え?どくポケモンが最強ですが??   作:のびうつぼ

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天才vs天才

「全員倒しちゃおう! ドオー!」

「花開け、キマワリ!」

 

 きまきまどおっとお互いのポケモンが現れる。

 一匹目はキマワリか……いったいどんなってちょっと待って!

 

「その花びらの数と色味、君ジムチャレンジの時いなかった?」

「きまぁ? きまっ!」

 

 わーやっぱり!

 へぇ、コルサさんの手持ちポケモンだったんだ。

 あの時はありがとねーと手を振ると、短い腕をめいっぱい振って応えてくれた。

 か、かわいい……!

 

「よく見ているな、あれだけいた内の一匹を覚えているとは」

「流石に全部はボクでも無理だよ、ただこの子はほかの子より甘えんぼさんだったから印象に残ってただけで」

「だとしてもアバンギャルドだとも」

 

 なんだだとしてもアバンギャルドって。

 

「いっとくけど、バトルでは手加減しないからね」

「ははっ、こちらこそ」

 

 一瞬弛緩した空気が、また張り詰めるのを感じる。

 さぁ、今度こそバトル開始だ!

 

「キマワリ、にほんばれだ」

「ドオー! ステルスロック!」

 

 まずはお互い自分に有利なフィールドを形成する。

 キマワリの特性は晴れの時に素早さが上がるようりょくそか特高があがるサンパワー。

 キマワリは元の素早さが低いし、おそらくサンパワーの方だろう。

 まぁドオーなら少なくとも一発は耐えられるだろうし、返しの技で勝てる筈……よし!

 

「ドオー! ダストシュ」

「アンコールだ」

「なっ!」

 

 同じ技を強制的に繰り返させる技、アンコールを受けてドオーはひたすら辺りに岩を放出し続ける。

 あぁもうあんなに楽しそうにしちゃって……褒められて嬉しくなっちゃってるじゃんもう!

 

「間に合え……! 戻れドオー! ごめんヤトウモリ!」

「たたみかけろ! ソーラービーム!」

「ヤト! ヤトッ!?」

 

 なんとかキマワリが技を繰り出す前に交代できたが、ヤトウモリが一撃で先頭不能になってしまう。

 ほのおどくタイプで草技にはめっぽう強いヤトウモリでも受けきれないか……想定外の火力だな。

 ごめんヤトウモリ……帰ったら好きなものいっぱい食べさせてあげるからね。

 

「もう一回お願い! ドオー!」

「どお」

 

 あっちょっとシュンとしてる。さっきの思い通りにノせられちゃったの気にしてるのかな。

 

「ほらドオー! 失敗はそれ以上の成功で取り戻すよ! ヤトウモリの分もがんばって!」

「どお……どお!」

 

 よし、それじゃあ早速!

 

「煌めけ! テラスタル!」

 

「キマワリ! そのままソーラービーム!」

「あははっ! 無策で出すわけないじゃん!」

 

 さぁ励起せよ! 大穴のテクノロジー!

 

「君だけの舞台さ! 行くよドオー、堂々とキメてこう!」

 

 とてつもないエネルギーを秘めた専用のボールと太陽そのもののような力を内包する光線、それらが同時にドオーに着弾する。

 如何に耐久に優れたドオーとて、半減のさらに半減でヤトウモリを一撃のもと沈めた攻撃だ、そのままでは耐えきれるかわからない。

 だが!

 

「今度はこっちの番だね、ダストシュート!」

 

 宝石の力で己のタイプをゆがめてしまえば、何ら問題ナシ!

 ま、ボクの計算ではそのままでも1発耐えることはできる。でもそれじゃあダメなんだ。

 ふふ、まぁ実際に上手くいくかはやってみなくちゃわからないけどね。

 紫色の結晶でその身を包んだドオーが、未だ晴れぬ煙の中から悠然と飛び出してキマワリに突撃する。

 やったか!? みたいな顔をしてたキマワリ(かわいい)は当然反応できず、毒をまとった突進がモロに直撃した。

 仰向けに倒れて目を回すキマワリ。よし撃破!

