待っていたのか柱間ァ!(現代で)   作:駅員A

4 / 9
柱間・マダラ  →11歳(小5)
扉間・イズナ  →10歳(小4)
瓦間・うちは3男→ 7歳(小1)
うちは4男   → 6歳(年長)
板間      → 4歳
うちは5男   → 3歳


わくわくBBQぞ!

 バーベキューの日がやってきた。

 その日のうちは家は朝から大忙し。

 特にマダラはタジマと共に準備係なため、買い出しにも着いて行った。

 

「今日は千手一家も来るから心して買いに行こう」

「父さま。多分、柱間の家は良く食う連中ばかりだ。多めの方がいい」

「ああ。千手仏間の食いっぷりで想定済みだ。安心なさい」

 

 マツダCX-8を運転しながらタジマは息子の言葉に頷いた。

 マダラは父の反応にふと思い出した。

 

――そういえば父さまは柱間の父親と年に一回だけ飲みに行く間柄だったか……そんな状態でよくバーベキューになんか誘ったもんだ。……俺らのためか?

 

 マダラは助手席で気になるものの、どう尋ねればよいのか分からず、結局前を向いた。

 そんな息子の挙動に気づいたタジマが尋ねた。

 

「マダラ、どうした」

「……父さまはなぜ柱間の父親たちを家へ招いたんだ? 俺と柱間はともかく、父さまたちはそう親密な仲でもないのだろう」

「ふっ……そんなことか…………我が子を殺し合わずに済む今の世に俺も奴も思う所があった。それだけの話だ」

 

 ちょうど赤信号で止まったタジマはポンポン、とマダラの頭を優しく叩き、すぐハンドル操作に戻った。

 イズナたち弟を撫でる姿をよく見ていたマダラはまさか自分もされると思わず、むずがゆいながらもどこか嬉しく思った。

 

 

 しっかりと肉とその他の具材を買い付けたマダラたちは帰宅した。

 家では母親が子供らの面倒を見ながら待っていた。

 買い物袋を抱えるマダラに気づき、母が声をかけた。

 

「おかえりなさい。マダラ、重たいでしょう。私が持つわよ」

「いや、このぐらい平気だ、母様」

「僕も運ぶの手伝うよ、兄さん!」

 

 イズナを始め、弟たちも「僕も」「僕も」「僕も」と荷物を持とうとする。

 

「兄さん一人で持てるから平気だ! お前らは火を仰ぐようの団扇を用意して居間で待ってろ」

「はーい!」

 

 下の弟たちは素直にてけてけと駆けて行った。

 イズナだけは心配そうにマダラを見るも、

 

「イズナはアイツらの面倒よろしくな」

 

 と兄直々に頼まれては言うことを聞かざるを得なかった。

 母親はそんな息子たちを微笑ましく見つめ、マダラと共に台所へ向かった。

 まだ正午まで時間があるため、肉類は冷蔵庫に保存し、母親は野菜のカッティングに入った。

 マダラは弟たちの方へ行こうと思ったが、調理準備を進める母の姿が気になった。

 

「母様。俺も手伝うよ。一人じゃ大変だろ」

「あら、ありがとうマダラ。でもね、一人じゃないから平気よ」

「え?」

 

 首を傾げたマダラの後ろからぬっとタジマが現れた。

 

「マダラ、こちらの準備が済むまで少し遊んでいなさい。串刺しの時間になったらまた呼びに行く」

「父さま? もしかして、いつもバーベキューをする時は父さまも一緒に調理していたのか?」

「何を今更。家族七人分の準備を一人でさせるのは大変だろう。私だって野菜を切るぐらいできる」

「父さまは火加減を見るのも上手だけど、切るのも上手なのよ」

 

 悪戯っぽく笑いながら母親が言うと、タジマはタジタジになりながら恥ずかし気にそっぽを向いた。

 

「と……父さまが…………」

 

 そりゃあ、前世では猛者たちを切って来た父だ。

 刃物の扱いは慣れたものだろう。

 だけど今世では包丁を握り、華麗な手つきでニンジンを切っている。

 しかも母と一緒に調理場に立ってなんだか嬉しそうだ。

 

 忍者だったころとのギャップをまざまざと感じてしまったマダラはふらふらとキッチンを出ていき、弟たちのところへと急いだ。

 

「相変わらず上手ね、タジマさん」

「ふふ……固いものは全部私に任せてください」

 

