幸せのあしあと   作:緑雨

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瑞希「ふぅ…」

 

 神高の屋上から、僕は街を見下ろす。

 

瑞希(思えば、色んなことがあったな。ニーゴのみんなとセカイに行ったのはもう2年前か。その間にみんな変わったよね。ニーゴの名前はもう全国区になって、奏の曲で何人もの人が救われた。奏はすごいよね。まふゆのことだって救っちゃった。まふゆは少しずつ感情を取り戻して、笑ったり怒ったりする。相変わらず人当たりがよくないけど、甘いとか辛いとか楽しいとかってボク達にも言ってくれる。絵名はずっと絵の勉強をして、ちゃんと絵画教室にも通ってる。それに美大にも行ってこれからも絵がうまくなるために頑張るんだ。皆して“消えたい”なんて思わなくなって、誰もいないセカイはなくなった)

 

瑞希「そうだ、皆に連絡しとこう」

 

Amia『今までありがとう。それと、ごめんなさい』

 

瑞希「…これでいいか」

(まふゆも絵名も大学が忙しくても25時には必ずナイトコードに集まって。それで話しながらどんどん曲を作る。奏の作る曲はどんどん人を救って、まふゆの書く詩はどんどん人を考えさせて、絵名の描く絵はどんどん人を魅了する。皆、毎日成長してる。でも、ボクだけは前から変わらなくて。絵名にさえずっと秘密を隠して、自分を取り繕って生きてる。人を救ったり、考えさせたり、魅了したり、そんなことボクには出来ないよ)

 

瑞希「なんだか寂しいなぁ」

(屋上にはボク独り。類は卒業しちゃったからここには来ない。杏も、弟君も、皆授業中。この春から皆3年生。ボクもなんとか3年生)

 

瑞希「出席日数たりるかな」

(…そんなこと、もう、いいか)

 

瑞希「…電話? あぁ、Kか。 …もしも~し」

K『Amia? 急にメッセージどうしたの?』

瑞希「…Kは優しいね。 なに、新曲のMVが期日に間に合わなさそうだから謝っておこうと思って」

K『まだ曲もできてないんだから、謝らないといけないのは私の方だよ』

瑞希「…違うんだよ。Kの曲ができる頃にはね、もうボクは…」

K『Amia? 大丈夫?』

瑞希「バイバイ、奏。ボクは今まで幸せだったよ」

K『…瑞希、今どこにいるの』

瑞希「神高の屋上。 …いや、」

 

 

 

 

瑞希「空中かな」

 

 

 

 

K『瑞希!』

 

 電話も、僕の意識もそこで途切れた。

 

 

 

 

奏(はぁ、はぁ、急がなきゃ。神高、こっちだよね。 …やっぱり騒がしいな)

 

「う~う~」

 

奏(救急車… もしかして…)

 

「きゃ~!」

「飛び降りか?」

「あれ… 暁山じゃねぇか!」

 

奏(やっぱり、瑞希が…)

「あの! 瑞希は、瑞希は無事ですか?」

 

救急隊員「この娘の友達かな? 大丈夫、まだ生きてるよ」

奏「瑞希、助かりますよね?」

救急隊員「大丈夫、なんとかするよ」

 

奏(よかった… そうだ、早く皆に伝えないと)

 

K『雪、えななん、落ち着いて聞いてほしい。Amiaが、神高で飛び降りた。今から病院に向かう』

 

奏(救急車はもう病院に向かったのか… この近くなら、多分あの病院かな。追いかけないと)

 

えななん『K! なんでAmiaが!』

雪『私も学校が終わったら向かうね』

えななん『なんで雪はそんなに落ち着いてんのよ!』

雪『焦っても仕方ない。まだ生きてるんでしょ?』

K『うん』

雪『学校終わったらまた連絡する』

えななん『私は学校早退して向かうから』

K『えななん、やめて。今来ても会えないから、学校終わったら来て』

えななん『でも…』

雪『早退してもAmiaは喜ばないよ』

えななん『…わかった、後で連絡する』

 

 

 

 

奏(それから、1か月が経った。絵名もまふゆも、Leo/needの皆も、MOREMOREJUMP!の皆も、VividBADSQUADの皆も、ワンダーランズ×ショウタイムの皆もお見舞いに来てくれた。でも、1か月経っても寝たきりで目を開けてくれない)

 

奏「瑞希…」

(今日も、駄目だった。もう時間だから、帰らないと)

 

奏「瑞希、明日も来るね」

 

 

 

 

「…あれ」

 

 

 

 

奏(一瞬空耳かと思った。だけど、その声は間違いなく瑞希の声で)

 

 

 

 

「…ここ、どこ…」

 

 

 

 

奏(瑞希の目は開いて、朧気に周りを見てて。寂しそうな顔で)

「…瑞希」

 

 

 

 

瑞希「…誰かいるの?」

奏「瑞希! わたしだよ、奏だよ!」

瑞希「…誰?」

奏「…え?」

瑞希「誰?」

 

 

 

 

奏(瑞希はわたしのことを忘れていて)

 

 

 

 

瑞希「…ねぇ、ここ、どこ?」

奏「ここは、病院。瑞希覚えてる?」

瑞希「…わかんない」

 

 

 

 

‐瑞希はもう、何も覚えていなかった‐

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