え?どくポケモンが最強ですが??   作:のびうつぼ

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絶対に負けられない戦いが、ここにある……っ!!

 ーーー他人の不幸は蜜の味。

 そんな言葉を遺しやがった過去の天才に、(恨み)を込めてプレゼントを贈り(唾を吐きかけ)たい。

 そんなことを考えながら、散々オモチャにされ好きなように弄ばれてしまった身体を抱きしめ、しくしくと泣く薄幸の美少年は一体誰か……。

 あぁもうボクだよチクショウ!!

 

「うっ、うっ……」

 

 そしてそんな可哀想なボクを前にし、幸せそうにニコニコしている悪魔が2人。

 

「ふふ、とっても可愛かったわよ〜♡」

「すっっっごいたのしかったね、レン♪」

 

 もちろん、ボクは自分かちょっと……いや大分……いやかなり顔がいいのは自覚している。

 自覚している……が……。

 

「あんな、あんな…………うにゃあああああ!!!」

 

 女の子の格好で着せ替え人形にさせられて、さらにはやることなすことすべて褒めちぎられるなんて!!!!

 

「あらあら、思い出して恥ずかしくなっちゃったのかしら?」

「ちゃんと全部撮って保存してあるから安心してね!」

 

 もう……いっそ殺してくれ……っ!!

 ハルトにボクの痴態を見られてしまった後カエデさんの自室に連れ込まれたボクは、あれよあれよという間に制服を剥ぎ取られ、ありとあらゆる可愛い服に着替えさせられた。

 この地方には何故か無い女子用の学生服から始まりロリータやお姉ちゃんとお揃いのコックコート、果てやスク水なんかまで!!!

 ていうかなんでお姉ちゃんの自室にあんなにいっぱい衣装があるんだよ!! しかもサイズピッタリだし!! おかしいだろ!!!

 べ、別にふと鏡に映ったボクを見たらあまりの可愛さに「これが……ボク……?」とかなったなんてこともないし! ないったらないし!!

 

「やっぱり僕は王道のミニスカートがいちばん可愛いと思うんですよ」

「あらそうかしら? この私と一緒のコックコートだってすっごく素敵じゃない?」

「おいそこ! ボクの写真で盛り上がるな!!」

 

 ハルトもお姉ちゃんも本当に酷い。

 抵抗しようとすると、2人とも的確にボクの喜ぶところを褒めちぎってくるせいでボクがあわあわしちゃって有耶無耶にされるんだもん。

 特にお姉ちゃんに褒められると、なんだかすごいポカポカして…………。

 ってまてまてまてまて!!!

 なんでボクは当たり前のように彼女のことをお姉ちゃんなんて呼んでるんだ!?

 一体いつからボクは姉堕ちしていた!?

 いやそれよりなんとか写真を削除させて……。

 あぁもう思考が纏まらない!!

 

「おね……カエデさん! ジムバトルでボクが勝ったら写真消してよね!!」

「それは構わないけれど……もうお姉ちゃんって呼んでくれないの?」

「うっ……」

 

 寂しそうにシュンとするおね……カエデさんを見て、罪悪感に胸がチクチクと痛む。

 ま、まぁ呼び方くらい合わせてあげればいいか。

 別にお姉ちゃんの方がしっくりくるとか、そんなことはないし、ないったらないし。

 

「わかったよ……お、お姉ちゃん……」

「まぁ! ふふ、お姉ちゃんとっても嬉しいわ!」

 

 パァっと花が咲いたように笑うお姉ちゃんにつられて、こっちも顔に笑みが浮かぶ。

 えへへ、喜んでもらえてよかった。

 ってちょっと待てなにがえへへだ堕ちるなボク!!