 記憶では厳格だった父が母には甘い声を出しているのが後ろから聞こえてしまい、そちらでのギャップからも逃げるため、マダラはさらに急ぐのだった。

 部屋に駆け込むとイズナがびっくりした顔で聞いてきた。

 

「兄さんどうしたの? お化けを見たような顔して」

「ある意味お化けより怖いものを見た……いや、聞いた…………」

 

 とりあえず動揺を鎮めるため、マダラは手当たり次第に弟たちを集め、その頭を順にぐりぐり撫でていった。

 忍のころの記憶と全く違う優しい父に戸惑った時はこの弟セラピーが効果的だ。

 弟たちも大好きな兄に撫でられ大喜び。

 ぎゅうぎゅうと抱き着く弟たちに囲まれ、ようやくマダラは平静を取り戻した。

 

「お前たち、串刺しを手伝ってくれないか。みんなおいで」

 

 なのに、準備を終えたタジマが呼びに来たので再びマダラはビクッとしてしまった。

マダラはとにかく無心で弟たちと一緒に野菜や肉を串に刺し、そうしているうちにショックも和らいだ。

 庭ではタジマがコンロと炭の用意を終え、準備万端となったころに千手一家がやって来た。

 

「本日はお招きいただき感謝する。うちはタジマよ、こちらは土産だ」

「おや、お気遣い頂かなくて良かったのに……ほぉ、これはこれは」

「親族に美味い果物を作る者がいるからその詰め合わせだ」

「見るからに美味しそうです。あとで皆で食べましょう。感謝いたします、千手仏間」

 

 門の前で挨拶を交わす父親たちにしびれを切らした柱間が、タジマの後ろに控えていたマダラに手を振った。

 

「マダラ! 約束通り来たぞ! 今日は楽しみだの!」

「兄者、少しは落ち着いてくれ……」

「柱間兄者、あの人が親友のマダラさん?」

「怖そう……」

 

 今日は扉間だけでなく、その下の瓦間と板間も来ている。

 末っ子でまだ3歳ほどと幼い板間は不安げに柱間の影に隠れた。

 

「板間! マダラはああ見えて弟思いの優しい男ぞ! 怖くなんかないから安心しろ!」

「ほんと?」

 

 初対面の子供に「怖そう」と言われ、密かに傷ついたマダラをそれを隠すため威勢よく挨拶した。

 

「俺はうちはマダラだ! テメーみたいな弱そうな砂利、いじめなんざしねーよ!」

「やっぱり怖そうだよ!」

「うぐっ……」

 

 板間の素直な反応はマダラを深く傷つけた。深く。

 そんな板間を抱き上げたのは扉間によく似た白髪の美人な女性だった。

 

「ごめんなさいね、マダラ君。末っ子の板間は少し人見知りなの」

「別に気にしてねーし」

 

 マダラは答えながらもなんだか気まずく感じた。

 

――柱間の母親って女版扉間じゃねーか……

 

 前世で扉間の成長した顔も見ているマダラとしては、優し気な女性の顔に小生意気な親友の弟がチラついてしまい、ゾワゾワした。

 

「ここで立ち話もなんですからどうぞ中へ入ってください。もう庭の準備はできております。我が家の者もそこで待っていますよ」

 

 タジマは会話を切り上げ、千手一家を中へと案内した。

 庭ではマダラの母が子供たちと一緒に待っていた。

 親同士は簡単に挨拶をかわし、子供は子供で集まった。

 

「兄さま! 初めて見る子がいっぱいいるよ!」

「小学校でも見たことないなぁ」

「どこの幼稚園の子だろう」

 

 イズナ以外の弟たち三人は興味津々。

 千手側も板間と瓦間が話していた。

 

「瓦間兄者! 僕より小さい子がいるよ!」

「そうだな。俺と同い年の子はいるのかな……」

 

 弟たちは気になってはいるものの、お互いに遠巻きに見ているだけ。

 というのも、二番目の兄のイズナと扉間がにらみ合っていたからだ。

 

「お前も来たのかよ。千手扉間!」

「招待を受けたからに決まっている。まさか貴様、この俺だけ来るなと言いたいのか?」

「そんなことは言ってない。僕の弟たちをいじめたら許さないからな」

「それはこちらとて同じこと」

 

 そんな二人の間に兄たちが乱入した。

 

「扉間、そう気を荒立てるな」

「イズナ、いじめなんか俺がさせないから安心しろ」

 

