めそめそ、めそめそと、美少女が泣いている。
普通なら思わず手を差し伸べたくなってしまうその光景を前に、呆れ気味に嘆息する美少年がいた。
「うぅ……はらばりぃ、キミの雄姿は忘れないよ……おのれレン氏!」
「全部じばくじゃん」
「うるさーい!」
なんかもう色々とかわいそうな彼女を憐れむ心優しい美少年は、一体誰か……。
――そう、ボクである。
『ずっと仲良し』
『息が合いすぎてるよね』
『本当に初対面か?』
初対面なんだなぁこれが。
まぁボクがドンナモンジャTVを見ているのは勿論、ナンジャモもボクのべのむんchをいていてくれたみたいだし、初対面感がお互いに無いのはそうなんだろう。
「えーい! ハラバリーのかたきうちじゃー! いっけー! タイカイデン!」
「返り討ちにしちゃって! ドオー!」
『大丈夫? その矛先自分に向いてない?』
『いや、まぁそもそものろいを受けなければあぁはならなかったし、まぁ、うん……』
いきなりタイカイデンがナンジャモに向かってかみなりとか撃ったらめっちゃ面白いだろうなぁ。
「ふむふむ、相手はドオーかぁ……えっとこっちの技は……あれは効かなくて、これも効かない、こっちは等倍だけどドオーの耐久じゃ……あっ」
『ん? ナンジャモ何に気付い……あっ』
ふっふっふ、気付いてしまったようだね、彼我の絶望的なまでの相性に。
しかしもう遅ーい!
「ね、ねぇレン氏?」
「ん~?」
「ちょっとポケモン交代しない?」
「え~、そーだなぁ……」
うるうるとしたなみだめを受けたボクの答えは……。
「ドオー、どわすれ」
「レン氏ーーーーーー!?」
『知 っ て た』
『哀れタイカイデン』
『レン氏とんでもない笑顔で草』
『にこにこ! って見えるもん、アニメだったら顔の周りに擬音飛んでる絶対』
「むむむむむ……えーいタイカイデン! ぼうふうぅぅぅぅ!!」
半ばヤケクソの様なナンジャモの号令に合わせ、フィールドにとてつもない正に”暴風”が吹き荒れる。
荒れ狂う風の暴威によりそこらのポケモン程度なら一撃で戦闘不能にしてしまうであろう攻撃を受け、ドオーは……。
「どどどどどどどどどど」
……ほっぺた(?)が、ものすごくぺちぺちしていた。
「ぶふっ!」
『なんだこれwwwww』
『可愛すぎるwwwww』
『お笑い芸人が巨大扇風機でやるやつじゃんwwww』
顔はとんでもないことになってるドオーだが、四肢は地面にしっかりと根を張り、少しもぶれない素晴らしい体幹で耐えきっている。顔はそれはもうとんでもないことになってるけど。
「ほへぇ」
ナンジャモも負けず劣らずとんでもない顔してるな。
まさにポカンといいう擬音がぴったりな表情で呆けているナンジャモはまるで技を忘れたポケモンのよう。
「ふふっ、みんなかわいいなぁ」
『ぴょえ』
『まっっったその笑顔……!』
『何度見てもメロ杉、無理』
お、やっと風が収まってきた。
「おーい! ドオーだいじょーぶーー!?」
「どおっ! どおっ!」
「あっ楽しかったんだ」
すごい、めっっちゃごきげん。
みじかいあんよで体を左右に揺らし、全身で喜びを表現するドオーの可愛いこと可愛いこと。
うんうん、君が楽しいなら何よりだよ。
さて、と……ナンジャモにはわるいけど、そろそろ反撃といこうか!
何故か五分になってはいるが、本来1体先制されていたんだ。ゲンガーのお礼はさせてもらわないとね!
「ドオー! あくび!」
「にゅわっ! レン氏情け容赦なさすぎなのでは!?」
ドオーのほんわかしたあくび(かわいい)につられ、タイカイデンはとってもおねむ。
このままでは直ぐに眠ってしまうだろう。
ただでさえ電気タイプには厳しい地面タイプのドオーがさらに倒しずらくなるどわすれをもっているのは既に見えている。よってここで変えれば手痛い攻撃を喰らうとわかっていても交代せざるをえまい!
「あははっ! まさに籠の中の鳥じゃないか! ドオー!」
「ごめんタイカイデン戻って! いっけー!」
さぁ何に変える? 既に飛行タイプは出している、何を出してもドオーのじしんがすべてを破壊する……!
……なぁんて、普通は思うよね。
電気タイプの唯一の弱点である地面タイプ、攻撃すればまったく効かず、受ければ弱点、そんな目に見えたものを電気ジムリーダーが対策していない筈がない。
しかしひこう・でんきタイプであるタイカイデンの他に地面技を透かすにはふうせんを持たせるかふゆうのポケモンを使うしかない。
そして! そのふゆうの特性を持つポケモンにボクは心当たりがある……!
