え?どくポケモンが最強ですが??   作:のびうつぼ

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オーバードライブ!Part4

 三度の高速移動からのバトンタッチという絶好のコンディションを託されたエレズンと共に、周囲の怪訝な目線もなんのそのと自信気に佇む美少年がいた。

 

『ほぅ、エレズンですか』

『おいおいおい、死んだわアイツ』

 

 コメント欄があんまりにもあんまりなテンプレを言うものだから一周回って勝ちフラグなんじゃないかとすら感じている彼は、いったい誰か……。

 

 ――そう、ボクである。

 

「なんとも可愛いポケモンを出してきたじゃんかレン氏! 捨て駒~?」

 

『そんなナンジャモじゃないんだし』

『あんなコスい戦法(がんじょうがむしゃら)公式戦で使うやつがそうそういてたまるか』

 

「ひどい言われ様っ!?」

 

 いやあれは向こう数日は言われ続けると思うよ、うん。勝ったからいいけど。

 内心ではそう思いつつも、表面的にははかなげな微笑を浮かべ続ける。

 未だゴスロリの美少女がこれをするんだからさぞ絵になるだろう。コルサさん(芸術バカ)が飛びつきそうだ。

 ……いや、あの人はこういう外見よりも内面をこそ大事にする人か。

 と、いうことは性格も性質も潜在能力も花丸百点のボクにはやっぱり飛びついてくるってことだね、うん。

 

「……えと」

 

 あくまで微笑を崩さないボクの様子を見てか、あれだけ盛り上がっていた熱気が一瞬収まる。

 それを肌で感じ、ゆっくりと語りだす。

 

「3年前、結構大きめのコンクールでイッシュに行ったんだよ。そこで偶然見かけたバトルがすっごく印象に残っててさ」

 

『なんだなんだ』

『回想パートきちゃ!』

 

「カントーから来たっていうピカチュウを連れた少年のジムバトルだったんだけど、傍から見ても鍛え上げられてるってわかる彼の手持ちを、たった一体のシビシラスでぼっこぼこにしててさぁ……あれを見て、思ったんだ」

「うぇっそれって!」

 

『シビシラスってことは……』

『カミツレさんじゃね!?』

『てか3年前って丁度ナンジャモが研修してた頃じゃ……』

『えっそこでもう会ってたってこと!?』

『てか3年前でカントーのピカチュウ連れたトレーナーってその年のワールドチャンプと同じ……いや流石にそんな訳ないか』

 

 物凄い勢いで流れていくコメント欄には目もくれず、まっすぐにナンジャモを見据える。

 ……あぁいや、まっすぐではないか。

 

「あんなバトルできたら、サイッコウにキモチイイだろうなぁって……!」

 

 だってボクの表情は、鏡を見なくてもわかるくらい歪んでいるだろうから。

 ちらりと、数秒遅れの配信画面が目に入る。

 そこには愉快そうに目を細め、少し開いた口元を三日月に吊り上げるボクが映っていて、流石に恥ずかしいなと慌てて表情を正した。

 まったく、これだからバトルはよくない。愉しすぎて我を忘れちゃうんだから。

 変なとこみせちゃったなとナンジャモの様子をうかがうと、俯いて肩を震わせている。

 ……このパターンは見たことあるぞ、こないだの草ジムで。

 わかるよナンジャモ、きっとこう思ってるんでしょ?

 

「ふひひっ! やっぱイカれてるねぇレン氏! サイッコウだよ!!」

 

 ”心底愉快で、たまらない。”

 

 予想通りの反応に、改めてボクも笑顔を浮かべる。

 あぁそうだそうだ、これを言っとかないと。

 

「ねぇナンジャモ、いーこと教えてあげる」

「およ? なんだいレン氏?」

「ボクのポケモンはあと2匹で、さっきのタギングルに攻撃技は一個もない……つまりこの子が倒れたら実質ボクの負けなんだ」

「ふ~ん……つまり?」

 

『エレズンを倒されたら負け……ってことはつまり……エレズンを倒されたら負け……ってコト!?』

『馬鹿が賢い真似してもバレるぞ』

 

 あははっ、ボクたち今、かんっぜんに通じ合ってる自信があるよ。

 だって副音声で聞こえてくるもん、”わざわざ言うってことは何か意味があるんでしょ?”って。

 

「余り物の3体程度、この子だけで充分だよ」

「ずん!」

 

 いつも気怠げな君にしてはやる気満点じゃんかエレズン、いいねいいね!

