え?どくポケモンが最強ですが??   作:のびうつぼ

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生徒会長如きが首席に勝てるわけないんですけど!

「いやっふーーーーー!!」

 

 草原を駆ける、真紅の影。

 その背に跨る2人の内の1人、前の少年にしがみつきつつも目をキラキラと輝かせ、楽しそうに声を上げる美少年は一体誰か……。

 ーーーそう、ボクである。

 

「ふふ、レンったらはしゃぎすぎだよ」

「だって楽しいんだもん!!」

 

 すごい! はやい! 気持ちいい!

 え? 何してるのかって?

 実はハルトに頼んで、コライドンに乗せてもらってるのだ。

 ……こころなしか、腰に着けたボールから「どお……」という悲しそうな声が聞こえる気がする……。

 ち、違うのドオー! これはこの人が無理やり!!

 

「でもやっぱりレンも乗りたかったんだね、レンから乗せて! って言ってくるとは思わなかったよ」

「だって……だってぇ……」

 

 …………ごめんねドオー、ボクはもうコライドンなしじゃ生きられない体になっちゃったみたい……。

 

「あ、ジャンプするから気をつけて」

「へ? うひゃっ!」

 

 突然の衝撃に驚き、前のハルトにぎゅっとしがみつく。

 び、びっくりした……。

 

「ぷ、ふふふ」

「な、なにさハルト」

「ふふ、いや……うひゃっ! って、ぷっ」

 

 なんてこと言うんだこのショタは!!

 段々恥ずかしくなってきて、ばっとハルトの背中から離れる。

 

「ボクだってビックリくらいするし!」

「ほら、いつもレンって大人っぽいからさ…………たまにすごいアホだけど

 

 え? そ、そうかな〜? いや、べつに? 嬉しくないけどね???

 ……ちょっとまって今アホっていった?

 

「ねぇいまアホっていっ」

「あ、ほらレン! もうセルクルタウン見えてきたよ!」

「ねぇアホって」

「ここはたしかむしジムだっけ?」

「ア」

「たのしみだね〜」

 

 こいつ……。

 まぁ仕方ない、今日は見逃してやろう。

 ほら、ボクってば大人だし?

 

 

□■□■□■□

 

「ん〜! ここのお菓子めっちゃ美味しい!」

「ふふ! ふほひひひはふひ!」

 

 またヨクバリスになってしまったハルトと一緒にセルクルタウンを見てまわる。

 ここは質のいいミニーブがたくさんくるので、彼らがくれるミニーブオイルを使った料理なんかが有名らしい。

 ま、今食べてるのはバターと生クリームたっぷりのお菓子なんですけどね!

 そしてそのお菓子を作っているのが、ここのジムリーダーでもあるカエデさん。

 ていうかパルデア地方のジムリーダーってみんな手に職持ってるけど、どっちが本業なんだろう。

 

「ほらハルト、ジムついたからごっくんして」

「ん! ふわぁぁ、美味しかった」

 

 幸せそうに目を細めるハルト。

 ……なんだろう、美味しいものを食べてるハルトを見てると、こう……守らなきゃ! っていう使命感みたいなのが湧き出てくるな。

 さ! そんなことより記念すべきジム初挑戦だ! 気合い入れて行こう!!

 え? ポケモンリーグ? なんのことかな??

 

「たのもーー!!」

「ちょ、レン!?」

 

 ドカッと扉を開け(自動ドアだけど)、堂々と宣戦布告をする。

 ジムにいた人がみんなこっちを向く中、見知った顔を見つけた。

 

「あれ、生徒会長じゃん」

「ハルトにレン! 奇遇だね!」

 

 そういえばこの人、改めてもう一回ジムめぐりするって言ってたっけ。

 

「丁度よかった! じじゃーん、みてこれ!」

 

 そう言いながら誇らしげにむしバッジを掲げる生徒会長。

 もう勝ってるんだからそりゃ勝てるでしょうに、まるで初めての勝利のように喜んでいる。

 2人揃ってぱちぱちと拍手を送ると、ふふんと鼻を鳴らしながら彼女は続けた。

 

「ここに来たってことは、君達もバッジを集めてポケモンリーグに挑戦するんだよね?」

「もちろん」

「うん」

 

 面接官さんと今度こそバトルしたいしね。

 あの面接さえ突破出来れば、ボクならチャンピオンとか余裕だろうし?