そうでしょシビルドン! アツい話を聞かせてもらったもんねぇ!
わるいけど、君が強いのはわかってるんだ、即退場してもらうよ!!
さぁシビルドン、このIQ57億光年の頭脳から繰り出される完璧な交代読み! 受けてみな!
この間0.2秒!
「ダストシュー」
「トゲデマルーーーーーーーーー!!!」
「とぉぉぉぉぉ!?!?!?!?」
『マジかナンジャモ読み勝った!?』
『わかってたとしてもドオー相手に地面四倍出す勇気やばい』
そ、そんな馬鹿な……!
このボクが、読み負けた……?
『いや、まて……ナンジャモの顔を見てみろ』
『顔? こんな気持ちよすぎる読み見せたらさぞドヤ顔かまして……』
「ほへ? はっ! あ、えっと、け、計算どーーーり!」
『とんでもないアホ面かましてたわ』
「おいまた貴様かーーーー! 名前覚えたぞキッサキ心電図! 変な名前しやがってーー!」
『ファンサあざ』
『無敵かお前』
なぁんだ捨て駒と偶然噛み合っただけか。
それならあんし……いや、待てよ。本当に捨て駒か?
たしか交代する時、ナンジャモはこう言った。
”ごめんタイカイデン戻って! いっけー! トゲデマル!”
仮にトゲデマルが他のポケモンと安全に交代するための捨て駒なら、普通謝るのは逆じゃないか……?
てことはつまり……あぁなるほど。
「ふふん、ヤキがまわったんじゃないかいレン氏ぃ! もしアレなら、”天才”の称号はボクがもらっちゃってもいいんですぞ?」
『奇跡の噛み合いでぬかしおる』
「ドオー」
「トゲデマル!」
両者同時に指示を出す。
素早さはおそらくトゲデマルの方が上……いや、やけに動きが鈍重だし、たぶんわざとゆっくり動くよう調整されてるな。
ならば登場時の攻撃をすかしたのはむしろこちらのアドバンテージだ。
「あくびだ」
「がむしゃらー! あれ?」
ほらね、やっぱり。
おそらくトゲデマルの特性はがんじょう。
特性で地震を耐え、がむしゃらでHPを1まで削りでんこうせっかで倒すのだろう。
まったく……ジムリーダーがする戦法じゃなさすぎるだろ、大人げないというかなんというか……。
「思考をする隙を与えるな! じしん!」
「わわわわわ! もういっかいがむしゃらー!」
ちっ、次善をとられたか。
じしんを受け体力が1になったトゲデマルがひっちゃかめっちゃかに暴れ回り、体力の多いドオーを強制的に自分と同じHP1まで減らす。
ひとしきり暴れ回ったトゲデマルは糸が切れたように眠りにつき、穏やかな寝息を立て始めた。
「おやすみトゲデマル。もう一度じしんだよ」
「どお!」
「ぬわーー! とげでまるぅぅぅ!」
ダメ押しとばかりにじしんを叩き込み、トゲデマルを戦闘不能にしたドオーはおもむろにふところからオボンのみを取り出し、一口で食べきった。
これで”1撃でも喰らえば確実に戦闘不能”から”1撃くらいなら耐えれるかも”まで回復できた。
……ドオーのふところどこだよっていうツッコみは受け付けないものとする。
いやだってこう、ホントにも腕をもしょもしょっと動かしたらオボンの実が出てくるんだもん。どこにしまってるのかは正直ボクにもわかっていない。
この”ポケモン、どこにもちものしまってるの現象”はポケモン7不思議のひとつとして未だに世界中で研究が進められているが、未だにほぼ進展はない。
これもいつかボクの手で解き明かして見せるからなー!
「うっうっ……損な役回りさせてごめんよぉトゲデマルぅ……」
『ならするなよ』
『がんじょうがむしゃらて』
『人の心って知ってる?』
『これギリギリ何かしらの罪に問えない??』
ひどい言われ様すぎるな。
「ま、まぁ結局不発だったんだし、ね?」
「れんしぃぃ!」
『天使??』
『慈愛という概念の生まれ変わりですか?』
『これは美少女』
「はぁ……レン氏が可愛すぎる……持って帰りたい……」
『そしてこれは残念な美少女』
「おい! またまたまた貴様かキッサキ心電図ぅ! 誰が残念びしょ、う……じょ、ならまぁ、いい……かも?」
『許された、残念』
『なんでだよ』
『チョロインかな?』
ふっふっふ、これでなんとか一歩リード、ナンジャモ本体もメロメロにして弱体化中……残りポケモンは3体で一歩リード! このまま引き離すぞーーーー!!
まだ続く!!!!!