待っていたのか柱間ァ!(現代で)   作:駅員A

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幻術か?!

 夏休みの終わりが近づいて来たある日のこと。

 母親が昼ご飯を作っている間、うちはの五兄弟は昼間に再放送されている時代劇ドラマを眺めていた。

 どうやら末っ子は見たことのあるシリーズらしく、兄たちに説明をしている。

 

「あの全身黒いおじさんが主人公だよ。カンチョーの達人なんだ」

「おい、これは子供が見ていいドラマなのか?」

 

 マダラが新聞紙をひっくり返してテレビ番組欄を確認していた時、テレビから音声が聞こえた。

 

「忍者ハットリよ、北の国に間諜として忍び込み、敵の情報を持ち帰って来い。期待しておるぞ」

「んだよ、間諜か。びっくりしたぜ」

 

 新聞漁りをやめたマダラに対し、うちはの三男と四男はイズナと一緒に首を傾げている。

 三人とも人差し指を突き立てたポーズをしていたのでマダラは訂正した。

 

「間諜ってのはスパイって意味だ」

 

 マダラ自身も勘違いしたため、その顔はちょっと赤い。

 末っ子は兄たちの勘違いも知らず、マイペースにドラマの解説を続けていた。

 

「ハットリは最強ケタ違いの忍者なんだよ。ほら! 見た? 煙と一緒に消えたの見た?」

「瞬身の術でも使っただけだろ」

「しゅ?」

「あー……瞬間移動が出来るなんてすげー忍者だな」

 

 思わず素で言い返したマダラが慌てて取り繕うと末っ子も満足げににっこり。

 その頭を撫でてやりつつマダラは渋い顔をした。

 

――あんなチンケな身のこなしでよくも最強を名乗れたものだな。これのどこが忍だ。火遁どころか印の結び方も間違っている。ったく、製作者はなんも分かってねーな。

 

 今すぐテレビ局に乗り込んで真の忍がなんたるかを教えてやりたいところだが、マダラはぐっとこらえて心の中でヤジを飛ばすだけに留めた。

 その間も弟たち(主に末っ子)はチンケな忍者に歓声を飛ばしている。

 

「ほら見た?! 今の手裏剣飛ばし! 全部敵に当たったでしょ?!」

「うん、エチゴ。ちゃんと見てるから叩かないで……」

 

 どうやら忍者ハットリは末っ子のお気に入りらしく、活躍するたびに興奮してイズナをバシバシ叩いている。

 イズナは助けを求めてマダラに視線を送るも、当のマダラはモヤモヤを抑えるので必死だった。

 

――これじゃあエチゴがこんな雑魚を本物の忍者だと勘違いするじゃねーか! ドラマを作るならちゃんと本物を勉強してから作れよ!

 

 やっぱりクレームのハガキを、いや手紙を放送局に送ろうかと思い始めるマダラ。

 その間も興奮しきっている末っ子は熱く語る。

 

「僕、将来は忍者ハットリになりたいなー! そんでもってカンチョーの達人になるんだ!」

「エチゴ、あまり大声で間諜とは言わない方がいいぞ」

「母様に聞かれたらまずいかも……」

 

 三男と四男がたしなめるも、末っ子は聞かない。

 

「忍者ハットリかっこいいのになんで?」

「それは言ってもいいけど間諜ってワードが……」

「イズナ兄さん、エチゴに教えてあげ……イズナ兄さん?」

 

 四男が呼びかけるもイズナは返事しない。

 弟の異変にマダラは肩を揺さぶった。

 

「おい、イズナ? どうした? イズナ」

 

 顔を覗き込むとイズナが呟いた。

 

「兄さん……?」

 

 呆然とする弟の姿にマダラは悟った。

 

「イズナ、まさかお前……」

「これはどういうことだ? 幻術? いや、僕は死んだはず」

 

 周囲を見渡したイズナが流れるように幻術を解こうと印を結ぶ。

 

「解!」

「いや、イズナ。ここは幻術じゃないんだ。ちょっと向こうの部屋に来い」

「兄さん? ここは幻術じゃないってどういうこと?」

 

 動揺するイズナがハッと気づいた。

 

「そもそもどうして僕の目が見えているんだ?! この写輪眼は兄さんに託したはずなのに!」

「だからなイズナ、とりあえず向こうの部屋に……」

 

 下の弟たちがいる前では説明しづらいためイズナを連れて行こうとするマダラだが、タイミングが悪いことに母親が部屋に入ってきてしまった。

 

「コラ! 静かに待ってなさいって言ったでしょ」

 

 昼ご飯を作っている最中だった母親は叱りながらおや、と思った。

 いつもは弟たちの面倒をよく見ているイズナが騒いでいたからだ。

 

「兄さんの目はちゃんと見えているの?! 僕のこの写輪眼をあげるから……」

「イズナ、だから写輪眼はもう無くてだな」

「写輪眼が無い?! うちは一族の誇りが?!」

 

 片目を手で押さえてマダラに食ってかかるイズナの姿に母親は苦笑い。

 

「あらあら。イズナもそういうお年頃になったのね」

「母様、これは違くてだな。イズナはちょっと動揺しているだけで……」

 

 弟の名誉のために誤解を解こうとするマダラだが、そもそも説明のしようがない。

 母親も曖昧なマダラの言葉をはいはいと流してしまう。

 

「イズナ、忍者ごっこはいいけれどもう少し大人しくなさい。あとちょっとでご飯もできるんだから。いいわね?」

「今はそれどころじゃない! 写輪眼が無くなったんだ!」

「イズナ、いいわね?」

「……はい」

 

 母親の圧にようやく落ち着いたイズナ、ほっと息を吐くマダラ、何が起きたのかよく分かっていない弟たち。

 