 

「ふひひっ、生意気吠えるじゃんかレン氏……ただ、その人を引き合いに出されちゃあボクも負けてられないなぁ!」

 

 ナンジャモの中で、1段深くスイッチのようなものが入ったのを感じる。

 その戦意は彼女の周りにバチバチとスパークが弾けて見えるような気がするほどで、それに当てられボクもさらにテンションが上がる。

 

 残り3対? ハッ! それがどうした!

 電光石火で決めてやるよ!

 

 ……やっぱりでんこうせっかがノーマル技なの絶対おかしいと思うんだよね、字面的にも現象的にも。

 

 □■□■□

 

 さて、勇み挑んだはいいものの、シビルドンが強敵なことには変わらない。

 まずはあの不規則な動きを攻略することから始めなきゃなんだけど……その方法には既に見当がついている。

 

「エレズン」

「ずん?」

 

 声をかければ、なんだなんだとエレズンが振り返る。

 いつもより気持ちきりりとした目元のエレズンは…………っはー! もう可愛すぎる無理!!!

 っとと、ついつい。

 

「あの緩急のタネは多分……だ。だから……目を閉じて」

「ず……ず!」

 

 ふふ、かなり無茶な指示をしてるにも関わらず信頼を感じるいい返事だ。ありがとね、エレズン。

 

「大丈夫、起こり(・・・)は君が感知できる。方向と距離はボクが指示する。ボクらならできるよ」

「ずん!」

 

 さて……行こうか!

 

「作戦会議は終わった? そっれじゃあ行くよ! シビルドン!」

「ビアあ!」

「エレズン!」

「ずん!」

 

 わざわざ律儀に待ってくれるたのはジムリーダーとしての責務かな? まぁそのせいで負けることになるんだけど!

 ボクの掛け声に1度頷き、エレズンがその小さくてくりくりしててふてぶてしくてかわいいお目目を閉じる。

 

『エレズン目閉じた???』

『なんで???』

 

「シビルドン、絶対何かある! 気を付けて!」

 

 一件舐めプともとれるこの行為に対して、ナンジャモの対応は冷静だ。

 エンタメを重視するここまでのナンジャモなら適当に煽りながらツッコんできてからの「のわぁぁぁぁ!?」だっただろうけど……やっぱりここからが本番、ってわけだね、面白い!

 

「すぅぅぅ……よし」

 

 呼吸を整え、エレズンの様子に全神経を集中させる。

 大丈夫、この子なら絶対察知できる。後は”気付いたこと”にボクが気付けるかだ。

 

「シビルドン! こおりのキバ!」

「びぃぃぃる!」

 

 不規則な動きで距離を詰めてくるシビルドンを、あえて(・・・)大雑把に把握する。

 しっかり見るから惑わされるんだ。大体の距離と方角さえわかればそれでいい。

 さて、そろそろエレズンとシビルドンの距離がゼロに……。

 

「……ず」

 

 一瞬、エレズンの体がかなり注視しないとわからないほど小さくピクリと震えた。

 今!

 おぼろげに捉えていたシビルドンの位置、体の向き、速度、射程を瞬時に把握して声を上げる。

 

「3時2メートル!」

「ずん!」

「なぬぁ!?」

「しびぁ!?」

 

 声を上げた瞬間、残像を残すほどの速度でボクの指示した方向へエレズンが跳ぶ……その場にようかいえきを残して。

 撒き散らかされたようかいえきに顔から突っ込んだシビルドンは、毒に体を内外から蝕まれ思わず体を仰けらせた。

 ……というか主従でリアクションそっくりすぎるでしょ。

 

「完璧! そのまま飛びつけ!」

 

 思わず吹き出しそうになったのをグッとこらえ、続けて指示を飛ばす。

 

「あわわわわ! シビルドン振り払ってぇぇ!」

「もう遅いさ! 噛みついてようかいえき! そのままほっぺすりすりに繋げて!」

 

 やたらめったらに長い体をくねらせたシビルドンに小さいおくちでがっぷりかじりつき抵抗していたエレズンだったが、まだ育ち切っていない顎の力では拘束力が足りずあえなく振りほどかれてしまう。

 でも指示はこなした! さっすがエレズン!

