The color is redder than crimson and shining. 作:希衣 三十三
第8話
紅ずきん「…未来のシノビは此処まで強くなったのか、昔の上忍レベルだ…」
彩取「まだ残っていたのですね、では消しさりますわね。」
紅色を手に取り、コロコロと手の平の上で転がす。
紅ずきん「まてまてまて!」
すぐさま止められた。
紅ずきん「…そんな事をしなくとも、われの魂は赤ずきんに吸収されている途中だ…むしろその術を放ったら赤ずきんが少なからず影響を受ける。」
少し考える。
紅ずきん「はぁ…せっかく妖魔の身体が見つかったというのに…」
彩取「試してみます?」
多分上手くいくだろう、そう思った。
彩取「これでも脱色には自信ありましてよ?」
紅ずきん「まてまてまて!お前はなんだ!?妖魔より妖魔らしいぞ!」
彩取「たまに言われますわね?」
「貴方、私より妖魔っぽいですよ?」元凶尾の友人からも言われたことがある。
紅ずきん「おい嘘だろ…んんっ、昔は上忍になってようやく奥の手が一つ使えるぐらいだというのに……原種の妖魔として生きづらい世界だ…」
紅ずきんの色が弱くなっていくのが視える。
紅ずきん「…死に際に何か教えようか、段々どうでもよくなってきた……いらないかもしれないが原種妖魔と妖魔の違いを教えてやる。」
弱々しく紅ずきんは続ける。
紅ずきん「原種妖魔は…人間が使われていない純粋な妖魔を刺す、あの肉達磨野郎はただの妖魔…ただの妖魔は人間が材料に使われている。早い話、この時代の妖魔の殆どが人間を元にして作られている、上級妖魔の殆どは原種妖魔の子孫だ。」
彩取「隠忍の血統の方々は人間の血が混じってて、妖魔は人間の肉を使っていらしたのね。」
紅ずきん「そうだ…量の違いやどちらが先か…まぁそんなところだな、肉達磨には5歳の男の子と7歳の女の子が複数人使われていたな。本能しか残されていないアレは、なんともまぁ可哀想なものだ…」
語っている間にも、紅ずきんの色は薄くなっていく。それに合わせ、頭に生えている耳が若干小さくなっていた。
彩取「あら?もう消えてしまうのかしら。」
空羅「消えてしまう前に何かやり残したことでも?」
紅ずきんに尋ねる。
紅ずきん「…狼達は紅色よりも赤色を選んだみたいだからな、やり残した事……甘えたかった…家族も欲しかった…原種妖魔にはそんなものは居ないから…ははっすまない、人間のような欲ばかり出てきてしまう…」
寂しげにそう答えた。
彩取「人間と妖魔は愛し合うことはできないって言った方が、随分と人間のようなことをおっしゃるのね。まだ愛し合うことはできない、と言えるのかしら?」
紅ずきん「…謝るよ、我…私はね…威張りたかったの…だって女王だもん。」
紅ずきんは涙ぐんだ目を隠すように顔を落とし、言い終えると同時に体の力が抜け落ちる。
しばらくすると、赤ずきんは目を覚ました。
「赤ずきんさん!」そう言いかけた私に、赤ずきんは唸りながら噛みついてくる。
狼のような鋭い牙が私の首元に刺さる。
赤ずきんになら、まあ悪くはない死に方かな。そう思っていた。しかし、噛みつく力が少し弱まった。
赤ずきんの顔は見えない。でも、赤ずきんにはあの時と変わらない色が、輝きが視えた。そういえば、こんなに近づいたのもあの時以来だろうか。
彩取「…ッ、昔からその色は変わらないのね。」
やりたくない。昔からそう思っているなら。
彩取「まあ、知っているのですが、しょうがないですわ。」
私もまだ、赤ずきんを置いて死にたくはない。これ以上何かを失って悲しむ顔も見たくない。まだ手に残っていることを確かめる。その色、赤ずきんの食欲の色、紅色を手の中の色に紐付けて握り締め、砕く。
食欲を失わされた赤ずきんは、明確に意識が戻ったようだ。噛みついていることに気付いた赤ずきんは、すぐさま飛びのき土下座しようとしたのか膝をつく。
彩取「ふふっ、言ったでしょう。なんとかしてあげるって。」
身体を起こし、残っていた兵糧丸を口にして首の血を止める。
赤ずきん「うぅ…ごめんなさい、ごめんなさいぃ…」
謝る赤ずきんの顔を左手で上げ、
彩取「それより、赤ずきんさんは何ともないかしら?」
覗き込みながら問い掛けた言葉に、赤ずきんはすぐにこちらから目をそらした。
赤ずきん「…な、なんっなんともないですよ…よ…?」
彩取「本当かしら?」
顔を近づけて問い詰める。すると白状したように話す。
赤ずきん「…嘘です、あの…言うより見てもらった方が早いかも知れません…」
そう言って、紅ずきんが使っていた煌めく斧を指差す。
そこから、ポチに似た狼が6匹次から次へと出てくる。狼たちはシノビの周りを1周ずつ駆けていった後、嬉しそうに赤ずきんの傍に寄っていく。その狼の大きな体に赤ずきんはすっぽりと隠れてしまう。
赤ずきん「もごもごもご…ぷはっ、えっと…その…次の女王として…勝手に…」
少し困った顔を浮かべてそう言う。
彩取「あら、それは大変ね。そっちの斧もどうにかするべきかしら。」
そうやって斧を見る。すると狼は鼻を鳴らすような高く小さい鳴き声をあげ、ひれ伏すかのような姿勢をとっている。
彩取「ちゃんと誰が偉いか分かるなんてお利口さんですわね。」
くすりと笑う私の元へ、伏せた狼を飛び越えながら赤ずきんが向かってくる。
赤ずきん「…好きでいて良いってことなんですよね?」
私の両の手を取ってそう聞く。
彩取「もちろん。何度でも言ってあげますわよ。」
笑顔で返す。その言葉を聞いて、赤ずきんは私の手を引き体を寄せる。
赤ずきん「…何時までも上に入れると思わないでくださいね。」
思いもしなかった言葉だ。他には決して聞こえないほどの呟きを聞いて少し嬉しくなる。
彩取「ふふふ、歓迎してあげますわ。」
握られた手を強く握り返し、目の色を変えて呟き返す。
赤ずきんは顔を赤くし、逸らして誤魔化そうとする。いつもの調子に戻ったようだ。
それぞれが忍務を完遂したことを確認し、改めて報酬等の話をするために連絡先を交換して帰路に着いた。