キャラ:花園たえ
上記の要件より作成した作品です。
——呼び出しを貰った俺は、江戸川公園へと足を運んでいた。もはやここにくること自体がテンプレートになりつつあるから、あまり新鮮味を感じない。悲しい。
「和希さーん!」
公園の入り口近くに据えられた滑り台の上に、元気よくこちらに手を振る美少女の姿が1つ。俺を呼び出した張本人、花園たえだ。
「お待たせしました」
「いえ! ジブンもたった今来たところですから!」
「そうかい。それで、今日はどうした?」
滑り台の上に登った俺は、彼女の傍に腰を下ろしつつ問いかける。
「実は、知り合いから映画のチケットをもらいまして」
「はいはいはい。それで?」
「良ければ、一緒にどうですか?」
意外なお誘いに、数瞬程驚いた俺であったが直ぐに首を縦に振る。
「良いよ。折角のお誘いだからね」
「ありがとうございます!」
「それで、どこの映画館に行くの?」
「渋谷の映画館っス!」
元気よく返答してくれた彼女の言葉に頷く俺。……っと、待て? 今渋谷って言ったか?
「……あのー、ちなみに映画何時から?」
「11時っス」
それを聞いた俺は、即座に公園の時計へと視線を向ける。そこにあったのは、10時15分を示す針。
「走るぞたえ! 次の電車乗れないと、上映に間に合わないもしれない!」
勢いよく立ち上がった俺は彼女の方を向くことなく走り出す。何でかと言われれば、彼女の運動神経がお化けと言っても過言では無いからだ。
「電車ってどの!」
「地下鉄! 江戸川橋まで行くよ!」
半ば叫ぶようなやりとりと共に、俺達は駅へと走っていった——
結局あの後、映画には間に合った。そして今はその帰り道。いつの間にやら傾いてていた日に照らされながら、互いに感想を述べている。
「あそこのシーン、とても感動したっス!」
「同意。俺も涙腺持っていかれちゃったよ」
談笑しながら歩いているうちに、いつの間にやら江戸川公園へと辿り着いていた。そこに来て、俺はあることを思い出す。
「あれ、たえって確か家反対側だったよな?」
「そうっス」
「じゃあ何でこっち来たの?」
最もな疑問を彼女へと投げかける。すると彼女は、躊躇った表情を見せたかと思えば恥ずかしそうに笑う。
「その、もう一度和希さんの歌声が聴きたくて……和希さんと出会ったこの場所で」
「そうだったのか」
たえの言葉にちょっぴり笑みを浮かべた俺は滑り台の上——小さな小さなステージに登る。
「たえの望みってことなら、喜んで歌うよ」
「ありがとうございます!」
「それで、何を歌えば良い?」
上に登った俺は、かがみ込んでたえの目線に自分の視線を近づけながら問いかける。対するたえは、間髪入れずに返答する。
「『Yes! BanG_Dream!』、お願いしたいっス!」
「りょーかい」
軽めに敬礼した俺は、大きく息を吸い込み入りのフレーズを口ずさんでいく。
「さぁ飛び出そう 明日のドアノックして 解き放つ 無敵で最強の歌」
初めて出会った時に、たえが奏でていた曲。そして、失われていたフレーズを香澄が繋ぎ止めて蘇った伝説の歌。それを今、自身の中にある思い出と重ねながら歌っている。そのことに、とてと心が躍っていた。
「いつか出会える夢を信じて ときどきドキドキときめいてる ただ胸に秘めている あふれる思いを」
髪を撫でる柔らかな風に歌声を乗せ、世界へと響かせていく。その所作は目の前の彼女にも伝わっているらしく、キラキラと両目を輝かせている。
「キミだけのホントの声きかせて 夢とキミが出会うメロディ」
——3、2、1! というたえのコールをもらいながら自身の中にあった全てを、フレーズに乗せていく。
「In the name of BanG_Dream! Yes! BanG_Dream!」
「和希さん! 素敵でした!」
「ありがとう」
賞賛の声を貰い照れくさくなった俺は、後ろ髪をかきつつ彼女から視線を逸らす。そうして危うげな足取りで滑り台を降りた俺は彼女の前に立つ。
「さて、送ってくよ」
「良いんですか?」
「ああ。冷静になると、今日の俺の帰り道も方向同じだったし」
「なら、お言葉に甘えるっス」
互いに笑みを向けあい、帰路に着く。そんな俺たちの頭上には、いつの間にやら顔を出していた1番星が煌めくのであった。