待っていたのか柱間ァ!(現代で)   作:駅員A

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差せ! 回転寿司!

 マダラ家の一大イベント。

 それは回転寿司へ行くことだ。

 

「みんな、心してかかるように」

 

 ゴクリと気合を入れるタジマとうちはの兄たち。

 無邪気にワクワクしているうちはの末っ子3歳。

 

「ピーナッツちゃんが欲しいなぁ」

「ガチャガチャが当たるといいわね」

 

 ワクワクする末っ子に微笑みかける母親。

 一行はテーブル席へとついた。

 席の上にはガチャガチャが鎮座し、景品のラインナップも描かれている。

 その一つを指さした末っ子が嬉しそうに言った。

 

「あれあれ! ピーナッツちゃん!」

「ああ。俺らで必ず当ててやるからな」

「昼飯は抜いて来たから準備は万端……」

「いっぱい食べるぞ!」

「絶対当てる……!」

 

 気合を入れなおす四人の兄たち。

 その中でもひときわ気合満々なのがタジマだ。

 

「お前たち、食べたいものがあったらすぐに言いなさい。父さまが余すことなくとってやろう。ああ、もちろんあなたが食べたいものも」

「頼りにしているわ、タジマさん」

 

 寿司が回るレーンの真横の席を陣取るタジマに妻は端の席から笑いかけた。

 タジマの向いにはマダラが座り、同じようにどんな寿司も取る意気込みでいる。

 

「まずは稲荷と茶碗蒸しを頼もう。いつも通り、マダラは稲荷が二つ。みんなは一つずつでいいかな」

「父さま! 俺は今日……三つ食べる!」

「そうか……気合を入れているようだな。よし、イズナ。稲荷の合計は?」

「十だよ。僕も今日は二つ食べるから」

「素晴らしい計算力だ。頼んでおいたからみんな、流れて来るものも好きに食べなさい」

 

 慣れた仕草でタッチパネルを操作するタジマ。

 その間、マダラはイズナと協力して父と母の分のお茶を用意した。

そして母はというと、三男、四男と共に子供らのお水を取りに行っていた。

うちは一家はレーンの上流側にマダラ、三男、四男、母親、そして向かいの席にタジマ、末っ子、イズナと座っていた。

 みんなの飲み物が用意されれば寿司パーティーの開幕だ。

 

「父さま、玉子が食べたい」

「これだな。ほら、お食べ」

「マダラ兄さん、僕らマグロが食べたい」

「あ、兄さん、僕もマグロが食べたいな」

「マグロだな……ちょうど連続で流れてきそうだ。母様は?」

「じゃあ私ももらおうかしら」

 

 マダラとタジマで協力して取り、テーブル内でも子供らが端まで流していく。

 見事な連携技だ。

 そのうち、注文していた稲荷が到着する知らせがタッチパネルに来た。

 ビューンと来たのは稲荷が五皿。

 

「先にお前たちで食べなさい。すぐに追加で五皿注文する」

 

 一度に取れる量を考えての分割注文だ。

 マダラと稲荷をテーブルに置いたタジマはすぐタッチパネルに手を伸ばした。

 その時、店員が茶わん蒸しを持って来た。

 

「残り三人分もすぐお持ちしますね~」

 

 一度に七人分はさすがに持って来れなかったようだ。

 

「みんな、熱いから注意してね」

 

 廊下側の席で受け取った母が注意しながら奥へと器を流していく。

 すぐに残りの分も到着したため、テーブルの上はぎゅうぎゅうになってしまった。

 そんな中、イズナとマダラがテキパキと空皿をまとめ、回収ゾーンに落としていく。

 ガチャガチャは五皿溜まると回せる。

 早速、最初のチャレンジが始まった。

 

「わあ! ピーナッツちゃん、当たるかなぁ……」

 

 ワクワクする末っ子とドキドキする家族。

 だが。

 

「ああ……ハズレだぁ……」

「すぐに当たるのも面白くない。まだ始まったばかりだから気にするな」

「そうだぞ。これから当てるんだからな」

 

 口々に末っ子を励ましながら茶碗蒸しを食べる面々。

 そんな中、イズナが手に取ったのは末っ子の茶碗蒸しだった。

 

「ほら、これは熱いから僕がふーふーしてあげる」

 

 末っ子はひな鳥のように口を開けてイズナが冷ますのを待った。

 その様子をマダラはうらやまし気に見た。

 

「な、なあ。俺もやろうか?」

「いや、さすがに僕、自分で食べられるよ」

「僕も」

 