 

「うんうん! 誘った甲斐があったな〜」

「え、誘われたの?」

「う、うん。一緒にジムめぐりしようって学校で」

 

 そこまで気にいられてたんだハルト。

 まったくこの人たらしめ。

 

「ん? じゃあなんでハルトはこうしてボクと旅をしてるんだ?」

 

 生徒会長に誘われたのに? 断ったの?

 まっさかそんな。

 

「だって……それは……んん秘密っ!!」

 

 真っ赤になって叫ぶハルト。

 ちょっとそこまで怒らなくてもいいじゃんか。

 ま、いくらハルトでもこの全身がポケモンバトルになってしまった生徒会長との旅なんて身体が持たないって気づいたのかもね。

 あの人と一緒に旅なんてした日には3歩くらい歩く度にポケモンバトル仕掛けてくるよ、たぶん。

 そんな下らないことを考えながらハルトをなだめていたら、生徒会長が、それでね! と続きを話してくれた。

 

「レンはわかるだろうけど、ハルトはジムチャレンジの流れってしってる?」

「言われてみれば知らないかも」

 

 ま、編入生だしそりゃそっか。

 

「ここパルデア地方でジムリーダーに挑戦するには、その前にジムテストっていうのをクリアしなくちゃいけないんだ」

「ジムテスト?」

「言っちゃえばミニゲームみたいなもんだよ」

 

 ジムテストは各ジムによって異なるらしいので、正直めちゃめちゃ楽しみにしてる。

 

「詳しくは受け付けの人が教えてくれるから、準備ができたら聞いてみて」

「ありがと、ネモさん」

 

 うんうん、ちゃんのお礼が言えて偉いぞハルト。

 

「んー! なんだかまた昂ってきちゃった! ちょっとそこら辺のトレーナーに勝負仕掛けてくる!」

 

 そう言うとぴゃーっと出口の方へ向かっていく生徒会長。

 ってはやいはやいはやい!

 

「あ! ちょっと待って!」

「ん? どうしたのレン」

 

 急いで生徒会長を追いかけ、ボクも出口へ走る。

 

「ジムバトル、先に受けてもらってもいい?」

「え? いいけどなんで?」

「どうせ2人同時には出来ないし、今は別にやりたい事があるから!」

「? よくわかんないけどわかった、じゃあ先受けとくね」

 

 ありがとうハルト!

 折角運良く会えたんだし、生徒会長とバトルしないとか勿体ないでしょ!

 

「生徒会長、どうせならボクとヤろうよ」

「へ? いいの!? レンとのバトルちょっと久しぶりじゃない!」

 

 前にしたのはハルトが編入してくる前くらいだったかな? たしかに久しぶりだ。

 あーどんなポケモンが出てくるんだろ!

 わざは? もちものは? 戦術は??

 現役チャンピオンとのバトルなんて、昂らない筈がない!

 

「じゃ、ハルト、お互い頑張ろうか」

「うん!」

 

 そしてボクらはコツンと拳を合わせ、お互いの目標へと向かっていった。

 ……ちょっと今の少年ジャンピング感あってカッコよくない!?

 

 

□■□■□■□

 

 

 

「さて生徒会長」

 

 これからジムバトルがあるのにセンターコートを使う訳にもいかない為、町外れの適当な場所まで歩いてからそう切り出した。

 

「どっちがいい?」

「どっちって言うと?」

「今新しいポケモン育ててるんでしょ? そっちか、本気(マジ)か」

 

 ニヤリと、口の端を吊り上げて勝気な笑みを浮かべる。

 ガチパならボクも久しぶりに全力でぶつかれるし、今育ててる方だとしても、それはそれで楽しみだ。

 まだ弱いポケモン同士のバトルでは、誰を使ってもそこまで強さの差は出ない……だからこそ、その人のバトルセンスや特徴なんかがよく出るんだよね。

 

「んー、折角なら今育ててる子達を使おうかな!」

「おっけー! レベルは15くらいだよね?」

 

 ボクも今育ててるポケモンがいてね、レベルもそれくらいだから丁度いいや。

 

 

「……よし」

 

 ふぅ、と息を吐き、呼吸を整える。

 うん、コンディションはバッチリ!

 

「じゃ、やろっか!」

「うん! 全力で楽しもう!」

 

 ボクのどくポケモン達のつよさとかわいさ、生徒会長に思い知らせてあげよっか!

 

「いくよ! ヤトウモリ!」

「おねがい! イワンコ!」

 

 前回はあの変態(わからせおじさん)にわからせられちゃったかわいそうなヤトウモリ、今度は君がわからせる番だ!