 長男が主導のもと、初めて顔を合わせる弟たちもようやく自己紹介し合うことができた。

 そして、河原でのことを知らない下の弟たちはすぐに打ち解けた。

 

「板間くんはお肉好き? 今日はいっぱいお肉が食べられるんだよ!」

「やったぁ、お肉大好き! ねえねえ、君何歳?」

「僕は3歳!」

「やっぱり僕より年下だ! 僕は4歳! えへへ、僕の方がお兄さんだね」

 

 末っ子同士で気が合うのか、マダラを怖がっていた板間はうちは家の末っ子に笑顔を見せた。

 瓦間はと言うと、うちは家の三男と四男と話していた。

 

「俺は木ノ葉第二小学校の一年生だ。お前らは?」

「俺も小一」

「僕は来年小学校に入ります! でも、僕らは第一小だから瓦間君とは違うのですね……」

「俺らの家って結構近いからすぐ遊びに来れるぜ。今日は父上の車で来たけど、歩いても来られる距離だって柱間兄者が言っていたから」

 

 柱間は交流を重ねる弟たちを見て目をうるませた。

 それに気づいたマダラはギョッとした。

 

「おい柱間! テメェ、なに泣いてんだよ!」

「だってのぉ、マダラ……俺らの弟が……俺らの弟が談笑しておる……! こんな平和な光景が見られるなんて……!」

「ったく、落ち込み癖だけじゃなくて泣き癖もあったのかよテメーは!」

「そう言っているマダラも目がうるんでおるぞ。俺には分かるぞ」

「うるせーよ! 煙が目に染みただけだ!」

「まだ大して肉も焼いとらんのに……」

「父さま! 俺も焼くのを手伝う!」

 

 柱間の追及から逃れるため、マダラはすでに焼き始めた大人組に加わった。

 それを皮切りに弟たちもバーベキューコンロに並べるお手伝いをやりたがったので、コンロの周りは騒がしくなった。

 そして、肉が焼けるとさらに騒がしくなった。

 

「美味い! マダラ、この肉は美味いのぉ!」

「おい柱間! そこの肉はまだ焼きが甘いからもう少し待て!」

「兄さん! この串刺し、僕が作ったから食べて!」

「ああ、イズナ。ありがとうな。すごく美味いな」

「兄者! それは俺が育てた肉だ!」

「ガッハッハ! すまんすまん! 美味かったぞ扉間!」

 

 子供らは混沌とする中でわいわいと楽しく食べていた。

 大人たちも子供らから目を離さずに焼きながら談笑もしていた。

そんな中、千手家の末っ子板間が父の仏間に近づいた。

 

「父上~! この串刺し、みんなと一緒に焼いたの! 父上にあげる!」

「おおおおおーーー! 板間ぁああ! すごく上手に焼けたなぁ! うーん、すごく美味しいぞぉ! 板間は天才だぁ!」

 

 焦げた野菜の刺さった串をパクっと食べた仏間はデレデレの顔で末っ子を抱き上げた。

 この様子にマダラはギョッとして、柱間はスンとした顔になった。

 

「お、お前の父親……あんなキャラだったのか……?」

「父上は末っ子の板間を特に可愛がっておる……俺もようやく慣れてきたころぞ…………」

「そ、そうか……お前も苦労するな」

 

 大抵の物事は豪快に受け入れる柱間であっても、戦国の世とのギャップが大きすぎる父親の姿について行くのは困難だったらしい。

 初めて見る柱間の静かな顔つきにマダラは少し同情した。

 が。

 

「ふふ……仏間さんもあなたと同じぐらいに子煩悩みたいね」

「……私以外の男を下の名前で呼ばないでください」

「あら、ごめんなさいね。タジマさん。ふふふ……」

 

 いちゃつく両親の声が聞こえてしまったマダラも柱間そっくりの顔になった。

 それに気づいた柱間はマダラを慰めるように肩に手を置いた。

 

「お互い、今の世に慣れるのには苦労するの。マダラよ」

「だな。やっぱりイズナたちは思い出さねー方が幸せだと思わないか?」

「むむ……それもそうかもしれんのぉ……」

 

 柱間の視線の先には扉間とイズナがいた。

 妙にぴりついた空気を醸し出す割にはなぜか離れようとはせず、他にもコンロはあるのに同じバーベキューコンロをつついている。

 