 

「それよりバトル! ボクが勝つ! 写真消す!! いいね!!」

 

 さっきからプチパニックに陥ってるせいか言葉が単語だけになってしまった……。

 こんな知性の欠片もない喋り方……とちょっと恥ずかしくなっていると、いつもの優しい微笑みとは違う、好戦的なえがおを浮かべるお姉ちゃんと目が合った。

 

「えぇ、構わないわ……ま、私に勝てればだけれどね」

「っ! ふーん、いい顔するじゃないか」

 

 自分達の強さを信じて疑わず、相手と全力でぶつかり合う……そんなポケモンバトルに心を奪われた人間の目だった。

 どんなに優しくてもやっぱりこの人もジムリーダー……筋金入りのバトルマニアなんだ。

 

「悪いけど、ボコボコにさせてもらうよ! お姉ちゃん!」

「あらあらうふふ、精々楽しませてもらおうかしら?」

 

 こうしてついに、ボクの初めてのジム戦が始まった。

 この勝負、負けられない!!

 ……いや、ほんとに、絶っっっ対に負けられない!!! ボクの尊厳のためにも!!!!!!

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 さて、意気込んだはいいけれど、正直に言うと1ミリも負ける気がしない。

 セルクルジムはむしタイプのジム、使うポケモンのタイプも当然むしだろう。

 まだ育ちきっていないポケモン同士のバトルでは基本的に相性がものを言うため、ヤトウモリで全員突破できる……はずだ。

 でも、いつもなら面白くないからとか言って最初はヤトウモリを出さないだろうけど……今回は絶対に何があっても必ず100%勝たなくてはいけないから、最初から行かせてもらうよ!

 

「よろしく! ヤトウモリ!」

「お願いします、マメバッタちゃん」

 

 カッコよく全抜き、見せてよね!

 

「やきつくす!」

「あれは危ないわね〜、動いて的を絞らせないで」

 

 マメバッタの脚力を存分に活かし、ピョンピョンと飛び跳ねてヤトウモリの吐く火を躱し続けられる。

 流石はジムリーダーのポケモン、よく鍛えられてるね……。

 だったらこっちは!

 

「ヤトウモリ、そこまでの火力はいらないから威力より連射を優先して」

 

 こくりと頷き、先程よりも小さな火球を連射するヤトウモリ。

 流石に避けきれずマメバッタにも何発か被弾しているが、致命傷には至らない。

 しかし弱点なこともあって、無視できるほどのダメージではないためおそらく……。

 

「今がチャンスよ〜、近付いてにどげり!」

 

 来た!

 

「待ってました! 足元にようかいえきして下がって!」

 

 火球をいくつも受けながらやってくるマメバッタの落下地点にようかいえきを撒き散らし、ヤトウモリ自慢の敏捷性でにどげりを避ける。

 元からダメージの蓄積されていたマメバッタは、自ら毒液に突っ込み戦闘不能になった。

 

「あらあら、誘い込まれてしまったわね〜」

「ふふーん、さっすがヤトウモリ!」

 

 自慢げなヤトウモリを腕に乗せ、うりうりと撫でてやる。

 あらまぁ気持ちよさそうに目細めちゃって……うちの子可愛すぎない?

 

「頑張りましょう、タマンチュラちゃん!」

 

 マメバッタに代わり出てきたのはタマンチュラ、当然だけどむしタイプだ。

 

「あの体の周りにある糸……よく燃えそうだねぇヤトウモリ」

 

 見るからに燃えやすそうな糸を見て、ニヤリと笑みを浮かべるボクとヤトウモリ。

 たしかこのポケモンは特殊技はほとんど無かったから……。

 

(ごめんねヤトウモリ、痛いかもしれないけどちょっと我慢してね)

 

 小声で耳打ちをし、指示を出す。

 

「タマンチュラちゃん! むしくい!」

 

 よし予想通り!

 タマンチュラが果敢に噛み付いてくるが、それを読んでいたヤトウモリはしっぽに噛み付かせ、動きを封じたところを両手でガッチリと掴んだ。

 

「ふふ、つーかまーえた♪」

「あら? あらあらあら?」

 

 ゼロ距離でやきつくすを放つと、タマンチュラの体に巻かれた糸が面白いくらいに燃え上がり、すぐに戦闘不能になった。

 

「ごめんなさい……ありがとうタマンチュラちゃん」

 

 向こうは残り1匹、それに対してこっちはまだ2匹いるし、ほぼノーダメ。

 これは……いけるのでは……?