 ……とはいったもののいわタイプかぁ、きっついな。

 いやいや! 弱気になっちゃダメだよね!

 

「ヤトウモリ! おにび!」

「あの火に当たっちゃダメ! よけて!」

 

 さすが生徒会長のポケモン、俊敏に動いて狙いを絞らせない。

 それにこのレベルのバトルでもやけどにならないよう攻撃をやめてまで回避に専念させるとか大人げな……どんなバトルにも全力って感じがする。

 ……でも甘いなぁ、こっちにはボクがいるんだよ?

 

「そこ」

 

 ボクがピッと指を指した方向に、ヤトウモリがおにびを放つ。

 すると弾幕を躱していたイワンコが丁度飛び出してきて、直撃した。

 

「攻撃技じゃなくてまず状態異常を狙ってくるとか、流石首席って感じだね」

「ふふっ、どくタイプらしい狡猾さでしょ?」

 

 いやらしく、じわじわと、それでこそどくタイプだからね。

 さて、やけどにしたはいいけど……ほのおもどくも効きにくいんだよなぁ……よし、変えよう。

 

「ありがと、ヤトウモリ……いっておいで! エレズン!」

 

 出てきたのはまるで赤ちゃんのようなバブみのある顔をしたポケモン、エレズン。

 この子はたまごからボクが育ててるから、めちゃめちゃ愛着があるっていうかもう超かわいいっていうか!

 みてこの不機嫌です! みたいな憎たらしい顔! かわいすぎるでしょ!!

 

「イワンコ! たいあたり!」

「あまえて! エレズン!」

 

 ふっふっふ、やけどが痛くて上手く戦えまい。

 その上でこのつぶらな瞳、こんな可愛い生き物に攻撃出来る生物がいるのだろうか、いやいない。

 やけどにされたうえ攻撃まで下げられたら、交代したくなっちゃうよね? ね?

 

「むむむ、戻ってイワンコ!」

 

 はい来ました!

 

「ドンピシャ! ほっぺすりすり!」

「おいで! パモ!」

 

 へ? パモ?

 交代読みは出来てたのに、引いた先がでんきタイプだったせいでまひらせれなかったんだけど!

 ほら見てよ、ホントはどんなポケモンでもまひにするほどの高電圧なのに、ただの挨拶だと思ったのかパモもお返ししてる。

 あ、お互い楽しくなってきて笑顔ですりすりしあってるね。

 …………かわいすぎない?

 

「んっんん、ほらエレズン、もどっておいで」

「パモも、これから戦うんだから」

 

 お互い無言で何度かシャッターを切った後、じゃれあってる2匹をだき抱えて距離をとる。

 よくわかってなさそうな顔でこっちを見るエレズンがなんともいじらしい。

 あぁもう……食べちゃいたい!

 

「……この2匹は戦わせないにしよっか」

「……そうだね」

 

 あの戦闘狂(ジャンキー)生徒会長と、彼女ほどではないにせよバトル好きな自覚のあるボクとの間で、奇跡の不戦協定が結ばれた瞬間だった。

 

「どうする? どっちが変える?」

「んー、じゃあレンお願い出来る?」

「りょーかいっ!」

 

 エレズンをボールに戻し、改めてヤトウモリを出す。

 さて、ちょっと気が抜けちゃったけど、第2ラウンド開始と行こっか!

 

「ヤトウモリ! もう一回おにび!」

「くらっていいからそのままほっぺすりすり!」

 

 げ! 突っ込んできた!

 やけど状態にはできたけど、こちらもまひになってしまう。

 ま、まぁどうせパモの方が速いだろうしいっか。

 

「ひのこ!」

「ひっかく!」

 

 よし、全然痛くなさそう。

 これならこのまま突破できる!

 

「もいっちょひのこ!」

「くっ、ごめんねパモ」

 

 そのまま戦闘不能になるパモに代わり、イワンコが出てくる。

 ホントは交代したいけど、ボクの手持ちはヤトウモリとエレズンの2体だけだし、なしかなぁ。

 ごめんヤトウモリ!

