キャラ:倉田ましろ
上記のお題により書き綴ったものです。
初夏の涼しげな風を受けながら、俺は夜空を見上げていた。といっても、都内だからほぼ何も見えず、時たま飛行機とかヘリコプターの灯が見えるくらいだけれども。
「瑞樹君どうかしたの?」
呆然と空を眺めていたら背後から声をかけられる。振り向いた先にいたのは、煌びやかな白髪をショートカットに整えたどこか幼さなげな様子を残す少女。名は倉田ましろと言う。
「なんも。UFOでも飛んでないかなと思って空見てただけ」
「ふーん。それで、見つかった?」
「何の成果も得られませんでしたー」
棒読みで返した俺に、ましろはジト目を向けてくる。何それ、可愛いと思います。
「へー」
「はい。それで、どうした?」
ズボンのポケットに両手を突っ込みながら彼女へと問いかける。何の理由もなく、俺のところへ来るとは思えないしな。
「そうそう。一緒に花火やろ」
「花火?」
彼女が掲げてきた袋を手に取りながら首を傾げる。するとそこには、『線香花火』の文字がデカデカと記されていた。
「線香花火か。いとをかし」
「……え?」
「趣があるって意味だよ」
微妙な表情をされたので現代語訳を告げた俺は、小さく溜息を吐く。古文の言い回しは通じなかった時の空気が辛いですわ。
「それで、どうするの」
「うん。折角だしやらせてもらうよ。バケツとマッチ用意してくるから、ちょっと待ってて」
手短に述べた俺はましろの反応を待たずその場を一度離れる。そして、物置からバケツを取り出してくるとそこに水を張り、玄関にあったマッチを持って再び彼女の前へと戻る。
「お待たせ。準備もいいしやりますか」
「うん!」
ましろが頷いたのを確認し、花火の封を開ける。そして互いに一本ずつ掴むと、その花火に火を灯していく。
途端、小さな煌めきが互いの手元で花開く。微弱だが、はっきりと存在感のある優しげな灯りが。
「綺麗……」
2人揃ってしゃがみ込み、チカチカと光る柔らかな灯火に夢中になる。すると突然、俺の持っていた花火が零れ落ち、消えてしまう。
「ありゃ、落ちちゃったか」
「私の方が長いね」
何処か自慢げに述べたましろの表情に思わず笑み溢す。対する彼女は、それが少しばかり不満だったのか訝しんだ様子であった。
「なに?」
「いや、可愛いなって思って」
内心で思っていたことを正直に述べた俺は、そのまま彼女の方を見ることなく、新たな花火に火を灯す。
その
「ねぇ、瑞樹君」
「……どした?」
「来年も、こうして花火できるかな?」
突拍子もない質問に、少しばかり驚いた俺は視線を彼女の方へと向ける。
「どうだろうな。人の行く道がどうなるかは、その人も分からないから……絶対に交わる——一緒に花火をしているとは言い切れない」
「そっか……」
どこか切なげに俯いたましろ。だが俺は、そこに構わず続けていく。
「けど、互いが互いのことを思ってれば、また交わるんじゃないかな?」
「それって……」
大きく瞳を見開いた彼女に、俺は小さく笑いかけ彼女の言葉に返答する。
「俺も来年、ましろと一緒に花火やりたいな、って思う」
俺の言葉を聞いたましろは瞳をわずかに潤ませたかと思えば、くしゃっと笑う。今日1番といっても過言ではないくらい明るく。
「うん! 約束だよ! 来年も……一緒に、花火やろ!」
「ああ、約束するよ」
互いに笑い合い、来年のことを誓い合う。何気ないことだが、とても愛おしく感じられた。そうして余韻に浸っている内に、互いの手元から灯りが消えていた。
「っと、花火消えちゃってるな」
「そうだね。まだある?」
「あるよ。ほれ」
ましろに新しい花火を手渡した後、俺も3本目の花火を手に取り火を付ける。
「今度の花火の長さは、負けないぞ」
「臨むところだよ」
そうしてまた、彼女と共に花火を楽しむ。たわいも無い、平穏な時間。だが、とても大切なもの。
その思いを胸に秘めたまま、花火がなくなるまで彼女と共に燈を灯していた——