 

「ふぅ、ふぅ……あ、あっれれレン氏~? 電気タイプにまひは効かないんだよ~? 知らなかったのかなぁ?」

「切替すごいな」

 

 慌て切ったナンジャモだったが、ボクが間違えてほっぺすりすりを選択したと思ったのか露骨に煽り始めてきた。

 でも残念、間違いじゃないんだな~。

 

「さ、エレズン、もう眼は閉じなくて大丈夫だね」

「えれず!」

 

 さて、これで仕掛けは済んだ。

 あとはボクの仮説が正しければいいんだけど……。

 

「目を開けた……もう何かされた? いやでもシビルドンに変なとこはないし……麻痺もしてない……んにゃーわからん! とりあえずつっこめーー!!」

 

 突っ込んでくるシビルドンをじっと見つめる。

 さーて、そろそろかな?

 

「ず!」

 

 今度はわかりやすい、エレズンの合図だ。

 その直後、シビルドンの持つ運動エネルギーが0になり急停止……しない!

 

「なっ!?」

「しび!?」

「あはは! 完璧だ! ようかいえき!」

 

 さっきのリプレイのように、シビルドンの口腔内に毒液がぶちまけられる。

 

「ブレーキ効いてないよシビルドン! 整備不良なんじゃないの?」

 

「ぐぐぐぐ……シビルドン! もういっかいこおりのキバ!」

 

 諦めず攻撃を加えてくるシビルドンだが、結果はさっきの焼き直しだ。

 急ブレーキも、急アクセルも、0と100の切り替えから0、1、10、20、50、80、100のような連続的な変化へと劣化している。

 勿論緩急としてはそれでも充分すぎるほどの落差ではあるが、すばやさが4倍になった今のエレズンならこの程度楽勝で見極められる。

 ……あぁいや、焼き直しではなかったか。

 

「エレズン、突っ込んでぶちかませ!」

「ずん!!」

 

 もう、目が慣れた(・・・・・)

 迫りくるシビルドンの攻撃を踏み込んで(・・・・・)躱し、跳び上がったエレズンはシビルドンの長い体に強烈な頭突きを喰らわした。

 

『うおおおお! クリーンヒット!!』

『すっげぇなんで見切れんだあんなの!?』

 

 体がくの字に折り曲がったシビルドンが2mほど吹き飛び、地面にたたきつけられる。

 

「よっしいいぞえれずーん! 天才! 最強!! 無敵!!! 可愛い!!!!」

「ず~ん! ず~ん!」

 

 みじかいおててをぶんぶん振って喜びを表現するエレズン。

 くっ……かわいい……っっ!

 

『てかエレズンってずつき覚えないんじゃなかったっけ?』

 

 大盛り上がりのコメント欄をちらりとみると、そんなコメントが目に入る。

 

「ははっ、何言ってんのさ。」

 

 みんな頭が固いなぁ。

 

「犬が牙で噛み付くのに、鳥が空を舞うのに、人が食事をするのに技を使う?」

 

 ポケモンの技っていうのはあくまで外付けの強化パーツだ。

 ポケモンの体内に流れる強力なエネルギー、それに”技”としての形を与えて現象へと昇華させる。

 例えば、本来発電器官を持たないポケモンが”10万ボルト”もの高電発を放つ。

 例えば、爪の周りにエネルギーを押し固めてさらに強力な爪を形成し”ドラゴンクロー”として威力を増加させる。

 要は技っていうのはアシストツールなのだ。

 それがなくたってイトマルは糸が吐けるし、コイキングは跳ねるし、マルマインは爆発する。

 だったら当然高さ40cm重さ11kgもの質量が超スピードでぶつかれば……。

 

「しびぁ……」

「し、しびるどーーん!!」

 

 既にダメージが蓄積しているポケモン1匹ひんしにする程度のダメージは出せるってわけさ。

 さて、さっきの質問への返事がまだだったね。

 自分の頭を指差して、言葉を紡ぐ。

 柔らかい頭を失ってしまった大人たちに教えてあげようじゃないか。

 

「別に技が無くたって、ココ(・・)を使えば攻撃くらいできるに決まってるじゃん」

 

 ま、技のアシストが無い分威力も低いしこっちの頭も痛いんだけどね!!

 それでもあれだけのスピードが乗ればこのとおりさ! やっぱり運動方程式は最高だ!