 よしちょっと余裕出てきた。

 

「あれ? お姉ちゃんもう残り1匹? ボクたちまだ全然ホンキ出してないんだけどな〜」

「うっわレンわっるい顔……」

 

 遠くでハルトが何か言ってるけど気にしない。

 

「ふふ、むしポケモンちゃん達の強さは辛抱強さ……ここから逆転、行くわよ〜」

 

 ボクが煽ってもその微笑みを一切崩さず、お姉ちゃんは最後の1匹を繰り出した。

 

「頼みましたよ、ヒメグマ!」

 

 ノーマルタイプ!?

 いや、お姉ちゃんはリーグから認められたタイプのエキスパートしかなれないジムリーダー、ならきっと……。

 

「ちょっぴりビターに行きましょうか、テラスタル!」

 

 眩い輝きに包まれ、むしタイプにテラスタルするヒメグマ。

 やっぱりそうか!

 でもお姉ちゃん、ヤトウモリ相手にわざわざテラスタルして弱点増やすのは、ちょっと悪手なんじゃない?

 

「ヤトウモリ! そのままやきつくす!」

「ヒメグマちゃん、みだれひっかきよ〜」

 

 何度か攻防を繰り返したが、タイプ相性がひっくり返ることもなく、そのままヒメグマは戦闘不能になった。

 

「よっし! ありがとうヤトウモリ!」

 

 嬉しそうに飛び跳ねるヤトウモリをボールに戻し、一撫でしてからお姉ちゃんに向き直る。

 

「あらあら、流石はレンくんね、完敗だわ」

「ま、ボクってば天才だからね!」

 

 ふふんと鼻を鳴らし、自慢げに言う。

 でも、バトルをしてみて思ったけれど……。

 

「お姉ちゃんもさ、可哀想だよね」

「あら、どうして?」

「だって折角ジムリーダーになったのに、そのせいで本気のバトルさせて貰えなくなってるじゃん」

「それは……まぁたしかにそうかもしれないわね」

 

 まだ学生だった頃、お姉ちゃんも相棒のポケモンたちと旅に出て、こうしてジムめぐりをしたのだろう。

 その結果バトルの腕が認められ、ジムリーダーにスカウトされたのに、スクールから1番近いという立地のせいで手加減することを強制され、相棒達も使えず、秘めたる闘争心を解放できずにいる。

 遠くのガラル地方では、ジムリーダー同士が戦うリーグ戦が行われていると聞くし、うちにも採用したらいいのにと思わずにはいられない。

 

「ねえ、お姉ちゃん」

「なにかしら?」

 

 だから、せめて。

 

「ボクがジムバッジを全部集めてチャンピオンクラスになったらさ、もう1回ここに来るから……そしたらその時は、お互い全力でバトルしようね!」

「ふふ、それは素敵な提案ね」

 

 是非そうしましょうと返してくれたお姉ちゃんにギュッと抱きつき、そのままの流れでむしバッジを受け取った。

 

「でもねレンくん」

「ん?」

「チャンピオンになってからなんて言わず、いつでも帰ってきていいのよ? お姉ちゃん待ってるから」

 

 そう言って微笑むお姉ちゃんは、なんだかとっても幸せそうで、こっちまで嬉しい気持ちになってくる。

 また抱きしめたくなる気持ちをグッと堪え、顔を見られないようにそっぽを向いてこう言った。

 

「ま、まぁたまには? 帰ってきてあげてもいい……ケド……」

「あらあら、うふふ」

 

 ええいやめろなんでそんな可愛い物を見る目でボクを見るんだ!

 ボクは知的な大人だから! 弟堕ちなんて絶対にしないもんね!

 

「ほ、ほらハルト! 次の街行くよ!」

「ふふ、まったくレンったら素直じゃないんだから」

「うるさいなぁもう!」

 

 こうしてボク達は初めてのジム戦を終え、なんだか少し気持ちが楽になったのを感じながら、次の街へと向かうのであった……続く……。

 

 

 

 

 ……………………あれ? なんか忘れてるような……。

 そもそもなんで負けたくなかったんだっけ……。

 

「? 突然立ち止まってどうしたの?」

「あ、ううん! なんでもない!」

 

 ま、いっか!




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