様は、己に勝ち目などない―――!」

 

 完璧とはいえない論破。しかし誰にも劣らぬ熱意をもって語られた彼我の差異。

 グレンファルトが唖然とする間に、すでに決着の一撃は繰り出された。

 

 無限出力によって事象を粉砕する鉄拳により、神奏は敗れたのだった。

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