 

「戻れキマワリ、よくやってくれた」

 

 キマワリをボールに戻したコルサさんと、ぱちりと目が合った。

 

「攻守の切り替えが抜群に上手いな、アカデミー主席は伊達じゃない」

「ふふん、そりゃあボクにかかればこのてーどラクショーだよ」

 

 うちのドオーも頑張ってくれてるしねー! と笑いかけると、どお! と誇らしげな返事が返ってくる。かわいい。

 

「ふははっ! 実にアバンギャルド!」

「その余裕そうなツラ、いつまで持つかなぁ!」

 

 凶暴とすらとれるコルサさんの笑みにつられ、こちらも自然と口の端が釣り上がる。

 あはは! やばい、めっちゃ楽しい!

 

「辛口に行くぞ! スコヴィラン!」

 

 現れたのは唐辛子のような頭を持つ双頭のポケモン。

 ……たしかスコヴィランは各頭に脳がひとつずつある……てことは!

 

「グラスは嚙み砕く! フレアはおにび!」

「ヴィア!」

「どおっ!?」

 

 ちっ! そうだよね!

 目にも止まらぬ速度でドオーとの距離を詰めたスコヴィランは緑の頭でドオーにがっちり噛みつき、拘束したうえでゼロ距離で怪しげに光る炎を浴びせかけてくる。

 厄介だ……! それに幾ら何でも速すぎる、ようりょくそか!

 

「ドオー! トゲで迎撃!」

 

 でもまだ運がよかった、緑ヘッドが嚙みついたのは丁度背中の模様部分、つまり丁度トゲが飛び出てくる場所だ。

 

「ふむ、ドオーのその行動は本来かなりの消耗を伴う筈だが……」

「うちの子をそんじょそこらの子たちと一緒にしてもらっちゃあ困るんだよね!」

「ふっ、アバンギャルド」

 

 うちのドオーはライドポケモンになるために、かなりのリスクを伴う「皮膚を突き破ってトゲを出す」という行為をほぼノーリスクでできるよう訓練してきた。まさかこんなところで役立つとはね!

 ……いや本来の用途としてはこっちが正しいんだけれど。

 

「ドオー、まだまだいけるよね?」

「どお! どお!」

 

 やけどのせいでそこまでの成果は出てないみたいだけど、距離を取らせることはできた。

 また近付かれる前に!

 

「ドオー! 地震!」

 

 ドオーが力強く大地を踏みしめることで地表が隆起する。

 これならどれだけ足が速くても攻撃は当たる……だから!

 

「跳べ! スコヴィラン!」

「あははっ! そーだよねぇ! 今! ダストシュート!」

 

 空中から襲ってくるとわかってれば、ルートは必ず直線になる。

 そしてあとはボクがタイミングを合わせてやれば……。

 

「どおおお!」

「ヴィ!?」

 

 ほーらドンピシャ!

 

「グラス! やれ!」

 

 今度はこっちが驚く番だった。

 

「はぁぁぁぁ!?」

 

 ドオーの攻撃で宙を舞うスコヴィランが、ふっとびながらも赤ヘッドで姿勢を正し、緑ヘッドが照準を合わせて狙撃してきたのだ。

 あの二つの頭は仲悪いんじゃなかったのかよ! コンビネーションバッチリじゃないかよー!

 技を出した直後で隙のできたドオーにレーザーが直撃する。

 だが、好都合だ。

 キマワリと合わせて二度のソーラービーム直撃、そしてかみくだくに鬼火とここまで攻撃を加えられれば如何に耐久に優れたドオーでも……。

 

「どお、どおぉ……」

 

 流石に、耐え切れないか。

 ごめん、そんな風に言っているように一鳴きした後、ドオーはひんしになってしまった。

 ドオーに宿った宝石の力が砕け、周囲をキラキラとした粒子が舞う。 

 辺りに漂うテラスエネルギーの粒子が消え去るのを待ってから、ゆっくりとドオーをボールに戻す。

 

「ありがと、かっこよかったよ」

 

 ドオーを戻したボールを優しく撫で、ポーチにしまう。

 さりげなく空を見上げ……ふむ。

 

「なんかカエデお姉ちゃんから急に難易度上がり過ぎじゃない?」

 

 そういえば、とずっと疑問だったことをコルサさんに投げかけた。

 今のバッチはまだ1つ。ジムを回る順番は自由となってはいるが、とりあえずは学園が出しているおすすめの攻略順のとおりにきてるからボクにとってもみんなにとってもここが2つ目のバッチとなる筈なのだが……それにしては強すぎない?

 お姉ちゃんがマメバッタとかだったのに対してスコヴィランって、しかも天候まで利用するとか。

 ボクは天才だからなんとかなってるけど他の学生泣くんじゃないか?