「イズナ、飯を食ったら説明する。ひとまずこの世界は安全だから心配するな」

 

 マダラが囁くとイズナは少し間を置いてから頷いた。

 大人しくなったイズナにエチゴが目を輝かせて尋ねた。

 

「ねえ、イズナ兄さん。さっきのポーズってなんの術? マダラ兄さんも前にやってたよね?」

「ポーズ? 印のこと? これは幻術を解くためのもので……」

 

 混乱しているイズナは死んだはずの弟の質問につい答えた。

 慣れた仕草で印を結ぶので末っ子だけでなく三男と四男も目を輝かせる。

 

「イズナ兄さん、忍者ハットリみたい!」

「というか、シャリンガンってなに? うちはの誇りって言ってたけどまさか……」

「僕らって忍者の末裔?!」

「末裔もなにもうちはは忍の家系だ。ねえ、兄さん」

「あー、いや、それはだな…………」

 

 言葉を濁すマダラに弟たちが殺到する。

 

「もしかしてマダラ兄さんも忍者なの?!」

「印を結べるの?!」

「僕らも忍者なの?!」

「お前ら、ちょっと落ち着け! あんまりうるさいと母様が飛んでくるぞ」

「母様は空を飛べるの?!」

「だー! ちげーから! 頼む、マジで落ち着いてくれ」

 

 マダラは弟をなだめながら泣きたくなった。

 

――よりによって父さまが仕事でいないときに思い出すなんて!

 

 兄が弟たちの相手をしている間にイズナもだんだんと前の世界と今の世界の記憶が繋がってきたのだろう。

 かつて前の世界を思い出したマダラもそうだったように。

 

「み、みんな。えーっと、今のはちょっと僕の勘違いでね……ええっと……」

 

 この世界が幻術ではなく現実だと悟ったイズナは冷や汗を垂らした。

 写輪眼が無いことよりも母親の怒りの方が恐ろしいと思い出したからだ。

 ひたひたと足音が近づいてくる。

 しかし、盛り上がったままの弟たち。

 

「みんな、お願いだから落ち着いて!」

 

 イズナの懇願も虚しく、近づく足音がとうとう止まった。

 

  

 

 昼食後、改めてマダラからこの世界のことと前の世界のことを聞いたイズナはぐったりとしていた。

 いや、イズナだけでなくマダラも。

 その周りには、

 

「うちはの誇りがー!」

 

 と片目を抑えてはしゃぐ末っ子と印を結んで遊ぶ三男と四男が。

 

「忍者が出て来る時代劇を見て忍者ごっこにハマっちゃったみたいなのよ」

 

 と夕食で妻に言われたタジマは頭を抱えるのだった。

 

 ちなみに忍者ごっこは千手家でも流行り始めた。

 というのも、奇しくもうちは兄弟と同じ時代劇を見ていた際に扉間もイズナと同じように騒ぎ出したからだ。

 

「これは一体どういうことだ?! また穢土転生か?! いや、これは無限月読というやつか?!」

「まさか扉間! 記憶が戻ったのか?!」

 

 柱間が驚いている間に扉間も流れるしぐさで幻術を解こうとするが、当然なにも変化は起きない。

 

「みんな、ご飯が出来たから手を洗ってきなさい」

「ほぉ。板間たちだけでなく母上まで……よくできた幻術じゃないか」

「扉間! 指を降ろせ!」

 

 術を使おうとした扉間につい反射的に叫ぶ柱間だが、この世界ではチャクラを荒立てることはできない。

 扉間の方もチャクラを練れないことに気づいて眉を寄せる。

 

「妙だなこの身体……いや、そういうことか」

 

 前の世界と今の世界の記憶が繋がり、現状を悟ったものの遅かった。

 

「扉間兄者! 今のなんだ?! まさかそれも忍者の技か?!」

「扉間兄者カッコイイ!」

 

 瓦間と板間が扉間そっくりに腕組みをして指を立てる。

 

「あなたたち……ご飯ができましたよ。それとも食べないでこのまま遊ぶ?」

 

 呼びに来てくれた母親そっちのけで遊び出す子供らにかかる圧。

 昼食後に柱間から改めて説明を受けた扉間は口を尖らせた。

 

「そういう大事なことはもっと早く言ってくれ、兄者。おかげで大恥をかいた」

 

 柱間が縁側で説明している間、瓦間と板間はさっそく庭で忍者ごっこをしていて、「ほぉ、よくできた幻術じゃないか、忍者瓦間」「指を降ろせ、忍者板間」なんて声が聞こえる。

 後片付けにひと段落がついた母親は廊下の電話で話している。

 

「ええ、忍者のドラマでハマっちゃったみたいで……あら、イズナ君も? うちも扉間が特に……そういうのに興味持たない子かと思っていたけどやっぱり年頃なのねぇ」

 

 昼食の間も母親からの生ぬるい視線を感じていた扉間はここぞとばかりに兄に当たり散らした。

 

「瓦間たちは真似をするし、母上に中二病だと思われてしまったじゃないか」

「扉間はまだ小4なのに中二病か! ガッハッハ!」

「黙れ!」

 

 なお、帰宅した仏間が事の次第を聞き、頭を抱えたのは言うまでもない。

 




その後

うちは家
「こっちの世界の忍者は随分と弱いね、兄さん」
「本物を知らない奴が適当に作ったんだろうな。ったく、まともな印も結べず体術もなっちゃいない奴が最強を名乗るなんて……」
「(とか言いつつ、エチゴよりもドラマにハマってるよね兄さん……)」

千手家
「のう、扉間よ。この世界の忍についてどう思う?」
「兄者と比べると慎ましいな。しかし、地形が変わる心配をせんで済む」
「俺とてその心配をしたのは相手がマダラの時だけぞ! ガハハ!」
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