 エレズンってばとっても頑固(頭が固い)だし、自傷ダメージもそこまでないだろう。

 

「ふひっ、ふひひひっ!」

 

 ボクがみなのものへ向けて100点満点のドヤ顔を披露していると、そんな笑い声が聞こえてくる。

 ……そうだよね、やっぱり君ならそういう反応になると思ったさ。

 

「すごいすごいすごい! なんで急にシビルドンが不調になったの!? なんで攻撃のタイミングがわかったの!? なんもわかんない!!」

 

 "未知"っていうのは、面白いよね。

 案外ナンジャモって学者とか向いてるかも、"こんな"だけど。

 突飛な発想、それを実行する行動力、そして尽きない好奇心。

 うん、やっぱりぴったりじゃないか。

 

「う〜ん、どっから話そうかな……まずはシビルドンがするあの気持ち悪い動きのタネからだけど」

 

『気持ち悪いて』

『まぁ間違いないわな』

『あれはキモイ(褒め言葉)』

 

「多分あの急停止と急発進の原理は電磁石だよね?」

「だいっせいかい! こんな一瞬で見破られたの初めてだよ!」

 

『でんじしゃく……ってあの電気流すと磁石になるってやつだよね?』

 

「そ、シビルドンは磁力を操って宙に浮いてるじゃん?」

 

『じゃん? と言われましても……』

『ま、流石にそれくらいはね』

『せやね』

『えっ』

『バカは置いといてどうぞ』

 

「それで電磁石っていうのは導線をぐるぐる〜って巻いたコイル……あっポケモンのコイルとは違うからね? それに電気を流した時に電流の向きに応じた磁界を発生するっていう現象を利用したやつなんだけど……」

「うんうんうん!」

 

 ナンジャモってば物凄くにっこにこだ。

 そんなにトリックを見破られたのが嬉しいか……変態め(褒め言葉)。

 

「あのシビルドン、あの長い身体の表面でラケットのグリップみたいに螺旋状に電気流してコイルに見立ててるんだよ……いやマジでどうやってんのさホント」

「にっしっし! いっぱい特訓したからねー!」

 

 幾ら電気が流れる身体とはいえ、電流を誘導してくれる導線がある訳でもないのに完璧に電気を操って螺旋状に流すとか……体を流れる汗で模様を作るみたいなものだぞ。

 

「それで進む時は頭から尻尾に、止まる時は尻尾から頭に向けて流すことで、文字通りスイッチを切替えるように(・・・・・・・・・・・・)動きを制御してたんだよ」

「そのとーり! でもそれがわかったからってなんで対応できるのさ!」

 

 勿論、原理が分かったからってどのタイミングで、どちらの向きに電流が流れるかがわからなきゃ対処なんてしようがない。

 

「そこは、この子のおかげ」

「ずん!」

「エレズンの?」

 

 ちいさなおてででこれまた小さなお胸をポンと叩き、自慢気に一鳴きするエレズンのかわいいことかわいいこと。

 これはエレズンだからこそできたことで、きっと進化後のストリンダーにはできない芸当だと思っている。

 ま、実際どうかはやってみなきゃわかんないけど。

 

「エレズンってばとっても怖がりな生態じゃん? それにまだ発電器官が発達しきっていない幼生だ……だからこそ、普通じゃ気付けないくらいの微弱な電気も察知して反応できるってわけ」

 

 例えば……電位を変えるときに漏れ出る生態電流とかね? と続けると、配信越しにも拘らずワッと視聴者のみなのものの熱気が増したのを感じた。

 その証拠にコメントの流れが一気に加速する。

 

『何それすっごそんなことできんの!?』

『誰だよエレズン出したとき死んだわとか言ったやつ』

『今日からエレズン使います』

『常人が使ってもエレズンがただかわいいだけだぞ』

『てかよく考えたら察知できるエレズンもだけど”察知したこと”をさらに察知できるレン氏がやっぱりバケモンだろ』

 

 ふふん、そうだろうそうだろう。

 

「多分対シビルドンの一般的な正解は距離を取って面制圧だよね? なみのりとかふんかとかで」

「そ! あとは攻撃をあえて喰らってからのカウンターとかね! こんな風に真正面から攻略したのは君が初めて! ボクびっくりしすぎてコイキングくらい飛び跳ねるとこだったよ!」

 

 ナンジャモの喜び様が語尾につくビックリマークの数からもひしひしと伝わってくる。

 え、普通策を破られたら悔しくないのかって?

