満点の星空の下、物言わぬ極彩色の
このステージの主、ジムリーダーコルサと固い握手を結ぶ自身と達成感に満ち満ちた顔をする誇らしげな美少年は一体誰か……。
――そう、ボクである。
「実にアバンギャルドな戦いであった、チャレンジャーレン」
「こちらこそほんっとにサイコーだったよ、コルサさん」
決着から数分、お互い上がっていた息が落ち着くのを確認してから距離を詰め、固い握手と共にお互いの健闘を讃え合う。
「最後、何故トリックを選択した? ウソッキーの特性ががんじょうの可能性もあっただろう」
「あー、正直特性はどっちでもよかったんだよ」
コルサさんの目を見れば、持ち物か特性の嚙み合いでタギングルを倒せる算段がついていたことは間違いない。
あの状態からウソッキーがタギングルを倒すには、特性か持ち物でこちらのアクロバットを耐えてから威力の高いもろはのずつきかカウンターにより一撃で倒すしかなかった。
仮に特性ががんじょうであれば、自分で特性のメリットを消してしまうもろはのずつきはそもそも持っていない可能性が高い。
特性がいしあたまであれば、素のウソッキーでアクロバットを耐えられないため持ち物はきあいのタスキで確定。であればもろはのずつきを選択した場合、獲得したきあいのタスキで耐え、アクロバットで勝ち。カウンターの場合は試合結果のとおりだ。
「……ふむ、なるほど。たしかにあそこでトリックをすれば私が何をしても対応可能であるな」
「ふーん、今の一言だけでそこまでわかっちゃうんだ」
「ふははっ! 言ったであろう、キミ程ではないがワタシもまた天才なのだよ」
策の悉くを潰し、やりたいことを一つもできず負けたにも拘らず、コルサさんの眼は晴れやかだ。
んーーー! 楽しかったーーー!
まさかここまで燃えるバトルができるだなんて、悪くないじゃんジム巡り。
「ではレン、改めてボウルジムクリアの功績を讃え、ここにボウルジムバッジを授けよう」
「……うん!」
お~、流石芸術家コルサ監修のジムバッジ、キラキラしてて綺麗~。
ふふ、やはり最初にこの”バッジ集め”というシステムを考案したカントーの偉人はやっぱり天才だな。
こんなにきれいなバッジがあと6つもあるなんて、どんなデザインをしているか気になって挑戦したくなるし、自分が強くなった証が目に見えて積み重なっていくのは自信にもつながる。
どこの地方でも8つ全部集めれる人はそうそういないらしが、ジム巡りが終わった後に部屋に飾っておけば、それを見るだけで旅の思い出をいつでも思い出すことができる。
一学者として、いつかはボクもこんな風に世界中に影響を与える発明をしてみたいもんだね。
「それじゃコルサさん、またね」
「あぁ、ではなレン……おや、そちらにはジムしかなかったはずだが、何か用でも? もう時間も遅い、報告は明日でも構わんぞ?」
「あぁ、それなら大丈夫。少しでも早くジムに顔を見せたくて」
ふっふっふ、正確には顔を見せたいというより……”
□■□■□■□
「たのもーーー!」
ウィーン。
……忘れてた、自動ドアでやるの恥ずかしいんだった。
と、とにかく!
目的の人物が変わらず窓口に座っているのを確認し、かつかつと歩みを進める。
胸を軽く張り、左手は腰に、右手は口元に。
にこにこと営業スマイルを浮かべながら座っているにっくき
「キミの上司、大したことなかったな~~~~~~~!!!!」
ふっ、決まった……!
これにはお姉さんも敗北を認めぐぅの音をかき鳴らしてくれるに違いあるまい。
「はい、ジムバトルお疲れ様でした。とても白熱したいいバトルでしたね」
ふん、この程度のジャブじゃその
なら! 立て続けにラッシュを叩き込む!
「ま、暇つぶし程度にはなったんじゃない? ごめんね~? キミの尊敬する上司をぼっこぼこにしちゃって」
「ふふっ、仕事ほっぽり出して絵ばっか描いてるコルサさんにはいい薬になりましたよ。あんなに楽しそうな彼、久しぶりに見ましたもん」
む、あんまり効いてないな……なら別の角度から……。
「それに」
どう煽ってやろうろうかと言葉を吟味していると、お姉さんが一言溢す。
なんだなんだと顔を見ると、これまでの営業スマイルとは違う、優しくも無邪気な、きっと彼女本来の笑みがそこには浮かんでいて……一瞬、思考が止まった。
「本当に、かっこよかったですよ、さっきのバトル」
「なっ!」
「鮮やかな手腕と、心の底からバトルを楽しんでるのが分かるぎらついた眼光。あのコルサさんがあそこまで盛り上がるのもわかります」
モニター越しに見てるだけで私までわくわくしましたもん、と続けるお姉さん。
な、なな、なんでそんな急に褒め……煽り返してくるか、悔しがってくれるはずじゃ。
「ドヤ顔も、恥ずかしそうな顔も、悔しがってる顔も、どれもとっっても可愛いですけど、あの獰猛な笑顔がいっちばんキラキラしてて素敵でしたよ」
「わ、や、その、んあ」
そんな顔で言われたら、本心だってわかっちゃうじゃないか……!
まったく想定していなかった
思わず顔を見られまいとお姉さんとボクの顔の間に手を差し込みんでしまい、恥ずかしがっているのがバレたのがよっけい恥ずかしくなって必死に目をそらす。
「や、えと……べ、べつにそんなこと……」
「ん~?」
ボクの言葉になっていないを聞き返すその声音が、先程の優しい声から変わっている気がして、顔を覆っていた手をずらす。
それにより一時的に見えなくなっていたお姉さんの表情が、指の隙間から覗いた。
その目は変わらず愛しいものを見つめるような眼差しであるが、明らか”愛しいもの”の意味合いが変わっている……!
具体的には、”楽しさ”から”愉しさ”へと……! こいつ、やっぱりわかって!
「お、おおお、おお……」
「お?」
「覚えてろ~~~~~~~!!!!」
ボクは半べそをかきながら、ダッシュでジムを後にした。
ぐぅ!!!!!!!!