 三男と四男に断られ、ちょっぴり寂し気なマダラ。

 何回かイズナが末っ子に食べさせていたが、見かねたタジマが声をかけた。

 

「イズナ。冷めてしまうから自分の分を食べなさい」

「僕、平気だよ。父さま」

「いいから食べなさい」

「イズナ、母様がふーふーしてあげようか?」

「か、母様! 僕、自分で食べられるよ!」

 

 母にからかわれ、イズナは仕方なく父に役目を代わった。

 そして自分の茶碗蒸しを食べながらふと思い出した。

 

――そういや前のバーベキューの時、扉間の奴にふーふーを過保護だって言われたな。ふん、これがうちはのやり方だ。文句なんか言わせるもんか。

 

「貴様も来ていたのか、うちはタジマ」

 

 突然の声。

 うちは一家のテーブル席を通りがかったのは千手仏間だった。

 そしてその後ろには柱間たちが。

 タジマは末っ子に食べさせながらカッと目を見開いた。

 

「千手仏間! なぜここに?!」

「今日は寿司の日だから家族で来ただけだ。どうやらそっちも同じようだな。やや、奥方。今日も麗しいようで」

「私の妻を視界に入れないでください!」

「いや、それは無理だろう!」

 

 思わず突っ込む仏間に扉間が後ろから声をかけた。

 

「父上。ここは店内だ。立ち止まっては他の客に迷惑をかける。行こう」

「む……そうだな。では我々はこれで」

「ふふ……お騒がせしましたね、うちはさん」

「いえいえ、こちらこそすみません」

 

 通りすがりに仏間の妻とタジマの妻で微笑み合った。

 夫たちはちょっと気まずい表情。

 扉間は、末っ子に食べさせていたタジマを見て、(うわっ! イズナだけじゃなく父親も冷まして食べさせるんだな……)なんて心の中で驚いていたし、イズナも扉間がそう思っていることに気づいた。

 最後尾に板間と歩いていた柱間はうちは家のテーブルに気づいてマダラに手を振った。

 

「おお! マダラ! お主も落花生ちゃんとやらを取りに来たのか?」

「ちげーよ。ピーナッツちゃんだ。あとお前はガチャ回すなよ。縁起が悪いから」

「扉間と同じことを言うなんてひどいんぞ……俺だって兄として弟の欲しいものを当てたいぞ」

 

 落ち込む兄を気にせず、板間も末っ子に手を振った。

 タジマにふーふーしてもらっていた末っ子もそちらに気づいてニコニコした。

 

「あ! 板間君だ! あのね、玉子も稲荷も美味しいよ! あと茶碗蒸しも!」

「じゃあ僕も食べる! 柱間兄者! 扉間兄者が呼んでいるから行こう!」

「うむ! 板間、俺がお前の欲しいものしっかり取ってやるからな!」

「うん!」

 

 てけてけと子供らが歩いた先、そこはうちは家と廊下を挟んだ隣の席だった。

 

「って、なんでオメーらがそっちにいるんだよ!」

「ガハハ! こんな偶然もあるんだなぁ!」

 

 マダラが突っ込むと、柱間は大笑い。

 父親たちはますます気まずそうだが、母たちも次男以外の子供らも気にしていなかった。

 

「父さま~、茶わん蒸し食べたい~」

「おお、すまない。フフ……こうしているとお前らがまだまだ小さかったころを思い出すな。マダラが赤子の頃もこうして食べさせてあげたものだ」

「お、俺に?! そんなまさか! 覚えてねーぞ!」

 

 タジマの言葉に愕然とするマダラに母も笑って加わった。

 

「だってまだ赤ちゃんだったもの。タジマさん、初めのころはすっごい緊張して食べさせていたのよ」

「そ、そうでしたかね……」

 

 いきなり暴露されタジタジになるタジマ。

 そして到着した残りの稲荷。

 マダラはイズナと協力してこちらもテーブルに乗せた。

 

「やっぱ回転寿司は稲荷がねーとな」

 

 マダラは好物を堪能しつつ、茶わん蒸しも食べ進めた。

 一方、千手家のテーブルは盛り上がっていた。

 

「どれも美味そうだなぁ! お、玉子が流れて来たぞ!」

「食いたいと言っていたのは板間だったな。瓦間は?」

「俺は次に流れる赤貝の方が食べたい」

「貝類も美味そうだなぁ! よし、俺も食うぞ!」

 

 うちは家と違い、千手家はレーンに近い席を子供らに渡し、大人たちはタッチパネルで注文している。

 