 あはは、たしかにフツーそうかもしれないけど……なんせボク達は不条理を楽しむポケモントレーナー(バトルジャンキー)だからね! 自分の上を行く発想を、強さを目の当たりにした瞬間がいっちばん楽しいのさ!

 だってまだ自分の上がいるってことは、立ちふさがる壁があるってことは、それを超えればもっと強くなれるってことだもん!

 

「それであのほっぺすりすりだけど……ちゃんと考えればナンジャモでもわかるんじゃない?」

 

 何気なく出た自分の言葉に、思わずハッとする。

 ボク今、他人に期待した……?

 いけないいけない、ついついはしゃぎすぎちゃって……。

 

「んむむむむむ……あっなるほど! だからようかいえきか!」

「……ははっ」

 

 そんな一瞬の寂寥感も、直後に喜びで塗りつぶされる。

 

『だが、ワタシも天才だ!』

 

 ボウルジムでの、コルサさんの言葉が頭をよぎった。

 ……そっか、そうだ。

 セルクルジム(姉なるもの)で、ボウルジム(芸術バカ)で、そしてここハッコウジム(配信バカ)でのバトルを経て確信する。

 ここでならボクは、ただの”特別”でいられる。

 たしかにボクは天才だけど、こと”バトル”に関してはボクと同じような天才がたくさんいる。

 

「あのようかいえき、あれだけ動いてもシビルドンの皮膚に残ってた! きっと毒素が電解質で、ほっぺすりすりは滞留する溶解液に電荷を持たせるためってことでしょ! どーだレン氏!」

「うん、100点」

「あれ淡白!?」

 

 ドッとコメント欄で笑いが起こる。

 間違いなくボクは今、過去にない程興奮している。

 興奮しすぎると一周回って冷静に慣れるってホントだったんだ、なんて思いながらも、脳の一部ではその冷静さを塗りつぶすほど喜びが渦巻いているのを確かに感じながら、ぴょんぴょん跳ねながらはしゃぐナンジャモの言葉を聞く。

 

「すっごいすっごい! 思いつきもしなかったそんな攻略法! たしかに体表に電気を流して磁界を発生させてるから、途中に変な電荷があればそこに誘導されて流れが歪む……でもシビルドンが磁界を発生させる仕組みとか、ようかいえきの成分とか、他にもいろいろ! ポケモンバトルにここまで物理を持ち込むためにどれだけポケモンの知識がいるのか想像もつかない! ねぇレン氏、そのキラキラ世界を見るために、どれだけのものを積み上げてきたの!?」

 

『あのナンジャモの口からここまで賢(かしこ)ワードが飛び出すことに驚きを禁じ得ない』

『これ実はみがわりだったりしない?』

『ポケモンバトルでまで試験解かされてる気分~~』

 

 どれだけ積み上げてきた、か……。

 ふふ、そんなこと言われちゃあ、返す言葉はひとつしかないよね。

 

「10歳そこらのガキに人生の厚みで負けるとか、恥ずかしくないんですか~?」

 

 その瞬間、世界から音が消え……一瞬の静寂の後、やけにはっきりと聞こえた『にししっ』という笑い声と共に、爆発的な熱気がコートを包み込んだ。

 

「サイッコーだよレン氏!」

「こっちのセリフ!」

 

 ほんっとうに……コレ(ジム巡り)を始めてよかった!

 

「じゃあ次の不条理をどうやって超えるのか……ボクに魅せてみてよ!」

 

 ナンジャモが懐からデコられたクイックボールを取り出し、放る。

 出てくるのは、きっと。

 

「タイカイデン!」

 

 きた。

 恐らくボクの中で……いや、あの口ぶり的にナンジャモにもバレてるか。ボク達の中でただのタイプ相性以上に相性不利だと考えられる、エレズン対タイカイデン。

 攻略法が既に見えていたシビルドンと違い、まだ具体的にどう攻めれば勝てるのかは見えていないが……そこはまぁ戦いながら考えるとしよう。

 

「さぁいくよエレズン、まだまだクライマックスも中盤だ!」

「ずん!」

 

 空高く飛び上がる(・・・・・・・・)タイカイデンをまっすぐ見据え、ボクはどうすればあいつに勝てるかの思索を始めた。

 

 続く!!

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