 

「あぁ、実は我々は各ジム間で挑戦者のデータや所感を共有していてな、それぞれに合わせたレベルで戦うようになっているんだ」

「へ~、まぁたしかに生徒会長みたいなのと新人トレーナーじゃ文字通りレベル違うもんね」

 

 無双ゲーになっちゃったら楽しくないし生徒の為にもならないってころか。よくできてるじゃん。

 

「ま、最初のジムだけはどうしても未知数から戦うことになるから初心者用になってしまうがな。それに……」

 

 それに?

 

とある人物(・・・・・)に『レンってムカつくガキがきたら情け容赦なくギッタンギッタンにしてやってくれへん?』と頼まれていてね」

「……へぇ」

 

 とある人物、ねぇ。

 さっきまでコルサさんが足場にしていた風車塔に取り付けられているカメラに目線をやり、びしっと指を指す。

 

「だから言ったじゃん、ボクは天才だからジムなんてラクショーだって。ちゃっちゃと辿り着いてあげるからメガネでも拭いて(・・・・・・・・)待っててよ」

 

 どーせこの映像も後で見るんでしょ?

 

「面接官さん?」

 

 き、決まった……!

 これで面接官さんへのアピールもバッチリ、次の面接じゃ合格間違いなし、だね。

 もう一度ちらっと空を見て……おっと、そろそろか。

 

「じゃ、いくよ! 君色に染め上げちゃえ! タギングル!」

 

 ふふっ、悪いけど、もうボクの勝ちは決まったみたいなもんなんだよね!

 

「いやらしくいこうか、いばる!」

「たっぎゃぁ」

 

 わ、すっごいどや顔。かわい~~~~!

 そしてそれに対するスコヴィランは……うん! わっかりやすく青筋立ててるね!

 それに加えてスコヴィランは赤いオーラを纏い、いばるの効果で体のリミッターが外れているのが見て取れる。

 対するタギングルは……。

 

「ものまねハーブか! おもしろいコンボだな!」

 

 もっていたものまねハーブを消費し、スコヴィランと同様の赤いオーラを纏う。

 しかもものまねハーブは能力値の変化のみをコピーするため、こんらんはしない。

 

「しかし、タギングルでこうげきとすばやさが二倍になったスコヴィランの攻撃を受けきれるかな? かみくだく!」

「ふふっ、そんなの大丈夫に決まってるじゃん。その程度もわかんないの~?」

 

 だって、ほら。

 月明り(・・・)が照らすフィールドを見渡し、焦る必要はないとゆっくり宣言する。

 

「君に味方する太陽は、もういないんだから」

 

 スコヴィランが一歩を踏み出そうとしたその瞬間に、フィールドをギラギラと照らしていた仮初の太陽が消え失せる。

 

「スコッ!?」

 

 突然自分の出せるスピードが半分になる。それだけでも危ないが、なんせ草タイプのエキスパートであるコルサさんの手持ちポケモンだ。それだけなら変わらず行動できたただろう。

 じゃあ、それに加えて冷静さを失ってしまう程ブチギレていたら?

 その答えは、足を踏み外しど派手にすっころんだスコヴィランが証明してくれた。

 

「さぁ、斜陽の時だ」

 

 草木に恵みを与える太陽が消え失せた今、今度はボク達のターン。

 

「アクロバット!」

「たぎゃ!」

 

 タギングルの黒い肢体は夜闇に溶け込み、姿を認識しずらくなる。

 さらにタギングルの特性"かるわざ"により、ものまねハーブを消費したことで素早さが2倍!

 

「スコ、ヴィア……」

 

 目にも止まらぬ連続攻撃を受け、スコヴィランはあっという間に戦闘不能に陥った。

 

「あぁぁぁ……気持ちいい……!」

 

 持ち物、技、特性の全てを活用した戦術、雑談も利用した完璧な時間管理、全て、全て思っていたとおりになった。

 そもそも、ポケモンバトルで"思っていたとおりに動く"というのは非常に難しい。それはバトルには相手が存在し、自分の動き、相手の動き、時間帯、気候、それらが複雑に絡み合った戦況を完璧に予想しきるのは不可能に近いからだ。それがコルサさんのように凄腕のトレーナー相手なら尚更だろう。

 だからこそ、上手くいった時は最高に嬉しいし楽しいし気持ちいい。

 あぁぁやっばい、これだからポケモンバトルは辞められないんだ。

 どれどれ? ここまで完璧なコンボを決められたコルサさんは一体どんな顔してくれてるかな~?

