The color is redder than crimson and shining. 作:希衣 三十三
第4話
森を抜け、舗装された道に出る。
やっと明るい道だ。赤ずきんは地図を見直し、大丈夫だと頷いている。それにほっとしながら歩き始める。
飯綱「最初にお二人に渡しておきたい秘密があるので渡しておきますね。」
飯綱はそう言って、私と空羅にメモを渡す。どうやら赤ずきんのおばあさんについてのようだ。
彩取「あら、ありがとうございますわ。」
礼をしてありがたく受け取る。
そのメモを見ながら、度々意識を失うことについて問い掛けてみる。
彩取「そういえば、度々意識が別の場所に移っているような気がするのですが、私だけでしょうか…?」
空羅「変な意識の感覚わたしにもありました!」
飯綱「確かに、何かしらの幻視をしている感覚がありますね……この森の影響なのか……それとも誰かしらの人物によるものなのか……」
どうやら私だけに限ったものではなかったらしい。
彩取「やっぱり、皆様もそんな感じだったのですね。てっきりご迷惑をおかけしてるかと。」
空羅「今までの記憶も怪しいものと考えた方がいいでしょうか。」
飯綱「皆さんに幻視が起きているのなら、きっと何か理由があるはずです。それをどうにかして解明していきたいですね。」
彩取「ええ、どうやら赤ずきんさんのおばあ様も良からぬことを考えているみたいですし。」
メモを読み終えた私はそう返す。どうやら赤ずきんの母親と祖母は、悪しき計画を企てているようだ。
空羅「今までの記憶も怪しいものと考えた方がいいでしょうか。」
彩取「どっちが本当の記憶かは、分かりませんわね。どっちも偽物の可能性も本物の可能性もありますわ。」
どこからどこまでが幻術なのか、検討も付かない。だが、赤ずきんにかけられていた忍術は、そう強固なものではないはずだ。
彩取「飯綱さん、情報ありがとうございます。いろいろ探してみますわ。」
再度飯綱に礼を言う。
空羅「どちらの可能性も視野に入れて備えましょう。」
飯綱(二人とも記憶の改ざんを受けている可能性があるのか……?)
近くから調べてみようか、そう考えて難しい顔をした二人に一旦の別れを告げる。
彩取「では、ご機嫌よう。」
私は自身の色を消してその場を離れ、飯綱の秘密を調べてみることにした。
なるほど、誰が飯綱を護衛に付けたか謎だったが、どうやら赤ずきんの母親の依頼だったようだ。しかし気になる。これは事実なのか?彼は、そんなことをするような人物に視えなかった。これも何かの術の影響か?考えを巡らせながら、色を消したまま赤ずきんや他のシノビの所へ戻る。
私が離れている間、一行は舗装された道から外れた小さな丘を進んでいる。
合流しようとしたとき、断無が何かを呟いていることに気付き、色を消したままその様子を見る。
断無が呟き終えると、記憶にかかった靄が晴れたような気がした。どうやらかけられていた忍術を解いたようだ。そのまま断無は、丘で一休みしている赤ずきんに声を掛ける。
断無「お疲れかな?赤頭巾殿。」
赤ずきん「…う、うん…でもね?でも…えっと…、すっきりはしてる。」
断無「では其方の祖母についての記憶も?」
赤ずきん「…うん…殺されてる…おかあさんも。」
そうだ。忍術で閉ざされていた私の記憶。赤ずきんが私に接触してきた時、赤ずきんの祖母も母親も殺され、幻が代わりに家にいる。そう言っていた。それに、周りに危険が近づいていることも。
断無「拙にはかける言葉は持ち合わせがない。しかして御両人の願いはできる限りの助力を約束しよう。」
赤ずきんの母親と祖母、彼女らの赤ずきんへの思いは断無にも伝わっていたのだろう。
断無の思いもまた赤ずきんに伝わり、少し不安そうな表情が和らぐ。
私は安心して前列へ戻った。
自身の消していた色を戻し、帰ってきたことを伝えようとした時、感情の線を伝って空羅の情報が記憶に積まれる。空羅は術により、赤ずきんを捕えるという偽の記憶が刷り込まれていたようだ。術が解かれたことで飯綱も同様に偽の目的だったことを悟る。私の視た色に間違いはなかったようだ。
色を取り戻し皆の前に現れると、飯綱もどこからか戻ってきたところのようで、断無と赤ずきん、空羅も集め、情報を共有しておこうという話になった。
飯綱「連絡屋でーす、怪文しにきました。」
そう冗談交じりに話す。
怪文。比良坂機関、公安隠密局の情報共有手段の一つだ。どんな情報であっても、どこであっても伝えることができる。
彩取「あら、飯綱さんは元比良坂でしたの?」
飯綱「兄はそうですが、私は比良坂ではないですねえ。」
では兄の知恵なんだろうか。
断無「軽いな。まあいいか、情報提供感謝する。」
断無はそう言って飯綱のメモを受け取る。
ふと見ると、空羅が私の方を向いて少し睨んでいるような気がした。何かを調べているのだろうか。特に探られて痛いこともないので、少し色を付けておくことにした。
断無「ああそうだ。丁度彩取殿がいるのだ、これを渡しておこう。」
唐突に話しかけられた私は礼をして、何かを確認せずとりあえず受け取った。
お菓子の欠片?どこか夢に見たお菓子の家にあったような、そんな感じのものだった。
空羅「彩取さんも真の秘密を思い出したんですね。どうやら私たちの因縁の相手がいるようです。」
私の秘密を知った空羅は敵意を解く。
彩取「ええ、赤ずきんさんにだけでなく、酷いことをした方々がいらっしゃるみたいなので。」
空羅「いじわるさんはどこにいるんでしょうかね……」
一通りの共有を終え、先に進む。