「お前たち、一気に取りすぎないよう気を付けなさい」

「父上。あおさの味噌汁と茶碗蒸しを頼む。瓦間と板間は?」

「僕はどっちもいらない」

「俺はポテトが食べたいな」

「だそうだ。兄者はラーメンだったか?」

「おお! カニ味噌ラーメンとやらが食いたいの!」

 

 子供らはレーンに流れてこないものを中心に頼み、寿司は流れて来るものからみな好きにとっていた。

 食欲旺盛な子供たちはバクバク食べ、どんどん皿を回収ゾーンに入れていく。

 

「板間! さっそくガチャガチャが始まったぞ! おっ! この馬が一位になれば当たりみたいぞ! 差せ! 差せ!」

 

 競馬を模したゲームが表示された画面に向かって「当たれ」と念じる柱間だが、表示された文字は「ハズレ」だ。

 これには末っ子の板間もがっかり。

 

「ああ……当たらなかった……」

「板間、こういうのは機械で確率が調整されているものだ。食べているうちにアタリも来る」

「扉間の言う通りだぞ板間! まだまだこれからぞ!」

 

 兄と共に末っ子を励ます扉間はついでに念を押した。

 

「兄者。今後、皿を入れるのは俺がやる。兄者は積み重ねるだけにしてくれ。いいな」

「おお、いいぞ! お主、意外とそういうのが好きだったのか」

「違う! 兄者が入れたんじゃ当たるものも当たらん! 兄者の外し方は確率を超えておる!」

 

 バスのボタンを押したがる子供のように、扉間が皿を回収レーンに入れたがっていると思った柱間だが、すぐ本人から否定され、さらに落ち込むようなことを言われてしまった。

 ズーン、と肩を落とす柱間をよそに扉間はバクバクと寿司を食べる。

 

 そうやって千手家もうちは家も食べてはガチャを回していった。

 大家族だからかその回数も多い。

 すると、うちは家の末っ子が大はしゃぎ。

 

「当たったー!」

「ほら自分で開けてみろ」

 

 マダラに渡されたガチャガチャのボールを開ける末っ子だが、すぐにその声が暗くなった。

 

「ああ……ピーナッツちゃんじゃない……」

 

 どうやら彼が欲しかったキャラクターじゃなかったらしい。

 

「待ってろ! すぐに俺がもう一回回してやるからな!」

「マダラ、もうお腹いっぱいでしょ。やめなさい」

 

 末っ子のために気合を入れるマダラを母親が止めた。

 

「しかし一人もう一皿ずつぐらいならいいんじゃありませんか?」

「ダメです。タジマさん、ただでさえこの子たちはいつもより食べているのよ。今日はここで終わり。ピーナッツちゃんじゃなくても可愛いわよ。ね?」

「……うん。僕、落花生ちゃんも好き」

 

 末っ子が自分に言い聞かせた時。

 

「おお! 板間良かったな! 落花生ちゃんが当たったではないか!」

「柱間兄者、これはピーナッツちゃんだよ。まあ、こっちも好きだからいいけど……」

 

 柱間の大声につられて聞こえて来た会話。

 

「ねえ、兄さん……」

「ああ。互いに欲しいものが出たみてーだから交換を申し出るのも手だが……」

 

 マダラは言いつつもためらった。

 

――とは言ってもどう切り出しゃいいんだよ。こっちが欲しいもんが出たから交換しろって頼むのか?

 

 すると向こうから扉間の声が。

 

「板間、あちらはピーナッツ狙いだったが落花生が出たらしい。ちょうど良いから交換を申し出てみろ」

「おお! それはまさにタイミングが良いの! ほれ板間、聞いてみろ」

 

 柱間たちが促している間に、すでに互いの両親は見守りモードに入っている。

 マダラたちも間に入りたいのを我慢し、末っ子たちを見守った。

 すると。

 

「板間くん、落花生ちゃんとピーナッツちゃん、交換しない?」

「うん! ちょうど扉間兄者に言われて僕も聞こうと思っていたところだったんだ」

 

 あっさりと交換し、どちらの末っ子も嬉しそう。

 

――扉間のおかげで解決したみてーな感じで癪だな。まァ……弟の喜ぶ顔が見れたし、ちょっとだけ感謝してやってもいいぜ。

 

 自然とマダラの顔には笑みが浮かんでいた。

 




「父上! もう一度ガチャを回したら次も当たる気がするんだ!」
「ダメだ柱間! お前は競馬の画面が見たいだけだろう! それと馬を見て差せ差せ言うのを止めなさい! どこで覚えて来たんだ! まさか競馬場に行ってないだろうな?!」
「俺は馬が好きで見に行っただけぞ!」
「柱間……帰ったらお前に話がある」
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