 あ、やばい、笑い声漏れる、我慢できない。

 

「ふっ、ふふふ……」

「くっ、くくく……」

 

 笑い声が、重なる(・・・)

 あれ? 重なる?

 

「はーーっはっはっはっはっ!! 素晴らしい!! なんてアッバンギャルド!」

 

 うわびっくりした!

 今日一番の大声で高笑いを続けるコルサさん。

 

「口伝、資料、メディア、散々それらで貴様の才能は目に入った! あぁそうかそうなのかここまでか! やはり実際にこの身で味わう情報とは格別であるな!」

 

 心の底から愉快で仕方がないという様子でコルサさんは言葉を続ける。

 ここまで来たらあとは消化試合かと思ったけど……まだまだ楽しめそうじゃないか。

 

どこからだ(・・・・・)! 偶然な訳がないだろう? 貴様は何を見ていた……くははっ! あぁまてそうか! ドオーにテラスタルを使ったのも”調整”のためか!」

 

 ……すごいな、この一瞬でそこまでわかるのか。

 

「あぁ認めよう認めるさ認めるとも!! レン、貴様は希代の神童だ! 時代の寵児だ! 紛れもなく天才だ!」

 

 コルサさんの言葉は間違いなくボクを褒めたたえるもので、その宛先はボクであるはずだ。

 けれどおそらく……いや、絶対に違うと確信している。

 これは、きっと。

 

だが(・・)ワタシも天才だ(・・・・・)!」

 

 本来は逆である筈の、コルサさん(ジムリーダー)からボク(チャレンジャー)への挑戦状だ。

 あぁクソ! この人は一体どこまでボクを熱くさせれば気が済むんだ全く!

 

「あははっ! 最後まで盛り上がっていこう!」

「フィナーレを彩ろう! ウソッキー!」

 

 ウソッキー!? お前草じゃな……いやまさか!!

 

「題名は、『嘘から出た実』」

 

 コルサさんの手には、さっきボクも使ったテラスエネルギーの塊。

 

「最高……最高だよコルサさん! 後でサインちょうだいよ!」

「何万枚でもイラスト付きで描いてやるさ! さぁ行くぞウソッキー! テラスタル!」

 

 迸るは大穴(エリア・ゼロ)のエネルギー。輝く結晶の奔流がウソッキーを包み込み……。

 

「ウソッ!!」

 

 木に成りすますが葉緑体を一つも持たないウソッキーが、今この時は命の萌芽をその身に宿す。

 

「タギングル!」

「ウソッキー!」

 

 互いに一撃で決めるという気迫を伴う叫びにも近い声を上げる。

 目にも止まる足捌きで肉薄し、触れ合う程の距離へ迫る。

 この勝負は、今ここで決まる……。

 

「なーんてね」

 

 誰にも聞こえないように、小さな声を漏らす。

 

「カウンター!」

「トリックだ」

「なに!?」

 

 最初にウソッキーが出てきたときは正気を疑ったが、その芸術作品のような思惑に気が付けば何が起こるかは察しがついた。この人なら絶対にしてくると、その確信が持てたから。

 その上で、普通に考えてウソッキーがタギングルより素早く動ける筈もなく、通常時の四倍に跳ね上がったアクロバットの威力はその身をもって体感したはずだ。

 なればこそ、こんなに熱く燃える目をした人が敗北を是とする訳がない。そんなのはなっからわかってるのさ!

 かるわざの効果の切れたタギングルだが、それでも木偶の棒(ただの木)に素早さで負けるわけもない。

 

「どくづき!」

 

 彼我の距離はいまだゼロ。カウンターの構えが解ける前に貫手を放ち、ウソッキーに直撃する。

 しかしウソッキーの大木の幹のように固い体はそれを受け止め、タギングルへカウンターを叩き込む。

 本来ならこのクロスカウンターを耐えることができず、タギングルは倒れる筈だった。

 そう、本来なら。

 

「サイッコウなバトルをありがとう! チェックメイトだ、アクロバット!」

 

 タギングルが纏う赤と黄色の布(きあいのタスキ)が消えていくのを見ながら、最後の号令を出す。

 

「ふははっ……実に、アバンギャルド」

 

 月光を反射しキラキラと光る地上の星(テラスタルの残滓)が瞬く中、2つ目のジムバトルが終わりを告げた。

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