 ようかいえきで少しでも削るが、あえなくヤトウモリはひんしになってしまった。

 

「ありがと、カッコよかったよヤトウモリ」

 

 ヤトウモリが休むボールをギュッと抱え、ポーチにしまう。

 

「おねがい! エレズン!」

 

 大丈夫、ヤトウモリのおかげでやけどになってるし、どれくらいかはわかんないけど削れてもいるはず。

 でも一応念には念を入れて……。

 

「あまえる!」

「いわおとし!」

 

 また攻撃力を下げ、少しでも被害を少なくする。

 

「エレズン、大丈夫?」

「ずん!」

 

 よし、痛くも痒くもなさそう。

 

「そのままようかいえき!」

「いわおとし!」

 

 何度かこうげきを撃ち合い、イワンコを戦闘不能にすることができた。

 さて、生徒会長のポケモンは3匹って言ってたし、最後は誰が出てくるか……。

 

「お互い最期の1匹……やっぱりバトルはこうでなくっちゃ!」

「ふふ、同感だよ生徒会長!」

 

 ギリギリの戦い、その中でこそポケモン達は輝き、また成長期するんだ。

 

「いくよ! ニャローテ!」

 

 最後のポケモンはニャローテか……よし、どくタイプとは相性がいい。

 

「輝けニャローテ!」

「こっちもいくよ!」

「「テラスタル!」」

 

 勝負はここで決まる、お互いそうわかっているのか同時にテラスタルを発動させる。

 ニャローテはくさ、エレズンはどく、お互い得意なタイプのテラスタルだ。

 いくら相性有利とはいえ、エレズンはベビーポケモン、戦いには根本的に向いてない。

 普通ならニャローテが押し勝つだろう。

 そう、普通ならね。

 ……うちのエレズンには、必殺技がある。

 

「ニャローテ! はっぱカッター!」

 

 ニャローテのはっぱカッターをくらい、エレズンが大ダメージを負うが、オボンのみを食べて回復する。

 ……よし、計算は完璧。これで準備は整った。

 

 

「エレズン! ゲップだ!」

「ゲップぅ!?」

 

 ふふ、驚く生徒会長の顔がとっても愉快だ。

 ゲップ、それは持っているきのみを消費した後しか使えない、1回きりのわざ。

 しかしその代わりに威力はとても高く、タイプ一致のテラスタルで放てば……。

 

「ニャローテ!」

「よっし! やったねエレズン!!」

 

 この通り、一撃で敵を粉砕する。

 いっつもぶすっとしてるエレズンに、満面の笑みが浮かぶ。

 あっ、無理、かわいすぎる。

 

「よーしよしよし! よくやったぞー! ほーらたかいたかーい!」

「ずん! ずん!」

 

 エレズンの体をだき抱え、全力で高い高い!

 流石はうちの子! つよい! かしこい!! かわいい!!!

 

「うん、流石はレン! すっごくいいバトルだった!」

「ふふん、でしょでしょ?」

 

 生徒会長にも勝っちゃうなんて、流石ボクだよね!

 ペーパー試験はボクが1位、生徒会長に勝ったってことは実質実技もボクが1位!

 いやーこの学校でいちばん凄いのがボクだって、証明されちゃったな〜。

 ほんと、天才すぎて申し訳ない!

 

「じゃ、次はどのポケモンを使おっかな! あ、技も変えて同じ子達ので試してもみたいし……それに本気パーティーの子達もそろそろバトルしたがってるかも! あーどれからやろうかな!」

 

 あ、やば、ちょっとマズイスイッチを入れてしまったかもしれない。

 

「あー、その……ネモさん?」

「ん? 次はガチパで戦うにする? だったらレンはどく使いだし、あの子とこの子と……あ、でも逆にあの子もありか……でも君は絶対使いたいし! どれも捨て難い!!」

 

 ……どうしよコレ。

 

「あ、レン! みてみてこれ! バッジ取れたよー!」

「ハルト!! 丁度いい所に!!」

 

 流石ハルト、もう取ってきたのか!

 よっぽど嬉しいのか、だらしなくほおを弛め、えへへと自慢するハルトをみてチクリと良心が痛むが……仕方ない! ごめんハルト!

 

「生徒会長、ハルトがどうしても生徒会長とバトルしたいってさ!」

「ちょ、レン!?」

「ホント!? やろやろいまやろすぐにやろ!!」

 

 悪いハルト……骨は拾ってあげるから……。

 

「じ、じゃあボクはジムチャレンジがあるからこの辺で〜」

「レン!? え、なになにこれどーゆーこと!?」

 

 2人に背を向け、そそくさとジムへ向かう。

 後ろから「えへへ、お姉さんとあっちでイイコトしよっか」とか、「レン! 置いてかないでぇぇぇ!!」とか聞こえてくるけど気にしない気にしない。

 記念すべき初めてのジムチャレンジ! 一体どんな物なんだろう! 

 想像するだけでワクワクしてきたボクは、スキップでジムのドアをくぐるのでした。




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