「おい扉間! その肉、あともう少し待て」

「俺の家ではこのぐらいで食う」

「千手家はせっかちだな。火入れに関してはうちはが日本一。黙って言うことを聞け」

「フン、そこまで言うなら待ってやろう」

「そこの野菜はちょうど焼けごろだぞ」

「貴様。人の世話ばかりじゃなくて少しは自分も食ったらどうだ」

「お前に言われなくても食べてるよ」

 

 口調は険悪だが、殴り合いの喧嘩が始まる気配はない。

 そこにうちはの末っ子が来た。

 

「イズナ兄さん、僕もお肉食べたい!」

「よし、兄さんがとってあげるぞ。ほら、これなんかどうだ? ふーふー……はい、あーん!お食べ」

「あーん! 美味しい!」

「ふふ……野菜もちゃんと食べるんだよ。ああ、扉間。そこの肉、ちょうどいいぞ」

 

 末っ子の肉は息を吹きかけ冷ましてから優しく食べさせたイズナは、扉間の方に向いた時だけぞんざいな口調となった。

 扉間はその変わりようを大して気にすることなく、先ほど止められた肉に箸を伸ばし、食べた。

 

「む! 確かに肉汁の旨みがより感じられる……」

「だろう? お前もその程度の違いが分かる舌は持っているみたいだな」

「兄者のバカ舌と同じにするな……にしてもイズナよ。貴様、肉を冷まして食べさせるなんて、少し過保護すぎないか?」

 

 すでにうちはの末っ子はピューンっと別のところへ駆けて行った。

 そのため、再び二人きりになった扉間がイズナに言うと、イズナは表情を険しくした。

 

「なんか文句あるのか?! 可愛い弟が火傷をしたら大変だろう!」

「いや、もし火傷をしたら自分で加減を覚えるだろうが。箸の練習代わりに自分で食べさせたらどうだ」

「俺ら兄弟は父さまが教えてくれたおかげでみんな箸ぐらい使えるんだ! 今更練習なんて必要ない!」

 

 言い争いに発展しそうになった時、二人のそばで食べていた瓦間が「あちっ」と言った。

 すぐさまイズナが気づいてジュースを差し出した。

 

「はい、瓦間くん。冷たいジュースだよ」

「ありがとう、イズナくん」

「どういたしまして。……ほれ見ろ、扉間」

 

 イズナの勝ち誇った表情に扉間は顔をしかめた。

 

「この程度よくあることだ。瓦間、次からは気を付けて食え」

「へへ……柱間兄者がパクパク食べているから俺も平気だと思って」

「兄者は熱湯も平気で飲めるおかしな口をしている。自分も同じだと思うと痛い目に遭うぞ」

 

 なんだか自分の名前が出されている気がする柱間は扉間たちのいるところへ近寄った。

 それにつられてマダラも。

 

「扉間、呼んだか?」

「兄者、無茶苦茶な食い方は控えてくれ。瓦間が真似をして教育に悪い」

「俺はいつも通りに食っておるだけだぞ」

「網から直接冷ますことも無く口に入れるなんて常人のやることではない。なぜそれで火傷しないのか不思議だ」

「そうは言ってものぉ……その方が美味いから仕方あるまい……むぐむぐ。ほれ! やっぱりこっちの方が美味いぞ!」

 

 実際にやってみせた柱間にマダラは危機感を抱き、弟たちを集めて注意喚起した。

 

「いいか? 焼いたものは少し冷ましてから食うように。絶対に柱間の真似をするなよ。いいな? 絶対だぞ?」

「マダラ、それではやれと言っているようなものぞ」

「お前は少し黙ってろ! このいかれ舌野郎が!」

「ひ、ひどいんぞ……バカ舌よりももっと悪くなっとるぞ……」

 

 ズーンと落ち込む柱間は放っておき、マダラはバーベキューが終わるまで弟たちが柱間の真似をしないか見守り続けた。

 




 みんなでバーベキューを楽しんでいた時のこと。
 子供たちで一つのコンロを囲んでいた時、扉間は焼けすぎた野菜串を見つけてしまった。

「(みんな肉ばかり食うせいで焦げてしまったな……)板間」
「どうしたの? 扉間兄者」
「この串はみんなで焼いた串だ。せっかくだし、父上に食べさせてあげよう」
「じゃあ、僕が渡してくる! …………父さま~」

 末っ子から渡された焦げた串を仏間は大喜びで食べるのだった。
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